エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます 作:グルグル30
「う……あ……。こ、ここは……」
「フレイ様! 目を覚ましましたか!」
俺はそう言った来幸の手を借りて体を起こした。
朦朧とする意識を何とかつなぎ止め、状況を把握しようとする。
「俺は確か……蹴り飛ばされて……」
「そうです! 師匠はあの女に蹴り飛ばされて死にかけたんです!」
「傷はレシィがしっかりと治療したよ!」
ユーナとレシリアが俺にそう状況を説明してくれる。
既に折れたあばらはレシリアの治癒魔法によって治療されているようだった。
「アンタ達、何なの!? フレイを殺すレベルで蹴るとか!?」
「そ、それは――! その男が姫様を押し倒して胸を揉んでいたから――!」
「シルフィー、わたくしはあの方に押し倒されてなどおりません。あれは事故だったんですわ。わたくしが転んだら、いつの間にかあの体勢になっていたのです」
最後にエルザはと言うと、正座したルイーゼと……攻略対象の一人であるエルフの少女のシルフィー相手に、何やら口論しているようだった。
「姫様が先に転んで、あの体勢になるわけないのです!」
「そ、それは……わたくしにもよく分からなくて……」
「アンタいい加減に――って、フレイ!? 目を覚ましたのね!」
俺が起き上がったのを見てエルザが嬉しそうにそう言う。
その一方でルイーゼは深々と頭を下げた。
「この度は、わたくしのせいで大変な怪我を負わせてしまい、申し訳ありません」
「いえ、わざとではないなら、仕方のないことですよ」
正直言って死にかけた理不尽制裁に思うところが無いわけではないが、ルイーゼ達が意図して起こしたものと言うわけでもないし、そのことでルイーゼ達を糾弾するのは違うだろう。
「わたくしも、どうしてああなったのかわからないのです。まるで体の自由が利かず、気付けばあの状態になっていました」
「俺もそうですよ。転移の能力も発動出来ない状況に追い込まれました」
お互いにあの状況になった理由を話し合う。
俺が体の自由が利かなかったのと同じように、ルイーゼの方もあの流れを回避出来ないように、体の自由が利かない状況にあったようだ。
「こんなこと、一度もありませんでしたのに……」
そう言って落ち込むルイーゼ。
原因もわからず、あのような破廉恥な状況に陥ったのだから、彼女としては深刻な悩みということだろう。
俺はそれに対して、その原因に対する回答を用意する。
「恐らく、何らかのユニークジョブの影響では無いでしょうか?」
「ユニークジョブですか?」
ルイーゼの問い返しに俺は頷いた。
「ユニークジョブの中には行動に影響を与えるものがあると聞きます。例えば野蛮人と言われていた人物は、都会的なおしゃれな服を着ようとしても、着た瞬間に敗れてしまって着ることが出来ないとか」
「あ~。確かにそんなうわさ話は聞いたことあるわね……」
この世界では、自分のジョブを把握することは出来ないが、これまでの慣例や神から教えて貰ったジョブの種類から、野蛮人のようなユニークジョブがあり、それによる弊害があることも実体験として把握している。
だからこそ、俺の話にエルザは得心がいったという表情を作った。
「いきなり事象が発生するようになったのは、エルフのナンパにより、そのユニークジョブのジョブレベルが上がってしまい、何かしらの常時発動型スキルに目覚めてしまった……と考えれば辻褄が合います」
実際にはルイーゼにそのようなジョブは存在していない。
インフィニット・ワンのゲーム上では、皇女と言うユニークジョブに就いていたものの、それはこれまでも存在していたごく普通のジョブであり、今回のような事象を起こすような代物では無いのだ。
だから、俺が語った内容は真っ赤な嘘ということになる。
まあ、それも仕方の無いことだ。
馬鹿正直に貴方はラッキースケベキャラでキャラ付けされているから、男に対して物理法則を無視して破廉恥イベント繰り返すんですよ、と言っても、この世界の人からして見ればその内容を理解することは難しいだろう。
そもそも、これからあまり関わり合いになるつもりも無いんだし、適当な理由をでっち上げて、さっさと去って貰った方が都合がいい。
