転生したらオバロ世界のエルフだった件について   作:ざいざる嬢

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週一更新維持しようと頑張っていましたが間に合わず……。

三回ぐらい書き直した反動が()


帝国ルート 帰国、日常編
アレーティアと帰国 〜半年分の胃痛の種を添えて〜


 

 今、私は一つの夢を叶えています。

 

 そう!フロスト・ドラゴンの背に乗っているんです!飛んでます!ひゃほーい!!

 え?〈飛行(フライ)〉と何が違うんですかって?元男ならファンタジーな世界に来たならドラゴンを倒すか乗るかに憧れますよね?私は乗る派だったのです。それを〈飛行〉でいいとか言ってしまえばロマンもクソもありません。

 

 さて、ユグドラシルにドラゴンライダーや竜騎士の職業があったかどうか不明ですが、モンスターテイマーの派生であるかもしれません。なので、私はこの卵を育ててこの世界初の職業習得を目指します。

 余談ですが先日身につけた刻印魔法(ルーンマジック)は私以外現状誰も使う事はできないので私オリジナルと言ってもいいでしょう。

 

 竜王たちが使う始原の魔法(ワイルドマジック)みたいで格好いいです。でももっとオリジナリティあるものが欲しいと思ってしまうのが人の業というもの。ルーンも使えて竜も操れる…実にロマン。

 

「あ、あの……乗り心地は如何でしょう?」

 

「最高ですね……。すいませんね送ってもらっちゃって」

 

「いえいえ!貴方様のような強者に従うのは当然のことです!母上からも言われておりますので何なりとお申し付けください!!」

 

 そういえば紹介が遅れました。私が乗っているフロスト・ドラゴンはあの場にいた妃たちの娘の一匹、サフォロンという若めのフロスト・ドラゴンです。若めと言っても百年近く生きているそうですがドラゴンの基準で言えばまだまだとか。

 

 エルフの私とかはどうなんですかね?十七になりましたが、歳とったエルフからすればまだまだ赤子なんでしょうか?分かりません。クソ親父の年齢すら知りませんから。

 

 サフォロンは兄であるトランジェリットがあっさり殺された事に怯えて私に従うのでどうか命だけはと懇願されたので、帰りの足に使うことにした訳です。

 このまま帝国にお持ち帰りしたいのは山々ですが、妃のドラゴンたちと生きて返すと約束してしまったので断念。

 

 トランジェリットとラーアングラー・ラヴァロードの死体は冷凍して後続している根源の星霊(プライマル・スターエレメンタル)に運ばせています。重力系統の魔法って応用が利いて便利そうですね。私も後で練習しましょう。

 

 そんな心地よい時間もあと僅か。もうバハルス帝国が見えています。

 

「もうすぐ人間の国に着きますがどの辺りに降りればいいでしょう?」

 

「そうですね……皇城の正面の広間が空いているのでその辺りにお願いします」

 

 あの場所、アニメでもドラゴン一匹ぐらいなら余裕で納まるぐらいには広いので問題ないでしょう。さあ!帰ってきましたよ半年ぶりに!

 

 

 ○

 

 ○

 

 ○

 

 

 その頃、バハルス帝国の皇城はとある報告で緊急の対処に追われていた。

 皇室空護兵団(ロイヤル・エア・ガード)からの報告によりフロスト・ドラゴンと思わしきドラゴンが帝国を目指して飛んできているという。

 フロスト・ドラゴンは大きさにもよるがアダマンタイト級冒険者でも討伐は難しいとされている。そもそも生物としての格が人間と竜では規格が違うのだ。

 帝国としては冒険者組合に依頼を出したいところだが、アレーティアによる騎士たちの強化で冒険者の需要がガタ落ちしたため──代わりにワーカーと騎士の志望者が増加したが──それは叶わない。

 迎撃のため帝国騎士団は以前起こったアンデッドの大群への討伐隊以上の戦力を早急に用意し対応に当たっていた。

 

 

