転生したらオバロ世界のエルフだった件について   作:ざいざる嬢

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日付時間ゾロ目投稿したくなり、この時間にしてしまったので初投稿です。
去年なら年までゾロ目だったのにと少々残念。



アレーティア辺境侯のエ・ランテル統治part2 〜黄金と白金〜

 

 

 ドワーフの国から帰って来てルミリアに諸々を任せて一休憩しています。

 いや、まさかクアゴア、フロスト・ドラゴンの対応を終えて戻ってみれば工匠たちで大騒ぎしてるとは思ってもおらず……摂政会も抑えるのに必死だったあたりかなり大事になっていたようで。

 聞けばフェオ・ライゾにいる工匠の九割が名乗りを上げ、誰もが──特にルーン工匠が──一歩も引かず乱闘間近になっていたとか。

 原因と言えばやはり私で、ドワーフの国に現れた天才が治める都市に行けば何か掴めるかもしれない、私が鍛治をしている姿を見れば何か得るかもしれないなどの希望、期待、羨望から希望者が殺到したとか……。

 

 なんていうか、その、熱狂って怖いですね。

 一先ず落ち着いてもらい、誰も辞退する気は無いようなので摂政会との話し合いの上一月に一度他の希望者と交代する形で希望した全工匠をお借りする流れになりました。

 頭を痛めていた摂政会には申し訳ない気持ちでいっぱいです。

 後、新しい鍛治工房長がさり気なく希望者に混ざってるのどういうことですか。それでいいのか摂政会。

 何はともあれ、ドワーフを借り受ける話は丸く収まったようで良かったです。

 

 

 さて、今度はクアゴアの話をジルクニフにしに行かないといけません。

 オラサーダルクを叩きのめして制裁を加えたものの、あのドラゴンはその内また無茶振りをするでしょう。するとそれに応えられないクアゴアはどうなるかと言われれば答えは明白です。なので、帝国で受け皿を作ってあげて少しずつ乗り換えていく方向で話を進めていこうと思います。流石に帝国も突然八万という数を受け入れるのは難しいですからね。とはいえ数は力ですから、ジルクニフも上手いこと扱ってくれるでしょう。

 

 

「ということでお任せしてもいいですか?」

 

「ダメに決まってるだろ?!さてはお前その件を俺に押しつけに来たな!?」

 

「何を言っているんですか。ちゃんと報告、連絡、相談してますよ?ただ思いつきで始めた案件が思いの外手広くなりすぎて困ったから一部お願いしようとしているだけで

 

「思いつきで始めるからこんなことになったんだろうが!!八万も亜人種を俺に押しつけるな!いくらドワーフ、エルフに寛容になったとはいえ亜人種となれば国民の理解も必要だ。そう易々と受け入れることが難しいことはお前も分かるだろ!?」

 

 うーん、正論ですね。評議国ならきっと問題ないんでしょうけど基本的に亜人種は敵と見做されていますからね。理解を得られないと民として受け入れるのは難しいと。

 

「兎も角、一度会って話だけでも聞いてあげてくださいよ。きっと仲良く出来るはずですから」

 

「……お前なぁ、私がどれだけ今忙しいか知っているか?戦後処理や交渉の内容についての議論、王国にかける圧力、内政、今後の通商における取り決めなど山ほど政務が立て込んでいるんだ。そんな中でお前の持ち込んだそのクアゴアという種族の受け入れなどやる間がない。これが現状だ」

 

 そこまで言われたら仕方ないですね。一旦諦めましょう。

 それならそれでクアゴアたちの特性を活かした仕事をしてもらうことにします。

 それともう一つ確認しないと……

 

「ではこの件は一旦引き上げます。もう一つの件ですが例の「ダメだ。許可しない」

 

 まだ何も言っていないのに。まあ分かりきっている反応なんですけど。

 

「もう契約しちゃってるんですよ。双方納得のいく契約ですし、彼女が帝国に協力してくれればオーガに金棒、いやウォートロールに金棒という方が正しいですかね?とにかく内政的にも非常に助かるんでメリットしかないんですよ」

 

「……だからと言ってアレを認めろと?それなら他の有力貴族の──」

 

「それだと彼女の望みが叶わないのでダメです。この契約は私と彼女だからこそ成り立つものなので。現にもう彼女は早速王国を上手い具合にまとめてくれてます。無能と有能を上手く扱い、明確な汚点を暴き、綺麗に整えてから王国を帝国に併呑させる計画は多分陛下か彼女しか出来ませんよ?」

 

「だが「個人的な感情で物を言わないでください陛下。この案はロクシーさんも納得してくれていますし」なんだと!?」

 

