転生したらオバロ世界のエルフだった件について   作:ざいざる嬢

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OVAでこの『封印の魔樹』と『プロローグ上下』を作ってくれないだろうかと願いながら書いてます。


帝国ルート ザイトルクワエ編
アレーティアとドライアド 〜世界を滅ぼせるやべーやつ〜


 

 

 はい、私アレーティアは現在トブの大森林に来ています。

 足元をご覧ください。ズタボロにしてやった〈愚か者()〉を足蹴にしています。

 コイツは本当に懲りませんね。久々に会って話を聞こうとしたところ、怒り立って攻撃してくるとは。力の差を忘れている様なので返り討ちにしてやりました。

 

「力の差、思い出しましたか〈愚か者〉」

 

「グウウウゥゥゥ!!その名で俺様を呼ぶなァ!!」

 

「痛みが足りないらしいですね、〈炎斬〉」

 

「ギャアアアアアアア……ッ!!!」

 

 この感じだと仮に薬草の生えている場所を知っていても忘れていそうですね。期待は然程していませんでしたが損した気分です。

 とりあえず半身燃やして死ぬ寸前まで痛めつけてやります。殺すつもりはありませんが、逆らうことは許しません。その貧相な頭に私という強者の存在を刻みつけてやります。後ろでガタガタ震えているトロールやオーガの方が分を弁えている分賢そうに見えますね。いつの間に部下を集めたんでしょうか。

 

「や、やめろぉお!!」

 

「やめろ、じゃなくてやめてくださいでしょう?〈殴打(スマッシュ)〉」

 

「ぶげえぇぇっ!?」

 

 

 

 

 

 さて、〈愚か者〉に無駄な時間を割いてしまったので〈観測衛星(オブザベーション・サテライト)〉を駆使してトブの大森林全体を探知していきます。魔力消費量は多いですが目当ては薬草なので探す場所は多そうです。一先ず奥地へと向かいそれらしい薬草の生えている場所に向かいましたが、どれも違いました。

 こういうアイテムを探す時に〈道具上位鑑定(オール・アプレイザル・マジックアイテム)〉は便利ですね。片っ端から薬草を摘んでは鑑定していきます。しかし超希少というだけあって見つかりません。困りましたね、やはりもう存在しないのでしょうか?そんなことを考えながら森の奥へ奥へと向かっていると樹々が枯れ果てている場所に辿り着きました。

 枯れ果てているのは木だけでなく草も土も何かに栄養でも奪われたのではないかというぐらいに枯れ果てています。森の中に荒野が広がっている様に思えます。

 ただ、少し異様なのはその先に何らかの薬草が自生しているのを〈観測衛星〉で確認しているのと同時に一本の──全長百メートルは超えていそうな巨大な樹が生えているということでしょうか。もしかすると、超希少な薬草は周囲一帯を枯らして栄養を独り占めして生えるタイプの物なのですかね?そう考えると超希少というのも納得出来ます。今後薬草を研究して養殖出来ないかと思っていましたが、そういう類なら無理そうですね。

 一先ず、その巨樹へ向かいましょうか。ここで時間を潰している暇はありません。薬草が無いなら無いでさっさと帰って神殿で神官に呪いに関する本や魔法について学んだ方が率がいいです。

 そんなことを考えながら歩いていると、ふと声をかけられます。

 

「おーい、そこの人!ちょっとちょっと!」

 

 はて?アレは……ドライアド、でしょうか?エイヴァーシャー大森林でもたまに見かける種族です。こんな枯れたところにいるのは想像していませんでしたが。

 何はともあれコミュニケーションを取ることは大切です。友好的に接しましょう。

 

「私に何か用でしょうか?」

 

「そうそう、君に用があったんだ!この先は危ないよ!この先には世界を滅ぼせる魔樹がいるから!」

 

「世界を滅ぼせる魔樹?」

 

