転生したらオバロ世界のエルフだった件について   作:ざいざる嬢

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これにて神聖アインズ・ウール・ゴウン魔導国編、終幕。

貴族社会に明るくないので、適当な設定です。ご了承ください。

タイトルは4期ラストを飾ったラナーの曲『Fallen』の逆にしました。




Rising

 

 さて、入場も済みいよいよ舞踏会の開始……とはならないようです。

 こういった催しでは必ず……なのかは初参加なので分かりませんが、社交をしなければなりません。

 基本的に高位の者が下位の者に声を掛けて──というようなやりとりがあり、この場合だとジルクニフが目をかけている貴族に声掛けして軽い会話を交わす。こんなやり取りがあるわけです。

 今回私はジルクニフのパートナーとして参加しているので、必然的にそれに付き合わされることになります。なんと面倒くさいんでしょう。断ればよかったととても後悔しています。

 ジルクニフは私のことを『近々、国交を交わそうと思っていた国の身分の高い令嬢』と紹介していました。

 いや、まあ間違いではないんですけどね?一応はエルフ国の王女だったのは間違いありませんし。

 一部の貴族──ジルクニフの信頼の厚い貴族は私の素性である粛清騎士=アレーティア()ということは知っているので、そこまで驚いた反応はありませんでしたが、問題はそれ以外の貴族ですね。

 私が某国の身分高い令嬢と聞いて、ジルクニフを前にしながら私におべっか使って覚えを良くしようとする貴族の多いこと多いこと。 貴族からすれば復権のチャンスに見えるんでしょうね。残念ながら罠なんですけど。

 対して私は終始ニコニコと微笑みを絶やさず、当たり障りのない言葉を返してジルクニフが話を打ち切ってお終いっていう流れが出来たので、まあここまでは楽といえば楽でしたね。

 問題はそれ以外です。 私を見て何やら情欲のようなものを抱き、ジルクニフから少し離れると一目見ようと灯りに群がる虫のように貴族令息どもが集り、ジルクニフを狙っていたらしい中々レアな令嬢からの嫉妬の視線を受けたり等、言い出したらキリがありません。

 それを見たラナーが遠くからジェスチャーで『どうします?処します?』なんて尋ねてくる始末。 誰を処すつもりなの?その中にジルクニフは入ってないよね?

 ……まあ、すっごく疲れましたね。ダンスを踊る前に一度休憩をいれたいところです。

 

 と、考え始めた頃──。

 

「あら、お疲れのようですわね」

 

「……これはアルベド様。それにモモン殿も」

 

 やってきたのはアルベドとアインズ様(魔導国)。アルベドは完璧美人なので疲れを見せていませんが……アインズ様はなんだか慣れない営業先に来たサラリーマンみたいに疲れているように見えます。

 ……そう言えばアインズ様(鈴木悟)は営業サラリーマンでしたね。だから違和感がないと。

 

「どうでしょう、我が国とも関係がありますし少しあちらで話しませんか?」

 

 これはアルベドの気遣いでしょうか?ジルクニフも想定していなかったようで少し焦りが──って、ああそういうことですか。

 どうやら差し向けたのはラナーだったようです。気遣ってくれたようなので助かりますが、ジルクニフはちょっと不快そうですね。

 

「ええ。勿論ですとも。 陛下、申し訳ありませんが少々席を外します」

 

「……ああ。構わないとも。 案内は……ティアーズ辺境侯、任せてもいいか?」

 

「かしこまりました陛下」

 

 ジルクニフがティアーズ辺境侯(お姉ちゃん)に声を掛け、一度会場を離れることになりました。

 多分お姉ちゃんを案内に使ったのは粛清騎士であるティアーズ辺境侯は皇帝に従順であることを見せつけるためと、元々乗り気じゃなかったお姉ちゃんを休ませることを兼ねてるじゃないですかね?

 

 ひとまず、一度会場を離れ個室へと向かうことになりました。

 

 

 

 ○

 

 ○

 

 ○

 

 

 

「この部屋には盗聴を防ぐような魔法が張り巡らされていますが、もう少し強化しましょうか?」

 

「いや、それには及ばない。 わざわざこのような場を用意してくれて助かった」

 

 部屋に入り、少しだらけた様子を見せるアインズ様。

 原作ならこんな姿絶対に見せないだろうに、こうしてそんな姿を見せているのは私の影響でしょうか。

 アルベドもそんなアインズ様を見て幻滅するどころか頬を赤く染めて微笑んでいます。愛は強いですね。

 お姉ちゃんも精神的な疲れからか、ソファーに身を任せています。ねぎらいを兼ねてジュースを差し入れました。

 

