エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます   作:グルグル30

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レ~が多すぎたので、赤の神をアムレイヤに変更しました。


神とは

 

「お、あったあった」

 

 岩陰へと向かった俺は、目的のボールを見つけて、それを手に取る。

 そしてその瞬間――。

 

 なっ!? 突然気配が現れた!? 囲まれている!?

 

 俺は咄嗟に武器を取り寄せて、直ぐ側にある気配に向かって振り抜いた。

 だが、それは何者かによって易々と止められてしまう。

 

「転移して現れた気配を察知して、直ぐさま迎撃を行う……。そう簡単にできることではありません。やりますね。さすがあの子が見初めた相手です」

 

 そう言って自らの体に迫ったナイフを片手で止めながら、俺に対して笑顔を見せる女性を見て、俺の口は思わず叫んでいた。

 

「か、神……!?」

「あら? 私達のことを知っているのですか?」

「お前の前に顔を見せたのは初めてのはずだがな」

「オイラ達を一発で神と見破るなんてな~」

 

 俺が周囲を見回すと、俺を囲んでいた目の前の女性以外の五人も、この世界で七彩の神とうたわれる存在の者達だった。

 

 嘘だろ……!? なんで、神がこんな所に……!? 御礼参りか……!? 勝手に神を名乗った俺を絞めに来たのか!?

 

 俺はそんな風に恐怖でビビり倒しながら、目の前に立つ赤の神であるアムレイヤに向けたナイフを降ろし、恐る恐る問いかける。

 

「え、ええっと……何かご用でしょうか?」

「そうですね……貴方への視察と言った所でしょうか。貴方がどのような者なのか見に来たというわけです」

 

 どのような者か見に来たって? 今更何を……! お前らが勝手に俺を神にしたんだろうが!

 

 そんな憤りが溢れてくるが、それを表に出すことも出来ず、俺は感情を押し殺し、丁寧な口調で話しかけ続ける。

 

「そ、そうですか……。神と認定してきた時に、その辺は済ませていると思っていましたが……」

「確かに私達は確認していませんが、あの子の言葉だったので、貴方を神と認定した私達の判断が間違っていたとは考えておりません。ただ、それはそれとして、あの子が見初めた相手がどんな者なのか、あの子の兄妹として純粋に気になったから、このように貴方の元へとやってきたというわけです」

 

 アムレイヤはそう毅然と語る。

 それを受けて俺は考え込む。

 

 今の話からすると、俺を神に推薦したのは、紫の神なのか……?

 

 作中で七彩の神があの子と呼ぶのは紫の神だ。

 だからこそ、先程までの話を信じるなら、俺を神へと推薦したのは、ゲームでは名前すら登場していない紫の神となる。

 

 何で俺が紫の神に神へと推薦されなくちゃいけないんだ!? 知り合いのセレスが紫の神の巫女をやってるってだけで、直接的な接点なんて俺と紫の神の間にはないだろ!?

 

 思わずそんなことを思うが、情報がない紫の神について考えても仕方ない。

 俺は何とか気持ちを切り替えてアムレイヤに対して言った。

 

「それで、視察に来てどうだったんですか? もし、神に相応しくないと新たに思って貰えたのなら、今から神認定を撤回して貰ってもいいですけど?」

 

 と言うかさっさと撤回して欲しい。

 そう言う気持ちで俺が言った言葉に対して、アムレイヤはにこりと笑った。

 

「ふふ。貴方は神を名乗るに相応しい資質を持っている。貴方を見初めたあの子の目は間違っていなかった。さすが私達の妹です」

「はぁ!? あんたは何を言っているんだ!? 俺の何処にそんな資質があるんだよ!? 俺はただの人間だ! あんた達のように世界を管理するほどの力を持っているわけじゃないぞ!?」

 

 俺は思わず礼儀も忘れてそう叫ぶ。

 それに答えたのは橙の神であるウライトスだ。

 

「それは少し違うぞ、我が子孫よ」

「違う? 何が?」

 

 俺のその言葉に補足するように藍の神であるノイラントが言う。

 

「神と言っても種類があるんだ~。フレイがオイラ達と同じような世界神になることはさすがに出来ないと思うけど、ただの神になることくらいなら出来ると、オイラは思うんだ~」

「神に……種類が……?」

 

 俺が混乱するようにそう言うと、くいとメガネを上げながら、緑の神であるハイセトアが前に出てきた。

 

 此奴、何か格好付けているけど、十歳になったばかりの少女と致して、賢者の源流となる子孫を作ったロリコン神なんだよな……。

 

