転生したらオバロ世界のエルフだった件について 作:ざいざる嬢
タイトルに帝国四騎士と書いてあるのに一切出番がない件について()
王国との戦争が決まり、場所の指定もカッツェ平野ということで合意し、いよいよ戦争の時が近づいてきました。
そんな中、ジルクニフに呼び出されました。何事でしょうか?まだ何もしてませんよ、多分。
「よく来てくれたアレーティア、そこに掛けてくれ」
最早来慣れたジルクニフの私室の座り心地の良いソファーに座ります。割と気に入ったので貰った屋敷に持っていこうとしたら怒られたので、仕方なく新品のソファーを買いました。今では日当たりの良い場所に置いて本を読んだり、昼寝をするのに使っています。
「今回呼んだのは四騎士のことで相談がある。単刀直入に言えば──四騎士を何人か交代させる」
四騎士の交代ですか。正直予想外でしたね。このタイミングでそんな話が出るとは。確か原作だと何回目かの戦争でガゼフ・ストロノーフによって四騎士の内二人が討ち取られてしまったため、新しく人員が補充されたはずですが。
「突然どうしたんですか?ナザミもバジウッドもトーマスもルミリアも誰も死んでいませんし、四騎士候補との入れ替え戦でも負けていないでしょう?」
そうです。四騎士は帝国騎士団で最も優れた四人が選出されています。ですが、いつまでも同じ四人というわけにはいきません。
四騎士候補生には年に二度四騎士への昇格を賭けた決闘権を与えています。四騎士から一人指名し、その人物と戦い勝てばそのまま四騎士に昇格します。
この制度により四騎士を目指す騎士たちがこぞって鍛錬をし、四騎士もその座を守れるよう研鑽を積むという向上意識を持たせるようにしていました。
初代である今の四騎士は私が手ずから育てただけあって現地人では無類の強さを誇ります。四人揃ってアダマンタイト級と言っても過言ではないでしょう。
バジウッドはああ見えて周りがよく見えており気配りが出来る男です。連携を取るのも上手く、大剣を振るえば四騎士では最大の攻撃力を誇ります。
トーマスは持ち前の頭脳と武技、魔法を駆使して様々な状況に応じて戦える万能の騎士です。先の戦争ではガゼフがいないこともあり王国に比肩する実力者がおらず、彼一人で十分な戦果を得られました。
ルミリアは軽やかな動きに加え、持ち前の生まれながらの異能を活かし一度攻め手に回れば延々と武技が繰り広げられる超攻撃型の騎士です。ちなみに例の全身の毛を剃って土下座させる案を出したのは彼女です。私はその無駄に高い鼻っ柱を叩き折ってやっただけです。
そして、ナザミはその大盾二枚を使った防御を主体とした戦闘、また決して退かず向かい続けるその様は帝国最高の騎士と呼ばれるのに不足はないでしょう。現に他の四騎士三人を同時に相手取れるぐらいには強くなっています。
そんな四騎士に勝てる候補生は現れず早数年……挑む騎士は昔に比べて格段に減りました。
「今の四騎士が悪いとは言わないが、停滞も良くない。なので、お前がいない間に四騎士には己の後継を育てるように命じた」
そんなことしていたんですか。ですけど一理あります。フールーダの時も然り、誰かに教えを得ることで一皮剥けるということもあります。ナザミなんて原作と二つ名変わっていますから原作より強いのは間違いありませんよ。
……原作で声や出番すら碌になかったなんて言ってはいけません。禁句です。
「そして、今回だが……トーマス・アルトランドがこの戦争を機に四騎士を退くことにした」
「……なんですって?」
え?トーマス四騎士辞めるってよ?なんでです?
