転生したらオバロ世界のエルフだった件について 作:ざいざる嬢
お待たせしました、お待たせしすぎたかもしれません。
初シリアス回になるのかな?そうじゃあないかもしれません。
本当はクリスマスにザイトルクワエをクルシメマスツリーにしようとも思ったんですが、アレーティアは〈
あれができるのはアインズ様ぐらいです。
……あれからどれくらい時間が経っただろうか。数日?一日?それとも数時間か数分か。どれほどかは分からないけど気を失ってしまった事だけは確かだった。
魔法が使えないことに動揺した私は情けないことにその隙をつかれ、今まさに死にかけている。なんて無様。
恐らく、初撃の〈
微かに見える視界には夜空とザイトルクワエの眷属が私に群がってきている光景が。恐らく、トドメを刺しにきたか死んでいるはずの私から養分とかそういうのを奪いにきたのでしょう。
このままだと死ぬ……間違いなく、誰にも知られず死ぬ。
帝国のみんなは今どうしているだろう?王国との戦争準備?戦争における作戦会議?ああ、ジルクニフなら後宮でロクシーと話しているか妾の女性と一緒に過ごしているかもしれない。
バジウッドは?奥さんと四人の愛人と仲良く過ごしているのかもしれない。ナザミは?彼は意外と甘いものが好きだから何か食べているかもしれない。ルミリアは?彼女は貴族令嬢でもあるからもしかしたらどこぞのパーティに出ているかもしれない。婚約者はいないと言っていたから、ルミリアほどの美人なら候補者も多いだろう。トーマスは?もうすぐ結婚予定の女性と二人の時間を大切にしているかもしれない。
多くの可能性。それは平和な帝国だからこそ思い浮かべることができる。けど、ザイトルクワエが復活してこの眷属が、ザイトルクワエが世界各地に、帝国に攻撃してきたらそんなこともできない。眷属はどうにかなるかもしれないけれどザイトルクワエは無理だ。文字通り格が違う。そうなれば誰も彼もが夢を叶えることなく死んでいってしまう。……それだけはダメだ。
ボロボロになった身体に鞭を打ちながら起き上がる。ザイトルクワエはまだ気づいていない。状態異常を回復するポーションを飲み込み転移魔法で一度ここを離れる。転移先はあのドライアドのところだ。
「あ、無事だった!?どうやって助かったのさ!?」
ドライアドの甲高い声がちょっとうるさい……傷に響く。
全身に浴びるほどポーションをかけ傷を癒していく。とはいえ低級の代物だから全て使い切っても全ての傷がいえるわけではなかった。
次に……私お気に入りの竜騎士を模した
「うわぁ、これは酷いね……。もう使えなさそうなのが私でも分かるよ。それにしてもザイトルクワエ……こんなにヤバいやつだなんて思いもしなかったよ……」
それは本当に同意ですね。原作でもユグドラシル運営と製作は散々糞だと言われていたのにそれをどういうことかよく理解せずに漠然とヤバいとしか認識していなかったのが敗因の一つ。
もう一つは私の慢心だ。どうして私はあの時戦士化して戦ってしまったのか。取れる手段なら
……ああ、私は何と愚かなんだろう。思い当たったのは二振りの剣、フロスト・オブ・アゼルリシアとフレイム・オブ・アゼルリシアだ。この剣が出来上がり、無意識ながら振るう相手を私は求めていたんだろう。そして、私が、私が作った武器がユグドラシル産の、過去の竜王たちでも倒せなかった魔樹を倒すんだと思いあがっていたようだ。こうして死にかけてから冷静になった頭で思い返すと過去の自分を殺したくなる。
「本っっっ当に馬鹿みたいだな私……少し考えればわかるだろうに……」
「本当だよ!あの人たちが戦って苦戦した一部じゃなくて本体だよ!?それも一人で勝てるわけないじゃないか!!」
「……となると本当に出し惜しみなしで持てる全てをぶつける必要が……ジルクニフには使うなって言われてるけどアレを使うしか……いや、ここ帝国じゃあないしいいか」
「聞いてるの!?なんかすごい速さで動けるならここから逃げて竜の王様とかあの人たちを探して連れてきてよぉ~!!」
「……ごめんなさいドライアドさん。」
「なんだい!?もう私は助からないけど最後だし何でも許すよ!?」
「そう?じゃあ……ここら一帯ザイトルクワエごと滅ぼすから巻き込んでしまったらごめんね」
「……へ?」
さあ第二ラウンドの開幕だ。まずは装備を見直そう。全身鎧はもう役に立たないし、この程度の性能では──ルーンで強化してもあの触手の一撃には耐えられない。
なら、
……あの当時は装備出来ないのにクソ親父から盗み取ってきたユグドラシル製の、それも
その名は
だが、これでも足りない。あのザイトルクワエに勝つには持てる全てを出し尽くす必要がある。……私はまだこの身に宿った
だから──私に力を。あの世界を滅ぼす魔樹に負けない力を、私に与えてください。
空に流れる星に願う様に己に祈る。そうすることが正しいと不思議と思えた。
「
すると、どうだろうか。私の身体の癒えきらなかった傷は瞬く間に癒えていき、身体は今までかけていた武技や支援魔法の強化がなんだったのかと思うほどの力が、魔力が漲ってきている!