 このハイセトアの行いのせいで、賢者のユニークジョブ持ちは、十歳になると成長が止まってしまうという合法ロリ状態になってしまっている。

 ユニークジョブはその個性が世界に定義されたジョブの為、合法ロリが強制される賢者や、おしゃれな服を着ると服がはじけ飛ぶ野蛮人のように、本来あり得ない事象でも強制的にその個性を再現してしまうのだ。

 

 まあ、ごちゃごちゃと考えたが、ぶっちゃけるとゲームでの強力な能力の代わりとなる特殊な装備制限や、キャラクターイラストがロリなことに対する理由付けの設定なんだろうけどな。

 

 俺は、攻略対象の一人であり、無窮団の団長を務めている賢者ちゃんを思い出しながら、思わずそんなことを考えた。

 

 神相手に人間の価値基準でとやかく言っても仕方ないのかも知れないが、それでもロリ相手にしでかした奴が、生真面目で出来る人的な態度で、メガネをくいっとさせて出てくると、思わずげんなりとしてしまう。

 

 俺のそんな気持ちを無視してハイセトアは言った。

 

「兄さん、姉さん、ここは僕の方から説明するよ」

「そうですか、ではお任せ致します」

 

 そう言ってアムレイヤが後ろに下がると、目の前に立ったハイセトアは言った。

 

「神――所謂高位存在には三つの階位が存在する。それは、創造神、世界神、そして自然神の三種だ。当然だけど、それぞれの階位間では明確に力の差が存在しており、自然神、世界神、創造神の順にその規格も能力も高くなっていく」

「三つの階位ね……ってことは貴方達は……」

「僕達は世界神の階位にいた存在だね」

「いた存在?」

 

 俺はハイセトアの言い回しが気になり、その言葉を思わず聞き返す。

 それに対してハイセトアは丁寧に回答していく。

 

「フレイ、君は僕達七彩の神がこの世界に追加したルールを知っているだろう?」

「ああ、下界に降りて自由に行動するためには、神界に残っている神に、自分の力の大部分を預けないといけないとかいうあれですか」

「そう、それだね。ここにいる六人はそれによって力を失っている。言ってしまえば世界神級から自然神級に落とされた状況にあるんだ。だから、世界神であったのは過去形であるということだね。この世界で世界神なのは今はあの子だけだ」

 

 そうハイセトアは語るが、俺としては正直、神々の階位の違いがわからないから、自然神級に墜ちたと言われても、それがどういう扱いになるのかわからない。

 そんな考えが表情に出ていたのか、アムレイヤが補足するように言う。

 

「どう言った存在が神として扱われるのか、貴方は考えたことがありますか?」

「……そりゃ、何かの概念を司るとか、世界を管理する力を持つとか、そう言う存在が所謂神様って奴なんじゃないですか?」

 

 俺がそう言うと、間違った答えを言った生徒に優しく語りかけるように、アムレイヤはその間違いを訂正する。

 

「確かに、それらの特徴を持った者は神として扱われています。ですがそれは世界神級の特徴であり、自然神を――神を名乗るための最低条件とは違うのです」

 

 そしてそれに続くようにウライトスが言った。

 

「神とは精神生命体を指す言葉だ」

「精神生命体……? レイスとかの幽霊みたいな奴のことですか?」

 

 俺はかつてソフィーを助けるために倒した悪女の亡霊を思い出す。

 あれは、肉体を失っても存在しており、そしてソフィーの肉体を乗っ取るなど、精神生命体と言えるような動きをしていた。

 だが、その俺の言葉にウライトスは首を振った。

 

「それは違う。死してレイスになった者は肉体を失ったわけではない」

「は? 現に幽霊には肉体なんてものはないでしょ?」

「あれは、人の肉体からレイスの霊体という体に、肉体を移しただけなのだ」

「つまり、レイスは死んで現実の肉体を失うことで、物理的に干渉が出来ない霊体という特殊な肉体を得ただけだと、肉体の中に精神が収まっているのは同じだから、レイスは精神生命体ではなく、人と同じように肉体を持った生命体だと?」

「そう言うことだな。現にレイスとなった者は、そのレイスの肉体の影響を受け、生前の人格から変異して、生きている者達を恨むようになったり、新たな肉体を欲して彷徨うになる。それに加えて、仮に誰かを乗っ取って新たな肉体を得たとしても、その人物の癖などを無意識に取り込んでしまうのだ」

 

 俺はその話を聞いてゲームでのソフィールートでの出来事を思い出した。

 悪女はソフィーの癖などを完璧に真似ていたため、家族や使用人達は違和感があっても直ぐにソフィーが乗っ取られていると気付かなかったと出ていたが、今になって考えるとそれはおかしい。

 悪女はソフィーの記憶を覗いたわけじゃない。

 あくまで肉体に封印したソフィーの語り方と、周りの反応を元にソフィーの物真似をしただけなのだ。

 だからこそ、本人も意識していないような無意識の癖などを、悪女がコピーすることなど出来るはずがないのだ。

 

 つまり、それが出来ていたのも、悪女がソフィーの肉体を乗っ取った事で、その肉体から影響を受けて、ソフィーの癖が悪女に移ったからってことか?