「お前も驚くのも無理はないか。理由としてはトーマスは近いうちに結婚することが決まっていてな、これから出来る家庭を大切にしたいということで騎士としては現役を退き文官として働いてもらうことにした。後釜などを正式に任命するのは戦争後になる」
「結婚ですか……バジウッドは確か四人ぐらい奥さんがいましたよね?兼任できないんですか?」
「今は増えて五人だ。ちなみに妻にしているのは一人で後は愛人だ」
「陛下と同じですね、多くの女性を囲ってるところは。だから最近仲がいいんですか?」
「そういうことじゃない!それに私はまだ正妃を決めてはいないぞ!」
「ロクシーさんがいるじゃないですか。あんなに良い女性はいませんよ?」
あれ?ジルクニフがムッとした顔をしています。気に触ることを言ってしまったかもしれません。
「……話を戻すぞ。トーマスは元々文官としての技能もあり、しばらく手が回っていなかった文書の作業なども任せていた。正直言えば今も人手が足りておらずトーマスほどの男がそちらに従事してくれるならこちらとしては大歓迎と言ってもいい。一時的に戦力は低下するかもしれんが、今の騎士団からしたら微々たるものだ、問題はない」
「ちなみに次に任命される騎士は決まっているのですか?その様子だと選定も終わっていますよね?」
「ああ決まっているとも。ニンブル・アーク・デイル・アノックという男だ。トーマスが太鼓判を押すほど有能な男でな」
おお、ここで出てくるんですか!と、なるとレイナースの加入も近いですね。しかし……トーマスが引退するのは分かりますけどルミリアはどうなんでしょう?彼女は私と戦場に立つのが楽しみで仕方がないと言っています。そんな彼女がいなくなる要因……やはり原作通りガゼフに負けて死んでしまう運命なのでしょうか。
「それともう一人、こちらはルミリアが鍛えていた後継の一人にレイナース・ロックブルズという女騎士がいる。この女騎士だが、少々問題がある」
そんなことを考えていたらレイナースの話になりましたね。
聞けばルミリアに鍛えられていく中でルミリアを通してジルクニフに相談したようで、それこそが彼女の実家であるロックブルズ家と婚約者によるレイナースへの冷遇でした。
レイナースは元々辺境の貴族令嬢で騎士になってからはその腕で領民のためにモンスターと戦っていたそうですが、ある日倒したモンスターから何やら呪いを受けてしまい顔の右半分から膿が止まらなくなる呪いがかかってしまったといいます。そのせいで実家から追放されてしまい婚約者からは捨てられ、生きる術として帝都で四騎士を目指し実家と婚約者に復讐すべく研鑽を積んでいたとのことでした。
「なるほど、そういうことですね?分かりました、直ちにロックブルズ家の粛清に向かいます。婚約者の名前も教えてもらっても?」
「落ち着け、すぐに粛清しに行こうとするな。頼むからこれ以上俺の胃を痛めてくれるな」
おや、止められてしまいました。しかし、粛清しない粛清騎士っている意味あるんでしょうか?分かりません。
「その件はもうこちらで対処している。レイナースの望む復讐をしてやったとも。それで本題だが……彼女の顔の呪いについてだ。既に神殿の神官たちにも診せたが解ける者は誰一人としていなかった。余程厄介な呪いなのか、それともそもそも解呪出来ない類のものなのかも分からん。フールーダに聞いても分からなかったからな」
確かに、レイナースの呪い自体は作中でも多くは語られませんでしたね。私は原作を読んでいた頃顔の半分が爛れていてそこから膿が出ているものだと思っていましたが、実際は容姿はそのままで膿が止まらない呪いのようでした。嫌な呪いですよね、よくもまあそんな呪いをかけられるモンスターがいたものです。
しかし、その呪いのお陰かカースドナイトというレアな職業を習得しています。これが呪いによって失われるのかどうか気になるところですがどうでしょうね?