 そんな存在いましたか……?薄れつつある原作知識を必死に思い出しますが、それらしい存在が思い当たりません。

 ネーミング的にヤバそうな破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)ぐらいなら思いつきますが、魔樹であって竜王ではありませんからね。きっと違うでしょう。

 

「そうさ!私が生まれてなかったずっと大昔なんだけど、突然空を切り裂いて幾多の化け物が大地に降り立ったことがあったんだってさ。その化け物たちはドラゴンたちの王様と互角の力を持っていたらしいんだけど、結局全て倒されてしまったら死んだけどね」

 

 ふむふむ、これは俗に言う百年の揺り返しの影響でしょうね。ユグドラシル産のモンスターやギルドのNPC、プレイヤーのことを指しているんでしょう。

 最も有名な八欲王でさえ空を貫くほど大きいなどと誇張されているぐらいですからね。流石にそんなに巨大なキャラクターを使っているプレイヤーはいないでしょう。……いませんよね?

 とはいえ、この感じだとあの魔樹と呼ばれたものがユグドラシル産のモンスターであることは確定ですね。名前は……聞いてみますか。もしかしたらヒントがあるかもしれません。

 

「ちなみにあの魔樹には名前はあるんですか?」

 

「え、えーっとなんだっけな……ザイトロ……じゃない、そうだ!ザイトルクワエだ!ザイクロなんちゃらの一種なんだってあの人が言ってた!」

 

「あの人?」

 

 ザイトルクワエですか。名前に全く覚えがありませんね。しかしあの人とは……?

 

「そうそう!私が約束した人!私が生まれて沢山太陽が昇った頃、ザイトルクワエの一部が目覚めて暴れ出した時に現れて退治してくれたんだ!名前は……聞いてなかったな。でも若い人間の三人、大きい人が一人、歳をとった人間が一人、羽の生えた人が一人、ドワーフが一人の七人組だったのは確かだよ」

 

 七人組で種族混合のパーティですか。人数こそ合いませんがこれって十三英雄のことでは?そう仮定すると大体二百年前でしょうか?

 彼が名前を覚えていて、リーダーの名前が『リク』なら多分確定なんですけど……。ただ人数的に合いませんがこれはまだ結成して間もない頃だから、と考えます。

 なにせこの十三英雄というのも、原作のイビルアイ曰くもっと多くの者がいてスレイン法国が意図的に人間以外の種族の伝承を消しているということを話していた気がします。

 本当にあの国人間のことしか考えていませんね。もっと協調性を身につけてください。

 

「それでその七人組のリーダーがザイトルクワエって名付けていたんだ。その時に魔樹が目覚めたら倒すって約束をしたんだ。君、もしかしてだけどこの七人組が今何処にいるかって知らない?」

 

「いえ、全く……そもそも生きているかどうかすらも怪しいのでは?」

 

「ええ!?皆死んでしまっているのかい!?」

 

「そりゃあ話を聞いている限り二百年も生きていられる長命種でもなければ生きているとは考えにくいでしょう」

 

「にひゃくねん?それって太陽が何回昇った頃?」

 

「……魔樹が目覚められるぐらいに栄養を蓄えられるだけの長さ、と言ったら伝わります?」

 

 この手の例えは苦手なので伝わるといいんですが……。

 

「ええーっ!?そんなに経ったのかい!?大変じゃないか!!」

 

 伝わったみたいです。助かります。

 しかし、このピニスン中々長生きしているのでもしかしたら薬草のことを知っているかもしれません。ダメ元で聞いてみましょう。

 

「ところで話は変わるのですが、この森にすごく珍しい薬草が生えていると聞いて探しに来たんですが何か知ってますか?」

 

「え、ああ薬草ね。確かね……ああそうだ。あの人たちが言っていたんだけど、ザイトルクワエに珍しい薬草が生えてるって言っていたよ」

 

 まさかの薬草ユグドラシル産ですか!?