 

 俺がそう考えている内にウライトスの解説は続く。

 

「俺が言う精神生命体とは、そのような肉体の影響を受けてしまう生命体とは違い、肉体の影響を受けないもののことを指す。そうだな例えば――」

 

 そう言うとウライトスが目の前で変異した。

 

「は?」

 

 大柄な成人男性と言った姿から、種類のよく分からない鳥に、そして犬へと次々と変身していくウライトスを見て、俺は思わず間抜けな声を上げる。

 そして、様々な生物へと変異したウライトスは、最終的に元々の姿に戻った。

 

「このように俺達に取って肉体とはただの器だ。だからこそ、どのようにも形を変えることが出来るし、それによって精神が影響を受けるわけでもない。つまり、俺は途中で犬へと転じたが、それによって骨が欲しくなると言ったことや、マーキングをしたくなるということは無いわけだ」

 

 つまり、ゲームとかで使用するアバターのようなものだってことか?

 

 俺はそこで創作で語られるようなフルダイブ型VRを思い出す。

 自由にクリエイト出来るアバターは所詮単なる器に過ぎず、それが肉体だとしても本体である現実の精神に何か影響を与えるというわけでもない。

 だからこそ、人ではない存在のアバターを使用できたり、性別や年齢など自分とかけ離れた存在の肉体でも何の問題もなく操ることが出来る。

 言ってしまえば、精神生命体とは、そのようなアバターの影響を受けずに、その肉体を動かして遊ぶ、フルダイブ型VRのプレイヤーに近い状況ってことだろう。

 

「そして、俺は様々なものに変化したわけだが……共通点に気付いたか?」

「共通点……? いや、特には……」

「しっかりとしたものではなく、曖昧な印象でも構わない」

 

 俺はそこまで言われて思ったことを告げた。

 

「そう言えば、どの姿も厳格な雰囲気があったような……」

「それだ。俺達、精神生命体は、肉体の影響を受けることはない。だが、逆に肉体に影響を及ぼすことはある」

 

 そう言うとウライトスは自分を指し示した。

 

「俺のこの姿は俺の精神に最も合う姿を選んだものだ。この見た目の通り、俺の精神はどこか厳格な印象を与える気質を持っているらしい。だからこそ、別の姿に変化したとしても、俺の精神が持つ厳格な気質が、変化した器へと影響を与えて、その器を厳格な見た目へと変異させてしまうというわけだ」

 

 ウライトスがそこまで言った所で、横からハイセトアが割り込んでくる。

 

「僕がどうやっても彼女に見合う子供になれなかったように、完全な別の姿になりたいって時は厄介な性質なんだけどね。これはこれで利点というものもある」

「利点ですか?」

 

 俺がそう言うとハイセトアは得意げに答えた。

 

「僕達に老いというものは存在しないのさ。精神生命体の精神というものは、時間経過によって劣化することがない。そしてそれが影響を及ぼす器の側も、本体である精神が劣化しないから、常に元の状態へと戻る動きが働くのさ」

 

 劣化しないの本体のデータで、常に作業するデータを更新し続けるから、元々のデータと変わらない状態が維持されるってことか、つまり神という存在は――。

 

「高位存在は不老ってことですか」

「ああ、俺達は不死ではないが、不老な存在だ」

 

 そこまで言った所で、ウライトスは纏めるように言った。

 

「つまるところ、どのような器に入ろうとも、個として変わらずに存在が出来る――それこそが、肉体の楔から外れた高位存在である、我々神と呼ばれる者達の特徴ということだな」

「それが神……」

 

 俺は一言そう呟いて、直ぐさま神々に向かって言った。

 

「いや、どう足掻いても俺がそんな存在になれるとは思えないんですけど!?」

 

 いや、だって精神生命体とか無理でしょ!?

 どうやって、そんな存在になれって言うのさ!?

