転生したらオバロ世界のエルフだった件について 作:ざいざる嬢
帰国して数日が経ちました。
今私は諸々の後処理に追われています。
まず、フロスト・ドラゴンの一件。サフォロンについては約束通り一度アゼルリシア山脈に帰ってもらいました。ただ、本人がこのまま私についていく気満々になったようで親を説得してくるというのでその住居の確保に手間取りました。
ジルクニフに卵貰ってきたから育てて使役して竜騎士になる!と言ったのですが
「そのドラゴンを育てる知識と場所と時間と金はどうするつもりだ?ましてや、ドラゴンなぞお前以外にこの国で対処できる者がフールーダぐらいしかいない。お前が責任とか……うん、無理だな。返してこい」
と言われてしまったので卵をこの場で育てるのは諦めました。
私は止めるジルクニフと縋るフールーダの手を振り払ってとある場所に向かいました。
そう、勘のいい方は分かるはず。武王ゴ・ギンのオーナーの商人の屋敷です。名前は忘れていましたがオスクさんという方です。
アポなしでの訪問でしたがルーン武器をチラつかせると快く迎えてくれ、フロスト・ドラゴンの相談をしたところ
「新たな武王候補にドラゴン…いいでしょう粛清騎士様。卵の保管、及び飼育に全面的に協力させていただきます。そして、後々来るであろうフロスト・ドラゴンの方も住居を用意させていただきます。」
快諾してくれました。頼んでみてみるものですね。お礼に不要なルーン武具をいくつか差し上げました。三つ四つしか刻めてませんし割と弱い部類なので惜しくもありません。
ただ目をキラキラさせて喜んでいたのが記憶に新しいです。職人冥利に尽きるとはこのことを言うんですね。また今度機会があったら武王の装備でも作ってあげましょう。
余談ですがあの例のラビットマンの護衛には、小さな声で「超絶にヤバい」という評価をいただきました。超級ではないのが残念です。
なので、今後サフォロンが来たら新たな剣闘士として商人のオスクさんの下で生活してもらい、時を見て訓練とか調教をしていこうと思っています。
ゴ・ギンにももっと強くなってほしいですからね。彼は伸びます。
〈
さて、二つ目ですが持ち帰った鉱石ですね。
金や宝石の類は大部分をジルクニフに献上しました。量としてはジルクニフの私室の床半分が埋まるぐらいの量です。
この量にはジルクニフもニッコリ。
この時は感謝すると言ってくれました。まあ、散々迷惑かけてきましたしこれぐらいはしますとも。
今後も多分というか現在進行形で何かしら起こすんで前払いと思ってもらえればいいなぁなんて。
ついでに鍛冶が出来るようになったので専用の鍛冶場が欲しいとお願いしたところ、皇城近くの一等地の屋敷をいただけることになりました。
いや、欲しいの屋敷じゃなくて鍛冶場なんですけど……。好きに改造してくれていいとは言われましたが……。
一先ずここは作業場兼私専用の訓練場にしましょう。後程改築のために職人を探してもらいます。
後、爵位とか持ってないんですけどこんな良さげな所に住んで大丈夫なんですかね?そもそも今の私の住まいである皇城から出ていく気がないというのに……。
使用人とか雇うことになるのでしょうか?細かいところはもうジルクニフにぶん投げます。頭脳労働は私の仕事じゃあないんです。
ちなみに、貴族教育から逃げ出した件は珍しくジルクニフが
「気にするな。あれは私の判断ミスだった。お前という人間を理解していなかった私が悪いのだ」
とか言い出したんで思わず、何か悪いものでも食べましたか?って聞いてしまいました。
悪いものは食べていないそうですが、誰かにお説教はされたそうです。ジルクニフに説教出来る人なんていましたっけ…?
