転生したらオバロ世界のエルフだった件について   作:ざいざる嬢

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アンケートありがとうございました!

結果は『必要』の方が多かったので次のキャラクター紹介Part2でまとめて紹介します。


私アレーティア、今蜥蜴人と山小人の後ろにいるの

 

 トブの大森林を抜けてアゼルリシア山脈に入り数日が経ちました。

思えば旅をしたのは故郷を脱走したのを除けば今回が初めてになるのでしょうか。前世でも体験したこともない、知識もないままに帝国を離れてしまいましたが襲ってくるモンスターを倒して食料代わりにし、トブの大森林でそれとなく採取した野草なんかも摂取します。問題は目的地である山小人の住処の場所が分からないという事…。

 

 原作でもゼンベルの記憶を頼りに捜索していたから正直見つけるのはかなり至難なのでしょう。ゼンベルはどうやって見つけたんでしょうね?

 

 …あ、そうだ。居住地を探すのではなく、ゼンベルを探せばいいんです!どうしてこんな簡単なことに気づかなかったんでしょう!そうと決まれば早速探知系魔法を使いましょう。

 

 

 〈観測衛星〉(オブザベーション・サテライト)、第十位階に相当するであろう探索系魔法。かなりの魔力を消費し発動時間は数十秒という燃費が少々悪く地下や洞窟などでは使えないというデメリットがあるものの、その探索範囲は指折り付き。この広大なアゼルリシア山脈の地表部分なら問題なく探索できるはずです。

 

探索対象:蜥蜴人(リザードマン)

観測範囲:アゼルリシア山脈地表部全域

 

 …いました。大分離れたところですが片腕が大きいリザードマンが見えます。幸運なことに近くにドワーフらしき影も見えますね。あの近辺に恐らく目的地があるはずです。

 まだ晴れているうちに合流したいものですね。〈飛行(フライ)〉を使い二人目指して山脈を飛んでいきます。

 …ところでリザードマンの数え方が人か匹かで少々悩みましたが、多分人が正解でしょう。

 

 

 

 

「なあ、頼むよドワーフのおっさん。俺はもっと強くなりてえんだ!だからよ?」

 

「あーもう分かったわい!そこまで言うんじゃ、ワシが鍛えてやる!!しかしのぉ、ワシは厳しいぞ!ただ飯ぐらいなんて許さんからな!きっちり働いてもらうぞい!」

 

「それぐらいならお安い御用だ!よろしく頼むぜ!ドワーフのおっさん!」

 

「おっさんおっさん言うでない!ワシにはバザルっちゅう名前があるんじゃ!バザル師匠、そう呼ぶんじゃ。」

 

 

 移動を始めて凡そ半日、日が暮れ始めましたがようやく見つけました。今、あちらもようやく接触(コンタクト)したみたいですね。和気藹々と喋っています。さて、そこに割り込む形になりますが…思い切って後ろから話しかけてみましょうか。

 

「あの~すいません。」

 

「「うおぉっ!??」」

 

 二人して驚いた様子でこちらを振り返ります。そんなに驚かないでほしいです。

 

「おいリザードマンの!逃げるぞ!!」

 

 あれ?なんだか様子がおかしいです。どうしてでしょう?私なにかやっちゃいました?

 

「お、おう!?なんでだ!?」

 

「ありゃあこの山に現れるっちゅう『雪女』に違いねえ!捕まると凍えさせられてそのまま目覚めなくさせてくる恐ろしいモンスターじゃ!」

 

「そりゃやべえな!さっさとトンズラするのが正解だな!!」

 

 

 

 …ものすごい勢いで逃げられてしまいました。なんで?まあ確かに辺りは暗くなってきましたが雪女に間違われるような恰好はしていないんですけどねぇ?

雪女と言ったら和服が定番でしょう。今の私の格好はバイザーに白のワンピースに白地のタイツ……あ、まごうことなきバイザー除いて真っ白ですね。雪女に間違われても仕方ない…のですかね?バイザーで顔が見えなくて怪しいのも拍車がかかっているのかも…。ところでこの世界の雪女ってどういう姿で伝わっているのか非常に気になります。

 とりあえず後を追いましょう。逃げる先はきっとドワーフの拠点のはずですし付いていけば問題ないはず。

 

 しかし、ここで私の悪戯心が湧いてきました。彼らは私のことを『雪女』と呼びましたが、『雪女』では少々面白みが足りませんし恐怖が足りません。なので……

 

 

 

 

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「はぁ…はぁ…ここまで来れば大丈夫じゃろ。」

 

「なんでぇ、そのまま都市に向かうんじゃないのかよ。」

 

「馬鹿を言え。もし『雪女』を撒けずに帰ってみろ。たちまちみーんな凍ってしまうわい。今日のところはこの穴倉で過ごして、また明日日が昇ってから移動するぞい。ああいうモンスターは夜しか行動しないっていうのが鉄板らしいからな。」

 

「そういうもんなのか。しっかしこの山は寒いな。ちょいと俺には厳しい寒さだな。」

 