「作戦は皇室空護兵団がフールーダ率いる魔法詠唱者(マジック・キャスター)部隊を護衛し〈火球(ファイヤーボール)〉による一斉放射で地上に叩き落とし、その後帝国四騎士〈勇猛〉〈陽炎〉〈雷光〉の三人を筆頭に皇室地護兵団(ロイヤル・アース・ガード)による地上戦を仕掛け上空と地上から討ち取る。他に意見はあるか?」

 

 この緊急事態にかつてのように頭を抱えて心細さを隠していた少年はいない。ここにいるのは帝国の未来を担うバハルス帝国皇帝、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスだ。彼は皇帝としてこの事態を収拾するべく騎士たちに指示を出していた。

 

「全く、アレーティアがいればここまでの事態にはなっていないのだが……」

 

 少し困った笑みを浮かべるジルクニフだがその顔に恐怖の色はない。この半年、アレーティア無しでも十分な武力を持ったことを王国との戦争で確認できた。

 それ故か、フロスト・ドラゴン相手でもこれだけの戦力を当てれば勝てるという確信を得ることができている。

 

「陛下、ご安心ください。私もアレーティア嬢程の戦果は上げられませぬが群れでなく一匹ならば十分対処出来るものかと思います。」

 

「そうか。それなら心強いな。しかし、仮にアレーティアがいたとして…アイツでもフロストドラゴンは流石に手に余るか?」

 

「粛清騎士殿でもフロスト・ドラゴン相手に勝てるかどうかは分かりませんが、かつてのアンデッドの大群を一人で滅ぼした功績を思えば不可能ではないでしょうね。あの人は良くも悪くも滅茶苦茶な人ですから」

 

「ははっ!違いないな!案外あの人なら逆にボコボコにして手なずけているんじゃあねえか?なあ、ナザミ」

 

「粛清殿なら考えられなくもないな。ギガントバジリスクやあの武王と同じ…ウォートロールと言ったか?あれと同じ種族を簡単に屠れるのだからドラゴン相手でも大きさ如何では返り討ちにしそうだ」

 

 各々がジルクニフのさり気ない疑問に答えていく。その空気はこれから死地へ向かう者に程よい弛緩剤となっていた。

 

「さて、お前たち。その命無駄にするなよ。生きて帰ってこい」

 

「「「ハッ!!」」」

 

 

 そうして、騎士たちは戦場へと向かっていく。決死の覚悟を持って。

 

 

 ……そのフロスト・ドラゴンの背に胃痛の根源(アレーティア)が乗っていることに気付かずに。

 

 ○

 

 ○

 

 ○

 

 

「アレーティア様、前方に人間の群れが見えますがいかがいたしましょう?」

 

「ん?あれは……皇室空護兵団と…魔法省の高弟たちかな?もしかしなくてもこっち狙っていますね」

 

「そう見えます……ねえええええええええええ!!!!????

 

 おお、〈火球〉がものすごい数飛んできますね。流石フールーダの高弟たち、腕は上がっていそうです。サフォロンも火の耐性は低いので死に物狂いで避けています。

 とりあえず当たって落ちるのは嫌なので〈上位魔法盾(グレーター・マジックシールド)〉を唱えます。これで、あの程度の〈火球〉では傷一つ付けることは敵わないでしょう。

 

「うぎゃあああああ……ってあれ?熱くない?熱くないですアレーティア様!」

 

「そうでしょう?〈上位魔法盾〉は魔法によるダメージをいくらか防ぐので覚えておくといいですよ。」

 

 まあ、高位の魔法なんで難しいかもしれませんけど、ドラゴンスペックなら可能じゃないでしょうか。確か異形種設定で職業レベルも獲得出来るはずですし。

 確かドラゴンの種族レベルは成長の度合いで変わるんでしたっけ?ヤングとかアダルトとか。もしかしたら成長の度合いによって獲れる職業レベルは少なめに設定されているのかもしれませんね。そう思うとツアーとか他の竜王のステータスが気になりますね。

 その辺りはこの二つの卵から孵ったドラゴンで検証していきたいですね。

 

「では、このままあの場所まで突っ切って行ってください。」

 

「かしこまりましたっ!!」

 

 ○

 

 ○

 

 ○

 

 

「フールーダ様!〈火球〉が効いていません!なんらかの防御魔法かと!」

 

「なんじゃと!?」

 