◯
◯
◯
そう、アレーティアはここまで生まれながらの異能を持ちながら知ろうとしなかった。だが、無意識ながら使い方を知っていた。
自らが願い、それを叶える。簡単に言えばそれだけの生まれながらの異能。
アレーティアの生まれながらの異能とは──即ち、超位魔法〈
例えばそれは魔法の使えない身に魔法を扱える職業への転向が叶うスキルを与えたり
例えばそれは自らが早く強くなりたいという願望を叶え
例えばそれは自らが危機に瀕したときにそれを無効化するという形でその身に発現し
例えばそれは自らが欲した鉱石を根こそぎ山脈から掻き集め面白いぐらいに発掘出来るようになったりと多くの場面でアレーティアを助けていた。
そして、それを意図して使えば──自らのステータスをザイトルクワエを倒せるだけのものに変えることも容易なことだった。
◯
◯
◯
自身の能力が強化されたことを確認した私はセブンスター・ルーンを手に〈飛行〉で空を飛び、魔法の詠唱に入る。まずは眷属を一掃する……!
「よくもやってくれましたね……!お返しです。〈
大地が割れ吹き出した溶岩が容赦なく眷属たちを飲み込み焼き尽くしていく。時折眷属の悲鳴が聞こえますが今の私にはもうその状態異常は通じません。
一体残らず溶岩に飲み込まれ、やがて割れた大地と共に溶岩も消え去りました。残すはザイトルクワエただ一体。
ザイトルクワエの触手が迫りますが、今の私からすれば少し早い程度。空を飛ぶ私を叩き落とすことは叶いません。
触手は無駄と悟ったのか再び種子を雨の様に発射してきましたがこれも……
「〈
もう油断はしない。種もこうしてしまえば発芽することもないはず。後で本体ごと破壊してやりますが。
さて、ここで私一人では手数が足りないので特別ゲストを召喚します。
「〈
これが戦士化状態でも使えればもっと楽だったんですけどね!戦士化状態でも何かしら召喚できる様に後々スクロールの研究でもしてみますか。ともかく、まずはこいつを滅ぼしてから。
「その動かせない触手ごと切り飛ばしてやります〈
原作でもアインズ様が使っていた第十位階最高威力の魔法!見事に全ての触手を切り飛ばしただの樹にしてやりました!こうなればもう木偶の坊と……言いたいところですが油断は禁物、魔力もまだ余裕があるのでガンガン攻めていきます。
ォォォオオオオアアアアアアッ!!!!!
ああ、やっぱり一筋縄ではいきませんね。ザイトルクワエが姿を変えていきます。こういう時に攻撃しても無駄骨に終わるやつですね、分かります。変身してる時にダメージが入るのは稀なことですから。
姿が変わったザイトルクワエは……そうですね、触手の代わりに無数の枝が絡み合い竜の口を模したかの様な形状になりそれが触手と同じ六本。更には今まで根元付近にあった巨大な口が上へと移動し竜に近い姿へと形を変えました。
どこかで見たことある気がするんですよねこの姿。ビオ◯ンテ?
グオオオオオオオ!!!
なっ、まさかのブレス攻撃!?枝の口と本体の口から放たれたそれは非常に毒々しい色をしています。見るからに状態異常を与えるやつです。絶対受けたくありません。
「〈
巻き起こした風でブレスを吹き飛ばし、災害の如き台風の猛威をそのままぶつけてやります。
すると今度は枝の口が伸び私に噛みつこうとしてきます。触手より断然早いですが今の生まれながらの異能で強化された私なら避けられます。逆に強化されてなければまともに受けてましたね。
根源の星霊に枝六本全部相手にしてもらう様に命ずると「え?無茶振りすぎません?そういうのは土のやつの仕事なんですが??」という声が脳裏に聞こえましたが根源の星霊は出来る子なのでやり遂げてくれますきっと。
私は私でザイトルクワエを少しでも滅ぼしやすくするための準備をします。これはまあ運任せになるんですが。
「〈
僅かに発動する可能性がある状態異常に期待をして〈彗星落下〉を三重詠唱。ダメージはそこそこ、追加効果は……見たところザイトルクワエ全体の動きが止まったので麻痺か時間停止か睡眠かの状態異常が発動しましたね。もし睡眠状態ならご愁傷様です。
お前が二度と目覚めることはない。
ザイトルクワエの体力はまだ十分に残っているでしょう。相手はあの
──滅ぼせ
顕現した大厄災。帝国に来てしばらくして最強の魔法ってなんだろうと、使えば勝ちみたいな魔法があればなぁと思った矢先、魔力の消費量が増え代わりに威力が跳ね上がったのを実感した時、同時に習得した魔法──厳密にはスキル。
私の魔力の半分以上を消費するものの、その力はジルクニフに帝国では絶対に使うなと厳命されるほど。あのお披露目では平原一つを完全に破壊し尽くし地形すら変え、その余波で見物人全員が巻き込まれかける事態に陥ったのをよく覚えている。
世界を滅ぼす魔樹を、ザイトルクワエを破壊の嵐が飲み込んでいく。その身体は破壊されまいと耐えている様だが大厄災は容赦なくその外皮を削り、剥がし、砕いていく。
グオオオオオオオアアアアアアァァァァ……!!!!