 なんでジルクニフはこんなにこの件を受け入れてくれないのか甚だ疑問でしかありません。

 

 

 

 

 ラナー王女と私が婚約するだけですよ?帝国になんのデメリットもありません。

 

 

 

 

 そもそも、どうしてこんな話になったかというと少々時を遡ります。

 そう、あれは戦争を終えて王国でブルムラシュー侯からその命を奪わない代わりに金鉱山とミスリル鉱山や金品を巻き上げてから王都に向かった時のことです。

 

 あの日は実に夜空が綺麗でした。星がキラキラと光って宝石のような……。いや、この世界だと普段の夜と変わりませんね。

 そんな日に『黄金』と称される王国の第三王女、ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフと出会いました。

 

 

 

 

「土足で失礼」

 

 〈完全不可知化(パーフェクト・アンノウアブル)〉の魔法を使い窓からラナーの部屋へ侵入しました。

 流石のラナーもこれは想定外だったのか、あるいは気を抜いていたのか呆けた顔をしていました。深夜なのもあって着ている服もアニメなどで見たドレス姿ではありませんでした。

 

 とはいえ、流石はあのデミウルゴスやアルベドと互角とまで言われる頭脳を持つ彼女はすぐに状況を理解したのか、それとも僅かな情報から私のことを知っていたのかは分かりませんが見事に切り返してきました。

 

「こんばんは、名も知らぬ騎士様。いえ、粛清騎士と言った方がいいですか?」

 

「粛清騎士で構いませんよ。夜分遅くに、窓から訪れてしまい申し訳ありませんね。しかし、こうでもしないと貴女と二人きりで話すということが困難なことをご理解いただけると幸いです」

 

「ええ勿論です。それで……こんな時間に私に会いに来た理由を聞かせていただいても?暗殺などということは無いでしょう?そんなことをしなくても貴方なら正面から堂々と城に攻め込み全てを滅ぼせるでしょう?

 ──あのトブの大森林で確認されたらしい破壊の嵐を使って

 

 

 正直、この切り返しは予想してなかったので驚きました。いきなりぶっこんでくるとは。

 今回の戦争で私は攻撃系の魔法は一切使っていないのにも関わらず、いきなりそこにたどり着くとは……カマをかけているだけかもしれませんが実際目の当たりにすると不気味というか末恐ろしいというかなんというか。

 とはいえバイザーで顔を隠している私の動揺は隠されていたので伝わってはいなかった……はず。多分、きっと、めいびー。

 そして私も少し反撃しましょう。これも交渉材料になり得ますからね。

 

「おや、お気づきになられていましたか。あの地では少々手強いモンスターと激戦を繰り広げましてね。当時の私は未熟だった故にあの様な目立つ魔法を使ってしまいました」

 

 さあどうだ!?どう返してくる!?心臓バックバクですが大人しく答えを待ちます。

 

「やはり貴方の仕業でしたか。知り合いの冒険者から依頼でトブの大森林奥地で発生した異常を調査した話を聞かせて貰い、そこから僅かに流れてくる帝国の粛清騎士様のお話を聞いてもしや、と思ったのですが正解だった様でなによりです」

 

 ああ〜優雅!実に優雅な返しです!これが本当の王族かと格の差を見せつけられましたね。

 私なんて所詮片田舎の頭エルフクソ親父に育てられたなんちゃって王女なのでこうして比べてしまうと見劣りしてしまいますね。

 私に足りないものは、それは! 情熱・思想・理念・頭脳・気品・優雅さ・勤勉さ!速さだけなら物理的に勝ってるんでなんとかなりませんかね?

 ともかく話を続けましょう。

 

「さて、そこまで私の強さを理解していただけているなら私がここに来た理由も薄々理解しているのではありませんか?

 ……単刀直入に言います。貴女が欲しい。帝国の更なる繁栄のために」

 

「何故私なのですか?私は王族の中では最も立場が低い者。王位継承権も持たない私を欲する理由は?」

 

「何を言いますか。こうして会話を交わすだけで分かります。その頭脳、知略は恐らく我らが皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスをも上回るでしょう。しかし、貴女はそれを察せさせないために敢えてどこか抜けている演技をしている。違いますか?」

 

「………」

 

「沈黙は肯定と受け取ります。勿論ですが帝国に協力してくださるなら相応の御礼をさせていただきます。例えばそうですね──貴女の最も叶えたい願いを叶えて差し上げる、というのはどうでしょう?」

 

 するとラナーの表情がアニメで見たハイライトのない眼に歪んだ、醜悪な笑顔へと変わりました。どうやら腹を割って話をしてくれる気になってくれた様です。

 