 予想外のことが起きていた。火の耐性が低いフロスト・ドラゴンに〈火球〉が通じないのだ。なんらかの魔法で威力を軽減しているなら分かるがフールーダの眼にはあのフロスト・ドラゴンに魔力を感じていない。なのに何故通じないのかを考える。なんらかのマジックアイテムを装備しているのか、それとも骨の竜(スケリトル・ドラゴン)のように魔法に対する絶対的耐性を持つ変異種か。

 

「状況を確認する必要がある。私から離れよ……〈魔法最強化・火球(マキシマイズマジック・ファイヤーボール)〉」

 

 最強化した魔法、英雄の領域を超えた者にしか扱えない威力を誇った一撃がフロスト・ドラゴン目掛けて放たれる。

 しかし、その一撃はフロスト・ドラゴンには通じていない様だった。

 

「そんな!師の魔法ですら及ばないのか!?」

 

「もうダメだぁ……お終いだぁ……」

 

「勝てるわけがない!相手はフロスト・ドラゴンなんだぞ!」

 

 次々に嘆きの声が聞こえ皇室空護兵団にもそれが伝わり士気が低下していく。

 しかし、この男は違った。

 

「馬鹿者ども!何を嘆いておる!たった一つ魔法が効かない程度で何を喚いておる!魔法が通じないのならば手を変えよ!お前たちは下にいる四騎士と地護兵団と共に一度後方に下がれ!そして陛下に報告し策を練るのだ!」

 

「は、ははっ!」

 

「で、ですが師は……フールーダ様はどうなされるおつもりで!?」

 

「なに…未だ魔法が効かぬと決まったわけではない。骨の竜と同じかどうか全霊をかけた魔法をもって挑むのみよ」

 

 

 そこには英雄のオーラを纏った男がいた。フールーダ・パラダイン、今を生きる魔法詠唱者でも五本の指に入る実力を持つ偉大な人物がその力をあらわにしていた。

 

「さて、本当に魔法が通じないかはまだ解らぬ。火の魔法のみが効かない可能性もある…ならば〈二重魔法(ダブルマジック)〉」

 

 フールーダの掌から二つの魔法陣が現れそこから魔力の塊が放出された。魔法陣には色があり今回の色は赤と緑、即ち火と風の属性。これら二つが同時に放たれフロスト・ドラゴンに直撃──するがこれも無傷。

 

 しかし、先ほどとは違い微かな手応えを感じた。何が違うかと言われれば恐らくは魔力量か位階による軽微化だろう。〈二重魔法〉は第四位階魔法相当の魔法だ。ならばそれを超える魔法を与えれば──。

 

「見るがいい。これぞ三重魔法詠唱者(トライアッド)と呼ばれた私の真髄、第六位階に値する我が最強魔法を!〈三重攻性魔術(トリプルブレイズマジック)〉!」

 

 再び現れる魔法陣、しかし今度は二色ではなく三色。込められた魔力は先ほどの比ではなく三色の魔法陣はそれぞれが五つもの魔法陣と重なり合い砂時計の様な立体を描く。そして、魔法陣から三色──火、風、雷の三属性による魔力が放たれ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっぎゃああああああ!!痛えですううううう!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんとも情けないフロスト・ドラゴンの絶叫を轟かせた。

 

 

 

 ○

 

 ○

 

 ○

 

 

 すごいものを見ました。それは何かと言われればそう!フールーダ・パラダインの戦闘シーンです!!

 原作では一切戦わず、過去に死の騎士(デス・ナイト)を上空から〈火球〉でボコボコにしたという事しか触れられなかったあのフールーダが戦っているんです!これはすごいですよ!

