転生したらオバロ世界のエルフだった件について 作:ざいざる嬢
「うおおおおっ!!」
「ぬぅぅぅん!!」
剣と盾が激しく激突する音が戦場に鳴り響く。この剣と盾の応酬は決着がつかず延々と続いていた。
剣を持つは王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ。盾を持つは帝国四騎士“勇猛"ナザミ・エネック。互いに一歩も引かない戦いが続いていた。
再び剣と盾が交差し火花を散らす。しかし、一つガゼフにとっては理解し難い事が起こっている。
ガゼフの持つ剣、名をレイザーエッジと言い王国に伝わる五秘宝の一つ。その切れ味は凄まじく鉄程度ならばバターのように斬れるという効果を持っている。それによりたとえ相手が持つ防具が鉄以上の硬度でも、仮にアダマンタイトであってもいずれは斬り裂くことが出来るだろう。
しかし、現実はそうはいかなかった。先ほどから何十、もしくは百を超えた攻防の中、レイザーエッジと対する一対の盾は傷一つなくレイザーエッジによる一撃を防ぎきっている。
「その盾……中々の代物だな。ここまで斬っても無傷とは」
「……以前のものなら容易く斬り裂かれていただろうが、この武装はそうはいかん。戦士長よ、お前がルミリアを倒したところで俺という壁を越えることは出来ん」
──来る!今まで防御に徹していた男が突如として攻撃の態勢になった。何かがあると思わせるその素ぶりにガゼフは警戒の色を強める。
「教えてやろう、何故俺が"勇猛"という二つ名を授かったのかをな。〈猛突撃〉」
瞬間、ナザミは2枚の盾を前に構えそのまま突撃した。ただ一直線に向かってくるなら回避は容易いはずだったがナザミは〈流水加速〉により攻撃スピードが増しており避けるに至らなかった。
「ぐ、うおおおっ!?」
武技〈猛突撃〉、それは言ってしまえばただの突進だが武技であるが故に一つの技へと昇華している。その迫り来る姿は黒い鎧、盾が相まってか黒い鉄球のようであった。
ただでさえ重装備のナザミがスピードを得て突進すればそれだけで十分な攻撃力を持った攻撃になる。それが武技により更に強化され──ガゼフは後方へと吹き飛ばされた。
(な、なんという一撃だ!耐えきれず吹き飛ばされるとは)
地面に落下し、少しふらつきながら立ち上がり──
「〈投擲〉」
「なっ!?」
目の前には武技によって投げられたあの巨大な盾が迫っていた。
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「ナザミ、貴方の戦い方は守るだけですか?」
とある日、四騎士の合同訓練中に粛清殿からそんな問いを投げかけられた。
四騎士で唯一盾を武器にした俺は守ることに徹した。無論、剣が出来ないわけではないが、かつて見たあの盾を使った戦士への憧れを捨てることが出来ず、真似事ではあったがここまで上り詰めることが出来たのは幸運だった。
盾の役目とは何かと問われれば誰もが防御のため、守るためという答えを出すだろう。盾で攻撃するという酔狂な答えを返す者もいるかもしれない。確かに武技の一つに〈盾突撃〉や〈盾強打〉というものがあるのは知ってはいるがそれが戦いにおいて決定打になることはない。……少なくとも俺はそう思っていた。
「この大盾二枚を持ち、更には全身に鎧を纏う貴方の欠点はその重量による速さ。でもそれも〈流水加速〉などを使えば十分に補えます。ただ、それでは不十分だと思うんです」
そう言い粛清殿は俺の盾を手にバジウッドを模擬戦相手に選んで実戦でそれを見せてやると言った。
「あ、あのー粛清騎士様?ど、どうかお手柔らかにお願いしたいんですが……」
「ああ、大丈夫ですよバジウッド。耐えればいいんです」
「そりゃあ無茶ですって!ナザミの盾なんて持って何する気ですかい!?」
「見ればわかりますよ。さてナザミ、盾は守るだけでなくこういう使い方もできます。行きますよ〈
瞬間、凄まじい速さでバジウッドに向かって盾が投擲された。流石のバジウッドもまさか投げられるとは思ってもおらず──それでもその大剣で防御に成功していた。
しかし、粛清殿は盾を投げただけでは終わらない。投げたと同時に走り出し、防がれた盾目掛けドロップキックを叩き込んだ。
「ぐえええ!?」
「このように盾は投げて不意をつくことも出来ますし、防がれてもこのサイズなら視界を封じることもできます。今のバジウッドは盾を防ぐことに精一杯で防いだ後のことを考えていなかったからこのザマなんですけど」
「ちょっ、粛清騎士サマ!?お、降りてください!く、苦しい!!」
「他にも盾を持ったままでもこれを二枚持って突撃すれば十分な攻撃力を発揮できます。攻撃は最大の防御という言葉がありますが、場合によっては防御力が攻撃力に転じることもあるんです。他にもこうして盾を押し付けるだけで相手を押さえ込むことが出来ます」
「ぐえええええ!!しゅ、粛清騎士サマ!?アンタ小柄なのにどうしてこんなおもっ……」
