エロゲー世界で悪役に転生したので、自分だけのヒロインを見つけます   作:グルグル30

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ノルンルート

 

 結局のところ、どれだけ息が合っても、攻略対象である以上、俺の恋愛対象にはなり得ないんだよな……。

 

 俺がゲーム知識を振り返ってそう思っていると、がっちりと握手した俺とシルフィーを見て近寄って来たエルザが不機嫌さを隠さない表情で言う。

 

「それで、何時まで手を握り合うつもりなのよ」

「あっ! わぁっ!」

 

 それを聞いたシルフィーは、見られていたことに気付き、そんな奇妙な言葉を放って、慌てた様子で手を離す。

 そして、何かを考えると、俺の方へと向き直り、真剣な表情で頭を下げた。

 

「実際に巻き込まれてわかったのです。フレイの言うことは本当だったのです」

 

 ルイーゼの力を疑っていたシルフィーだったが、さすがに自分がラッキースケベに巻き込まれたことで、その力の存在を疑うことは出来なくなったようだった。

 

「死にかけるような大怪我を負わせて、ごめんなさいなのです……」

 

 そうして、俺が悪いわけではないとわかってシルフィーに訪れたのは、無実の人間を殺しかけたという罪悪感だろう。

 故にシルフィーはこれまでの態度を反省して、俺に謝罪をしてきたのだ。

 

「逆の立場なら俺も同じ事をしたさ。そっちの……」

 

 俺はそう言ってルイーゼの方へと話を向ける。

 ゲーム知識から彼女がルイーゼだと知ってはいるが、自己紹介されたというわけではないため、不自然にならないように自己紹介を促したのだ。

 

「ああ、まだ名乗っていませんでしたね。わたくしはルイーゼ・フォン・エデルガンドですわ」

「ほら、やっぱり貴族……エデルガンド!? まさか帝国の皇女様!?」

 

 どうよ? この見事なノリツッコミ。

 事前に知っていたとはとても思えない、まさに完璧な演技ではなかろうか?

 

「やはり。何処かで見覚えがあると思ってました」

「わたくしもですわ。フェルノ王国のユーナ王女ですよね?」

 

 他国とは言え、王族同士で繋がりでもあったのか、ルイーゼとユーナは互いに面識があったようだ。

 それを元に、互いが本物の王女と皇女であることを確認していた。

 

「嘘でしょ……!? 帝国の皇女……? 敵じゃない!」

 

 そう小さく呟いたのはエルザだ。

 外交などを殆ど担当しない、穀物生産が主流のノーティス家のものとしては、基本的にフェイルの王国を狙っている国は全て敵と言う所だろう。

 仮に戦争でも起こってしまえば、兵糧の為に穀物は国に買いたたかれ、敵国に自領の田畑を荒らされて、これまでの努力が台無しになるかもしれないわけだからな。

 交易で儲けているシーザック家のような立場よりも、土地に根ざしたノーティス家などの方が、よっぽど外敵への危機感と敵意は強いのだ。

 

「エルザ……敵意を見せるなよ。ここは帝国だ」

「っ! わかってるわよ!」

 

 俺は近くにいたエルザにそう言ってこっそりと耳打ちする。

 そして残りの二人は如何しているだろうと見てみると、レシリアは大して興味がないと言った表情をしており、来幸はこれが例の危険人物かと言った様子で、ルイーゼのことを警戒するように見ていた。

 

 ひとまずは問題無さそうか……。

 

 俺はそう判断して話を続ける。

 

「高貴な家柄のものなら、それも帝国の皇女様なら尚更、男から不埒な真似をされていたら、それを排除しようと思うのが普通だからな」

 

 俺はそう言ってシルフィーの行いを肯定する。

 実際、もし俺がルイーゼを襲っていて、ルイーゼが少しでも汚されてしまったのなら、護衛であるシルフィーの首は物理的に飛ぶことになるだから、あの過剰な暴力も仕方ないという面が大きいのだ。

 

「あの蹴りで負った怪我もこうして元通りになったし、何も失ったものはないからそれで終わりに――」

 

 そこで俺は気付く。

 俺が意識を失う直前、最後に見た光景を。

 

「ちょっと待て、卵はどうなった?」

 

 そう言えば周囲にあの卵の姿が見えない。

 あんな大きな卵が目に入らないなんて思えない。

 