 

 俺のそんな思いを感じて、青の神であるヴェルーナが答える。

 

「確かに、高位の龍や、高位の精霊のように、元から自然神として生まれた者以外が、あとから自然神へと転じるのは難しい。でも、前例がないわけじゃない」

「そうそう。聖人とか仙人とかね。肉体が生み出す欲などの頸木から抜け出して、自然神へと転じて神になった存在はこの世界にもいるんだよ~」

 

 軽い調子で黄の神であるサクリーナは答えた。

 それを更にハイセトアが補足する。

 

「僕らが色を付けないのなら神を名乗ることを許しているのもそのためさ。色付きの神は世界を管理する世界神の関係者だから勝手に名乗ることは許さないが、それ以外の神なら、自然神であろうとも神には違いないから、神を名乗ることを許しているというわけだね。実際に神威列島では、そう言った人から自然神となった存在を奉った神社も多いんだ」

 

 俺はその言葉を聞いて思わず叫ぶ。

 

「俺は色付きの神にされてるんですけど!?」

「それは、まあ、私達の弟になるかもしれないわけですから」

 

 なに、弟になるかも知れないって?

 紫の神の伴侶候補だから、自然神だとしても色付きにしちゃえって話なの!?

 俺、もしかして目を付けられてしまってる!?

 

 俺はそこまで考えた所で心の中で首を振った。

 

 ないない。

 だって、目を付けられる原因がないもん。

 

 きっと紫の神の言葉を他の神が勘違いしているだけだって、この世界を管理する神から目を付けられてるとか、そんなゲームオーバー的な状況に、既に追い込まれているなんてそんな話があるわけない。

 

 俺は所詮、ただの悪役。

 アレクのような主人公じゃないんだ、そんな状況はあり得ない。

 

 仮に何かしらの理由で目を付けられているのだとしても、紫の神もインフィニット・ワンでの攻略対象、アレクが頭角を現してきたら、そっちに目が行って俺の事なんて忘れるはずだ。

 

「いや、過去に自然神になった人がいるのだとしても、俺にはそれは難しいです」

 

 冷静になった俺は、アムレイヤの話を聞き流して、話を元に戻す。

 それに対してアムレイヤは律儀に返答してきた。

 

「確かに、人という種は、一番自然神から遠い種ですからね」

「あ~。そう言えば、人の中で一番自然神に近い種はエルフだったもんな~。それがあんな状態だからな~」

 

 思い出すようにノイラントがそう言った。

 俺はその発言に思わず首を傾げる。

 

「エルフが神に一番近い種? あのエルフが?」

「今の状況だけを見ればその意見が正しいのだろうな。だが、老いの影響を受けにくく、多くの者が理想とする肉体を持つエルフは、その条件だけを見れば、自然神に近い存在だと言えるのだ」

 

 確かに言われて見れば、老化等の肉体的影響を受けにくいエルフは、肉体による精神の変調も少ないと言えるのかも知れない。

 

 けどな……どう考えても、あれはそんな高尚な存在じゃないだろう。

 

「昔はエルフも頑張ってた。森の中で質素に暮らし、高位存在になることを、必死で目指すような者達だった」

 

 ヴェルーナのその言葉にサクリーナが補足する。

 

「でも、人と同じ精神性では、その暮らしに耐えられなかったみたいなんだよね~。厳しいしきたりの中で必死で頑張っていたエルフの中の一人が、ある日全てが嫌になって、それまでの反発からか、あんな感じの存在になっちゃったんだよ~」

「そしたら、あっと言う間に、それが感染してああなった。人は痛みには耐えられても、快楽には逆らえない」

 

 何か似たような台詞を聞いたことがあるな……。テ○ルズだったか? 確か、『人は苦痛には耐えられるが、幸福には逆らえん』とかだったような……。

 まあ、それはともかく、痛みを受けていても、人はそれを乗り越えた先に幸福があると思って耐えられるが、初めから幸福や快楽を与えられていたら、それを捨て去って進むことは難しいってことを言いたいんだろう。

 

 そして、その結果があのエルフ達だと。

 

「そのこともあって、私達は種として自然神へと到るのは難しいと判断しました。いつの世も、神へとなることが出来るのは、特筆した性質を持つ個人なのです」

「その点を考えたら、フレイには見込みがあると、オイラ達は思うんだ~」

 

 そこまで言うとノイラントは手で丸眼鏡を作って、それを通して俺の事を覗き込むようにして見る。

 

「だって、フレイは肉体の影響を精神が殆ど受けていないもんな~。まるで、オイラ達みたいに、用意した器の中に精神をぶち込んだみたいなんだ~」

「――っ!?」

 

 俺はそのノイラントの言葉に思わず驚く。

 ノイラントが言っていた特徴――それは俺が転生者だからではないだろうか。

 

 俺はこのフレイの肉体を操作しているが、その精神的な部分は前世の俺の影響が大きい、つまりフレイというアバターを操作しているフルダイブ型VRのプレイヤーと言えるような状況になっているということだ。

 そしてそれは、先程ウライトスが語っていた精神生命体の有り様に近い。

 勿論、食欲など肉体に影響されている部分も多くあるが、それでも他の存在よりかは神へと昇華しやすい土台だという事なのだろう。

 

「こんな存在、人の中では見たことがないもんな~」

「確かに、特筆した存在であることは間違いない」

「あの子はきっとそれを見抜いていたのでしょうね」

 

 そう言ってアムレイヤ達は感心するようにうなずき合う。

 それを見ていて、俺は同時にある疑問を覚える。

 

 七彩の神は俺が転生者であると知らないのか……?