「ところでどうしてアインズ様が舞踏会に参加を?」

 

「実は……」

 

 

 詳しく聞くと、魔導国に舞踏会の招待状を送った際、ナザリックでダンスが出来る者を調べたのですが、ダンスが出来るのはなんとアルベドと恐怖公餓食狐蟲王だけという始末。

 ならばアルベドだけを舞踏会へと送ろうと思ったものの、こうした舞踏会はパートナーと出席するものだとアルベドが進言。同じくナザリック最高の智者であるデミウルゴスも同意し、では誰がアルベドと一緒に──となった時に。

 

『アインズ様以外の男と公の場で踊りたくないわ!』

 

 と主張。

 これに対し、シャルティアがキレて喧嘩になったらしいですがそこは省略。

 パンドラズ・アクターを同行させるつもりだったアインズ様はやむを得ず、身分を隠しアルベドの部下として出席することになった……というわけでした。

 

 

「ダンスの練習は恐怖公やシャルティアの協力もあって、なんとか形にはなったのですが……」

 

「あれ?そこはアルベド様とではなかったんですか?」

 

「わたくしもそうしたかったのだけど、魔導国の運営もあって付きっきりというわけにもいかなくて、やむなく恐怖公に教師役を頼んでシャルティアにもアインズ様のサポートをお願いしたわ。 互いに未経験だし、それに──」

 

「私とシャルティアはアンデッド。疲労を感じず食事や睡眠を必要としないから一日中練習に費やせたというわけだ」

 

「勿論、空いた時間を使って私も恐怖公では出来ない見本や指導をさせてもらったわ。 フフッ、あのシャルティアの悔しがる顔が忘れられないわ」

 

 そういう感じに納まったんですね。

 WEB版の流れを踏襲した感じに感じますが、アルベドはWEB版にはいないのでそこを加味した結果こうなったと。

 

「ただ、こうした大衆の前で踊るのは初めてだから不安があってな……」

 

 そう語るアインズ様ですが、意外とぶっつけ本番に強かったと思うんですけど、あれは理想の支配者ムーブをしていたからでしょうか?

 いや、聖王国編でデミウルゴスに計画丸投げされた時は割といっぱいいっぱいでしたね。

 元々は情報を集めて綿密に計画を立てて実行に移すタイプだったはずなので、こうして練習をしても本番で結果を出さないと自信を持てないのは仕方ありませんよね。

 

「大丈夫ですよ。 私もこういう場に出るのは初めてですし」

 

「え?そうなんですか?」

 

「はい。 元々こういった場には興味がなかったので、一切参加してませんでしたね。精々戦勝パーティとかに出たぐらいで」

 

 辺境侯としての地位を得てから、そういった場には参加したことは基本ありません。

 というか、貴族を大量にぶっ殺してきた新興貴族を、皇帝の懐刀とも言える粛清騎士を招待したいと思う貴族がいるでしょうか。いやいないでしょう。私だって他の貴族の立場ならそんな危険人物呼びたくありません。

 

「なので私も最近ダンスを覚えたばかりなんです。なので怪しいところは経験者である陛下(ジルクニフ)にリードしてもらおうと思ってます。 アインズ様もパートナーであるアルベド様をもっと頼ってもいいのでは? ねえ、アルベド様」

 

「そうですわアインズ様! このアルベド、アインズ様のパートナー()としてお支えいたしますわ!」

 

「そうか……アルベド、よろしく頼むぞ」

 

「ああッ!勿体なきお言葉!!」

 

 なんか、聞いてはいけないワードが聞こえた気がしますが、聞こえなかった振りをします。

 正妻戦争に巻き込まれるのは御免ですから。

 

「……ところでお姉ちゃんは大丈夫?」

 

「……アレーティア、お願いだから途中で代わってくれない? あなたと陛下を見るたびに義妹(ラナー)の機嫌が悪くなるの」

 

「えーっと……じゃあ、私がお詫びにラナーの頼みを叶えられる限りで叶えるからって伝えてみて」

 

「それ、逆に大丈夫?」

 

「多分……」

 

 このまま不機嫌なラナーをそのままにするよりはいいでしょう。 何をしでかすか分かりませんし。

 

「なんというか、その、アレーティア殿も大変なのだな」

 

「その分、自由にやらせてもらっていますけどね」

 

「あなたは自由すぎるのが問題なのよ」

 

 それは言わないでお姉ちゃん。

 ──あ、そうだ。この話をするには丁度いいかもしれません。

 

「アインズ様、ひとつお話があるんですけど」

 

「む?何の話だ?」

 

「ええ。実は──」

 

