「頼もーうッッ!!!」
「ウワーッ!?!?」
格納庫内に場違いのように置かれた倉庫。
誰も使わない為に、もはや荒島専用の着ぐるみ制作室となったその場所を勢いよく開いたのは___
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ヴィルヘルミーナ・ユスティーナ・ヨハンナ・ルーデル。
ハンス・ウルリッヒ・ルーデル大佐を先祖に持つ、透き通った白い肌に映える黒い長髪のポニーテールが特徴的なドイツ人である。
その彼女は今、機嫌が悪そうに格納庫へと向かっていく。
ちなみに彼女だけでなく、同じく格納庫に用があるという男性隊員、日ノ出 新も一緒である。
人助けを趣味とするお人好しである彼にとって、かなりご機嫌が悪そうな彼女の様子は、個人的に気になっていたため、彼女に工具の搬入を手伝って欲しいと頼み込み、共に格納庫へ歩いているのだ。
「なぁ、ヴィルヘルミーナ。さっきから機嫌が悪そうだけどどうしたんだ?」
「...あぁ、すみません」
「謝って欲しい訳じゃないんだけどさ、なんでかなーって」
少し直接的すぎたかと考える彼を知ってか知らずか、ヴィルヘルミーナは考え込む様子をみせる。
「あー、いや、無理に話さなくてもいい」
「リーゼロッテの事は知っていますね」
リーゼロッテ。
ドイツ名家の才媛。
史上最年少でBURKセイバーパイロットの適正資格を得た天才少女。
BURKセイバー隊隊長。
挑発的な態度と、ハーフアップツインテールが特徴的なその存在は、隊の中でもかなり癖のある人物として知られている。
「もちろん知ってるけど...」
「じゃあ荒島との関係も」
「ッスー....ッ」
荒島 真己。
BURK随一の奇人変人。
でありながらも、苦労人のようなアダルトチルドレン。
女の芳香が苦手な為、駒門とシャーロットの不在が確認できない際は着ぐるみ姿や、着ぐるみの頭のみを被った風変わりな姿をした人物。
「おい?」
「うんまぁ知ってる。それで、その2人がどうしたんだ?」
「...ないんです」
「え?」
「...ッテが、...くれないんです」
ふるふると身を震わせて叫ぶ。
「リーゼロッテがっ!荒島にかかりっきりでっ!最近話してくれないんですよッ!!」
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「...で、俺の着ぐるみ制作を邪魔したわけだ」
「ど、どうやら...」
「む"ーっ!!!!!」
即落ち。
勇んで倉庫の扉を開いたはいいものの、足払いからの捕縛にてぐるぐる巻きにされたヴィルヘルミーナを横目に、日ノ出から事情を聞く荒島。
この時まとっているのはいつもの隊員服や着ぐるみではなく、ツナギに作業帽などの工場ルック。
怪獣「グドン」の着ぐるみを作っている途中らしく、グドンの頭や体を模したものが置かれている。
「む"ーっ!!!む"む"む"ーっ!」
「そ、そろそろ離してあげたらどうでしょう?ほら、姉妹のように育ったと聞いてますし。荒島さんと仲良くしてたら心配するのもやむを得ませんよ」
「...そうだなァ、さすがに猿轡くらいは外してやるか。あと日ノ出。お前俺をそういう風に思ってたのか」
口に巻かれていた布を取り、日ノ出の一言に遺憾の意を表明したところで、ヴィルヘルミーナに向き直る。
「で、俺に何の用だユスティーナ・ヨハンナ・ルーデル」
「はーっ...はーっ...日ノ出さんから聞いただろ、荒島 真己」
「まさか、あいつに勝負を仕掛けるのをやめろと?イヤだ」
「違う!!」
あまりにも早い否定の言葉に、思わず拍子抜けする日ノ出と荒島。
「えっ違うの?」
「ち、違うのか、ヴィルヘルミーナ?」
「むしろ、リーゼロッテの姉貴分としては感謝したいんだよ、荒島 真己」
息を整えて話し始める。
「...あいつは、リーゼロッテは、小さな頃から才媛であれ、優秀であれとされてきた。もちろんそれは、リーゼロッテのご両親の確かな愛の上で、適切な量の教育だったと思うし、リーゼロッテ自身も、そんなご両親の期待に答えようと努力してきた」
「...だけど、頑張り過ぎることが多いんだ」
「小さな頃から必要以上の課題やトレーニングをこなしてしまうし、失敗がひとつでもあったら、それがどんなに小さなことであっても、なくすことができるまで必死に考え込んでしまう」
「それで怪我をしてしまう事もあったし、空回ることもあった」
「...まァ、あいつクソ真面目だもんな。隊長にはあんななのに」
「荒島さん」
「はい」
「私もご両親も、その真面目さには助けられた事もあるのだが...その真面目さこそに、体や精神を病むのではないかと思っていた」
「そこに現れたのが、お前だ。荒島 真己」
「おっ、いいぞ褒めろ」
「荒島」
「ウッス」
「........お前は、リーゼロッテに勝負と題して、様々な事をさせてくれた」
「時にはボロボロになったあいつを引き剥がしてでもベッドに放り込んでくれた事もあったな」
「だが今日は感謝しにここに来たのではない」
「マジで?」
縄を器用に切り裂き、立ち上がったヴィルヘルミーナに身構える荒島。日ノ出はそんな2人を見やりながら、ヴィルヘルミーナに真意を問いただす。
「そうだ、気になってた!ヴィルヘルミーナ、君は一体何を...」
「決まっているでしょう、日ノ出さん...荒島 真己!貴様にっ....!
