転生したらオバロ世界のエルフだった件について   作:ざいざる嬢

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遅れました。戦闘描写難しいですね……分りづらかったらすいません!

今回、ザイトルクワエに大分独自設定盛り込んでいるので苦手な方は注意してください。




アレーティアとザイトルクワエ 〜世界を滅ぼす魔樹〜

 

 

 ォォォオオオオオオオオオ!!!!

 

 

 私まだ何もしてません。何もしてませんよぉ!?

 何もしてないのに、近づいただけなのに目覚めたんです!ホントなんです!!

 こちらのことなど露知らず目覚めたザイトルクワエは六本の触手──全長三百メートル──を振り回して辺りにある樹々を掴み、その巨大な口へと放り込んで捕食しています。栄養が足りなかったのでしょうか?こちらに気づきながらも一心不乱に樹を貪っています。

 

 

 ……ってそんな落ち着いている場合じゃないですね。マジでヤバい状況です。何せ相手はユグドラシル産のモンスター。過去の竜王が滅ぼしきれてないところからかなりの高レベルなのは容易に想像出来ます。

 この前カッツェ平野で捕まえた伝説(笑)のデスナイトとは格が違います。

 

 ともあれ食事中の今がチャンスです。ルーンで可能な限り強化した魔法で先手を取ります。

 

「〈刻印魔法最強化(ルーンマキシマイズマジック)隕石落下(メテオフォール)〉」

 

 虚空にルーンを刻み最強化した第十位階魔法〈隕石落下〉。通常ならこの一撃で大抵の敵は倒せますが果たして……。

 落下した隕石は標的であるザイトルクワエに直撃するも……これはどうでしょう?当たりはしましたが苦しんでいる様には見えません。これはほぼほぼ効いていないのでは……?

 そんな心配を他所にザイトルクワエはついに臨戦体制に入ってしまいました。六本ある触手のうち四本を順々に私目掛けて叩きつけてきました。かなりのスピードです、三本目までは躱わせましたが四本目はマトモに食らってしまいました。あの速さにこの一撃の重さ……正直言ってかなり厳しいです。早速新調したばかりの鎧に亀裂が入ってしまいました。

 ともかくあの触手をどうにかしなければなりません。

 

「〈上位筋力増大(グレーター・ストレングス)〉〈上位敏捷力増大(グレーター・デクスタリティ)〉〈上位全能力強化(グレーター・フルポテンシャル)〉──」

 

 先ずは知りうる限りの支援魔法を自分にかけます。そして戦士化し改めて武技による自己強化をします。

 

「〈能力向上〉〈能力超向上〉〈不動〉〈超加速〉──」

 

 武技は魔法と違って幾らか集中力を要するので必要最低限に。しかし、魔法詠唱者から戦士に切り替えても支援効果が消えないのは非常にありがたいことです。

 〈無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァザック)〉から二振りの剣──フレイム・オブ・アゼルリシアとフロスト・オブ・アゼルリシアを取り出します。

 出し惜しみなし、とりあえずはあの触手を一本ずつ伐採してやります。

 少なくとも相手は格上ですが、私は格上と戦うことには慣れています。──これがあのクソ親父のお陰だと思うと嫌な気分になりますが今だけは感謝しましょう。

 まずは手始め!ザイトルクワエは見ての通り木のモンスター……トレント系であると仮定します。なので右手に握るフレイム・オブ・アゼルリシアによる追加効果、魔力消費による火属性攻撃強化での大ダメージを期待します。

 再び向かいくる触手に〈炎斬〉で迎撃。今回は刻んだルーン十文字全て起動しているためバカにならない攻撃力が発揮され触手を焼き払います。

 どうやら、この触手自体は本体がいるからか攻撃力こそ高いですが耐久力はあまりない様です。この一撃だけで一部を斬り飛ばせました。

 続けて二本目──同じく〈炎斬〉で斬り払い、三本目は──流石に間に合わないので、ここで左手に握っていたフロスト・オブ・アゼルリシアを振るい〈大空斬〉を放ちます。

 この〈大空斬〉はどこぞのエルフ奴隷にとっての天敵が使っていた武技の強化版でアレとは比にならない威力を誇ります。また、ここにフロスト・オブ・アゼルリシアによる追加効果、冷気による追加ダメージが付与されているため三本目の触手を切り裂きながら凍結させ速度を落としフレイム・オブ・アゼルリシアで迎撃。三本目の触手も凌ぎ切りました。

 四本目が迫る中、武技〈流水加速〉を発動し触手を躱し──触手に沿って縦に回転し切り裂きながら本体へと向かっていきます。俗にいう『リ◯ァイ斬り』と言えば伝わるでしょうか?モンス◯ーハンターでも双剣を使っていた人はきっと分かるでしょう。