「嘘だろ!? まさか――」

「……はい、そのまさかです」

 

 俺が最悪の事態を想定し、思わずそう呟くと、どう話そうか迷っていた来幸達が、隠していた卵の欠片を出してきた。

 俺はそれを見て、頬が引き攣る。

 

「これ、俺がぶつかって割れたんだよな……」

 

 そう言って欠片を手に取る。

 完全に割れている、それも無残なほどに。

 

「竜の卵と思われるものを壊しちまったのか……。子供を殺された竜が怒り狂って襲い掛かってくる前に対応策を考えないと……」

 

 あんまりな状況に頭が痛くなり、思わず頭を押さえる。

 責任の一端があるルイーゼとシルフィーも暗い顔をしている。

 

「いえ、卵は割れましたが、子供が死んだわけではありません」

「ん? どういうことだ?」

 

 来幸の言葉に俺は思わず疑問を返す。

 すると来幸は何かを縛り付けていた紐を外し、暴れるそれを手に持ちながら、俺の方へとそれを見せてきた。

 

「どうやら孵化直前だったようで……中身はしっかりと無事だったようです」

 

 俺は来幸に掴まれた状態で、じっとこちらを見る小竜に目を向ける。

 桜色の何処か見覚えのある姿を見て、俺の頬は引き攣った。

 

 何で……何でこんなところに……!

 逆レイプロリドラゴンこと、攻略対象のノルンが居るんだよ~!!

 

 そう、目の前の生まれたての小竜は攻略対象の一人だった。

 しかも、彼女はルイーゼに並ぶほどの俺に取って危険な攻略対象だ。

 

☆☆☆

 

 多くのファンタジー作品と同じように、インフィニット・ワンの世界でも、竜という存在は強大な力を持ったものとして扱われている。

 

 もっとも、この世界の竜は強力な力を持ちながらも、総じて温厚な性質を持った種族であり、竜の隠れ里などでひっそりと隠れて暮らしているのが基本だ。

 その為、竜の隠れ里以外で目にする竜は、外の世界を見るために里を飛び出した若い竜だけであり、若すぎてその段階までいかないノルンは、他の大人の竜達とともに、竜の隠れ里で平和に暮らしていた。

 

 だが、その竜の隠れ里に災いが訪れる。

 

 突如として現れた黒い竜が、神殿に安置されていた神竜に到る為の神の欠片を奪い去り、強大な力を手に入れて竜の隠れ里を襲ったのだ。

 創世神が残した神の力を取り込んだ黒い竜の圧倒的な力の前に、次々と食い殺されていく大人の竜達。

 そんな中で竜族の長老は若い命だけは助けると、ノルンを里から逃がし、決死の覚悟でその黒い竜の足止めをするのだ。

 

 結果としてノルンは逃げ出せたものの、手傷を負って森の中に墜落し、そこで身動きも出来ずに死を待つ状況に陥ることとなってしまう。

 

 ――そこに現れたのがアレクだ。

 

 アレクはノルンを見つけると、竜を見つけたことに驚くものの、それが弱々しい声で助けを求めていることに気付き、直ぐさまノルンの治療を始める。

 

 アレクの治療により、一命を取り留めたノルンは、アレクに聞かれた事もあり、自分がこの状況に陥ることになった事情を全て話すのだ。

 ノルンの話を聞いたアレクは、持ち前の正義感から、その黒い竜を捨て置くことは出来ないと考え、ノルンに何か力になれることはないか聞く。

 

 ノルンはそんなアレクの言葉を受けて、仲間になって一緒に黒い竜と戦って欲しいと、アレクにお願いするのだ。

 それを了承したアレクは、怪我の治療が終わったノルンの上に乗り、ノルンの案内で竜の隠れ里を訪れる。

 

 だが、そこで目にしたのは滅び去った里の姿だった。

 

「そんな……里の皆が……ボクを守るために……」

 

 絶望に打ちひしがれるノルン。

 そんなノルンの目が、死体だと思っていた竜の体が僅かに動くのを捉える。

 

「生きていたんだね! お爺ちゃん!」

「――っ! 待て! ノルン!」

 

 不審さに気付いたアレクの制止も聞かずにその遺体――かつての竜の長老に近づいたノルンは、その遺体から突如として攻撃されて、深い傷を負う。

 