 こうしてしばしの歓談を終え、私たちは会場へと戻りました。

 

 

 

 ○

 

 ○

 

 ○

 

 

 

 今日という日は最良の日なのかもしれない。

 そう思えるほどバハルス帝国皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスという男は舞い上がっていた。

 一度離れたアレーティアが会場へと戻ってきて、いよいよダンスを踊る場面へと移行する。

 

「では行こうかレディ」

 

「ええ、陛下」

 

 アレーティアの手を取り、優雅にステージへと歩を進める。その後ろをラナーたちが追従する。

 

 楽団が身を引き締め、音を奏で始める。こうした舞踏会においてよく使われる代表曲。

 そんな曲に合わせ踊り始めるのは帝国皇帝とティアーズ辺境侯の二組のみ。

 ジルクニフも容姿に関してはかなりレベルが高い。だが、そのパートナーである『白金の謎の美女』アレーティアと辺境侯のパートナーである『黄金』ラナー夫人はそれを上回る。ジルクニフが添え物に過ぎない、といわれても仕方がないほどに。

 だが、ジルクニフはそんなことは一切気にしない。今はこのダンスにだけ集中していたいと、目の前の女に向きあう。

 

(思えば十年以上の付き合いになるのだな)

 

 ステップを踏みながら、曲に合わせて体を動かす中、そんなことを考えた。

 十年という長い時間がありながら、こうした場に男女として出るのも、踊るのも初めてだ。

 踊りながら、改めてアレーティアという女のことを知る。

 この触れた肢体はまるで筋肉なんてついていないとばかりにスラッとしており、容姿も相まってまるで神が創った美術品といっても過言ではない。

 だが、ジルクニフは知っている。この美しい手が自分(ジルクニフ)を守るため、相対する敵を滅ぼすために武器を取り、何度も血に染まってきたことを。

 実のところ、ジルクニフは何度もアレーティアに対し申し訳なさ──悔恨の念を抱いていた。

 

(本当なら、もっと女らしく振舞わせてやりたかった)

 

 曲に合わせてアレーティアを持ち上げる。

 ──軽い。 当然、アレーティアがジルクニフに合わせて跳ねているというのもあるが、それを差し引いても軽い。

 こんな身体で鎧や武器を身につけ、戦っていたのかと認識を新たにする。

 ──もしも、もしもアレーティアがエルフ国出身ではなく、普通のエルフだったなら。もしそうなら、ありのままの姿を晒せていたのに、と心の中の少年(ジルクニフ)が今の青年(ジルクニフ)に語り掛けてくる。

 だが、そうはならなかった。ならなかったから、この話はそれでお終いだ。と青年は少年を説き伏せた。

 

(だからこそ、このひと時だけでも女性(ありのまま)のお前でいさせてやりたい)

 

 この思いは独りよがりかもしれない。それでも、やってよかった。

 ──笑っている。微笑んでいる。

 基本的にアレーティアが噓を吐くのが苦手なのは知っている。だから、この笑みは嘘ではなく本当(本心)なのだろう。この場を、ダンスを楽しんでくれている。この場を設けた甲斐があった。

 あの女(ラナー)からの報復が怖いが、それはもう仕方ないものと割り切る。現に今もあの女からの視線を後頭部に感じる。 だが、致命的なことまではしないだろうという信頼はあった。

 

(ああ、夜に舞う女神のようだ)

 

 再びアレーティアを持ち上げ、今度はそのままクルクルと回る。纏ったドレスが回転に合わせて柔らかく広がる。

 持ち上げて彼女を下ろす中、アレーティアと顔が近づき視線が合う。こういった事に不慣れなのか、笑みの中に恥じらいのようなものを感じさせた。

 こんな一面もあるのかと微笑ましくなりながらも、ダンスを続ける。

 

 やがて曲は終わりへと近づく。

 ──ああ、この時間がいつまでも続けばいいのに。そう願わずにはいられないが、このひと時をジルクニフは己に刻み込む。決して忘れぬ思い出として。

 

 曲が終わり、向かい合って礼をする。

 すると、会場からは万雷の喝采が降り注ぐ。

 ジルクニフは慣れた仕草でそれを返していく。アレーティアも後ろにいるラナーに倣ってそれを返していく。

 こうしてアレーティア初のダンスは終わった。

 

 

 

 ○

 

 ○

 

 ○

 

 

 

「ふぅ……」

 

「お疲れ様です、旦那様」

 

 私はダンスデビューを終え、今は壇上の席へと戻りました。

 気づけば隣にはラナーがいて、飲み物を差し出してくれました。ありがたくそれを受け取った私はゴクゴク……と飲むわけにはいかないのでチビチビと飲みます。

 

