強い陽射しが降り注ぐ。
ここは、旧アメリカ合衆国。…過去のデータにそう書かれている。
「…。」
沈黙と猛熱の中、永戸 慎はひたすらに進んでいた。
視界には白い砂と、そこから生えた様に突き出た建物だけである。
補助端末の情報を確認する。
気温48.6℃ 時刻9:32 …etc
端末の表示をレーダーに切り替える。
表示が替わり、複数の円の中央に赤い点が現れた。
目標地点までは残り12000mだ。このペースで進むと、約8時間掛かる。
「…。」
前方に大きなマンションやビル群の塊が見える。
あそこまで行けば、暑さからは逃れられるだろう…。
歩きながら、腰からチューブを引っ張りだし、口に運ぶ。冷えた水が渇いた喉をたちまち潤す。
砂漠を長い時間歩く為、荷物は必要最低限にした。
水と、それを入れておく水筒に非常食各種。勿論、武装をしない訳にもいかなかった。
重い足取りで進み、1時間。ようやく街の中に入ることが出来た。
15階程あるビルの下で、荷物の確認と銃の準備を始めた。
武装はハンドガン二丁に、連射式コイルガン。それと小型クラスターに、サバイバルナイフを持ってきていた。
コイルガンに弾を装填し、いつでも戦闘ができるようにする。コイルガンと言っても今のものとは違い、厚さ20cmの壁を難なく貫通する程協力である。更に、弾には着弾した直後に炸裂するよう、細工がしてある。他にも毒薬を注入する仕様や発砲直後に発熱をするものもある。
コイルガンを構え、レーダーを確認する。
半径400m以内に複数の敵影が確認されている。
円の中を青い点が忙しなく動き回る。しかし、よく見るとそれは徐々に距離を縮め、自分の周りを囲む様な形になりつつある。
こちらが相手の位置を知っているのと同様、敵にもこちらの位置が知られているのだ。
慎はすかさず、ビルの中に移動する。
階段を駆け上がり、8階まで到達。再びレーダーを確認。2つの点がビルの真ん前100m以内の範囲に到達している。
階段の脇の通路を抜けて、扉の抜けた薄暗い部屋の中に身を潜める。
慌ただしい足音がすぐ真下から聞こえてきた。それが段々と近づき、同時に、音の数も増えていく。
どうやら、敵はそれぞれが違う階を捜索しているらしい。人数は7人。一人でも渡り合えるレベルだ。
部屋の前の通路を一人が駆け抜けていく。長身で体格の良い、黒人だ。後を追い、素早く部屋を出る。丁度、白い服の端が角を曲がるところだった。
角を曲がり、真っ直ぐ行くと白の巨大な塊が薄闇の中に浮かび上がる。
慎は立ち止まり、コイルガンを構える。補助端末により、素早く標準を合わせ一気にトリガーを弾く。
鈍い金属音と伴に弾と銃口が擦れる甲高い音がビルの中に連続で響いた。
黒人が慌てた表情で振り返る。直後、鮮やかな血が腹から吹き出す。続けざまに「プシュッ」と空気が吹き出すような音と同時に、腹に大穴が空く。
黒人はそのまま足を折り、床に膝を点いたまま動かなくなった。
足音が一気に近づいてくる。慎はそのまま直進し、部屋の小窓から外へと飛び降りた。左手を空中で大きく振り上げる。
中から男達の慌ただしい声が聞こえてきた。慎は左手をブンと振りかざす。
窓から複数の男の顔が見えた。
窓に黒い塊が入っていく。
着地した瞬間、頭上から大きな爆発音が鳴り響いた。
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