「……っ! どうして……!?」

「ノルン! それはお前が知っている竜じゃない! もう死んでいる! 何かが取り憑いて、その死体を無理矢理動かしているんだ!」

 

 既に竜の隠れ里の竜達は全て殺されて、ドラゴンゾンビへと変えられていた。

 

 潜んでいた数多の竜が、最後の竜であるノルンを殺しにかかる中、竜というかつての勇者も戦った強大な敵と戦うこと、そして親しい者の死体を操り、彼らが守ろうとしていたノルンを殺そうとする暴挙に対する怒りで勇者へと覚醒したアレクは、ノルンを守りながら次々とドラゴンゾンビを討伐していく。

 

 やがて、倒しきれなかったドラゴンゾンビが撤退していくのを見届けると、アレクは深い傷を負ったノルンへと話しかけ、その治療を開始する。

 

 そんな中でノルンはアレクに向かってぽつりと呟いた。

 

「ボクはひとりぼっちになっちゃった。これから如何したらいんだろう?」

「……生きてさえいれば、するべき事は見つかるさ。今はあの竜達が守ろうとしたその命を大切にしよう」

 

 そしてそこまで言ったところでアレクは言う。

 

「それに……倒した竜の中に黒い竜はいなかった」

「それって……!」

「ああ、きっとこれをしでかした黒幕は生きている」

 

 そのアレクの言葉にノルンは憎悪を募らせる。

 

「そうか……必ず報いは受けさせてやるぞ……!」

「俺も協力するぞ。ノルン」

 

 こうして彼らは黒い竜への復讐の旅に出ることになった。

 

 ノルンが竜の姿でいると黒い竜に気付かれて逃げられたり、逆に奇襲を受けて不利になるかも知れない。

 そう考えたアレク達は、ノルンを人化させて、兄と妹を偽りながら、街を転々として、黒い竜の痕跡を追っていくことになるのだ。

 

 そんな街で宿を取ったある日のこと――。

 夜中に体にのしかかってくる何かの重さでアレクが目を覚ますと、そこでは人化によって幼女の姿になったノルンの姿があった。

 

「なっ!? 何をしているんだノルン!?」

 

 唐突な出来事に焦るアレク。

 そんなアレクの体を押さえつけながらノルンが言う。

 

「竜族の生き残りはボクだけになっちゃった。だからボクは一杯子供を産んで、昔みたいに竜族が皆で暮らせるように、竜族を増やさないといけないんだ」

 

 そこでノルンはその幼女の姿に見合わない妖艶な表情で言う。

 

「だからアレク、ボクのつがいになってよ! そして沢山交尾をして、ボク達の子供をいっぱい作ろう!」

 

 竜の隠れ里が滅んだあと、アレクと共に旅をして生き抜く中で、ノルンは二つのするべきことを見つけたのだ。

 

 それは黒い竜への復讐と一族の復興。

 

 その為にノルンは、自分を何度も助けてくれたことで、愛するようになったアレクとつがいとなり、そして行為をして沢山子供を作ろうと考えたのだ。

 だが、アレクとしては寝耳に水な状態であり、思わず反論を行う。

 

「ちょ、ちょっと待って、幾ら何でもノルンの年齢は不味いだろ!」

 

 まだ年若いノルンは人化しても幼女の姿にしか成れなかった。

 だからこそ、アレクはノルンに対して、恋愛感情のようなものは抱かないようにしていたのだ。

 

「アレクはボクのことが嫌いなの?」

 

 そんなアレクの拒絶にノルンは傷ついた様子でそう答える。

 それに対して、アレクは口籠もりながらも言った。

 

「いや、そう言うわけでは……」

 

 正直に言えばアレクはノルンに惹かれていた。

 天真爛漫で元気が貰えるような明るい性格で、竜が人化したからか絶世の美貌を持つ幼女であるノルンを、世間的な倫理感を無視すれば愛していたのだ。

 

「なら、いいよね!」

「あっ! ノ、ノルン!? あんっ!」

 

 嫌いでないと言質を貰ったノルンはそのままアレクを逆レイプした。

 人化しても保持している竜としての力によって押さえられ、竜の本能によるものか、行為をしたことがないとは思えないほどのテクニックによって、アレクは快楽に堕とされて何度も喘がされることになる。