「そこでだ、最後の望みとしてお前に相談するに至ったわけだ。何か解呪する方法を知らないか?」
呪いの解除方法ですか……。思いつかないこともないこともないのですが。
「残念ながら、現状信仰系の魔法は勉強出来ていないのでそれほど強力な魔法は使えません。それに呪いを解くという魔法も私は知らないので、その辺りを学ぶ必要があります」
いつだか神殿に学びに行こうと思ってはいましたが、そのタイミングで別件の任務を与えられたので機会を逃していたんですよね。それでも使えないことはないのですが。
後思いつくのは……。
「一つ、もしかしたらというものはあります。トブの大森林の奥地には超希少薬草が生えているというのを聞いたことがあります。呪いに効くかどうかは不明ですが、膿になら効くかもしれません。ただ、最後に採取されたのは大分前のことなので今も自生しているかは不明ですが……」
そう、原作でイビルアイがガガーランに語ったアダマンタイト冒険者チーム『漆黒』の偉業の一つで語られた超希少薬草の採取です。
「なるほど、賭けてみる価値はあるか。トブの大森林について詳しいのは冒険者か……しかし帝国の冒険者はアテにならんな」
そうですね、原作でも帝国の冒険者の地位は元々低かったですが、誰のせいか分かりませんが騎士たちが率先してモンスターを狩っていくので冒険者の食い扶持が減って仕事が薬草採取や護衛などの細々としたものしか依頼がなく、冒険者を辞めて騎士を目指すかワーカーになるというような事案が増えています。
なので、今の帝国の冒険者組合は閑古鳥が鳴いているような状況で、今いるアダマンタイト級冒険者チームも何処ぞの大商人と契約して護衛や希少アイテムの獲得のために奔走しているという話を聞いた覚えがあります。
中には名前を売るために闘技場に参加する冒険者チーム、ワーカーチームも多くなり闘技場は連日大賑わいだそうで。
余談ですが今の闘技場には二人の武王がおり、それぞれ『巨王』と『凍王』と呼ばれ鎬を削っているそうです。いずれ唯一の武王を決めるための決戦が行われるそうですが、これまでの戦いでも決着は着かなかったそうなのでどうなるでしょうね。
「冒険者もワーカーもアテにならないなら騎士たちを派遣……ああ、戦争前だからあまり動かせませんね」
全軍動かすわけではありませんがそれでも個人のために軍を動かすとなればそれなりの理由は必要ですからね。レイナースのため、となると少々難しいでしょう。
そうなれば動けるのは私ぐらいですか。
「では私がトブの大森林に向かいましょうか。転移の魔法も使えますし騎士を大勢派遣するよりも私一人の方が気楽に動けますから」
「待て、それでまた何ヶ月も帰ってこないなんてことないよな?流石に戦争も近いからそれだけは勘弁してほしいんだが」
「大丈夫ですよ。今回は一通り探して見当たらなければすぐ帰ります。それにあの森には一応知り合いがいますから、まずそいつから当たってみます」
あまり期待はしていませんが〈
「そうか、ならば任せるぞ。それと、伝え忘れたがルミリアもこの戦争後四騎士を退く」
「え!?なんでですか!?」
「ルミリアはレイナースに敗れてな、それ故の措置だ。退いた後は……お前の下に就きたいと懇願されているが、現状は保留だ。ルミリアは実家のこともあるからな、もしかするとこのまま引退することになるかもしれん」
そういうことですか。ルミリア負けたんですか……レイナースを私が鍛えた覚えはないので自力でここまで登ってきた騎士がいると思うと胸が熱くなりますね。そういう騎士は可愛がってあげたくなります。
ルミリアは……もう戦争が一緒にする最後の仕事になるかもしれませんからね。せめて戦争では共に盛大に花を咲かせましょう。騎士を続けるのであれば後進の騎士を育てさせるのもいいですね。どちらにせよこの件はジルクニフの決定を待つしかありませんね。
「ルミリアとトーマスとの最後の仕事……この戦争で二人のためにも華々しい結果を残してみせますね」
「待て、頼むからそんなに張り切るな!お前が張り切ると碌なことにならん!!」
ジルクニフがなんか言ってますがよく聞こえませんでした。
ともかく戦争前に薬草探しを頑張るとしましょう。
しかし、この時私はまさか戦争前にあんな激戦をすることになるとは思ってもいませんでした。
補足:アレーティアは原作書籍、Web版、漫画版を知っていますがドラマCDは聴いていません。
なのでザイトルクワエのことは知らないという設定です。
トーマス──四騎士引退予定。しかしその前にはガゼフが立ちはだかっている。四騎士を辞めたかったのはアレーティアにこれ以上振り回されたくないとかそういう事ではない……はず。
ルミリア──レイナースに敗北したため席を譲ることに。貴族令嬢なのでこれを機に結婚させられるかもしれない。しかし当の本人はアレーティアの部下になろうと画策中。
レイナース──地味に強化されている原作四騎士。呪いを解くためなら何でもする覚悟。
ナザミ──フルアーマーガゼフと同等ぐらいには強い。クレマンティーヌ相手なら漆黒聖典時代だと敵わない。
ジルクニフ──正妻にしたい相手がいるらしい。しかし結ばれないし、むしろ他の女性を推される。
アレーティア──戦争前に野暮用を済ませようとした結果、人生最大の敵と遭遇することになった。
次回、戦争前なのにトブの大森林決戦という謎の事態。