 かなりの距離を切り裂きながら辿り着くは本体。空中でやや不利ではありますがここまで来れば関係ありません。この状態で出せる最高威力のスキルを叩き込みます。

 

「〈風斬〉」

 

 凄まじい音を立ててザイトルクワエの本体に風属性で強化された斬撃を与えました……が、あまりに巨大過ぎてこの一撃が効いているのかどうか非常に分かりづらいです。この一撃で真っ二つ、ないしは半分ぐらいぶった斬れれば良かったのですが、やはりユグドラシル産のモンスターは格が違います。この時、運良く薬草を切り落とせたので回収出来ました。

 

 さて、こちらもたった一撃かまして終わるわけにはいきません。フレイム・オブ・アゼルリシアには炎属性攻撃を強化する以外にももう一つ特殊効果があります。それは周囲一体に溶岩を発生させ地形ダメージを発生させるというもの。体が樹であるザイトルクワエにはさぞ堪えることでしょう。

 これを初めて起動させた時にうっかり皇城の一部を溶岩に変えてしまいジルクニフに烈火の如く怒られたのは記憶に新しいです。

 早速溶岩を発生させ……うーん、巨大過ぎて効いているか微妙ですね。それでも無いよりはマシ。触手による攻撃が再開する前に出来る限り攻撃を与えていきたい所存です。

 

 故に、武技を使わず追撃──もといルーンを刻んでいきます。刻印魔法は空中に魔力で刻むだけでなく、こうして物理的に刻むことでも発動出来ます。条件としてはルーン武具でなければいけない制約がありますが、あってない様なものです。炎に関する高位、中位の文字を三文字刻みます。フレイム・オブ・アゼルリシアにも刻んでいる″(アンサズ)″、″(ケン)″、″(ウル)″の炎を司る三文字です。刻み込んだ文字が輝きその効果を発動、刻んだ付近を炎や爆発が包み込みました。

 

 

 ォォォオオオオオオオオオ!!!!

 

 

 流石に堪えたのかザイトルクワエから悲鳴のような声が聞こえます。

 それと同時にザイトルクワエの枝から何かが飛んできて……イイッ!?

 飛んできたのは私の頭の大きさほどの種子。それも数えるのがバカらしくなる数が飛んできます。そんな遠距離攻撃があるとは……当たればひとたまりもありません。〈超回避〉を発動し種子の雨を躱し、すかさず武技〈重爆一閃〉を使い攻撃をしていきます。

 種子の雨による攻撃を凌ぎきれば今度は再び触手による追撃。休む間もありませんね……いい加減触手の一本でも斬り飛ばして使えないようにしなければこちらのスタミナが持ちません。なのでここはフロスト、フレイムによるコンビネーションアタックで確実に一本は破壊します。

 

 フロスト・オブ・アゼルリシアに魔力を込めその能力である氷属性魔法を発動。この魔法はルーン文字により再現されており位階魔法に含まれるかどうかは怪しいですが、威力だけならフロスト・ドラゴン十八番の冷気のブレスをも上回ります。これにより触手の大部分──五十メートル程──を凍てつかせ、フレイム・オブ・アゼルリシアによる炎属性強化の一撃〈炎斬〉にて凍った部位を砕き粉々に。ようやく一本目の触手の破壊に成功しました。

 続く二本目、三本目は……一本目の破壊に余力を使ってしまったため躱わす、受け流す、弾くという行動で対処してしまい、すかさず〈不落要塞〉を発動しましたが……

 

「ぐぶぅっ!!」

 

 それを上回ってきました。腹に直撃しそのまま後方に吹き飛ばされてしまい……四本目の触手がトドメとばかりに受け身の取れていない私目掛けて叩き落とされました。

 最早鎧は原型を留めておらずボロボロになってしまい所々穴──その下には素肌とインナー──が見えてしまっています。

 流石に五本目、六本目まで受けてしまってはマズいので、痛む体に鞭を打ち攻撃の届かない位置に退避します。

 

 無限の背負い袋からポーションを数本取り出し傷にかけ、飲み込み傷を癒します。

 ここで更に触手が二本同時に追撃してきました。回復中の攻撃ほど鬱陶しいものはないですね!ポーションの瓶を投げ捨て即座に剣を構え……とある武技を模倣します。原作では剣一本で放ちましたが私は剣二本でこれを再現します。

 

「──〈双剣・六光連斬〉」

 

 そう、あのガゼフ・ストロノーフが使ったオーバーロードでも武技と言えば最初に名前が上がる〈六光連斬〉。使えるようになってから今か今かと出番を待ち望んでいました。

 本当は戦争でガゼフと対峙した時に六光連斬のぶつかり合いとかやりたかったんですけどね。命がかかっているんで出し惜しみは無しです。

お陰で触手二本輪切りに出来ました。残る触手は後三本、全て斬り飛ばしてや……る……!??