 もし、俺を転生させた存在がいるのだとしたら、この世界で神とされている七彩の神の誰かだと思っていたが……。ここまで俺の存在を認知していないとなると、俺を転生させた存在は、全く別の誰かなのか?

 

「まあ、そんなわけで、私達は貴方なら神になれると思っているのですよ」

 

 感心し合っていたアムレイヤは纏めるようにそう言う。

 だが、俺としてはそんなことを言われても、素直に困るのだ。

 

「いや、そう言われても……、結局、どうなるのかもわからないですし……」

「既に信仰を得ている以上、時が経てば自然と神になっていると思いますが……。直ぐにでも神に転じる必要があるとなれば、我等がお母様が残した聖遺物を使えばいいでしょう」

「聖遺物……? それって、帝都にある召喚石や、龍の隠れ里にある神龍へ到る為の神の欠片、東の方に眠る異世界の聖剣とか、滅んだ天空都市にある天の稀石とかのことですか?」

 

 俺はゲーム時代の設定を思い出しながら、アムレイヤに向かって言う。

 それに対して、アムレイヤは驚き、感心したように答えた。

 

「よく知っていますね。この世界が危機に陥ったときに、それに抗うための力となるようにと、お母様が作り出しておいてくれたそれらの力のことです」

「この世界が危機に陥った時に抗うための力……? あれは、そのようなものだったんですか?」

 

 ゲーム的にはただの主人公パーティーを強化するためのアイテムや、何かしらのイベントを発生させたり、攻略対象になったりするだけの存在だったが……そんな世界の危機に対抗する為と言うほどの大層なものだったのか?

 

 俺のその疑問にアムレイヤは答える。

 

「勿論です。この世界の創世後、危機が訪れてもこの世界に干渉することが出来ないお母様が、この世界を守るために私達に残してくれたものですよ」

 

 うっとりと母親を神格視した様子でアムレイヤはそう語る。

 だが、俺はその説明に引っかかり、思わず問いかける。

 

「干渉できないから残した? 母親というのはこの世界の創世神のことですよね? 世界神よりも力のある存在が、この世界に干渉できないなんて、そんなことがあり得るんですか?」

「そうか、創世神に関する説明がまだだったか。他の階位について説明したのと同じように、創世神という存在についても説明しておこう」

 

 ウライトスはそう言うと、創世神について語り出す。

 

「創世神というのは無から有を生み出すことが出来る存在のことを指す。それこそ、世界を一から創造すると言ったことのようにな」

「……この世界の神話でも、創世神がこの世界を作ったとありましたね。つまり、それはそのまま真実を語った内容だと?」

「その通りだ。この世界は俺達の母上が作り出した世界であり、俺達は母上の代わりにこの世界を管理することを目的に、母上によって創造された世界神だ」

 

 無から有を作り出す存在――つまり、何もない所から何でも生み出せる存在で、世界を作り出すことや、七彩の神のような世界神まで生み出せるようなものが、創世神と言われる神の階位ってことか。

 それは確かに神という存在の最上位と言われれば納得出来るが、だからこそ、この世界に干渉できないという事が理解出来ない。

 

「そんな、何でも出来る存在なら、なおのこと、この世界に干渉できないという事態が理解出来ないのですが……。無から有を生み出せるというのなら、世界に干渉するための能力なんて、幾らでも生み出せるのでは?」

 

 そこまで言った所で、俺は同時に湧いてきた疑問についても聞く。

 

「それに、創世神はそんな干渉すら出来ない世界を作って如何するんですか? 結局、捨てることになるんだったら、世界を作ることの意味なんてないんじゃ……」

 

 ただ世界の始まりだけを作って、その後は関わることもなく放置する。

 その行為に何の楽しみがあるというのか。

 

「干渉出来ないというのは少し語弊がありましたね。ウライトス」

「む……。すまない。姉上」

 

 俺の疑問を受けて、アムレイヤはウライトスに向かってそう言う。

 ウライトスからの謝罪を受けて、アムレイヤはにっこりと笑った。

 

「構いませんよ。……ただ、お母様のことを誤解させるような物言いは、二度としないようにしてくださいね?」

「あ、ああ……」

 