ザイトルクワエの断末魔すら大厄災は飲み込み──
後に残ったのはかつて世界を滅ぼす魔樹と呼ばれた残骸だけだった。
◯
◯
◯
「ああ、疲れた……もうクタクタ……」
ザイトルクワエを無事倒し、地面に腰を下ろして休息をとります。
実に数年ぶりの激戦でした。出来れば二度と戦いたくはありませんがこの戦い学びは多かったです。
戦士状態の弱点が明確になり、また戦法などを見直す必要があります。ぷにっと萌えさんを見習わなければ……。
ああ、ザイトルクワエの残骸は……あの巨体だったからか、それともあれだけの強さゆえか〈大厄災〉を受けて尚いくらか残っていますね。塵すら残すつもりはなかったんですが、その場合は素材が手に入らなくて困ることになりそうですね。結果オーライです。一度帝国に帰って休んでから回収しに来ましょう。生まれながらの異能での強化も終わったのか身体が重いんですよね。
「あ、あの」
ん?ああドライアドですね。巻き込まれずに済んだみたいです。よかったですね。
「ほ、本当にあのザイトルクワエを倒したの?」
「……夢じゃなければ目の前の光景が全てですよ」
そう、ザイトルクワエの残骸の周りは酷いことになっています。枯れ果てた大地は文字通り消滅し、底が見えない程度の大穴となってしまいました。周りの森にも大分被害が及んでいますね。強力すぎて逆に使いづらいですね……今後の改良に期待です。
「そ、そうだよね!私も見てたはずなのに信じられなくてさ!あはは、あはははは!!」
「そうですね、でもあれを滅ぼしたという実感は残っていますよ」
さて、後で戻ってくるとはいえ早く帰ってレイナースに薬草を届けてあげましょう。立ち上がって転移の用意をします。
「あ、あの!名前を聞いてもいいかい!?あの時、あの人たちの名前を聞いていないから教えてあげられなかったけど、今日のことは語り継いでいこうと思うから!」
お、おお、なんだかドライアドの熱量がすごいです。眼をキラキラさせています。
名前を教えるぐらいなら……まあ大丈夫でしょう。
「アレーティアです。よければあなたの名前も聞いても?」
「アレーティアさん……うん、覚えたよ!私はピニスン・ポール・ペルリア!」
「ではピニスン、私は一度帰りますがザイトルクワエの残骸を回収しに戻ってきます。なので……また会いましょう」
「うん!待ってるよアレーティアさん!」
「ではまた。〈
こうして、ただの薬草探しから始まった世界の命運を賭けた戦いは人知れず幕を下ろしたのでした。
アレーティアがザイトルクワエを回収してから数日後のとある部隊ととあるドライアドの会話
「アレーティアって
「白髪の眼の色が違うエルフ……だと!?」
アレーティアの
簡単に言えば
他人に使う場合は経験値を消費する。リキャストタイムは無し。
このタレントの存在を知ったらアインズは絶対に欲しがる。もしくは全力で排除にかかる。
アレーティアがこの生まれながらの異能の詳細を知り使いこなせれば更なる強化が見込める。
ザイトルクワエ戦では一時的にステータスが軒並みレベル百に近い状態になった。挙句体力、魔力共に全回復している。
生まれながらの異能というよりスキルという方が近い。
伏線としてヒントは色々散りばめていましたが、最大のヒントはアレーティアの誕生日でした。
父デケムの誕生日がラビット・14日だったのでこのラビットを十二支の順番に当てはめると4月になるのでそれに当てはめてアレーティアはオックス(2月)7日にしました。
この日はとあるアニメ映画作品の公開日でその作品の主題歌の名前が……。
ザイトルクワエ──体力残量が三割切ると形態変化してビオ○ンテみたいになる。
この状態なら
一応ステータスが上昇しレベル九十相当になり、スキルも増えたはずだがお披露目機会なく散った。
飛ばした種や残骸は全てアレーティアが回収予定。
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特典小説「プロローグ下」にてウルベルトさんが使用。ナザリックのボスが召喚した
アレーティアは超位魔法を使える様に
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なる
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ならない