故に、俺はこんな嘘を唐突に話し始めたのだ。
「そんな……」
俺の説明を聞いたルイーゼが絶望したようにそう言う。
まあ、無理もないか、蝶よ花よと育てられた淑女のルイーゼからして見れば、ジョブによって男性に対して破廉恥行動を繰り返すようになってしまったなんて、とてもじゃないが簡単に受け入れられることじゃないだろうからな。
「ともあれ、今後はみだりに男に近づかない方が良いかも知れませんね」
転生者ではあるものの、主人公では無い俺でも事象が発生したのだ。
場合によっては、そこら辺の山賊とか、男なら誰でも発生する可能性がある。
それを考えれば、ルイーゼは今後、男に近づかないのが無難だろう。
「はい。そうですね……」
悲しそうにルイーゼがそう言う。
それを見てシルフィーが彼女の為にと憤るようにして叫ぶ。
「待つのです! 姫様がそんな能力に目覚めているとは限りません! その男が自分の罪を逃れる為にでっち上げた嘘の可能性もあります!」
そう言ったシルフィーは、思わず立ちあがろうとして――。
「はわぁっ!?」
正座によって足が痺れていた為に、立ちあがるの失敗して転びそうになる。
「危ない! ああっ!」
「姫様!? おさ……はうっ!」
それを見たルイーゼは咄嗟にシルフィーを助けようとするが、自分も足が痺れていた為に、転び初めてしまう。
何とか持ち直していたシルフィーは、後ろからぶつかってきたルイーゼに押し出される形となってしまい、そのまま倒れ込んでしまう。
そしてその先にいるのは――この俺だ。
「おいおいおい!?」
思わずそんなことを叫びながら逃げようとするが間に合わない。
周囲の来幸達も金縛りに遭ったかのように動くことが出来ない状況だった。
誰も止めることが出来ないその状況で、ラッキースケベの強制力に従うように、ルイーゼとシルフィーは俺へとぶつかり、俺の顔はルイーゼの大きなおっぱいによって挟まれて、何も見えない状況になってしまう。
俺はその状況を変えようと腕を動かすが……。
「んっ!? だめ……そこは……」
「あっ!? ど、どこ触っているのです!!」
「いや、知らねーよ!? お前らのせいで何も見えねーんだよ!」
二人にのしかかられた形になっている俺の腕は、相当危険な所にあるらしい。
だが、目の前がおっぱいで完全に塞がれた俺には何が何だかわからない。
「お、お前は! 拙のお、おまたを! 触っているのです!! って!? 拙に何を言わせるのです~!!」
シルフィーは恥ずかしそうにしながらそう叫ぶ。
そしてぶち切れながら、俺に対して言った。
「この変態! 変態! 変態!!」
まさかの変態連打による罵倒。
だが、俺も言い返したいことがある。
「お前らこそ、俺の何処を触ってるんだよ!?」
「何を……」
「人の股を触ってるのはそっちも同じだろうが!」
俺がそう言うのと同時にルイーゼが後ろを見るために体を反らした。
そこでようやく視界が晴れた為、俺もその場所へと目を向ける。
目を向けた先では――何故か俺の海パンの中に手が突っ込まれている、シルフィーの左手の姿があった。
「うわ~!!!!!?」
「ぴゃ~!!!!!?」
……押しつぶされているという感覚だけがあったので、水着の上から触られているのかと思っていたら、まさかの直に触れた状況だった。
その事に気付いた俺とシルフィーは同時に絶叫を上げたのだ。
方や俺だけのヒロインを見つけるまで清い体でいたいために、むやみにそう言った部分に触れられたくなかった俺と、方や陰キャエルフであり、運命の相手を見つけるまで男性のそう言ったところに触れたくなかったシルフィーは、お互いに発狂したように取り乱す。
大急ぎで手を抜き取ったシルフィーは、涙目になりながら言う。
「おと、男のものを触ってしまったのです……。拙は汚れてしまったのです……」
「汚されたのはこちらも同じだよ……」
落ち込む俺とシルフィーを見て、困った顔をしたルイーゼは、俺達を励ますかのように言う。
「ま、まあ、事故ですから。少し触ってしまったくらいで――」
「「少しなんかじゃない! 俺(拙)には大切なことなんだ(のです)!!」」
俺とシルフィーが同時に叫んだことで、俺達は互いを見合った。