 アムレイヤの笑っていない笑顔を見て、ウライトスが思わず後ずさる。

 それを見て、空気を切り替えるように、ハイセトアが言った。

 

「つ、つまり、兄さんが言いたかったのは、創世神の力での干渉は出来ないってことさ。だから、それ以外の方法ではこの世界に干渉出来るんだ」

「?? 創世神としては干渉出来ないのに、それ以外では出来る? 何で、そんなよく分からないような仕組みに?」

 

 俺がそう言うとハイセトアはちらりとアムレイヤを見て言った。

 

「それを説明するには、創世神という存在の生態を説明する必要が――」

「生態?」

「ひっ。生き方について説明する必要があるんだ!」

 

 ハイセトアの言い回しが気に食わなかったのか、目を細めて呟いたアムレイヤに完全に怯えながら、ハイセトアは言葉を言い直してそう言った。

 

「創世神という存在は、世界を作り出した後、その管理を別の者に託す。そうして他者の手で運営された世界に、自らの分体を作成して送り込み、そこで一個人として生きて人生を楽しみ、そうした分体の記憶を自らにフィードバックして、様々な世界を生きるという経験を楽しむ……という生き方をしているんだ」

「つまり、自分好みの世界を作って、そこでの冒険を楽しむ為に、創世神は自ら世界を作って、そしてそこに分体を送り込んでいるってことですか」

「そうだね。そして、自分好みの世界を作って後から分体を送り込む以上、その世界が想定した世界から外れたり、滅ぼされたりしてしまったら困るだろう? だからこそ、僕らのような世界神は創世神によって生み出され、創世神の望む世界になるようにと、運用と保守を任されるわけだね」

 

 創世神の生き方というのは、自分でゲームクリエイター役も担当しているという違いはあれど、様々な世界観のゲームをプレイして楽しむ、ゲームプレイヤーと同じようなものということだ。

 

「この世界も含めて、全ての世界は、そのように世界を楽しみたい創世神達によって、次々と生み出されていったものなんだ」

「……ちょっと待ってください。創世神達? 創世神は一人じゃないんですか?」

 

 俺はハイセトアの言葉に思わず突っ込んだ。

 無から有を生み出せるような超常存在が何人もいるのかと。

 

「この世界を作った創世神は一人だけど、創世神という存在自体は、複数体存在しているらしい。もっとも、この世界に紐付いていて、異世界を観測することが出来ない、僕ら世界神では、他の創世神の存在を知ることは出来ないけどね」

「創世神が複数体存在――いや、そ、それよりも異世界を観測することが出来ないって……?」

 

 俺は創世神のような者が複数体存在することが確定したことにも驚くが、それ以上に世界神が異世界を観測することが出来ないということに驚き、思わずそう言う。

 

「ん? そのままの意味だよ? 僕達世界神はこの世界を管理していたり、この世界の概念を司るなど、この世界に紐付いた存在だからね。この世界に強く紐付いているからこそ、他の世界を観測したり、干渉することは不可能なんだ」

「俺達はあくまでこの世界の管理人だからな。そんな存在が、管理する世界があるのに、そこから目を離して余所に行くというのもおかしなことだろう」

 

 ハイセトアの言葉にウライトスが補足をする。

 だが、俺はその話を聞きながらも頭の中で考える。

 

 世界神が異世界に干渉出来ないってことは、もし、俺が人為的にこの世界に転生させられたのだとしたら、その犯人は創世神しかいないってことなのか――!

 

「異世界に干渉することが出来るのは、自由に世界を観測し、そこに分体を送り込むことが出来る創造神。それと、元から紐付く世界が無い状態で作られたか、紐付いていた世界が滅びて、紐付く先の世界が無くなった世界神だけ」

 

 ヴェルーナのその言葉にサクリーナが補足する。

 

「自然神は世界に紐付いていないけど、自然神の権能の範囲だと、他の世界に干渉出来るだけの力が無いんだよね~」

「まあ、この世界に生きる者に取ってはあまり関係ない話だね。先程話したように干渉出来る者が限られているから、異世界の存在がこの世界に影響を与えるなんてことは殆ど起こりえない出来事だし。何よりも異世界の聖剣のようにこの世界に元から埋め込まれたものならともかく、後からこの世界に入り込もうとする存在は、この世界に紐付く世界神なら、入ってきたことを感知出来るからね」

 

 そこまで話した所で、ハイセトアがメガネをくいっとする。

 

「そんなことよりも、話を戻そう。創世神が複数体存在すること、それが創世神がこの世界に干渉出来ないという事情に繋がることなんだ」

 

 ハイセトアがそう言った所で、俺はその理由に思い当たり、思わず言った。

 

