『お邪魔しますー』
不格好なドイツ語が少し響く。
「荒島さん、今は私たちの両親はいないのでいりませんよ?」
「いいんだよ別に...人んちなんだから落ち着かねーんだ」
中は広々としたつくりになっており、弟妹たちがいたからなのか、薪ストーブで部屋は温められていた。
「おぉ...すげー過ごしやすそうだな。広いし」
「ドイツの一軒家は多分、みんなこんな感じだと思いますよ?」
「マジかよ。すげーなドイツ」
『荷物は』『こっちだよ』
リーゼロッテの弟妹が、荒島に向けて声をかける。
「...なんて?」
「荷物はこっちの部屋に置いてください、って言ってます」
「あぁなるほど...」
ーーーーー
ーーー
ー
「部屋に荷物置いてきたぞ。メシでも作るか?」
「ちょうどお昼どきですね。叶先生はどうされるんでしょう」
「向こうで食うそうだ。寝るのもご友人の家らしい」
「へぇ!随分仲がよろしいようですね」
キッチンに向かいながらそんなことを話していると、玄関先から扉が開く音がする。
「あァ?誰だ?」
『お父様』『お母様かなー』
「お出迎えに行くので、荒島さんもついてきてください」
「あいよ」
リーゼロッテと共に玄関に出る荒島。
そこにいたリーゼロッテの父は、一言で言えば「かわいいおじさん」であった。
荒島よりも頭2つぶんほど低い身長。くりくりとした瞳に丸い鼻。鼻の下にはカイゼルひげを蓄え、卵のような小太りの体型。
しかし、そのようなマスコットじみた外見であっても、その立ち振る舞いには高潔さが溢れていた。
「キミが、アラシマ、くんかね?」
「は、はい。ご息女にはいつもお世話になっております」
「ククク、そうかネ。リーゼロッテにか...手紙には、随分と君のことを信用しているような事が書かれていた。どうやらそれは、間違いでは無いようだね」
「お父様?」
「おっと、これ以上は怒られてしまうネ。ついてきたまえアラシマくん。あとでアルバムを見せてあげよう」
はっはっは、と笑いながら、父親は家へと入る。
「....お、おっかねぇ...」
「お父様、雰囲気はとっても怖いんですよねぇ。人柄とか見た目はいいひとなんですけど」
「いやまぁ、悪い人ではないのはわかってんだけどよ。...いかんせん慣れねぇんだよなぁ…」
「あれ、お父様に会ったことが?」
「あー、大学行ってる時にちょっとな。つってもこっちが見かけただけだし、人違いかもしれん」
そんな事を話しつつ、再び家の中に入る2人。
そして。
「今日はリーゼロッテがお友達を連れ帰ってきたから、ちょっと張り切っちゃったわ。貴方いっぱい食べそうだから、好きに食べてね?」
「は、はァ…申し訳ない、自分も手伝ったんですが」
『お客様だから』『気にしないでー』
リーゼロッテの母と弟妹が瞬く間に作った晩御飯を前に、荒島は手を合わせる。
「じゃあ、いただきます」
「遠慮なく食べてくれたまえ。私の妻の料理は絶品だからね。あつっ」
「お父様、だから一旦冷ましてから食べてください」
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