「私の願いを知っているのですか?」

 

「ええ、貴女に付き従う彼と結ばれることでしょう?違いますか?」

 

「……その通りです。私はクライムと結ばれれば……うーん。ついでにクライムを鎖に繋いで、どこにも行かないように飼えればもっと幸せかもしれません」

 

「なるほど、愛には様々な形がありますからね。彼もきっと受け入れてくれるでしょう。その願いを聞いた上で私はこう答えましょう。──その願い、私なら叶えられます

 

 ラナーの輝いていないその青い瞳がこの言葉を聞いた瞬間キラキラと、まるで夜空に瞬く星の様に輝き出したのを私は忘れられません。

 

「取引しましょう?多くの無能が、それでいて権力だけは握っていた多くの貴族が死に混乱の坩堝にある王国を帝国に併呑出来るなら……確かクライム、でしたか?彼と結ばれる様にしてあげます」

 

「乗りました」

 

「即答ですね。こちらとしては助かります。では、王国の件はお任せしますが何か助けが必要ならこれを使って私に連絡を」

 

 私は無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァザック)から私謹製のマジックアイテムを取り出し、それをラナーへと渡しました。

 

「これは?」

 

「私が作ったマジックアイテムです。それを使うと一日に四度、私に〈伝言(メッセージ)〉が届きます。連絡手段として使ってください。ああ、〈伝言〉とは違ってそのマジックアイテムは登録者同士でしか起動しないので私と貴女だけの専用アイテムになりますのでその点は安心してください」

 

「分かりました。ところで、私とクライムをどうやって結ばせてもらえるのか聞かせてもらってもいいですか?」

 

「分かりました。簡潔に言ってしまえば──私と婚約していただきます。ですがご安心を、私は例え貴女と結婚しても子を成せない理由がありますので」

 

 そう言って私はバイザーを外し、着ている鎧もスキルで脱ぎロクシーさんから貰ったお気に入りのドレスへと速着替えします。このスキル本当に便利で助かりますね。

 こうして私の素顔と種族と性別を知った彼女は数秒の間、まるで宝石に目を奪われたが如く見惚れた後になるほどと呟きました。

 

「そういう訳でしたか。人伝に聞いたことはありますがそれがエルフに伝わる『王の相』というものなのですね」

 

「ええ、言ってしまえば私はエルフの王族。そして存在がバレれば法国は間違いなく黙っていないでしょう。なので限られた人物にしか私の秘密は知らせていません。これを見せるということは貴女を信頼してのことです。

 私は今後割譲されるエ・ランテルを治めることになりました。そして新たなる爵位として辺境侯という位を与えられます。そんな私が貴女と婚約することに何の問題がありましょうか?王国は既に戦争、決闘で帝国には刃向かえない。貴女は帝国へ人質として送られる悲劇の王女。それに付き従うのは貴方の想い人。そして……私と貴方は同性故に本来なら子を残すことは叶いませんが、後は分かりますね?」

 

「ええ、ここまでお膳立てされて分からないはずないじゃないですか……!!」

 

「では、今後ともよろしくお願いします。私の花嫁」

 

「ええ!こちらこそどうかよろしくお願いします!私の旦那様?」

 

 

 こうして真夜中の密談は終えました。

 

 元を辿れば戦争前にラナーを仲間にしようと思い立った私はメチャクチャになった国をまとめられるのはレエブン侯かラナーだけだと考えていました。

 レエブン侯は後々脅すとしても、正直生まれたばかりの子供を人質にするのは気が引けます。

 となるとラナーしか候補がもういません。そして、彼女に関してはナザリックが来ていない以上、現状最高の条件を提示出来るのは恐らく私だけ。

 なので戦争後王国でやるべきことの一つとして彼女に接触しました。王国を帝国に併呑させ今後の協力を条件として見返りに私との婚約を取りつけました。当初はジルクニフに嫁がせてロクシーさんと一緒にラナー王女を監視しつつ協力してもらうつもりでしたが結果オーライですね。

 

 私は今のところ結婚する気が無いので丁度いいですし、ラナーは願いが叶い、王国は帝国のものになる。誰も損しない、私にしてはよく考えた計画です。

 なのに、な・の・に!!理由もなく却下しまくるのが我らが皇帝ジルクニフ。普段は先ほどのクアゴアの件の様に理由を教えてくれますが、こちらは教えてくれません。見るからに私情マシマシで却下してやがります。何してくれてるんですかねぇ?