「今日のところは我慢せい。薪なら十分に取ってきてある。これで暖を取って酒を飲んで体を温めるんじゃ。お前さんも一杯飲んでおけ。」

 

「おう、すまねえな。俺達には酒を飲むっていう習慣が無いから新鮮だぜ。」

 

「それは勿体ない!お前さんもこの先のフェオ・ライゾに着いたら他のドワーフ共ともこういう付き合いがある。今のうちに慣れておけ、ほれもう一杯。」

 

 薄暗い洞窟で焚き木に火をつけ語り合うリザードマンとドワーフ。種族は違えど二人は既に打ち解けていたのはゼンベルの気軽さ故か、それともドワーフのバザルの懐の深さ故か。はたまた酒を飲み交わした間柄になったからなのかは分からない。

 

 

 

私アレーティア、今お外にいるの

 

 

 

 そんな折に二人の耳に聞き覚えのない小さな声が聞こえた。

 

 

「…なんだぁ今の?空耳か?」

 

「こいつは…〈伝言(メッセージ)〉か?アレーティアって名前も聞き覚えが……?」

 

 

 

私アレーティア、今洞窟の入り口にいるの

 

 

 

 二人の顔に汗がにじみだす。暑さや酒のせいではない。この聞こえてくる何者かも分からない相手からの一方的な〈伝言〉に恐怖心を抱いたからだ。そもそも、こんな〈伝言〉の使い方など想像したこともない。それ故、その異質感が恐ろしさに拍車をかける。

 

 

 

私アレーティア、今洞窟の中にいるの

 

 

 声量が大きくなる。それはこの〈伝言〉相手がこちらに近づいているのを示唆しているのか。二人は立ち上がり迎撃できるよう武器と拳を構える。

先程の和気藹々とした空気は消え去り、あるのは緊迫感。こちらに迫る未知の恐怖だ。

 

「なんだろうなぁ……〈伝言〉って魔法を使うモンスターっているのか?」

 

「いいや、少なくともワシは聞いたことがない。もしかすると、この山の知られざるモンスターなのかもしれん。気を抜くな?」

 

 

私アレーティア、今貴方達が見えるところにいるの

 

 

 

「「………!!」」

 

 

 最早声を発することすら出来ず目の前を凝視する。この洞窟は一本道、この焚き火で照らされている範囲に相手は見えず、であればその少し奥……すぐそこにいるはず。

何かが動く音も聞こえない。聞こえるのは早まる自分たちの心臓の鼓動だけ。今か今かと待ち構えそして──

 

 

 

私アレーティア

 

 

 

 再び声が聞こえる。先ほどと同じ音量で。ただし先ほどと違ったのは──

 

 

 

 

「今、貴方達の後ろにいるの。」

 

 

 その声が肉声であり、二人の肩に手をかけ耳元で囁いているということだった。

後ろを振り向くとそこには──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 "ドッキリ大成功!"という文字が書かれた看板のようなものを背中に背負っている先ほど遭った『雪女』がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あはははは!!とっても面白かったですよ!」

 

「洒落にならんからやめてくれ!!もうダメかと思ったわい!!」

 

「いや~いつの間に後ろにいたんだよお前!あの時もそうだったが気づかないうちに後ろにいるのはどういう魔法を使ったんだ?」

 

「それは秘密です。」

 

 はい、ようやく合流できました。いや~疲れましたね!即席で"ドッキリ大成功"のプラカードを作って都市伝説の一つ、"メリーさんの電話"をこの世界で再現してみました。

〈伝言〉を使ったドッキリって見たことないですよね。都度都度〈伝言〉を使いなおさないといけないのが手間でしたが結果は上々、大成功で大満足です。

 どうやって彼らの背後に回ったのかといえば使用度が高く、使ってみるとあら便利と評判の〈完全不可知化(パーフェクト・アンノウアブル)〉です。使ってみたいとは思いつつ〈完全不可視化〉までしか使えなかったので残念だと思った矢先に使えるようになったので早速使ってみましたが驚くほど便利ですね。音すら消せるのは今回のドッキリにはうってつけでした。

 まあ、どうして使えるようになったのかは本当に謎です。そういえばいい加減に生まれながらの異能(タレント)も調べてみた方がいいですね。

 自分を理解しないでこのまま強くなれるとは思いませんから。ドワーフの住処に生まれながらの異能を調べられる魔法詠唱者(マジック・キャスター)がいれば聞いてみましょう。

 

 

「雪女と勘違いして悪かったなお嬢さん。いや、アレーティアって言った方がいいのか?」

 

「ええ、私はアレーティアといいます。」

 

「そういや俺も自己紹介をしねえとだな!俺はゼンベル・ググーっていうんだ。」

 

「ワシはバザルじゃ。それで、お前さんは何しにここに来たんだ?ワシらに話しかけてきたっていう事はドワーフに用があるんじゃろ?」

 

「はい、実はドワーフの王都への道に用がありまして。ただ行き方を知らないので誰か案内してくれないかと思ってドワーフの方を探していたんです。」

 

 ここでバザルが少々難しい顔になりました。多分クアゴアと王都を占拠するフロストドラゴンのことを思い浮かべているのでしょう。まあ、両方とも敵になるのであれば叩きのめしますが。