「創世神は何でも出来る存在――もしかして、他の創世神に勝手に世界を改良されたくなくて、干渉出来ないような仕組みにしているってことですか?」

 

 世界ではなく、ゲームで考えるとわかりやすい。

 

 創世神Aが現代物の戦記ゲームをやろうとして、魔力のない世界を作って準備していたら、唐突にやってきた創世神Bが、俺はファンタジー要素の無い世界は嫌いだからと、勝手に魔力ありの世界に改変したら、創世神Aとしてはファンタジー要素なんかいらなかったのにとぶち切れることだろう。

 創世神は無から有を生み出せる存在、つまりどんなことでもできるチートコード持ちだからこそ、ゲームを滅茶苦茶にされないために、創世神という存在を垢バンして、干渉出来ないようにする――つまり、これはそう言うことなのだ。

 

 俺のその考えを、ハイセトアが肯定する。

 

「理解が早いね。その通り、創世神は自分が作った世界を、他の創世神に無茶苦茶にされることを嫌う。だから、作り出した世界に他の創世神が干渉出来ないように、自ら制限を作っているわけなんだ」

「でも、それなら、自分だけが干渉出来るように鍵を掛ければいいのでは? わざわざ自分まで干渉出来なくする必要はないと思いますけど……」

 

 俺のその言葉にハイセトアは頭を振った。

 

「それは出来ないよ。鍵というのは凹凸の有無や、或いはその人物にしかない情報で、対象が鍵を開けるべき個人だと識別するものだろう?」

「それはそうですね」

「そのように、何かが無いということや何かが有ると言うことを利用したセキュリティは、創世神には無いに等しいんだ。だって、彼らはどんなものでも生み出すことが出来ると言うわけだからね。仮にこの世界にアクセス出来るのを、僕達の母上だけに限定したとしても、他の創世神は母上に成ることでそれを突破出来る」

 

 何でも作られるから鍵という概念が機能しないってことか。

 実際に現代でも、量子コンピュータが作られれば、現在の暗号化形式は全て解析されて、鍵なんてものが無いものと同じになると言われている。

 それと同じように技術が飽和すれば、個人識別なんてものは意味をなさなくて、誰でもアクセスすることが出来る状態になるということか。

 

 基本的に鍵というのは技術の発展とともに打ち破られてしまうものだ。

 本来なら、それに対応して更なる技術で破られない為の鍵を作り出すのだろうが、何でも生み出せるという全ての技術の最終到達点とも言える創世神には、更なる技術というものは存在せず、新たなる鍵を生み出すことが出来なかったと言うわけだ。

 

「だからこそ、創世神達は世界を作り終わった後は、自分も含めた創世神がその世界にアクセス出来ないようにフィルタリングを掛けるわけさ。そうすることによって、他の創世神による世界の干渉を防ぐわけ」

 

 現代的な考え方をすれば、ネットに繋がっていると何かしらの脆弱性を突かれて、不正アクセスされてしまうから、外部と切り離された完全なローカル環境を作り出して、そのローカル環境に創世神を名乗る者は近づけないようにする感じか。

 確かに、その方法なら鍵をコピーされて不正アクセスされる可能性はないし、物理的に創世神を排除しているから干渉されるリスクはゼロだ。

 

 だが――。

 

「それなら、創世神が別の存在に――世界神になれば、その世界へと干渉することが出来るようになるんじゃないですか?」

「確かにそうだね。だけど、創世神が世界神になってしまったら、それはもうただの世界神なんだよ。だから、創世神に世界を荒らされると言う事はないんだ」

「世界に干渉した後に、世界神から創世神に戻る方法は?」

「存在しないよ。創世神は完全に生まれながらのものだ。世界神から成り上がると言うことは出来ない。そして創世神は何でも生み出せるが、世界神はそんなことは出来ないから、世界神になった段階で戻ることは出来なくなる」

 

 創世神は世界神になることが出来るが、その段階で創世神としての能力を失うから、そのまま世界神として生きていくしかなくなると言うことか。

 確かに、そうであるのなら、わざわざ自分を世界神にしてまで、世界に干渉しようとする奴は、殆どいなくなるだろう。

 

「そして、ただの世界神ならば、この世界の世界神である俺達が、その相手を退治することが出来る……数多の世界はこうやって不正干渉を防いでるのだ」

 

 ウライトスが補足するようにそう語った。

 そして、ハイセトアはそれに頷くと、続きを話す。

 

「これが母上がこの世界を作った後に、この世界に干渉出来ない理由だよ」

「そして、だからこそ、この世界が私達の手に負えない危機に見舞われた時のために、お母様は事前に様々な道具をこの世界に残してくれているのです」

「なるほど……」

 