チキチキ!リーゼロッテについて知ってるのは誰だクイズ対決
を挑むっ!!!」
「ちょっとした俺の緊張感を返せやこのクソガキィッッ!!!!!」
「....と、言うわけで。突如始まりましたリーゼロッテ隊長カルトクイズ〜司会は巻き込まれた日ノ出新と」
「解説兼出題役のエリー・ナカヤマでお送りいたします〜」
にこにことした顔で押すと音声が出るボタンを持ってきたエリーを加え、組み立てたダンボールを出題者テーブルに、司会役の2人は回転椅子に座って説明していく。
「カルトクイズと銘打ちましたが、実際には最大10問5問先取した方が勝ちの早押しクイズでございます。エリーさんの出題する問題にいかに早くボタンが押せるか。荒島さんとヴィルへルミーナのリーゼロッテ隊長に関する知識が試される対決です」
「この勝負、勝っても負けても得られる物や失う物はありません。ただ純粋に、どちらがリーゼロッテ隊長の事を知っているか。その名誉が得られるのみです。荒島くん、ヴィルへルミーナちゃん。頑張ってください!」
「さて、それではこの大会の意気込みでも聞いてみましょうか!まずはヴィルヘルミーナ」
銀髪をポニーテールにして喉を鳴らす。
その美しい髪の流れが無骨な倉庫に一筋の光を放ち、流麗な美しささえ感じさせる。そしてその瞳を前を見据えて、一言
「時は来た。私が勝つ。」
その気迫さえ感じさせる静かな勝利宣言に、日ノ出は思わず息を呑んだ。
このストーカー予備軍決定戦と言えるであろう不名誉すぎる戦いに、ここまでの気高い覚悟を感じるとは思ってもみなかったのだ。
そのヴィルへルミーナの"想い"の強さに、青年は静かに自らを恥じた。
そして次に問いかけたのは、作業帽を取り手袋を外したツナギ姿の先輩。いつもワックスであげている前髪は汗のせいか少しへたれ、いつもよりかはだらしなく、しかし気だるげでワイルドなかっこよささえ見せてくれる。
「.......あのよ、今思ったんだけど15歳のプライバシーを詮索するとk「さぁ泣いても笑ってももう遅い!1問目始めちゃいまーす!!!」聞けやァ!!!!」
そんなもんを言うのも今更である。
戦いの火蓋が、ここに切って落とされた。
荒島vsヴィルヘルミーナ=僅差でヴィルヘルミーナの勝利。「あいつの寝巻きだのなんだの知るわけねェだろ10歳差だぞ!!」
大会=判定はセイバー隊隊員(たまたま暇だったエリー)。5問先取で勝利。
開催理由=荒島がどこまでリーゼロッテを知っているか勝手ながら調べる為と嫉妬。
この後=本を返しに来た氷川と、ヴィルヘルミーナがいないので探しに来たリーゼロッテが騒がしい倉庫に登場。日ノ出から顛末を聞いてリーゼロッテがマジ切れofマジ切れ。
着ぐるみ=荒島の趣味。3体目らしい。