瞬間、バジウッドの意識が刈り取られていた。きっと重いという言葉が地雷だったんだろう。……体重を気にするということは粛清殿は女性なのだろうか?いや、触れてはいけない。
「と、このように盾には守るだけでなくこうした攻めにも運用出来ます。他にも、これはある意味例外ですがとある冒険者が円盾の縁を鋭く磨いていざという時はそれを相手に叩き込むことで刃物としても扱う、なんて戦い方をしていた人もいたみたいですよ。
ナザミはこの盾を投げるところから始めましょうか。的はそこのデリカシーのない四騎士がしてくれますから」
俺はバジウッドに同情しながらもその教えに従った。そして盾を使った戦い方というのをこの時初めて理解したと思う。
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「ぐはぁっ!」
ナザミによる盾による投擲を回避出来ず、そしてそのまま追撃──もう一つの盾を構えたままの突進──を受けてしまった。
「……俺は帝国最硬の騎士だ。帝国のため陛下のため真っ先に身体を張るのが俺の仕事だ。それは防御においても、攻撃においても同じだ。命を懸け常に最前線に立つ、そうしている内に勇猛と呼ばれるようになった」
投げた盾を拾いゆっくりとガゼフに近づいていくナザミ。ガゼフは持っていたポーションを急いで身体に掛け少しでも傷を回復させ備えた。
「ルミリアはしくじったが俺はそうはいかない。さあ構えろ」
ナザミの射抜くような視線にガゼフも覚悟を決めそれに応える。
互いの視線が交差し、再び動き出したその時──
ドォォォオオオン!!という轟音が突如鳴り響いた。
ガゼフが振り向けば本陣から煙が上がり、兵たちが宙を舞っている異常な光景が見えた。
「ぎゃああああああ!!」「な、なんなんだあれは!」「た、助けてくれええええええ!!」「燃えてる!俺の身体が燃えてるぅぅああああ!!」「し、死にたくないうわああああぁぁぁぁ!!」
突然の事態に戦いの手は止まる。ガゼフは本陣に襲撃があったと察して。対するナザミは遂に作戦の最終段階に入ったことを察して。
「な、なんだこの音と声は!?」
「……どうやらここまでのようだ戦士長。俺たちの役目も終わった」
「なんだと?どういうことだ!」
「全ては皇帝陛下と粛清騎士の作戦通りというわけだ。尤も、アレを起こしているのは粛清騎士殿だがな。それと……その傷であまり無理をするなルミリア」
瞬間、ガゼフの背筋がゾクッと冷えた。間違いなく今背後から自分の命を絶とうとする何かが迫っていた。
即座に武技〈回避〉を発動し、続けて〈即応反射〉で反撃する……が、防がれる。だが、凌いだ。
下手人の姿を見れば先程斬り伏せた女騎士の姿がそこにはあった。傷は癒えているようだがそれでも今の攻防がやっとのようだった。
「あ~……死ぬかと思った……」
「ギリギリ間に合っていたか。無事で何よりだ」
「無事じゃない……本当に死にかけた……碌な手柄も立てられないで終わるとは不甲斐ない……」
「お前の奮闘ぶりは陛下に伝えておいてやる。それより早く下がるぞ」
「そうだな、流石に私もアレに巻き込まれたくはない……けど、粛清騎士様と同じ戦場には立ちたかったなぁ。いいなぁニンブルとレイナース」
「そんなことを言うのはお前ぐらいだぞ……。あの二人も相当無茶振りされているに違いない」
目の前で呑気に会話をする二人の帝国騎士を見てガゼフは憤りを憶えた。なにせもう終わったと言わんばかりの雰囲気を出しているのだ。直前まで命懸けの戦いを繰り広げていたのに、もう相手をする必要すらないという程に空気が弛緩しきっている。
「もう勝ったつもりか!?俺はまだ……」
「戦士長よ、俺たちに構っていていいのか?今に粛清騎士が──王の首を奪いに向かっているぞ?」
その言葉に最悪の事態が脳裏に浮かぶ。自分の敬愛する王が討ち取られる。それだけはあってはならない。
「今ならまだ間に合うだろう。生きている戦士たちを連れて戻るといい。安心しろ、これ以上俺たちは追撃はしない」
言葉だけなら強者の驕りにもとれるがナザミはそんな男ではないのをガゼフはこの戦いの中で理解していた。剣を納め背中を向ける。
「……礼は言わんぞ」
「構わん。さて、お前たちも下がるぞ。ここにいては巻き込まれる」
ナザミの号令に従い帝国の騎士たちも戦いの手を止め戦線を離脱していく。それを横目にガゼフたち戦士団も──半分以上数は減ってしまったが──最低限の傷をポーションで癒し王国本陣へと向かっていった。
その先に更なる絶望が待っていることを知らずに。
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「ひいいいい!?」
「逃げられる、とでも思ったんですか?残念でした、粛清騎士からは逃げられないんですよ!」
「ま、待ってく──」
