荒島 真己のスキキライ   作:平均以下のクソザコ野郎

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今話は前話の編集前あとがきにあった『キライ・ナ=シセン』ではありませんm(_ _)m
ご容赦ください


ザッ・シニノッテタ【挿絵追加】

午後の12時。

 

「やぁ、荒島くん」

 

昼下がりの待機時間。

カフェオレを楽しむ荒島に、1人の女性隊員が親しげに話しかけてくる。

豊満なバストとヒップを持ちながらも、男役さながらの美麗で中性的な顔立ちで男女を魅了する特徴的な容姿。

『劉 静』隊員が、荒島の前の椅子に座って来た。

それに対して、荒島は、苦虫を噛み潰したような顔で劉に応対する。

 

「......」

「おいおい、なんだいその顔は。まだ何も話してないじゃないか」

「...お前がこっちに対してにこやかに話しかけてくる時はな、大抵俺にとって不都合な事がある時なんだよ...」

 

荒島は、1人ごちる。

 

「先月はお前がお前のファンに送るチョコ作りを手伝わされ」

「あぁ、美味しかっただろう?」

「月初めはお前の写真のオークションごっこの司会をやらされ」

「君があんなに闇オークションの司会役が上手いとは思わなかったよ」

「先週はついにお前のファンから小言を頂いた。"静様に近づかないで頂けます?"まぁ結局お前のイタズラだったけども」

「あの子はノリがいいんだよ。いい子だったろう?」

「菓子折りは美味かったが二度とやらせんな。普通に殺したくなったわ」

 

悪びれもせずに劉隊員は肩をすくめる。

荒島はそれを見て、自分の頭を撫で付けてから、劉隊員に問う。

 

「...で、何の用だ?悪いが時間かかるようなもんは無理だぞ。俺はカフェオレを飲むのに忙しい」

「時間がかからないものであればいいのかい?まぁそれで言うなら時間はかからないさ」

 

そう言うと、劉隊員は懐から一冊の分厚い雑誌を取り出した。男女両方、普段使いからコスプレまで、全てのファッションについて描かれた若者向け人気ファッション雑誌『yan-yan』の特別号「街ゆく若者特集」である。

主に編集部が過去4年かけて街ゆく若者を撮影したスナップ写真を主にした特集だが...

 

「お前それどこから出した...?」

 

その特別号はかなり分厚く、少年漫画雑誌「ドラドラ」にも引けを取らない程の厚さの雑誌をどこからか取り出した劉隊員に引いてしまう。

 

「どこからでもいいさ。えーと...」

 

その劉隊員は雑誌のページをパラパラとめくっていく。ファッション雑誌をめくるその姿でさえも絵になるようで、劉隊員を見つめる視線は多い。

(なんで近くに荒島がいるんだ)というような疑問と嫉妬の混じった視線も多少荒島に向けられるが、劉隊員がひとつ一瞥すればなくなっていく。

 

「...あ、この写真だよ」

 

劉隊員が指さしたひとつの写真。

ツーブロックにブラウンのコート、ニットのセーターを着用した青年が、壁にもたれかかっている写真だ。

現在から3年ほど前の撮影写真の中から選ばれた物らしく、『No.1』という順位と、編集部のコメントが下に綴られている。

 

「えーっと、『寒さが深まってきた秋の終わり頃出会った青年。温かみのあるブラウンのコートに白いニットのセーターがマッチしています。個人的にかなりモデル体型であった所もグッド。彼が今何をしているのか、とても気になる写真です』だって」

 

そう劉隊員が雑誌から視線を戻すと、荒島は顔を手で隠して天を仰いでいた。まるで見たくないものを見たかのように。

 

「...」

「ねぇ」

「知らん」

「ねぇちょっと」

「知らん」

 

劉隊員の目つきはだんだんいやらしくなっていく。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「これ君だろう?」

「他人の空似」

「絶対君だよこれ」

「知らん」

「じゃあ叶先生に聞いちゃおっかな」

「俺だからやめてくれ」

 

叶の名前を出した途端に渋々認める。

その顔は、非常に照れくさそうに真っ赤に染まっており、深いため息をつく。

 

「はァァァ〜〜〜〜〜〜」

「それにしても君、なんだいこの格好?サークルの優しい先輩みたいな恰好してるじゃないか。今オールバックなのにこれでは竹内涼真のような髪型してるな君。ねぇ君」

「女しこたま喰ってそうとも言われた」

「はっはっは、なんかソフトSな所ありそうだからね君。実際そんなでもないだろう?」

「大学の時は文芸と怪獣サークルだった」

「文芸!?君も意外だな」

「つっても小説描いたりはしてねェけどな」

 

特別号を手に取りながら話す。

 

「しかしお前、よくこんなもん買ったな...うっわ高ェ」

「確か別売りで6000円だったね。本誌も買うともうちょっとした筈だよ」

「ほとんど専門書みたいなもんじゃねェかよ」

「ファッションに関してのと言ったらあんまり間違いでもないからね。街ゆく通行人を撮ってるから、自然なオシャレっていうものがほら、うん、わかりやすいだろ?ぷふっ」

「ハリセンボンみたいになってるぞ...笑うな」

「すまないすまない...はーあ、笑った笑った」

 

そうして、暫く雑談をした後。

 

「そういえば劉」

「どうしたんだい荒島くん」

「これ誰かに見せてないだろうな?」

 

その端正な顔を後ろに向けて眼をそらす劉。

カフェオレを飲み干して回り込む荒島。

雑誌を懐に仕舞い立ち上がる劉。

カップを片付けて足に力を込める荒島。

 

「...おーっと子猫ちゃん達とお茶会の約束があったの忘れていたよあーっはっはっはー!」

「てめェ見せやがったなァ!?待ちやがれ吐くまで逃がさねェぞ!!」

 

テーブルをパルクールのようにひらりと飛び越え、劉隊員は走り去って行くが、それを逃がさんとばかりに荒島は劉隊員を追いかける。

 

鬼ごっこの結末は、どちらかの勝利か、はたまた駒門弘原海のお説教か。どちらにせよ、今日も地球は平和である。




ドラドラ
小学生に人気のコミック雑誌。
稀にフェチズムを感じさせる漫画が連載されたり小学生のその後の人生に多大なる影響を与えたりする。
おもちゃ等の懸賞も人気。
オマージュ元はもちろんガッツな笑いとド迫力なあの雑誌。

yan-yan
若者向け総合ファッション雑誌。
あまりにも多岐に渡る取り扱いに、年々価格がちょっとずつ高くなっているともっぱらの噂。
BURK隊員の中でも購入している人物が多数いる。

荒島の写真を見た人物
「...へぇ〜...ふぅ〜〜ん...ま、まぁ...いいんじゃないですかねぇ?私の直属の部下ほどではありませんけど???」
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