「初めてのダンス、いかがでしたか?」

 

「まあ……そうですね。 意外と楽しかったかも」

 

 これは本心です。戦闘や生産といったものとは違う楽しさがありました。

 前世でもこういった活動をしていなかったので、とても新鮮でしたね。

 それにしても……。

 

「折角ならラナーのダンスもじっくり見たかったですね」

 

「え?」

 

「え?」

 

 あ……つい思ったことが口に出てしまいました。

 ラナーも想定していなかったのか驚いています。

 

「あ~、ほら、ダンスを教えてもらったとは言え、こういう場で見るのとではまた違うんじゃないかなって……。 それにそのいつもと違ったその紫のドレスも似合っているし……」

 

 今日のラナーの着ているドレスはいつもの華やかな中にも気品と愛らしさが同居したドレスを着ていました。

 でもこんなドレス持っていましたっけ……?多分、今日のために仕立てたんでしょうが。

 

「………ありがとうございます、旦那様。 クライムが褒めてくれた時も嬉しかったですけど、旦那様に褒められるのも嬉しいですね」

 

 頬を赤く染めてにっこりと笑うラナー。ここだけ見ると可愛いんですけどねぇ。

 

「おい、何をひそひそと話しているんだ?」

 

 あ、遅れてジルクニフとお姉ちゃんが帰ってきました。

 

「いいえ、他愛ない話をしていただけですよ陛下」

 

「ほう?」

 

 あ~またバチバチとやり合っていますよ。こんな所でまでやめてほしいですね。

 

「ほら、二人ともそこまで。 魔導国の方々のダンスが始まりますよ」

 

 こうして二人を諫めて、アインズ様たちのダンスを鑑賞しました。

 曲は……WEB版のようにユグドラシルの曲を使用するかと思いましたが、どうやらそうはせずに現地の曲をそのまま使用したみたいです。

 アルベドが率先してリードすることでアインズ様のダンスも特に問題なく、滞りなく進み見事に終えました。

 

 

 その後はと言うと、ラナーが私にダンスを見せるとお姉ちゃんを引っ張りそのままダンスを再び披露したり、それを見て対抗心を覚えたのかジルクニフともう一度踊ったり、貴族令息にダンスに誘われたのを断ったりと……色々なことがありましたが、一通りは楽しめました。

 

 舞踏会後は着替えて、ジルクニフにドレスを返して──と思ったら一言「それはやるから、次の機会があればまた着るといい」と返せず私の女用クローゼットに加わりました。

 夜は……お姉ちゃんから機嫌を直すためにと私からなんでも願いを叶えてくれると聞いたラナーが寝室で待ってましたと…………。今回は辛勝でした。

 

 そんなこんなで舞踏会の日は終わりを迎え──それから一月後、私とお姉ちゃんは因縁の地へと向かうことになりました。

 

 

 

 

 





アレーティア
ダンスとちょっとした暗躍を成功させる。
TSしているので中身は男だが、既にこの世界に来て20年になるので前世年齢を超えれば自然と性自認が女になる。
〈性転換〉という特殊技能を持っていても、魂の性別までは変わらないため、マーレがいずれ女装をやめるようにアレーティアもいずれは〈性転換〉を使用しなくなる。
女として見られる、扱われるのは構わないが、情欲増し増しの目で見るのはNG。理由はエロフ王。
振り向いてもらいたければ紳士的な接し方を心掛けよう!

ジルクニフ
後半パートはジルクニフ視点。
複雑な感情を抱いているのは勿論、アレーティアを正妃に迎えたい気持ちは変わらないので、舞踏会で周りを固めている。
それはそれとしてこのダンスを教えたのはロクシー。良い仕事をしたと後でめっちゃ褒めるも、さっさと後宮の女を孕ませに行け、アレーティアを落とすなら早くしろとぞんざいに扱われる。可哀想。

アインズ様
アレのどこが初めてだよ!?と内心ツッコミ。
ダンスは無事に終えることが出来た。
アレーティアに何かのお誘いを受ける。

アルベド
純白の衣装をアインズとお揃いで用意。
純白の衣装に公の場でのファーストダンス……これはもう結婚では?という思考になったり。

ラナーのやったジェスチャー
ジルクニフを含めた貴族令息令嬢を指でスーッと指し、親指で首を掻っ切る仕草をした後コテンと首をかしげる。なお、ここまでとてもいい笑顔というある意味ホラー。



次回、最終章突入です。
ちょっとプロット改めて練るのでお待たせするかもしれませんが、エタりはしませんので気長にお待ちください。

感想、高評価よろしくお願いします。

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