転生したらオバロ世界のエルフだった件について   作:ざいざる嬢

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あけましておめでとうございます。

今年初の投稿になります。
ただ、私自身陣形とか戦争に詳しいわけではないのでかなりご都合主義というか無理矢理なところがありますのでご注意を。




アレーティアと戦争part1 〜開戦、対峙する騎士と戦士〜

 

 朝がやってきました。そう、開戦の朝です。

 私は一度帝国に転移しジルクニフと神官を何人か連れて前線基地へと再び転移しました。神官を連れてきた理由?そりゃあ決まってます。

 

「ううっ……飲み過ぎた……うっぷ」

 

「あんまりにも楽しいもんだからつい飲み過ぎてしまった……」

 

 はい、こういうバカな騎士がいるからですね。酔い覚ましに解毒の魔法を使える神官を神殿に依頼して何人か派遣してもらいました。まさかこんなことで呼ばれるとは神官達も思いもしなかったでしょうね。元凶私なんですけど。

 

「なあ、アレーティア。これはどう言う状況だ?」

 

「今日から戦争なんで英気を養ってもらおうと酒にフロスト・ドラゴンやギガントバジリスク、フォレストリザードの肉や甘味など盛大に振る舞った結果、調子に乗って飲み過ぎてバカになってるヤツが何人かいる、そんな状況です」

 

 今飲み過ぎて使い物にならなくなっている連中は酔いを回復したら最前線に叩き込んであげましょう。楽しんだ分働いてもらわねば。

 

「ちょっと待て。私ですら食べたことのないものが振舞われているのだが?それに誰がそれを作った?皇城の料理人でないことは違いないが……」

 

「私に決まってるじゃないですか」

 

 バッと周囲の騎士達がこちらを振り返る。ジルクニフもはぁ?って顔をして私を見ている。

 

「あ、あの料理全て粛清騎士様がお作りになられたのですか…!?」

 

「そうですけど何か問題がありましたか?腕を振るったつもりですが」

 

「いやいやいやいや待ってくれ。私はそんな話聞いていないんだが!?食べたことすらないんだが!

 

「そりゃあ今までロクシーさんにしか食べてもらったことないですし当然かと」

 

 あれはまだスキルのことも分からず料理人にもなれるのかと試していた時ですね。折角貰った屋敷にキッチンがあったので色々試してみたところそれなりに美味しいものが作れたのでロクシーさんに食べてもらおうと包んで持って行ったことは記憶に新しいです。

 最初は遠慮してましたけど一度食べ始めたら静かに、それでいて上品に完食してくれました。その後、私が作ったと告げたところ

 

『本来ならそういったことは料理人がすることですが……とても美味しかったですよ。それと、これだけの美食が作れるなら陛下の子供にもお菓子を作ってあげてもらってもいいかしら?』

 

 そうして私は更に料理の腕を上げ、子供の喜ぶお菓子作りにも目覚めました。それによりジルクニフの子供達からも慕われる存在になり後宮では充実した時間を過ごしています。

 ……こういうことをしているのはもしかしたら死んでいった名前も知らない姉妹たちへの贖罪かもしれませんが、子供には今を楽しく生きて欲しいというのは本心です。

 さあ、そんな子供たち、もとい帝国の明るい未来のために王国には犠牲になってもらいましょう。原作開始後に皆殺しにされて滅ぼされるよりはマシなので安心して欲しいですね。超位魔法で黒山羊を召喚したりしないので益々安心です。

 

「ぐうっ……後で詳しくロクシーから問いたださねば……」

 

「何をそんなに悔しがっているんですか。陛下だって昔は毒盛られたりしてましたけど今では美味しい食事を安全に召し上がられるようになったじゃないですか」

 

「それとこれとは話が別だッ!!」

 

 変なスイッチ入ってますね。これ以上長引かせても面倒なので早々に切り上げるとしましょう。職業をまた変更して……

 

「さて、陛下は放っておいて騎士団の諸君に告ぐ。間も無く開戦だ。昨日は存分に楽しんだだろうか?それなら結構、中には楽しみ過ぎて使い物にならなくなった馬鹿者もいる様だが、そいつらはその分働いてもらうとしよう。また、この戦争が終わり勝利した暁には今度は帝国で戦勝会を開こう。残念ながら今回食べたフロスト・ドラゴンの肉などは無いが、それでも帝国有数の美酒美食は約束しよう」

