エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます 作:グルグル30
「フレイ様、何故、その卵を持ち帰ってきたのですか?」
俺が卵をシートの上に置いたのを見て、来幸がそう聞いてくる。
「あのまま放置はさすがに出来ないだろう。この卵、どう見ても竜とかの卵だぞ? これが魔物であるワイバーンの卵とかならいいが、もし高位の竜の卵だったりしたら、下手に放置すると街の一つや二つが滅ぶかも知れない」
あのまま卵を放置していたら、他の誰かがこの卵を見つけて、単純に食料として食べてしまったり、何処かに卵が売り払われることになってしまったかも知れない。
そうなった時、この卵を探しに来た竜が、卵が失われたことに怒り狂い、その原因である人間に復讐をするために周囲の街を襲う可能性がある。
そして、竜種というのは人間と比べて強力な存在で、単独であろうとも、簡単に街の一つや二つは滅ぼせる存在だ。
それらの事情を考えれば、災いの芽を摘むために、この卵を保護しないという選択肢は無かった。
「でも、フレイなら竜くらい簡単に倒せるんじゃない?」
「そうだな。確かに倒せないことはないと思う。だけど、ただ暴れているだけならともかく、復讐の為に怒り狂う竜を殺すのは気分が悪いからな」
悪人を殺すのにためらいはないが、同情してしまうような理由がある相手を殺すのは、気分が悪くなるので避けたいのが正直な本音だ。
だからこそ、他に取れる手があるのなら、取るべきだろうと俺は思う。
「理由はわかりましたが……。持ち帰って如何するんですか?」
「今頃、卵が無くなったことに気付いた竜が慌ててこの卵を探しているだろう。それを見つけて、この卵を返してやるのさ」
「でも、師匠。どうやってその竜を見つけるんですか?」
「俺にはこれがある」
そう言って俺は耳飾りを見せた。
それを見て、ユーナは「あっ」と声を上げる。
「鷹の目のイヤリング!」
「そう言うこと。取り敢えず、これで周囲を探ってみるさ」
俺はそう言うと三人称視点で周囲を探ってみる。
空を中心に竜の姿がないかを探すが――。
「……いないな。さすがに竜の巨体なら目に入るはずだと思うんだが……」
「卵が無くなったことに気付いていないのかな?」
俺の言葉を聞いたレシリアがそう言う。
だが、俺はレシリアのその考えに首を振った。
「あの卵は山の方から流れてきた。何処から流れてきたかは知らんが、それなりに時間が経っていると考えられるし、気が付かないってことはないと思う」
「なら、人に化けているとか?」
「そう言えば、高位の竜は人化することが出来るんだっけ。人に化けた竜が人間と夫婦になる話とか、昔話で結構あるわよね」
レシリアとエルザの話を受けて、俺は少し考えると言った。
「確かにその可能性もあるか……何かを探してそうな人物も対象にするか……」
俺は再び鷹の目のイヤリングで周囲を見るが、それらしい人物は見当たらない。
「駄目だな。この海水浴場の周囲にはそれらしい人物はいない」
「既にこの海水浴場の中に入っているのでしょうか」
「それは人物が多すぎて探しにくいんだけどな……ここまで来たら、一応一通り海水浴場の客も見ていくしかないか」
「あんまり、女の子をジロジロ見るんじゃないわよ?」
「わかってるって!」
下手に海水浴場の客を見たら、そんな風に思われるから、海水浴場の客を見るのを後回しにしてたんだよ。
俺はそんな不満を思いながら、周囲を見ていく。
「ん? 後ろ姿しか見えないが……エルフに絡まれている少女がいるな」
「人化した竜っぽい?」
「いや、そうは見えないが……どちらにしろ放っておけないだろ」
見た感じ少女の方はエルフを拒絶しているが、エルフの方の押しが強くて、なかなかエルフ達を振り切れていないようだった。
このまま押し切られてしまってお持ち帰りされてしまえば、あの少女に待っているのはエルフによる快楽付けのコースだろう。
エルフの霊薬を使われるのもやばいが、エルフの里で快楽を追求して日夜乱交しているような奴らなので、単純な行為のテクニックも凄く、それによって落とされてしまう可能性もあるのだ。
本当にこの世界のエルフは、エロゲーやエロ小説、エロ漫画の竿役みたいな存在だなと、心の底から思わず思う。
そして、だからこそ、さすがにあの状態を見捨ててはおけない。
それにあのイケメンエルフ相手に断りを入れられる人物なら、もしかしたら俺のヒロイン候補になり得る人物かも知れないし。
「そんなわけでちょっと言ってくる」
俺は来幸達に断りを入れると、転移でその少女の元に飛んだ。
☆☆☆
「お嬢さん。俺達と遊びに行こうよ~。いい思い出を作ってあげるからさ~」
「そうそう。マジ、俺らと一緒に来れば、めっちゃ楽しい思いできるって」
「申し訳ありません。先程から言っておりますが、わたくしは友達と海に来ているので、貴方達と一緒に行くことは出来ませんわ」
絡んで来るエルフに対して少女はきっぱりとそう答える。
だが、相手はエルフ、下半身で生きているような存在のため、その程度の拒絶で堪えることはなく、更に追い立てるように会話を続ける。
「全然、友達と一緒でも俺らは構わないからさ~」
「そうそう、大勢で楽しむのが海の鉄則でしょ。マジ、俺達、複数人相手にするの慣れてるからさ、何も心配せずに俺達に全部任せてくれればいいよ」