そして、三つ目にして最大の問題───
フールーダ・パラダインです。
はい、お察しの通り誤魔化せませんでした。トドメの一押しとばかりに
二人して第十位階まで使えますからね。せめて隠蔽の魔法を使っておくべきだったと反省してます。
しかし、バレたのはある意味好都合でした。ドワーフの国から持ち帰ったルーンの技術書、そして私の
あ、ルーンの技術書に関しては勝手にドワーフの国の重要機密を持ち帰ったとしてジルクニフにカンカンに怒られました。
国際問題になったらどうするんだって言われてもあの都市フロスト・ドラゴンの住処になっているんでナザリックが転移してくる四、五年後までは絶対バレない自信があるんですけど……。
後、フールーダに弟子にしてくれと縋りつかれましたが、私の場合教えることが出来るか微妙なところ……身体で覚えさせようにもフールーダは年齢が年齢ですし、うっかり加減を誤ったら殺してしまいそうですし……。
若い人たちなら問題なく死ぬ手前まで追い込めますが。
なので、弟子にするのは断りましたけどいくつか魔法を披露しました。
ジルクニフや他の魔法省の人を連れて帝国郊外の地に赴き、〈
この魔法に関しては魔力の消費が桁違いな分、とんでもない威力を発揮するので使うとしたらここぞという時だけにします。
現に〈流星群〉なんて比じゃないぐらいの被害を出したので、ジルクニフにこの魔法だけは絶対に帝国で使うなと念押しされました。
しかしまあ、この魔法扱いが難しすぎる上にある程度魔力を確保してないと撃てないので改良の余地は十分ありそうです。
ちなみにですが、数々の魔法を見たフールーダは狂喜していましたが、ジルクニフや高弟の人たちは唖然としてました。その内の一人の女の子がこちらを見て青い顔をしていましたが大丈夫でしょうか?体調が悪いなら日を改めて披露したものを……。
とりあえず、今後フールーダとは予め日を決めて魔法の講義や研究なんかをすることにしました。毎日迫られたら仕事とか進みませんからね。不安は多いですが仕方ありません。
ついでと言っては何ですが、他の魔法詠唱者に関しては私がいくつか口出ししても良いという事になりました。こちらも日程と時間が決められており、かつての遠征のようなことができないのが非常に残念です。
私だって前回の反省を活かして魔法詠唱者の人たちのために遠征内容を考えていたのに、その前にトーマスに止められてしまったのが誠に遺憾です。
さて、あんなこんなで慌ただしい日々を送っていましたが、ジルクニフから新しいお仕事をいただきました。
どんな仕事かと言えば、後宮の警護だとか。つまり、側室?妾?の方々とそのご子息を守ればいいと。
正直、ジルクニフのそういう相手のことは何一つ知らないので失礼にならないように気を引き締めないといけません。
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後宮にたどり着き、警護に就くことになったので挨拶を……と思いジルクニフに聞いたこの後宮の主人だというロクシーさんに挨拶に来ました。
「待っていましたよ粛清騎士。……いや、この場ではアレーティアと呼んだ方がいいですか?私はロクシーといいます。」
「初めましてロクシー様。本日より警護に就くアレーティアと申します。呼び方はどちらでも構いません。お好きな方でお呼びください。」
ロクシーさんに会った第一印象は……そうですね、母性的という感じでしょうか。
顔立ちは前世でいうところの一般人によくいそうな顔立ちですが、目元が柔らかいからか、それとも彼女の雰囲気がそう感じさせるのか分かりませんが母性を感じました。
そういえばジルクニフに奥さんと子供を大事にしないと許さないと言ったことがありました。
それを踏まえたうえでの人選でしょうか?とにかく良い判断だと思います。流石はジルクニフ。
すると、ロクシーさんは私の顔に手を伸ばし顔隠しのバイザーを剥がしてしまいました。
抵抗しようにも相手は警護対象なのでうかつに手を出すわけにもいけません。
「あら、ジルクニフに聞いてはいたけど本当に奇麗な顔ね。隠さなければいいのに。折角の容姿が台無しよ?」
「顔を隠しているのは訳ありでして……少なくともまだ陛下に外す許可を貰っていないので返していただいても?」
「そうね……折角だからこの後宮にいる間ぐらい外してもいいですよ。あなたの素顔、もっと見ていたいわ」
うーん、ちょっと困りましたが後宮だけならまあいいんじゃないでしょうか?
一応低位の探索魔法にはかからないようにマジックアイテムを身につけていますし、直接でもない限りバレることはないでしょう。
「かしこまりましたロクシー様、この場でのみ外させていただきます」
「言葉遣いが硬いわね、いいのよ?″様″なんてつけなくても。あなたとはもっと知り合いたいから呼び捨てでも結構よ?」
「いえ、そういうわけには……」
ひえええ、押しが強い!困ってしまいます。こういう相手は初めてですし、同性との付き合いは四騎士のルミリアぐらいしかありませんので……。
しかも立場的には私より上ですし面子というものもあるでしょう。
「気にしないで?私自身貴族としての位は低いですし、陛下と付き合いが長いのはあなたの方。それに帝国で今最も重要視されているのもあなた。陛下もアレーティア無くして今の帝国は無いって言っていたわよ」
「へ、陛下がそんなことを……」
思わずにやけてしまいます。ジルクニフが私を褒めるなんて!
普段怒られることの方が多いので間接的にでも褒められていたと分かると嬉しいですね!