 俺はその説明を聞いて、思わずそう呟く。

 そして、そんな俺の様子を見て、ヴェルーナが言う。

 

「それらの聖遺物は簡単には手に入らない。それは悪用されることを防ぐ為」

「この世界に準備として残されている以上、この世界の誰かがそれを利用できるってことだからね~。世界の危機でもないのに、それを手に取って私利私欲のために使い始めたら、それはまた別の世界の危機になってしまうし~」

 

 サクリーナのその言葉に続くようにしてアムレイヤが言った。

 

「だからこそ、お母様は聖遺物を万能の願望器として作らずに、いずれ起こる世界の危機に合わせた機能のものとして作り、それを各地に安置して試練を用意することで、世界の危機が起こった時にそれを手にする予定の者だけが、その聖遺物を手にして世界の危機に立ち向かえるようにしているのです」

 

 俺はアムレイヤの話を聞いて、その話のおかしな部分に気付く。

 

「ちょっと待ってください。それっておかしくないですか? それぞれの危機に合わせた聖遺物って、どうやってその危機を予見したっていうんですか?」

 

 それに世界の危機が起こった時にそれを手にする予定の者とも言っている。

 単純に言い回しの問題で、聖遺物を扱うのに相応しい人物が取れるようになっているというだけかも知れないが、そのままの意味で捉えると初めから誰が手にするのかまでが決まっているように聞こえてくる。

 

「ああ、それは――」

「確かこっちに転移してたわよね?」

「ええ、そのはずだと思います!」

「何かあったのでしょうか?」

「さすがに遅すぎるよね?」

 

 アムレイヤが俺の疑問に答えようとした時、来幸達の声が聞こえてきた。

 どうやら、俺が神々と話し込んでなかなか戻らないから、心配になって俺がいる場所を探しに来たようだ。

 

「……このタイミングでですか」

 

 アムレイヤは何かを考えるようにそう呟くと、笑顔を見せて言う。

 

「少し、話しすぎてしまいましたね。私達はこれで失礼しましょう」

「は? ちょっと待って! まだ話の途中ですよね!?」

 

 なに、思わせぶりな言葉を言ったタイミングで帰ろうとしているの!?

 そう言うのは物語の中だけでいいんだよ! あとちょっとで全部話せそうなんだから、ちゃんと全部言い切ってから帰れや!

 

 俺のそんな思いも虚しく、アムレイヤ達は俺の言葉を無視すると、次々と転移で撤収していく。

 そして最後に残ったアムレイヤは、俺に向かって振り向くと「最後に」と言ってから、俺に対して言った。

 

「思うがまま行動してください。それがきっと、この世界に取っての正解です」

「おい! どう言うこと――! クソ!」

 

 俺は転移で消え去ったアムレイヤに対して思わず悪態をつく。

 そうしていると、俺の居場所を見つけた来幸達が、岩場を乗り越えて、俺の元へとやってきた。

 

「もう、ボールを見つけているじゃない。こんな所で何しているのよ」

「それは――。……いや、何でもない」

 

 エルザに問われた俺は、先程までのことを話すのを止めた。

 神々に絡まられていたなんて話が何処かに漏れたら、また銀神教の連中が騒ぎ出したり、騒動に発展しかねない。

 

 それに俺は今日はバカンスに来たのだ。

 神々のことなんて素直に忘れたい。

 

「ともかく、戻るとするか」

「ええ。そうですね」

 

 俺の言葉に来幸がそう言う。

 全員でコートに戻ろうとした所で――。

 

「あれ? あれ、何かな?」

 

 レシリアが何かに気付いて、その方向を指差した。

 その方向へと目を向けると、何かが上流の川から流れてきていた。

 

「あれは……卵……か……?」

 

 それはかなりの大きさを持った爬虫類の卵のようなものだった。

 




 今回の話で一通りの神関係の説明は完了です。
 この辺の話は、終章での出来事と、フレイが何故悪役転生することになったのか、という理由部分に関わります。

 悪役転生することになった理由と言えば、他の作品だと悪役である必要性とかは、どう言う理由が多いんでしょうかね。
 転生自体の理由付けは結構あっても、それが悪役である理由とかはあんまり見ない気もしています。

 この作品では、一応そう言う理由で悪役だったのかと、悪役である必要性に関する納得出来る理由を用意しているつもりではいます。
 その辺に関しては終章で話すことになりますが、現段階でも凄い人ならフレイの転生理由を当てることが出来るかも知れません。
  ※情報が一部足りないのでほぼほぼ不可能だと思いますが……。

 ざっくりとヒントだけ出すと、悪役転生の理由は、フレイとヒロイン達に取って、とてつもなく惨いものになっています。
 
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