「そ、その……ですから……」
何を言っても話が通じない相手に、少女が思わず口籠もる。
それを好機とみたのか、エルフの男は耳に手を当てて、聞こえないということを周囲に見せるようにしながら言った。
「ん? よく聞こえなかったけど……今、俺達と一緒に行きたいって言った?」
「あ、お前もそう聞こえた? 俺もそう聞こえたぜ! なんだ、お嬢さんも俺達と一緒に行きたかったんじゃん」
「え!? そんなことは……!」
一人のエルフが声が聞き取れなかった振りをして、無理矢理少女の言葉を作り出すと、直ぐさまもう一人のエルフがそれに同意して、勝手に少女が自分達と一緒に行きたいんだということにしてしまう。
それに思わず少女は反論するが、エルフ達はそれを無視した。
「マジ!? じゃあ、早速行こうかお嬢さん!」
「もう一人の友達が来る前に、先に楽しんじゃおーぜ!」
「や、やめて……!」
エルフに掴まれた少女はその手を払おうとするが、強く掴まれているため、その手を振り払うことが出来ない。
そして、そのまま強引に連れて行かれそうになるところで、俺はそのエルフの手を掴んで少女との間に割り込んだ。
「ちょっと待った。彼女は嫌がっているだろうが」
「ああん。お兄さん。いきなりなに?」
「俺達、今この子ナンパしてるの? 見て、わかんないかな~?」
煽るようにエルフがそう言ってくるが、俺はそれを無視して、少女を掴むエルフの手をはたき落とす。
「てめぇ! 何しやがる!」
「いてーじゃねーか! 何だよ、お前は!」
「俺はこの子の――っ!?」
オラついてくるエルフの声を聞き、少女へと振り返りながら喋っていた俺は、その少女の顔を見て、思わず言葉に詰まる。
「――友達だ。だからお前らに連れて行かれそうになるのを見過ごせない」
だが、直ぐにその感情を押し殺し、軌道修正して何とかエルフへと言い返す。
しかし、内心は焦りで頭がいっぱいだった、
な、な、なんでこんな所に! 攻略対象の一人で! エデルガンド帝国の第一皇女でもある! ルイーゼ・フォン・エデルガンドがいるんだよ~!!
そんな俺の態度が表に出ていたのか、友達と言った俺の様子を不審な目で見ながら、考えるようにしてエルフは言う。
「友達~? お嬢さんと恋人ってわけではないんだよな~」
「ああ、そうだが?」
「じゃあさ、お兄さんも一緒にヤルってのはどう?」
「……はあ? 何を言っているんだ?」
俺はエルフが何を言っているか理解出来ずに思わずそう言う。
そんな俺の様子を逆に理解出来ないようにエルフが言った。
「何って? ナニだよ。皆でお嬢さんを回して楽しもうぜ!」
「考えて見たら、4Pなんて里を出てからご無沙汰だし、ここいらで人族相手にやるってのも、面白いかもしれないな~」
「お兄さんだって、きっと楽しめると思うぜ~。なんだったら、俺らが色々と教えてやるからさ~。女の弱いところとか、如何すれば女が喜ぶかとかさ。そうすれば、お兄さんがこのお嬢さんを、彼女にすることが出来るかもよ~?」
俺はそんなエルフの言葉を聞いて思わず頭を押さえた。
「本当にエルフってのは……何処までも……」
「で、どうなんだよ。お兄さん」
「やるわけないだろう!」
俺がそう言うとエルフは白けたような表情を見せた。
「あ~。マジ萎えるわ~。萎えぽよ~」
「ノリ悪すぎ。空気読めって言うんだよ~」
た、耐えろ……俺。
海水浴場で殺人事件を起こすわけには……。
俺は怒りで打ち震えながらもそう考えて自分を抑える。
転移で何処かへと連れて行くのもありかも知れないが、エルフは長生きしているだけあって、武術や魔術に長けているものも多い。
水着姿であからさまに魔道具らしき腕輪を付けた俺が、エルフ達を掴みにかかったら、警戒されて何らかの反撃を加えられてしまう可能性は高かった。
そもそも、魔法が使えない俺では、転移先で敵から身を守るすべがない。
王都のチンピラは大した魔法適性もなさそうだったから、幾らでも転移で飛ばして排除できたが、魔法に長けた相手は、レディシアの時も、魔王や四天王の時も、基本的に無力化を行ってから転移を行っていた。
それと同じ事を、ここで騒動を起こさずにする自信が俺には無かった。
「ねぇ、お嬢さん。こんなノリの悪い男捨てて、俺達と行こうぜ」
「ほら、この男より、俺達の方が断然イケメンよ? それに身体能力だって、魔法適性だって、俺達エルフの方が断然上だし。人間社会では、俺達みたいなのを優良物件って言うんだろ?」
微妙に真実を言っているからたちが悪い。
人間とエルフでは、どう足掻いても種族的に、イケメン度も、身体能力や魔法適性と言った能力も、完全にエルフの方が上を言っている。
此奴らの欠点はただ頭がおかしいと言う事だけだ。
それさえ許容出来れば、確かに此奴らは優良物件なのだろう。
もっとも――。
俺はちらりとルイーゼの方を見ると、ルイーゼは怯えたように俺の影に隠れるようにして、エルフの男達から隠れていた。
自分のことを4Pで回そう何て言っていた相手なんて、どれだけ優良物件であろうとも、お断りというのが当然の帰結だろう。
「はあ……。付き合いきれないな」
俺はそれだけ言うと、少女の手を取り、自分達のシートが置かれている場所の近くへと共に転移した。