 

 

 ……その時、私は見てしまいました。正直、私はこれを全く予想していませんでした。

 植物系モンスターであるなら、ある程度警戒して然るべきそれを想像出来ずこのような状況を作ってしまいました。

 

 

 あんなことになるなら……先にあの種子全てを燃やし尽くしたというのに。

 

 

 ◯

 

 ◯

 

 ◯

 

 

 

 ──かつて、ユグドラシルをプレイしていたプレイヤー達はこぞって運営会社を糞運営と罵っていた。

 理由は数多く、世界級アイテム──主に二十と呼ばれるアイテム──や理不尽な力を持ったボスモンスター、あまりにも未知なことが多すぎるという要因が大多数を占めている。

 その中でも今回、アレーティアが直面した出来事はこれに匹敵するだろう。

 

 アレーティアが見たもの、それは──

 

 ザイトルクワエに似た植物モンスターが大量発生している風景だった──。

 

 

 ◯

 

 ◯

 

 ◯

 

 

 

 ミギャアアアアアア!ミギャアアアアアア!

 

 

 

 落ち着け、落ち着きましょう。現実を受け入れるんです。前方から聞こえる精神を削るような不快な音、声を耐え忍びます。

 目の前には数を数えるのがバカらしくなるほどのザイトルクワエの……種子が発芽し成長しています。

 あの種子による攻撃がそのままモンスターが湧くことに繋がるとは……流石はユグドラシル産のモンスター、クソですね。とりあえず、新しく現れたザイトルクワエは眷属と仮称します。

 

 一瞬、撤退する案が浮かびましたが即却下です。なにせ、あの眷属たちは恐ろしいことに根を器用に動かして移動を開始しています。見たところ弱そうですがとにかく数が多い。もしも森から出て被害が拡散すると考えれば……なんとしてでもこの場で倒さねばなりません。

 ……まさかですけどザイトルクワエも動き出したりしませんよね?流石にそうなったらマズイどころではありません。ガチで世界が原作始まる前に終わります。

 後ろからドライアドの絶叫が聞こえますが無視です。むしろ私がこの状況に叫びたい。

 撤退不可、孤立無援、しかも相手は良くて私と同等、悪くて格上。故郷の森にいた頃を思い出しましたが、あの時でもここまで絶望的な状況はなかったでしょう。

 

 まずはあの眷属から……うわ、うじゃうじゃと湧きすぎて気持ち悪い!SAN値が!SAN値が下がる!!

 一先ず、これ以上は戦士化では対処出来ません。なにせ私の戦士としての経験上一対一を最も得意としていて多数が相手──雑魚相手なら雑に倒せますが──となると正直手数が足りません。

 ならば、魔法詠唱者化して高位の魔法を叩き込み眷属を一掃し、魔力が尽きたら戦士化し戦えばいいです。

 無限の背負い袋からセブンスター・ルーンを取り出し魔法の詠唱を──えっ!?なんで魔法が使えな───

 

 魔法が使えないと気づいた時にはもう遅く、その隙を逃さなかったザイトルクワエの触手が再び私の身体を捉え、叩きつけ、それを防ぎ、横から薙ぎ払われ、防げず、追撃の叩きつけを連続で受けてしまい──

 

 

 あ、これ死───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グシャッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ザイトルクワエ──現状触手が一本焼かれ、一本使い物にならなくなり、二本輪切りにされている。無事なのは残る二本だけ。
原作では触手を叩きつける、種を飛ばすなどあまり見せ場が無くナザリックに滅ぼされたが、今回はギミックが発動しまくっている。
体力が一定量減ることにより飛ばした種から同種の植物系モンスターが湧いてくる。(種が飛べば飛ぶほど増える)
この湧いたモンスター……眷属の叫び声を聞いてしまうと一定時間魔法が使えないデバフがかかる。他にも毒、麻痺など様々な状態異常を与えるスキルを使用する。レベル推定四十。
多分これぐらいならユグドラシル運営は平気でやると思います。


アレーティア──経験不足による不手際で予想外の一手を受けた。
ザイトルクワエと一対一の勝負と考えてしまったのが最初の失敗。むしろ最初から魔法をガンガン使うべきだったが長期戦に備えて温存してしまった。





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