 そうして、アレクはノルンに堕とされてしまい、口では何度も駄目だ駄目だと言うものの、決定的な別れを告げることもせず、宿に泊まる度に侵入して襲い掛かってくるノルンに逆レイプされ続ける日々を送ることになるのだ。

 

 そうこうしながらも、二人は旅を続け、ついに黒い竜を見つけて追い詰める。

 

「あひゃひゃひゃ! どうだったよ? あの老いぼれ共を使った俺のショーは!」

「お前が! お前がお爺ちゃん達にあんなことをしたのか!」

「そうだぜ~! 俺は神竜! 神になったんだ! ただの生物の域を超えた上位存在に! だからよ、ちっぽけな生物を使って遊んでやったのさ!」

「人の命をなんだと思っている!」

 

 話を聞いていたアレクは怒りの声を上げる。

 

「例えお前が神の如き力を持っているのだとしても、悪辣にそれを振るうお前は、神でも何でもない! ただの化け物だ!」

「ああん!? この神に向かって何を言いやがる!」

「お前はここで打ち倒す! 行くぞノルン!」

「うん!」

 

 そうして激しい戦いが巻き起こる。

 神の力を取り込んだ黒い竜は圧倒的な力を持っていたが、勇者の力を完全に解放し、ノルンの上に乗った戦うアレクは、黒い竜を打ち倒す。

 

「馬鹿なこの俺が……何の為に竜――」

 

 それだけを残して黒い竜は終わりを迎えた。

 

「終わったね」

「ああ」

 

 仇を討ち終わって、人化したノルンは、感極まったようにそう言う。

 そんなノルンにアレクは同意するように答えた。

 

「これからはボク達二人の……いや、三人の新しい日々が始まるんだね」

 

 そう言って幸せそうにぽっこりと膨らんだお腹をさするノルン。

 それを見てアレクがノルンの言ったことの意味に気付く。

 

「まさか、子供が出来たのか?」

「うん! これでボクはもうひとりぼっちじゃない!」

 

 そう言ってアレクに抱きつくノルン。

 そのままアレクを押し倒すと言う。

 

「でも、まだこれじゃ満足出来ない。もっといっぱい作ろうねアレク!」

「ノ、ノルン……!? 今日もなのか!?」

 

 そうして服を剥ぎ取ったノルンに対して、何時もようになされるがまま、逆レイプをされてしまうアレク。

 

 なんやかんやで幸せになった彼らは、竜の隠れ里に住まいを移すと、そこで沢山の子供を作って竜族を再興させた所で、ノルンルートは終わることになるのだ。

 

☆☆☆

 

 ここまでノルンルートのことを振り返った所で俺は思う。

 

 やっぱり、此奴はやばい!

 

 野生の本能で生きる竜族だからなのか、同意もなく勝手につがいにして、逆レイプをかましてくる論理感のなさ。

 加えて竜族として圧倒的な力を持っているからこそ、その逆レイプから逃げることも出来ずに、堕とされることになってしまう。

 

 あのアレクですら、完全に手玉に取られ、完全に手込めにされてしまったのだ。

 その危険性がどれほどのものかと言うのがよく分かるだろう。

 

 襲われても俺の転移なら逃げ切れるんじゃないかと思うかも知れないが、エロゲスライムから逃げ切れなかったように、俺の転移は俺に触れているものを巻き込む為、相手に体を掴まれると共に転移してしまうので、その時点で転移を使用して敵から逃げることが出来なくなってしまうのだ。

 そしてルイーゼにナンパしていたエルフを始末出来なかったように、魔力回路をやられている俺は魔法による状況の打壊が出来ない為、転移を封じられると純粋なスペックで押し切られて何も出来ずに負けてしまう可能性が高い。

 つまるところ、ノルンに組み伏せられた時点で、俺に取れる手立ては何も無くなり、後は美味しく頂かれるだけとなってしまうのだ。

 

 まだノルンルートを攻略していないため、ノルンが俺に恋をして逆レイプをかましてくるなんて事態は直ぐには起こらないだろう。

 だが、竜族皆殺しなんていう後味の悪い結末を放置するのは、ハッピーエンド至上主義の俺としては許せない為、アレクがいない現状では銀仮面としてノルンルートに介入するつもりでいた。

 その時に、竜族の鋭い勘で俺が銀仮面だと気付かれる可能性は否定出来ない。

 そして気付かれれば、その時点から俺は逆レイプ対象として、ノルンから追われることになる身の上に早変わりだ。

 種族としてのスペックが違う竜族が、朝から晩まで俺を狙って襲い掛かってくるとか、考えただけでも恐怖しか湧かない状況だろう。

 

 いっそ、一か八かアレクが来るまで完全放置して見るか……?