そして、しらっとした目で俺のことをシルフィーが見る。
「これだけ女を侍らせておいて、そんなことを言うのです?」
「ふざけるな。俺と彼女達はそんな関係じゃない!」
「じゃあ、何だって言うのです!」
「妹に、メイドに、友人に、弟子だ! 俺は彼女達に対して、これぽっちも恋愛感情は抱いていない!」
俺がそう言い放った瞬間に、何故か周囲が凍り付いたような空気となる。
ふと、来幸達を見ると、彼女達は何も言わずに笑顔を見せていた。
「「「「……」」」」
「ぴぃっ!」
その様子にガクガクとシルフィーが怯えた表情を作る。
俺もぶっちゃけ怖くて仕方ないが、元より言っている事なので、恐怖を乗り越えてシルフィーに向かって言う。
「俺は運命の相手を――俺だけのヒロインを求めているんだ!」
「運命の相手……?」
俺の言葉にシルフィーが興味を引かれたように呟く。
「そうだ! 裏切りも、偽りもなく、何時までも、本心から互いに愛し合うことが出来るヒロイン! 俺は! そんな相手と! 物語のようなボーイミーツガールの青春の日々を送りたい!!」
「――っ!」
俺の偽らざる本心からくる叫びにシルフィーが気圧される。
「だからこそ、俺は何処にいるかもわからないその相手を探しているんだ! そしてその相手への義理のために、何時か出会うその時まで清い体で居るため、他の女の子に手を出すなんて言う不埒な真似は絶対にしない!!」
俺のその宣言を聞いたシルフィーは俯いて押し黙る。
そして少し経った後、思わずと言った形で呟いた。
「わかる……」
シルフィーはそれだけ言うと、ガバッと俺の方に向かって言った。
「わかるのです! やはり、人は大切なたった一人の相手と! 幸せに添い遂げるべきなのです!!」
「わかるか! 俺もそう思う!!」
仲間が見つかったことでキャッキャする俺とシルフィー。
俺達のこの思想は、世間一般ではバカにされがちなものだ。
ロマンチストとか、夢見がちとか、叶わない夢を追い求めているとバカにされ、現実を見ろよ、そんなんだから童貞のままなんだよと嘲笑われる。
夢を追うってことは崇高でいいことのはずなのに、そんなこともせずに妥協して楽な方に逃げた、世の中に大勢いる脱落者達に道連れにされそうになるのだ。
だからこそ、同じ考えを持つ仲間がいたことが嬉しい。
今も諦めずに夢を追い続けている仲間がいることが心強い。
――俺は一人じゃないんだと、そう実感することが出来る。
「これは?」
気付けば俺は、俺の上から降りたシルフィーに向かって手を差し出していた。
「俺はフレイだ」
その言葉で手の意味を察したシルフィーは同じように手を差し出す。
「拙はシルフィーなのです!」
互いに名前を語り合った俺達は、握手でがっちりと手を握り合った。
「「同士!」」
お互いに目標に向かって頑張ろう。
その激励も込めた同士認定。
どうせそんな相手なんか見つからないと、恋愛弱者として虐げられた俺達は、今ここに反逆を起こす同士として、固い絆で結ばれたのだ!
そしてそれを見て、俺は思わず思う。
クソ、シルフィーが攻略対象じゃ無ければな……。
相性ぴったりのシルフィーを見ながら、俺はインフィニット・ワンでのシルフィールートを思い出した。
☆☆☆
エルフガーデンは幾つもの里が集まって出来た国だ。
各里の運営は里長に一任されており、その里長達がハイエルフの王族の元で、合議によって国の運営などを決めると行った形態を取っている。
シルフィーはそんな里長の一人の子供であり……同時にその里長によって、多大な迷惑を受けたため、エルフという存在を嫌って里を出た陰キャエルフだ。
彼女がどれだけ母親に迷惑を掛けられたかは、彼女の名前だけを見ても、その状況を伺いしることが出来る。
愛称はシルフィー、本名はシルフィード。
風の大精霊と同じ名前を付けているが、これはエルフが精霊に近い存在だからとか、何かしらの壮大な意味があって――とか言うことではない。
この名前は単純にお話で語られるような凄い名前を、面白そうだから子供に付けたというだけだった。単純に言ってしまえばキラキラネームである。
転生前の世界で置き換えるなら、
その為、本人は死ぬほどこの本名を嫌がっており、まともな名前である愛称のシルフィーを本当の名前であるとして、周囲には押し通している。