はい、たまたま逃げようとしていた貴族──アニメで見たことある数の差で楽勝とか言っていたヤツ──を見つけたのでついでとばかりに処分しました。えーっと確か……リットン伯でしたっけね?リストにそんな名前があったはずです。
そんなことを思い返していると馬に乗ってレイナースとニンブルがやって来ました。馬なんて連れてきていなかったのにどうして……と思いましたがよく見れば王国の紋章が刻まれた鞍に跨っているので奪ったのに乗ってきたようです。
「粛清騎士様、こちらなんとか片付きました。しかし、もう少し騎士を連れてきても良かったのではないですか?いくら相手が雑兵とはいえ二人だと少々キツ「キツくなんてありませんわ。むしろもっと任せてください」レイナース!?」
どうやらレイナースは無事順応したみたいです。ニンブルは……見た目細めなんで体力がまだ足りないのかもしれませんね。帰ったら体力作りをさせないと。
それにしてもレイナースは手柄を上げて呪いを解きたいからか張り切り具合が違います。彼女には今後も頑張ってほしいですね。
「では、行きましょうか。この戦争の幕を下ろしますよ」
「「ははっ!!」」
さてさて、ランポッサ三世は何処に行きましたかね?恐らくこの現状では護衛によって逃がされていると思うのですが……あ、見つけました。案の定、護衛に囲まれてこの場を離脱しようとしていますね。逃しませんけどね。
「レイナース、後ろに乗せてください。あそこにいる王を追いますよ」
「分かりましたわ」
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「くっ、見つかった!」
「お前たち、王を任せたぞ!うおおおお!」
最早王国の敗北は確定、それだけの被害が確認出来た時点で王を取り巻く臣下は即座に敗走へと手筈を進めた。
王であるランポッサ三世はそれを一度拒みはしたものの、ここで王が死ねば間違いなく国が割れ帝国にいい様に支配されることになるという説得のもと合意した。
兵たちにも持ち場を離れ撤退──敗走せよと命を出したが、現場は混乱の渦に飲み込まれそれが伝わらず次々と死んでいった。
攻め入ってきたのは粛清騎士。今回の戦争についての王国の宮廷会議でも議題に上がり、ただの帝国の脅し文句の一つだと脅威にも思わなかった人物。それが今、王国に真の脅威として迫っていた。
王の逃走時間を僅かでも稼ぐべく飛び出していった護衛騎士たちは馬に乗ったまま剣を振り、当たってもいないのに騎士たちの身体は真っ二つに裂け地に落ちた。稼げた時間は僅か一秒にも満たず、粛清騎士の前にはその程度では時間稼ぎにすらならないと思い知らされた。
迫る、迫る、迫る──徐々にではあるが確実に距離を詰められている。後ろから迫る馬の駆ける音と鎧がぶつかり合う金属音が死神の足音に聞こえる。
そして───突如地面が隆起し馬がバランスを崩してしまい、王を含む護衛たちは落馬してしまった。あの粛清騎士が何かしたのだろう、地面には光り輝く何かの文字が見えた。
「初めましてランポッサ三世。私は粛清騎士、皇帝陛下の命によりあなたの身柄を拘束するためやってきました」
「……拘束だと?あれだけ殺しておいて私は殺さないのかね?」
「ええ、国の王まで殺しては落とし前のつけどころが難しくなると思いませんか?後は貴方を連れ帰り拘束、捕虜として扱わせていただきます」
この戦争の勝敗は最早明確だ。帝国の勝利は揺るぎない。この後の戦後交渉も帝国の要求をほぼほぼ呑む形になるだろう。
しかし、王が捕虜にされたとなれば話は変わる。王の身柄を返却する代わりに元々要求されていたエ・ランテル近郊の地だけではなく、より多く要求を呑まざるを得なくなる。
屈辱だ。多くの者が死んでいったというのに王だけは捕虜として扱い戦後の交渉に使うと言われているのだ。
「では、ニンブル。拘束してください。そのまま拠点に連れ帰ります」
「了解しました。では、失礼しますよランポッサ三世」
ニンブルが縄を持ちランポッサ三世を拘束しようとしたその時──
「陛下ああああああ!!」
「来ましたねガゼフ・ストロノーフ!」
──王国と帝国の頂点が遂に接敵した。
ナザミ──最早原作の面影すらないぐらいに強化されてる人。アレーティアのバフ効果でフルアーマーガゼフより強くなっている。正直ルミリア要らないぐらい。この状態なら漆黒聖典所属のクレマンティーヌ相手でも勝てるかもしれない。
ルミリア──致命傷でもザイトルクワエ製アイテムのお陰でギリギリ生存。しかし瀕死。
ガゼフ──ナザミにボコられる。次回、アレーティアと決戦。
アレーティア──王国民から総じて死神と呼ばれた。その内死神騎士とか呼ばれそう。呼ばれても喜びそうではある。今回のキルスコア断トツ一位。万単位で処してるが七万まではいっていない。精々半分程度。左翼、右翼は騎士団に任せているためノータッチ。
次回で戦争自体は終わらせてあと数話入れたら原作に……入りたいなぁ(願望)