 

「そもそもいい加減教えて欲しいんですが、この案の却下理由はなんですか?ロクシーさんにも話しましたけど良い案だと認めてくれましたし何処がダメなのか具体的に教えて欲しいんですが??」

 

「そ、それは……」

 

 珍しく答えに困っていますがここらでハッキリさせておかないといけません。ラナーを抱き込めるか抱き込まないかで今後の私の計画にも支障が出るんですから!主にナザリックの件で!!

 もうこの原作無視ムーブをしてしまった時点で色々と修正しないと後がマズイ気がするので頭脳だけならナザリック首脳陣に引けを取らないラナーを味方にして早々に被害が無い状態で降伏するつもりなんですから!

 もうこうなったらこの手で行きますか。

 

「ではこうしましょう。私が結婚するのは無しにします」

 

「そ、そうか、それなら」

 

「代わりに陛下の正妃として迎えてください」

 

「それはダメだァッ!!!」

 

 どうしろと?原作でも確かに嫌いな女ランキング一位とか言ってましたけどここまでとは。

 仕方ないです。最後の手段を使います。

 

「二つに一つです。これ以上は退きません。もし呑んでいただけないならもう私出ていきますよ?」

 

「うぐぅ」

 

「一つ言っておきますけど婚約すると言っても形だけです。矢面に立つ際はそういう風に見せますけど、裏を話すとラナー王女には愛する人が既にいるのでその相手との子供を私の後継にするつもりです。もしくは陛下と婚約して正妃として迎えられた場合も同様です。まあこの場合は陛下の血が流れていないんで子供は後継者にはなれませんけど……」

 

 実際どうでしょうね?ラナーの子供なんでその知能を受け継いで生まれることも考えられますから。知能、頭脳に関しては職業やレベルなんかは全く関係ないステータスですし。

 

「……条件を出す。それを受け入れるなら許可する」

 

 今にも血涙を流しそうなぐらい険しい表情見せてるんですけど、そんなに嫌ですか。

 とりあえず条件とやらを聞きましょう。

 

「婚約する粛清騎士の名をアレーティアとしてではなく別名義にしろ。あの女と結ばれる男としての粛清騎士。限られた人間しか知らないアレーティアとしての粛清騎士。要は今後アレーティアという存在を許可なくこの場以外で出すことを禁ずる。それを呑めるのであれば……受け入れよう」

 

 ふむ?つまりは私一人で二役演じろということですか。男の私と女の私がいると。そんなことする意味があるんですかね?

 元々素性は隠していますし、公で本名を明かしたこともないので問題ありませんね。

 

「それぐらいなら構いませんよ?」

 

「よし、ならば戦後交渉にお前の希望を受け入れるとしよう。後……あの女にあまり好き放題させるなよ?取り返しのつかないことになる気がする」

 

「分かりました。では私はエ・ランテルに戻りますので何かあればマジックアイテムでお知らせください。ではまた二日後に」

 

 これでようやく王国関係も進みそうです。やれやれです。

 

 さて、ちょっと頭を使ったので今度は肉体労働でもしましょうか。これもクアゴアのためです。クアゴアが有能だということを証明してジルクニフに紹介するためのアピールポイントを稼がねば。

 

 

 

 ◯

 

 ◯

 

 ◯

 

 

 

「あ、アレーティア様、お帰りなさいませ。早速ドワーフの方々と貧民街の住民たちを街道の整備に当たらせ、一部の者は近隣の村々へと移住を薦めたが……」

 

「ルミリア、ちょっと体動かしません?具体的には墓地の地下神殿に」

 

「行きます!私も政務が忙しくて体を動かしたい気分だったんだ!」

 

「それは丁度良かったです!では騎士たちに伝え隊列を組ませて地下神殿から敵が逃げ出さないように配備してください。この地図に抜け道が載っているので」

 

「任せてくれ!久々のアレーティア様との仕事……腕が鳴るな!!」

 

 

 






アレーティア
結婚に現状興味なし。誰のせいと言ったらクソ親父。
ラナー王女勧誘ガチ勢。蒼の薔薇ルートでも手を組むことになる。

ジルクニフ
アレーティアが結婚するとか言い出して絶対に認めたくなかったが、アレーティアを逃がしてしまうよりは対外的に粛清騎士とアレーティアを別人に仕立て上げて後々結ばれればいいと思っている。
何度も言うがナザリックが来る世界線でジルクニフとアレーティアが結ばれることはない。
結ばれるIFは需要があれば書くかもしれないし、後書きで断片的に語るかもしれない。

ラナー王女
現時点で最強の後ろ盾ができた上、自分の夢を叶えてくれる存在が現れたことに内心大歓喜している乙女。
王国併呑RTAが始まっているかもしれない。

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