 

「王都…フェオ・ベルカナか。やめときなさい。今王都はフロストドラゴンに乗っ取られて最近はクアゴアという亜人がウヨウヨしておる。見つかればタダじゃあ済まんし、何よりも王都に続く道は難所と呼ばれ何の対策もなしに向かえば待っているのは死じゃ。」

 

「いえ、私強いんで大丈夫です。それに私の目的はその難所にいるっていうモンスターと戦う事なので。」

 

 そう、私の本来の目的はこのドワーフの王都への難所への道にいる溶岩を泳ぐモンスターです。名前は忘れてしまいましたが確かこの世界基準ではかなり強大なモンスターで難度百四十相当って言われていたはず。それに溶岩地帯なので普段の平野や森と違い地形そのものを警戒しないといけません。溶岩なんてレベルとか無視して殺してきそうじゃないですか。

 某作品の伝説の戦士みたいにバリヤーでも張って復活!とか出来れば胸熱なんですが。

 それに、私自身が強くなりすぎてタイマンならほぼほぼ負けることはないとは思いますが慢心ダメ、絶対。アインズ様が石橋を壊れるぐらい叩いてから〈飛行〉で渡るのと同じです。

 

「アレと戦う!?正気かお嬢さん!あの溶岩地帯を泳ぐラーアングラー・ラヴァロードは恐ろしいモンスターじゃぞ!?雪女やクアゴア、場合によってはあのフロストドラゴンよりも上かもしれんのだぞ!?」

 

「そんな名前なんですね。でもまあ昔森で戦った…なんて言ったかな?なんとか十五王より弱いなら問題ないです。」

 

 まだ私があの森にいた時のモンスター最大の相手だった真っ白なゴリラみたいなモンスターと同等なら今の私なら問題なく勝てます。

あのゴリラは本当に強かった……クソ親父に誘き出されて戦ったものの魔法も第四位階まで使ってくる上に森を縦横無尽に駆け巡りその体格に見合わぬスピードでこちらを攻撃してくるので当時の私にはひとたまりもありませんでした。その上知能も高く引き分けたのは運が良かったのか、それとも向こうが見逃してくれたのか…今となっては分かりませんが。

 

「その十五王が何かは知らんが……駄目だと思ったら即座に逃げるんじゃぞ。この条件が飲めるなら案内してやってもいい。案内した相手が生きて帰らなかったというのは酒がマズくなるからのぉ。」

 

「それはもちろんですとも。すぐに挑むつもりもありませんし、準備が整うまではバザルさんのところにゼンベルさんと一緒にお世話になりますね。」

 

「そりゃあ構わんが、ちゃーんと仕事をしてくれよ?ワシだって裕福なわけじゃないからの。」

 

「それなら任せてください。こう見えて力仕事は得意なので。」

 

「お、アレーティアの姐さんも一緒か!こりゃあ賑やかになりそうだ!」

 

 

 

 こうして、この日は日が昇るまで三人で焚き火を囲いながら過ごし、その後ドワーフの都市へと向かいました。

 種族が違えどこうして過ごすのは悪くないですね。帝国に居た時とはまた違った楽しさがあります。

 

 

 …あ、そうだ。もしフロストドラゴンが襲い掛かってきたら屈服させて帝国に何匹か持ち帰りましょう。"皇室空護兵団(ロイヤル・エア・ガード)"は鷲馬(ヒポグリフ)に乗って帝国の要所を警護していますけど、ドラゴンライダーが何人かいてもいいですよね!?

 よし、絶対に何匹か捕まえて帰りましょう。なんなら卵だけでも強奪しましょう。ジルクニフもきっと勉強から逃げ出したこともこれで許してくれるでしょう。

なによりも私が乗ってみたい。粛清騎士ではなく竜騎士の方が断然かっこいいと思うんですよね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐううっ!?」

 

「いかがされました陛下?!まさか毒を盛られて……」

 

「いいや違う。何故だか分からんが近いうちにまたとんでもないことが起きそうな予兆(胃の痛み)だ……。」

 

 

 

 





ようやくタイトル回収出来たので次回からはタイトル名変えます(笑)

ラーアングラー・ラヴァロード……名前だけ出てきたモンスター、アニメにも一瞬出ている
レベル的には50手前ぐらい?

オリキャラ
バザル……ゼンベルに修行僧の心得を教えた人物ですが、原作に名前がなく未登場なのでオリジナルで書きました。名前の元ネタは多分マイナーですけど知ってる人は知ってるはず。

白いゴリラ……オリジナルモンスター。もう出番はありませんがエイヴァーシャー大森林の大樹海十五王の一柱という設定。
かなり知能が高い上に当然ながら身体能力も高い。エルフ国時代のアレーティア最大の敵であり、唯一倒すことが出来ず逃してしまった。
倒せなかった理由は逃走。あのまま戦い続ければ負けるのを悟り早々に離脱した、という設定。もしかしたらデケムに処理されてるかも…いや、アイツはそんなことしないな多分。

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