 あ、サフォロンが魔法の痛みにのたうち回って振り落とされそうなので〈上位治癒(グレーター・ヒール)〉で傷を癒しておきます。

 

「ほらサフォロン。傷は治したから大丈夫でしょ?落ち着いて」

 

「うぅ~!!アレーティア様!魔法が効かなくなるんじゃあなかったんですか!?」

 

「いや、そんな都合のいい魔法があるわけないじゃないですか。あれはあくまで受ける魔法攻撃を一定量減少させるだけで無効にするわけじゃないんですよ」

 

 そんな効果があるのはアインズ様の常時発動型特殊技能(パッシブスキル)の一つ上位魔法無効化Ⅲとか骨の竜ぐらいだと思います。

 

「でもさっきまでは痛くも痒くも……」

 

「私の〈上位魔法盾〉の方が上だったから無傷だっただけで今のはそれを上回っていたから超えただけのダメージを受けたんです。いい加減納得してください」

 

 恨めしそうに私を見ていますが調子に乗ってあんな明らかにヤバそうな魔法に突っ込むのが悪いんです。そういうところは父親譲りでしょうか?

 そんな風に思っていると何やら別の視線を感じます。誰でしょう?

 

 

「……アレーティア嬢、ここで何をしておるんじゃ?」

 

 

 フールーダでした。付け加えるなら信じられないものを見る目で私を見ています。何故でしょ………あ!

 

 

 やっべえですわ!!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!

 

 

「色々聞きたいことがあるんじゃが……アレーティア嬢、まさか魔法」

 

「サフォロン!!今すぐあそこへ飛んで行きなさい!!早く!!」

 

「か、かしこまりました!!」

 

 もうバレてしまったっぽいですが、今はこの場を離れて後で戦士化すれば有耶無耶に出来るはず!!(※出来ません)

 

 一刻も早くこの場を離れるため速度上昇の支援魔法と刻印魔法も使用し──私たちは流星になったのです。

 

 

 

 

 

 

 

ドオオオオオオオオオオン!!!

 

 

 

「なんだ!?何の音だ!?」

 

「わ、分かりません!ただ今の音は皇城前の広間からかと…!!」

 

 私室でフールーダたちからの知らせを待っていたジルクニフの耳にとんでもない轟音が鳴り響いた。

 

 一体何なのか?もしやフロスト・ドラゴンとの戦いが激化して聞こえる音なのか。想定している戦場は帝都から大分離れた場所のはずだがここまで近づいているのか、それとも……。

 多くの思案を巡らせながら私室からベランダへ飛び出すとそこにあったのは……

 

 

 

 

 

 

「きゅう……」

 

「あー、速度上げすぎて減速できなかったんですね……支援魔法かけすぎちゃいましたし、刻印魔法は要らなかったかな……。でも、咄嗟に使ったとはいえ刻印魔法は鉱石に刻んで使うだけでなく生物にも刻んで強化できるとは思わな……あっ」

 

 

 

 広間のド真ん中に出来た小規模のクレーターの中には、恐らく減速できず地面に激突したフロスト・ドラゴンと帝国最強の騎士、アレーティアがそこにいた。そして目が合った。

 

 

「……一応聞いておこうアレーティア。何をしたんだ?」

 

 頬は引くついているが笑顔は作れているだろう。アレーティアはこちらを見て、辺りを見渡して少し申し訳なさそうにしながら

 

「えーっとですね……すいませんでした

 

 流れるような土下座を披露した。しかし、半年ぶりに帰って来て早々こんな大事を巻き起こしたこの女には一言言ってやらねば収まらなかった。

 

 

 

 

 

「この大馬鹿者がああああああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 





〈上位魔法盾〉──原作にある魔法ですが効果が不明なので魔法によるダメージを一定の値減少、という効果にしました。

〈二重魔法〉〈三重攻性魔術〉──オバマスのフールーダのスキルと奥義。こちらも勝手に第四位階、第六位階と設定。

フールーダ──本来ならルーンの技術書でウハウハ予定が書いてる途中で折角なら戦っているフールーダも書きたいと思い変更。

ジルクニフ──半年いなかった胃痛の種が爆弾になって返ってきた。安息の日々はもうない。
王国との戦争はガゼフがいない頃なので、強化された騎士たちで十分王国群を蹴散らせた。

サフォロン──オリジナルフロスト・ドラゴン。メス。不憫可愛い感じ。


三回書き直した理由はどれもカオスな展開になったからです。大体ジルクニフとアレーティアが勝手に動き出してクロスカウンターを顔面に叩きこんだりするからいけない。
次回は書きたい内容が決まっているのでそんなに時間がかからないといいなぁ。(願望)


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