「もしかして、あまり褒められたことはないの?」
「あ、いえそんなことはないんですけど……普段どちらかというと私が陛下に迷惑をかけることが多いので……」
「あの男本気で娶るつもりあるのかしら……ご機嫌取りもできないでどうするの」
「何か言いました?」
「いいえ、気のせいよ。それにしても、これが無いだけで大分印象が変わるのね。昔にあなたを見た時はもっと怖い人だと思っていたわ。今はとっても可愛らしいわ」
「可愛らしい……」
元男でも可愛いと言われると嬉しいです。顔から耳まで真っ赤になっているぐらいに熱くなっているのを感じます。
あのクソ親父に褒められても生理的嫌悪しか感じませんでしたが、ロクシーさんに褒められると全然違います。
なんでしょう……母親に褒めてもらう感覚に近いというか、温かいものを感じました。
「いいのよ、もっと素直になっても。ここにいるのは私とアレーティアの二人だけなんですから」
「は、はい……」
「まだ固いわよ。ほら、ロクシーと呼んで頂戴?」
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ジルクニフはこの日の政務を終え後宮へと向かっていた。
理由は二つあり、一つは何人かいる妾と夜を過ごし次代の皇帝を作ること。
そしてもう一つが、後宮の主人であるロクシーに会うことだ。
アレーティアが半年の間いなくなった時、ロクシーに色々と相談した結果一度直接会って話してみたいという要望をされていた。
元々、一度は後宮の現状をアレーティアに見せ、子も妾も蔑ろにしていないという意思表示をするつもりでもあったため、丁度いいと後宮警備の仕事を与えロクシーと対話する時間を設けたのだ。
時間にしておよそ半日。そろそろ時間的にはアレーティアも警護の時間を終え自室へと戻っているだろうと思い、ロクシーの部屋に入った。すると、そこで思いもよらぬものを見た。
「ほら、やっぱり似合うわよ。まるで空に輝く星のよう」
「こ、これが私、ですか……?」
ジルクニフは見た。この部屋にいるはずのない者の姿を。
その人物は普段顔を隠しているバイザーを着けておらず、代わりにその顔は化粧で彩られている。
化粧は濃いわけでも薄いわけでもなく、元々の素材の良さを引き出す程度のものだったが、それでいて尚目を奪われる魅力にあふれていた。
服も本来ならば鎧を身につけており騎士然とした出で立ちをしているが今は違う。
そう、彼女はスパンコールが散りばめられた夜空を思わせる色をしたイブニングドレスを纏っていた。
普段見えない素肌──肩や胸元が露出したノースリーブになっており、胸元にはロクシーに着けられたのかドレスによく合ったネックレスが輝いていた。
──美しい。
これ以上の言葉が出てこなかった。身内贔屓で言えば王国の王女「黄金」ですら霞むのではないかと思わせる美貌を持つその人物は誰か。
答えは至極簡単、アレーティアだった。
「私、あまりこういった格好は好みではないんですが……」
「ええ、勿論強制はしないわ。でも覚えておいてほしいの。こういう格好が似合うっていう事も。折角女に生まれてそれだけの美貌を持って生まれてきたんだから、着飾らなきゃ損ですよ?」
「そうかもしれませんけ…ど……」
目が合った、合ってしまった。
ジルクニフは想像もできなかった光景に動くことすら出来なかった。ただただ見惚れてた。
アレーティアもまさかこの場にジルクニフが現れるとは思っておらず慌てふためいている。
そうして最初に出てきた言葉は──
「……森の妖精とエルフは言われるそうだが、そんな言葉では収まらんな。よく似合っているぞアレーティア」
褒め称える言葉だった。
それを聞いたアレーティアは数秒固まった後、顔を赤くして逃げるように部屋を後にした。
「……なんで勝手に入ってきたんですか。すごくいい感じになっていたのに」
「…すまなかった」
「すまなかったで済むと思っているんですか?大体ですね──」
この後、しばらくの間ロクシーのジルクニフへの非難が止まなかった。
そして、当のアレーティアは自室に転移しひとしきりドレス姿を姿鏡で堪能した後、備え付けのクローゼットに大切にドレスを収納した。
オスク──武王のオーナー。帝国の最重要人物である粛清騎士の来訪のため、アポ無しで即対談した。リスクは高いもののリターンを期待して話に乗った。見返りにルーン武器を貰えて滅茶苦茶喜んでいる人。
ゴ・ギン──闘技場最強の武王。武王がんばれええええええ!!と応援されたウォートロール。実はアレーティアと面識があり、闘技場を貸し切って騎士とのトレーニングに付き合っていた設定あり。
アレーティアからの好感度は高い。
アレーティアの最強魔法──超位魔法ではない、といえば恐らく伝わるあの魔法。
ロクシー──原作では名前なしセリフなし。web版で登場しているジルクニフが口出しを許している妾。
アレーティアから全幅の信頼を置かれることになる。