 

 おおおおおおっ!!と騎士達からは賛同の声が上がる。やはり待遇が良ければ人間というのはそれに見合った努力をしてくれるものです。

 前世の上がらない給料や劣悪な職場を思い返すと嫌な気持ちになりますね。反面教師にしてこの世界ではそれに見合った褒賞を出してより上を目指して欲しいです。褒賞を出すのは私ではなくジルクニフですけどね。

 

「今回の戦争は皇帝陛下もご覧になる。王国軍を下し勝利を捧げるのだ!」

 

 よし、士気向上はこんなものでいいでしょう。程よく強化もされているので余程の手練でなければ負けはないはず。ガゼフ・ストロノーフとかは無理そうですけど。

 

「では、開戦の合図が出次第作戦通りに。特にナザミ、ルミリアの二人には重要な箇所を抑えてもらうことになる。任せましたよ」

 

「「ははっ!」」

 

 準備万端、やれることは全てやりました。後は私の仕事をするのみです。

 

 

 

 ◯

 

 ◯

 

 ◯

 

 

 

 遂に戦いが始まった。

 此度の戦い、王国は前回の敗北から学び頭数を揃えることを是とした。その数十五万。そこに去年はいなかった新たな戦力、王国戦士長という地位についた周辺国家最強と名高いガゼフ・ストロノーフが加わり今年こそは帝国に一矢報いるのだと王国貴族の士気は高かった。

 

 しかし、ガゼフはこの戦争の始まりから不安を抱えていた。それはかの帝国にいるとだけ伝えられている粛清騎士という存在にだった。王国貴族でもその存在を知るものは少なく噂話程度にしか耳にしていなかった人物だ。

 

 曰く、皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスが即位して間も無く現れた存在であり鮮血帝と恐れられる要因となった騎士。

 曰く、皇帝に刃向かう貴族達を全て粛清し貴族達の死神と恐れられる存在。

 曰く、その強さは帝国ではあのフールーダ・パラダインすら遥かに凌ぐ。

 

 そんな王国の誰も知らない秘匿されていた存在を帝国は今回の布告状で大々的に主張してきた。

 

 

 元々、エ・ランテル近郊はバハルス帝国が占領していた土地であり、リ・エスティーゼ王国は不当に占拠している。

 そのため、本来あるべき形に戻すべく返還を求める。

 従わないのであれば、王国に侵攻を開始し鮮血帝が誇る最強の剣が裁きを下すだろう。

 

 

 

 当時の宮廷会議でも最強の剣が粛清騎士と結びつかず何らかの比喩かと思われていたがブルムラシュー侯が帝国にこんな騎士の話があると言い出してから最強の剣が粛清騎士だと断定するに至った経緯がある。

 しかし、王国では皇帝がその存在をでっち上げてこちらを脅そうとしている程度にしか取り合わなかった。それもそうだ。それだけの力を持つ人物なら否応なしに目立つはず。なのに帝国にはその名は轟いているが周辺国家にはそれほど通っていない人物など所詮は取るに足らない人物だと決めつけていた。

 

 しかし、ガゼフは違った。戦士としての直感か、それとも人としての本能が何かを警告している。

 

 

 ──あの先に自身を遥かに上回る何かがいる、と。

 

 

「気を引き締めなければならないな」

 

 王より与えられた王家の至宝を装備し、かのアダマンタイト級冒険者リグリット・ベラスーカウラウから貰った戦士としての技量を上げる指輪を嵌めガゼフは戦場へと降り立った。

 

 

 開戦と同時にボウロロープ侯の突撃の合図が王国軍に伝わる。王国兵達は一斉に槍を持ち、馬で駆け突撃していく。数は圧倒的で帝国から見れば人の波が押し寄せてくるようだった。

 しかし、帝国騎士団はこの程度では臆することはない。無策の突撃など恐るるに足りないからだ。

 

 

「迎え撃つのだ帝国騎士団第二軍よ!粛清騎士殿の突撃に比べれば大したことはない!迎撃陣形を取れ!」

 

