転生したらオバロ世界のエルフだった件について 作:ざいざる嬢
もうすぐ原作!と言っておきながら中々原作にたどり着けないジレンマ……。
今回、独自要素多めなのでご注意を。
とある夜、エ・ランテル共同墓地にある霊廟。そこから更に隠された道を行くと地下神殿へと辿り着く。
この場にいるのは秘密結社ズーラーノーンの高弟が一人、カジット・デイル・バダンテールとその配下、そして多くの死体だ。
カジットはとある目的を果たすため、『死の螺旋』と呼ばれる魔法儀式を行う準備に取り掛かり始めたばかりだった。
手始めにこの共同墓地に発生するアンデッドを討伐するために巡回している冒険者を秘密裏に殺し、〈
「カジット様大変です!この地下神殿に襲撃が!」
「なんじゃと?一体誰だ、こんな場所にわざわざ攻めてくるからには入念な下調べが必要なはずだが」
即座にカジットはどの冒険者たちが攻めてきたのかを模索する。
妥当なところで言えば、エ・ランテルのでは最高位のミスリル級を誇る冒険者チーム三つ。『虹』、『天狼』、『クラルグラ』に絞られる。
仮にこの三チームが襲撃してきたとしてもカジットは恐れることはない。懐から取り出した死の宝珠と呼ばれるマジックアイテムがあるからだ。このマジックアイテムがあれば最近ズーラーノーンの幹部に仲間入りした、あの人格破綻した女にも勝てる見込みがある。故にそう恐れることはないと思っていたのだが……。
「粛清騎士です!あの粛清騎士が多数の騎士を引き連れ襲撃してきました!」
「な、なんじゃとぉ!?」
流石に相手が悪い。いや悪すぎた。
粛清騎士、最早帝国、王国だけにとどまらずただ一度の戦争で周辺国家にその力を知らしめた人物だ。その異名の由来ともなった帝国での無能──国民を虐げてきた貴族の多くを粛清、更にはかの有名な暗殺組織イジャニーヤをも滅ぼしたとされる、裏で生きる存在が最も警戒しなければならない敵だ。
この死の宝珠の力も通用するか分からない。
カジットもこのエ・ランテルでの儀式の準備を始めた矢先に粛清騎士がこの地を治めることになったと聞いた時には流石にマズイと場所を変えようとしていた。だが、死の宝珠を持っていた安心か慢心がまだあったのか……この共同墓地に手を出すのはまだまだ先だろうと考えもあった。故に、本格的な儀式の準備は他の都市で行おうと計画していたのだが、まさかここまで早くこの共同墓地へ手を出してくるとは思いもしなかった。
「お、おちおちおち落ち着け!う、あうう狼狽えるな!」
「カジット様!貴方様が一番落ち着いていません!」
「うるさいわい!逃げるのだ!隠し通路を──」
「報告しますカジット様!全ての隠し通路の先に百名を超える騎士たちが待ち構えているとのことです!」
「な、何故?何故何故何故何故……何故じゃああああああ!??」
もう訳が分からなかった。何故隠し通路の場所がバレている?仮にバレていたとしても全ての通路を抑えられるとは思いもしなかった。
退路は絶たれ後は──狩られるのみ。
コツン──コツン──。
何者かが霊廟から繋がる通路を歩いてくる音が空間に響き渡る。
来たる招かれざる客人は足音からしてたった一人。しかし、その足音がズーラーノーンの面々に恐怖を与える。
コツン──コツン──。
その音は徐々に徐々に近づく。近づいてくる。辺りが凍りついたかのように静まり、その足音が聞いている自分が処刑台に歩を進めているように錯覚させた。
コツン──コツン──。
もうすぐそこまで、ソレは迫っていた。そして──
「む?私が一番乗りか?」
現れたのは粛清騎士ではない、女の騎士だった。
「な、何者だ!?貴様が粛清騎士か!?」
「ん?ああ私は粛清騎士様ではないよ。お初にお目にかかる、秘密結社ズーラーノーンの高弟が一人、カジット・デイル・バダンテール。私はルミリア・リイル・アーチゾルテ。粛清騎士様の片腕だ」
現れた女騎士は粛清騎士ではなかった。しかし、纏うオーラは強者そのもの。少なくともこの都市の冒険者個人では決して敵わないと推測した。
「この度、主人である粛清騎士様はお前たちの存在を知り、真っ先に対処せよと命令を下された。いくら秘密の抜け道を作って脱出経路を作ろうと無駄だ。あの方の前にそういった小細工は通用せんよ」
「……ふん、そうか。しかしお前程度ならワシの力でどうとでもなる。お前を殺しアンデッドに変え正面から逃亡するとしよう」
「そいつは出来ない相談だ……なっ!!」
瞬間、目の前の女騎士──ルミリアの姿がブレた。そして気づけば目の前まで接近しその剣はカジットの身体を──