 となるとあの魔樹を起こさずに採取する必要がありますね。中々強そうではありますから。

 

 確かに私も強いという自覚はありますが、油断は禁物です。

 目覚めていないとはいえ目の前にいるのはユグドラシル産の、ましてや原作知識に無いモンスターです。レベル百の可能性もあります。そうなったらいくらなんでも勝ち目は薄いです。切り札はいくつかありますがそれが通用するかどうか……。

 とはいえ薬草があるのであればそれだけサッと回収して帰れば問題ないでしょう。なにせ原作では登場していないということは現状目覚めはしないということですから。仮にその一部が目覚めたとしても初手で最強化した魔法を二重三重にして放てば相当なダメージを与えられるはずです。

 

「教えてくださりありがとうございます。では私は薬草を採りに行くのでこれで」

 

「ま、待ってよ!危ないって!まだ目覚めてないとはいえ、いつ目覚めるか分からないんだよ!?近寄らない方がいいって!せめてドラゴンの王様たちを呼んできてからにした方がいいよ!」

 

「ドラゴンの王様……ねぇ……」

 

 一人……いや、一匹心当たりがありますけどアレが戦力になるかといえばどうでしょう?始原の魔法も使えないし傲慢だし、最近では妃三匹に物理的に抑えられているあの情けない王様しか……。

 もしくは八欲王のギルド武器を守護していて鎧しか動かない白金の竜王(プラチナム・ドラゴンロード)か……まあこちらは会おうにも会えませんからね。どうにもなりません。

 他にも七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)やその子孫である竜王国の女王も思いつきますがこちらも知っているだけなのでダメですね。

 

「一先ず、まだ眠っている様なら薬草を採る程度なら問題ないはずです。現に……貴方でいうところの太陽が何度も昇る前に一度別の人物があの薬草を入手出来ていますから」

 

 薬草を採るぐらいなら問題ないはず……仮にその程度で目覚めてしまうなら原作でも『漆黒』が超希少薬草を入手した際の戦いがあった的なことが語られてもおかしくないはず。

 それに、採るたびに目覚めていたら何度世界が滅んでいることか。

 

「そ、それならいいんだけど……本当に大丈夫?」

 

「大丈夫ですって。それに私も強いのでいざとなったら戦いますから」

 

 心配するドライアドを振り切りいざ魔樹へ!探知の魔法で何処に生えているかは確認済み。さっさと採って帰りましょう。

 

 

 

 

 ……ォォォオオオオ

 

 

 

 

 ……え?なんか聞こえた気がします。

 

 

 

 

 

 ……ォォォオオオオオオオオ!!!!

 

 

 

 

 バキバキ、メキメキと音を立ててその巨大な身体を動かし、獣の様な声を出して──

 

 

 

 

 

 ──世界を滅ぼせる魔樹、ザイトルクワエがここに目覚めた

 

 

 

 





ドライアド──本名ピニスン・ポール・ペルリア。推定二百歳。原作、WEB版それぞれに存在するが色々異なる点がある。
なおアレーティアは存在を覚えていない。

アレーティア──今回に関して一級フラグ建築士。次回、レベル的には互角の敵との激戦。

ザイトルクワエ──推定レベル八十〜八十五。体力は測定外。ドラマCDでは守護者全員に袋叩きにされた挙句アインズの魔法で装飾され派手に散った。
ちなみに本来なら目覚めるのはまだ先。リザードマン編辺り?
目覚めた理由はアレーティアが目覚めない目覚めないとフラグを立てたから。
次回、アレーティアと激戦を繰り広げる予定。

オラサーダルク──竜王なのに弱いとアレーティアに言われてしまう悲しきフロスト・ドラゴン。最近余計なことをしてアレーティアに処理されない様に必死な妃三匹に物理的に抑えられている。流石に妃には手荒な真似はしないらしい。

白金の竜王──もっと簡単に紹介すれば名前はツアー。原作では白金の鎧を遠隔操作してアインズ(パンドラズ・アクター)と激戦を繰り広げた。制限無しなら世界最強らしい。
アレーティアに関しては既に存在を察知しているが、まだ様子見。

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