「「「「「ははっ!!」」」」」

 

 迎撃陣形を取った騎士達による反撃がただただ突撃してきた王国兵を大盾で阻み背後から突き出される剣や槍で蹴散らしていく。

 数で圧倒している王国兵は数で押し潰す腹づもりだったが、何人で押しかかろうとも騎士達はビクともしない。それもそのはず、大盾を扱う騎士達は武技〈要塞〉を使い耐久力を上げているのだ。

 そして何より──彼らが身につけている装備は総じてアレーティアによる様々な強化がされており、更に言えば昨晩の晩餐での料理の支援効果、扇動士気による強化が入りそれぞれが冒険者で言う白金級程度の力を発揮しているのだ。

 それがなんの強化も受けていない、ましてや付け焼き刃の訓練しかしていない王国の一般兵が敵うわけがない。

 

 

「ば、バカな!?何故あれだけの数をたった数十人で押し留められる!?」

 

 驚愕する王国貴族たち。彼らは何が起こっているか分かっていない。正しく現状を理解しているのは両手の指の数程度だろう。

 突撃した兵は騎士たちによって返り討ちにあい次々と崩れ落ちていく。そして、徐々に徐々に、真綿で首を絞めるが如くゆっくりと帝国軍は侵攻している。

 そんな中、現状を理解したガゼフは即座に行動を起こす。

 

「アレでは兵を無駄死にさせるだけだ!兵を一度後方に下げ陣形を組み直すべきです!」

 

「黙れ!平民風情が我等に意見など」

 

 だが、傲慢な貴族たちはそれを取り合わない。このままでは大敗する……そう思ったその時、予想もしてなかったところから手が差し伸べられる。

 

「いいえ、その通りにすべきかと!今年の帝国は何かが違います!去年に比べ強さがまるで違う!」

 

 ガゼフの言を後押ししたのはレエブン侯だ。彼もまたこの事態を理解し即座に対処すべきだと判断したのだ。

 

「指揮をとっているボウロロープ侯に告げよ!前線は戦士長率いる戦士団が引き継ぐと!一度兵を下がらせ体勢を整えるべきだと!」

 

 なんの相談もなく前線を任されたガゼフだったが、それが正解だと彼も理解していた。アレに対処出来るのは現状戦士団だけだと。

 

「行くぞお前たち!」

 

「「「「ははっ!!」」」」

 

 

 ガゼフと戦士団が馬に乗り撤退していく兵たちとは逆へ、帝国騎士団の元へ向かっていく。剣を抜きいつでも戦えるように武技を使い駆けてゆく。

 

 

 ◯

 

 ◯

 

 ◯

 

 

 

「戦士長が出てきた。では、作戦通りに……」

 

「行くぞ」

 

「ああ、私の最後の晴れ舞台だ。存分に踊ってやるとも」

 

 迎撃陣形を取っていた騎士団が道を開けるように散開しその先に立ちはだかるは一般の騎士とは異なる鎧を纏いし二人の騎士。

 一人はその身と変わらないほど巨大な盾を両手に持ち仁王立ちしている。

 もう一人は細身の剣を二振り、それぞれ両手に持ち今か今かと突撃するが如く構えをとっていた。

 

 

「私は王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ!帝国騎士よ覚悟!!」

 

「……帝国四騎士が一人、“勇猛”ナザミ・エネック。王国最強よ、お前の相手は私と──」

 

「この私だ!帝国“元”四騎士が一人“乱舞”ルミリア・リイル・アーチゾルテ!粛清騎士様の命によりその首貰い受ける!」

 

 

 王国劣勢の中、それぞれの戦力の最高峰がここに激突した。

 

 





現状簡単まとめ

ガゼフvsナザミ、ルミリア

戦士団vs騎士団一部

王国兵──撤退中、兵士たちは地獄を見た、貴族たちは大多数が現実逃避

騎士団──追撃中、ただし巻き込まれないように深追いはしない

アレーティア──粛清準備中(対象〇〇〇〇)

トーマス──ジルクニフの護衛、結婚前だからという気遣い

????──遠方、現地から同時に監視中、特に粛清騎士の素性

全体の戦いはザックリしか書かない(書けない)のでこんな感じぐらいに留めてもらえれば。



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