「バカめ」
ガキィン!とルミリアの双剣が現れた骨の巨腕に遮られる。そうして一度後方に引いたルミリアの前に地面から現れたのは──
カジットはほくそ笑んだ。この女相手なら勝てると。
実際この骨の竜相手に斬撃、刺突といった武器は効果が薄く、ハンマーなどの殴打武器の方が効果的だ。対してこの女が持つ武器は二つの直剣。なんらかのマジックアイテムなのだろうが魔法が効かない骨の竜には大した効果を発揮しないと予想した。
即ち、ミスリル級冒険者チームでなければ相手にもならない骨の竜相手にこの女一人で勝てる道理はないのだと。
ただ、それを過信してはいけない。何故なら物事には全て例外というものが存在するのだから。
「骨の竜、か。まあ丁度いい実験材料になるな」
元帝国四騎士の一人『乱舞』ルミリア・リイル・アーチゾルテ。元ではあるが現在の四騎士に劣るかと言われればそうではない。むしろ帝国騎士の中では上から数えた方が早い実力を未だ保持している。
そして彼女の手にあるのは、戦争で使った剣とはまた異なるルーンが刻まれた剣。ドワーフがこの都市に来てから作られた剣で、ルミリアはアレーティアからとある実験を頼まれていた。
「実験材料?フン、骨の竜に魔法など効かん。貴様はこれからこの骨の竜に無惨に殺されるのだ!〈
骨の竜に多くのバフがかけられ、従来の骨の竜を上回る強化が完了した。
「なるほど、骨の竜に魔法は効かないはずだがそう言う害を与えない魔法は通じるのか。フールーダ様が喜びそうな情報だな。武技〈能力向上〉〈流水加速〉」
対してルミリアも武技による自己強化を済ませる。
そして──
「やれぇ!!骨の竜よ!あの女を殺し道を切り拓くのだぁ!!」
「舐められたものだな。元とは言え帝国四騎士の力量、ここで見せてやろう。──奥義〈疾風斬撃〉」
目に捉えられない早技、〈疾風斬撃〉はカジットに届かず骨の竜の身体に阻まれる。カジットはそれを見てはほくそ笑み、骨の竜に叩き潰すよう指示を出す。
だが、そんな現状に一切焦りを見せることなくルミリアは、ただ一言言葉を発した。
「ルーン起動、″
するとルミリアの剣に刻まれたルーン文字が幾つも光り輝き───骨の竜の身体が弾け飛んだ。
「ば、バカな!?な、何故骨の竜にマジックアイテムが通じて!?」
身体の大部分を失った骨の竜の姿がそこにはあった。
辛うじて残っているのは、剣が触れていない側面と顔ぐらいだ。アンデッドだから動けているが、生きていれば致命傷だろう。
「おお、流石ルーンの力だ。
「こ、答えろ!何をした!」
「……答える訳ないだろう?態々手の内を晒すようなバカなことをするか。さて、投降しろ。今なら五体満足で捕らえてやるぞ」
「ふ、ふざけおってええええ!だが、それだけ強力なマジックアイテム、一日に何度も使えるものではあるまい!ならば死の宝珠よ!そして……〈
〈負の光線〉を受けた骨の竜の身体が修復されていき、更に死の宝珠による何らかの効果を与えられた骨の竜の威圧感は、先程とは比べ物にならないほど増していた。
地下神殿に絶大な負のオーラが満ちていく。死の宝珠の力なのか神殿の地面からアンデッドが、スケルトン、
この光景にカジットは驚きの表情を浮かべるが、すぐに笑みに変わる。このままアンデッドが多発すれば、それを囮に逃亡し態勢を取り戻せる。そしてオマケに幾らか死の宝珠に力を補充出来る。まさに一石二鳥。
それに対してルミリアは慌てることなく剣を構える。
「頭数だけは揃ったみたいですね。まあ無駄ですが
───ねえ、粛清騎士様?」
「ええ、その通りです。〈
瞬間、放たれたのは神か天使かが降臨したかの如き、神聖な光の波紋が地下神殿全体を伝い──骨の竜を含む全てのアンデッドを消滅させた。
「……は?」
「すいませんねルミリア。少し遅れました」
「いえいえお気になさらず。それよりこの剣、骨の竜にかなりのダメージを与えられました!これはアンデッドに対して革命的なマジックアイテムなのは間違いありませんよ!」
「そうですか!試しに作ってみたまではいいですけど思わぬ収穫でしたね。ただルーンを最低でも六文字刻まないといけないので課題は残りそうですね」
呆然とするカジットを置き去りにして現れた、黒い鎧を纏った粛清騎士──もといアレーティアとルミリアの会話が始まった。
ちなみにだが、アレーティアの参戦が遅れた理由はクレマンティーヌを警戒してのことだった。流石にクレマンティーヌ相手では、ルミリアだと相手が悪い。故に戦争の時と同じ轍を踏む可能性があると思ったアレーティアは、地上にて〈