 

 ふと俺の中でそんな考えが沸きあがる。

 ノルンルートを攻略しなければ、俺に危害は及ばない。

 だからこそ、全てをアレクに任せるのは一つの手だった。

 

 ……いや、駄目だ。

 それで本当に竜族が全滅してしまったら、俺の心が持たない。

 

 俺はそう冷静に考える。

 俺には何が何でも助けたいという主人公のような気持ちはない。

 だが、俺自身の心を守るためには目の前にある不幸は見逃せないのだ。

 

 それに――。

 何よりも、バットエンドルートで終わるのはクリスティアの件で懲りた。

 

 あれは手痛い経験だった。

 他の奴なら――アレクなら上手くやれて幸せに出来ていたはずなのに、自分のせいで誰かが不幸になったと感じる生々しい実感……。

 

 ――あんな思いをするのはもううんざりだ。

 

 だからこそ、俺は行動せざる終えない。

 故に、この状況に思わず心の中で悪態をつく。

 

 クソ、これだから逆レイプロリドラゴンことノルンとだけは、フレイの状態で関わり合いになりたくなかったんだ。 

 

 だと言うのに……。

 

 今日一日で……それもこの短時間で三人だぞ!?

 それも、トラブル皇女と、逆レイプロリドラゴン! 何の冗談だよ!?

 

 まるで攻略対象に遭うという呪いでも賭けられているようだ。

 

 俺はその事実を嘆く。

 全てを忘れて楽しく過ごそうとバカンスに来た先で、遭いたくもないのに攻略対象に遭いまくるのはどうなっているのだと。

 

 ――まさか、俺が山を裏切ったからか!? これは山の呪い!?

 

 そんな非科学的なことまで思い浮かんでしまう始末。

 それ程までに状況は悪化の一途を辿っている。

 

 前門の逆レイプロリドラゴン、後門のトラブル皇女……ここは地獄か?

 

 一瞬でも油断してしまえば、あっと言う間に貞操を失うことになりそうな状況。

 フレイとして生きていく中で最大のピンチが俺に訪れていた。

 

「フレイ様、既に生まれてしまったこの竜を如何しますか?」

 

 今後の対応を聞くために来幸が俺に向かってそう言う。

 あの卵の母親と思わしき竜は見つからず、卵だったものは孵化して小竜へと変わってしまった状況にある。

 単純に卵を返すだけということから変わってしまった状況を受けて、もう一度この小竜の扱いを如何するか再考する必要が出ていた。

 

「そうだな……此奴の両親が見つかるまで、育てる必要もあるからな……」

 

 俺はそこまで考えたところで、とある一手を思いつく。

 

「そうか……その手なら――」

「フレイ様?」

 

 俺の呟きを聞き取った来幸がそう疑問の声を上げる。

 俺はそれに答えるように、意を決して、全員に向かって宣言した。

 

「よし! 俺は此奴のパパになるぞ!!」

「「「「っ!?」」」」

 

 俺の宣言を聞いて、その場に居たルイーゼ以外の全員が驚愕したように、声にならない声を上げた。

 そして、いち早くその驚愕から回復したシルフィーが思わず言う。

 

「いやいや!? わけがわからないのです!? どうしてそうなるのです!!」

「誰かが、此奴の両親が見つかるまで、育てなければならないだろ? だからこそ、その父親役を俺がやるってことだよ」

 

 状況からして誰かがノルンを育てなければならないだろう。

 それを行う者として、卵を割った責任を取って、俺がそれを行う事は、そうおかしな話ではない。

 

 それにこれは俺の得にもなり得る一手なのだ。

 

 イベントを攻略すればヒロインは攻略者に惚れる。

 それは来幸やエルザ、そして銀仮面ファンクラブなどの攻略対象達の状況を考えれば、避けようのない事実と言えるものだ。

 

 俺はこれまで何とかそれを乗り越えようとしてきた。

 