そんなこんなで快楽主義の里を嫌っていたシルフィーは、昔の厳格なエルフ達に憧れを持ち、真面目で不埒な真似は許さない性格に育っていった。
そんな彼女は当然のように乱交パーティーに参加するわけもなく、里長の娘という高貴な身分にありながらも、それを全て捨てて幼い頃に旅に出たのだ。
全ては何処かにいると信じている自分の運命の相手と知り合うため、他のエルフ達とは違い、快楽の為に男を取っかえ引っかえするのではなく、本心から一生愛し合い続ける事が出来る相手と添い遂げるという、他種族の物語で憧れた恋愛を手に入れるため、彼女は傭兵として日銭を稼ぎながら世界を回る。
そんな中で、とある傭兵の仕事を行った時に、シルフィーは同じ仕事を受けていたアレクと知り合うことになるのだ。
傭兵をする中でエルフへの風評から来る被害を受けていたシルフィーは、運命の相手探しをしながらも、人との関わり合いを避けると言った状況に陥っていた。
自分でも、人を探しながら、人との関わりを断つと言う、矛盾した状態になっていると気付いたシルフィーは、もしかしたら運命の相手を探し出すなんて無理なのかも知れないと、心を弱らせてしまう。
そんな中でエルフの風評を気にせず、普通の人と同じように話してくれるアレクは、シルフィーが普通に関わり合うことが出来る数少ない人物の一人であり、気兼ねない付き合いをしていく内に、徐々に弱っていた心が癒やされていくのだ。
そうして傭兵仲間として仕事を共にする中で、アレクへの安心感は次第に恋心へと発展していき、シルフィーはアレクを運命の相手ではないかと感じ始める。
しかし、そんなシルフィーの邪魔をするかのように、エルフ遊びに飽きた帝国のとある悪徳領主が、堅物なエルフという存在であるシルフィーのことを噂で知り、そんな堅物エルフを、自分が遊んで来たエルフのように、快楽に墜ちきった存在にしてやろうと、愉悦を感じながら様々な手勢を派遣してくるのだ。
悪徳領主の手先は手強く、更に自分の母親も含めたエルフ達もが、その悪役領主と手を組んで襲ってきたため、貞操は何とか守り切ったものの、様々な辱めを受けることになってしまったシルフィー。
そんなシルフィーは、自分は汚されてしまったと、こんなに汚されてしまった自分が運命の相手を見つけるなんて言うのはおこがましいと、ここまで必死に努力して夢を追いかけてきたのは無駄だったんだと、全てを諦めて絶望してしまう。
このまま墜ちきってしまうか、或いはその前に命を断つか、と言った状況のシルフィーを見て、アレクは胸に秘めた思いを打ち明ける。
「シルフィーがやってきたことは無駄なんかじゃない! そもそも、そんなことでシルフィーを諦める奴なんて、元からシルフィーの運命の相手じゃないんだ! 本当にシルフィーを大切に思うなら、どれだけシルフィーが汚されたとしても、きっとそれを受け入れて愛し続けることが出来る!」
「出来もしない同情の言葉はいらないのです! そんな夢みたいな相手が何処にいると言うのですか!!」
アレクの言葉に絶望したシルフィーはそう反論する。
だが、その反論にアレクが叫ぶように答えた。
「ここにいる!」
「な、何を言ってるのです!」
「俺がお前の運命の相手だって言ってるんだよ! シルフィー! 俺はお前がどんなに汚されたとしても、それを受け入れて愛し続けて見せる!」
「そんなの嘘なのです!」
「俺を信じろ! シルフィー!!」
「……信じていいのですか?」
「ああ、大丈夫だ。信じてくれ、君を幸せにしてみせる」
アレクの心からの言葉によるプロポーズ。
それを受けて心が揺れたシルフィーは言う。
「アレク……拙はアレクを信じるのです……」
そうしていい雰囲気になったシルフィーとアレクは行為に及ぶ。
シルフィーの汚れた体を綺麗にするように、シルフィーの全身をなめ回し、そして体を擦り付け合って、綺麗になったシルフィーを、アレクだけが汚すのだ。
こうしてアレクを運命の相手としたシルフィーは、夢を達成出来たという思いから、弱らせていた心を立て直し、強い意思で悪徳領主と母親を打ち倒して、アレクと二人、旅を続けながら幸せに暮らし続けるというハッピーエンドを迎える。