結果、どうやらこの時期はここにいないらしく処理することは出来なかったが。
「さて、じゃあ後はゴミ掃除ですね」
「ええ、こいつも投降を拒否したし覚悟は出来ているだろう」
「ま、待て、貴様ら何を」
「何って、私の治める都市にお前たちのような組織は不要です。貴方はまだ殺しはしませんけどズーラーノーンなんて組織、潰して当然では?」
「わ、儂をどうする気だ」
すると粛清騎士は空間から剣を取り出し──
「〈四光連斬〉」
瞬間、一度に放たれた四つの斬撃によりカジットの手足が胴から切り離された。
あまりに突然のことに声すら出ない。痛みすら感じない。それだけの速さがあった。
「ルミリア、騎士たちに突撃の指示を。他に隠し部屋などないか徹底的に探させてください。その後、ここを
「分かりました。直ちに」
「ああ、カジットさんでしたか? 貴方は今後手足はそのままに、ズーラーノーンのアレコレを吐いてもらいます。抵抗は無駄ですから。死んでも蘇生しますので、早めにゲロった方が楽だとだけ伝えておきますね?」
この時を持って、やがてズーラーノーンが滅ぶことが確定した。
◯
◯
◯
「あー、消化不良です」
「確かにアレーティア様は地上でもう一人を捜索していたんでしたね。見つからなかったんですか?」
「いや、いましたけど……現状ここに手を出せる場所にいないから放置したんです。そうなると今からもう一人捕まえに行こうか……」
クレマンティーヌ探しをしていたら、ついでに探していたブレイン・アングラウスも捕捉出来たのでいつでも捕まえに行けます。何なら今からでも。
しかし、しばらくはお預けです。とりあえずカジットとその配下の身柄を帝国に護送して拷問官たちに引き渡して、ダメならあの漆黒聖典と同じ方法を取ります。
ああ、あの捕まえた不審者──漆黒聖典の第十二席次は拷問官が〈
私の素性暴きとかやめて欲しいですね。
とりあえず特定状況下で三つの質問をすると死ぬ呪いなんかは
カジットが何も吐かなかった場合、これと同じことをするか母親のネタで強請るぐらいしか思いつかないんですよね。まあ、気長にやりましょう。ズーラーノーンの本拠地などが分かり次第法国に情報流して向こうに処理してもらいましょうか。
私がやるのは時期的にあまりよろしくないですからね。アンデッドを使う組織を潰したなんてことをナザリックに知られてみなさい?即敵対になるでしょう?それは避けたいんですよ……。
「ところで、共同墓地の管理は彼らに任せるんですか?」
「一先ずお試しでですけどね。クアゴアたちに地下神殿に住まいを使ってもらい日中はそこで生活してもらって、夜間は墓地を巡回してアンデッド狩りをしてもらえればそこを雇う冒険者の代金が浮きますから」
そう、今回のズーラーノーン掃討作戦はクアゴアのために行ったことです。
彼らは太陽の下では視界が利きません。なので元々地下暮らしですから放棄されてる地下神殿を与えて管理してもらい、先に言った通り夜間の巡回をしてもらいます。そうして少しずつ人間の生活なんかを知ってもらえればなという考えです。
いきなり八万は無理なんで場合によっては地下神殿を拡張しなければいけないので手始めにリユロに選抜隊を選んでもらってからになりますが。
「しかし、このままだとどんどん冒険者の食い扶持が無くなっていきますが、大丈夫でしょうか?」
「カッツェ平野のアンデッド狩りがありますし、他にも仕事は減りつつありますがまだあります。それに、街のインフラ整備のためにそう言った魔法を使える魔法詠唱者や肉体労働をしてくれる冒険者には、割りのいい依頼を出しているので当面は下級冒険者は大丈夫でしょう。
ミスリルなどの上位の冒険者がどう動くかは分かりませんけど、数年後にはとあるアダマンタイト冒険者チームが来ることになりますので」
その辺りは期待してますよ花嫁さん? まあ、来なければ来ないで構いませんけど。
アレーティア
スキルで聖騎士状態で参戦。〈
ストレス発散しきれていないのである意味危険な状態。
ルミリア
骨の竜?アレーティア様謹製のマジックアイテムに勝てるとでも?で骨の竜を瀕死にした。カジットのバフが無ければ一撃で倒せていた。
″
カジット
今回最大の被害者。戦闘経験があまり無いからか後手後手に回って最終的に全てを失った可哀そうな人。ズーラーノーンの情報を全部吐かされる運命にある。
死の宝珠
回収済み。ナザリック貢ぎ物倉庫にIN。
相手の効果の対象にならない?じゃあ選んで発動します
コンマイ語。詳しくは