 例えば、エルザの場合は攻略対象自身に自分のイベントをクリアさせることで、惚れる相手である攻略者を無くす作戦を考えて行動した。

 だが、これはエルザの攻略に俺が関わりすぎてしまった為に、俺自身も攻略者扱いされてしまうことになり、失敗に終わってしまった。

 

 よくよく考えて見ると、攻略対象のイベントというのは基本的に攻略対象が一人では解決することが出来ない問題が大半だ。

 そのような事態だからこそ、自分では解決出来なかったその問題を解決したアレクなどの攻略者に惚れるという状況が成り立つのだ。

 それを考えると攻略者自身にイベントをクリアさせるというこの考えは、根底から破綻していたことに今更ながらに気付く。

 状況からして攻略対象だけでは解決出来ないのだから、どう足掻いても手助けをする必要が出てくる。

 そうして手助けをしてしまえば、エルザの時のように、協力者である俺自身も攻略者扱いされて、惚れられる事態に陥ってしまうだろう。

 

 だからこそ、この方法でノルンの恋心を逸らすことは出来ない。

 黒い竜を相手にすることを考えれば、どう足掻いてもノルン一人では勝つことは難しく、何処かしらで手助けをする必要が出てくるだろうからな。

 

 じゃあ、成功例である銀仮面のパターンはどうかと思うだろうが、これは先程考えたように竜族の鋭い感性だと俺が銀仮面だと見抜かれかねない。

 ノルンと知り合ってもいない状況なら、幾らでも誤魔化すことが出来るかも知れないが、既に素のフレイを知られてしまっているため、俺と銀仮面の一致点を探られてしまえば、あっと言う間にその答えに辿り着かれる。

 

 まさに一見すると手が無い状況。

 イベントを攻略することでノルンが俺に惚れることは避けられない状態だ。

 

 ――だが、まだ手はある。

 

 それは攻略対象にイベントを攻略させようとしたのと同じように、発想の転換によって閃いた渾身の一手。

 

 相手が惚れてしまうのは避けられない。

 そこが避けられないというのなら、惚れられたとしても、恋人になることが出来ない相手――つまり父親に、俺自身がなってしまえばいいのだ。

 

 これが俺が考えた起死回生の手段だ。

 

 一般的に自分の両親というのは恋人などの恋愛の相手とはならない存在だ。

 これは人間に限ったことだけではなく、動物などでも大半が同じだろう。

 だからこそ、人間の論理感の薄い竜であるノルンにも効くはずだ。

 

 例えば、攻略対象のイベントを攻略したとしても、その攻略者が両親なら、攻略対象は見惚れることはあっても、恋人にするほどの強い気持ちは持たないはず。

 まあ、ギャルゲーや乙女ゲーの攻略キャラが、現実の自分の両親に入れ替わっていたら、ストーリーは同じでも攻略とか無理と思うのが大半だろうから、俺のこの考えは間違っていないだろう。

 実際にインフィニット・ワンで見てきた各攻略対象のイベントを、アレクの代わりに攻略対象の父親が行ったとして考えると、体を許してアレクとパンパンやっていた時のような展開が、攻略対象と父親との間で起こるとはとても思えない。

 

 イベントを書き換えること無く、その結末の有り様を書き換える――。

 完璧――まさに完璧な手じゃないか!

 

 俺は思いついたこの策に対して思わず自画自賛する。

 普通の攻略対象相手では、この完璧な手を使用する事は出来ないが、今生まれたばかりのノルンの場合なら、俺が父親枠に入り込むことは不可能では無いはずだ。

 

 そうして、父親としてノルンに接し、恋愛対象から外れる。

 その上で、ノルンが清楚で貞淑な子に育つように教育する。

 

 逆光源氏計画――。

 

 拾った子供を妻とするために自分好みに育てるのでは無く、拾った子供を絶対に妻としない為に、お互いの立場と清楚さを徹底的に教育する。

 

 それこそが俺がノルンに対して行わなければならないことなのだ!

 

 俺がそう一人で思考に耽っていると、ルイーゼが何かを決意したような表情で、その場の全員に向かって言う。

 

「それなら、わたくしはこの子のママになりますわ!」

「「「「「「はぁっ!?」」」」」」

 

 俺も含めてその場にいる全員がルイーゼの言葉に驚愕の声を上げた。

 

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