転生したらオバロ世界のエルフだった件について 作:ざいざる嬢
オバマスの新実装のラナーのデザイン凄く好き……。
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早いもので私が辺境侯になってから二年が経ちました。しかし、それでも仕事が減ることなく多忙な毎日です。
とはいえ、エ・ランテルは以前とは比べ物にならないほど発展しました。まだ完全とまでは行きませんが路上の整備は終わり、現在はラナーを迎えるために今のままの邸では少々見劣りするということで改築してもらっています。ドワーフの腕がいいので、より良いものが出来ると踏んでいます。今から楽しみですね。
共同墓地の方もクアゴアによって大分安全になったんじゃないでしょうか。
地下神殿は元からこの都市にいる神官の方々に確認を取った上で長らく放棄されていたので自由に使っていいという確認が取れたのでクアゴアの居住区として利用しています。
昼間は人間との意思疎通や認識を共有するための講座として私が立ち合い、今後同僚になる帝都から派遣された騎士や魔法詠唱者、神官との交流をしています。
当然、今はまだアゼルリシア山脈にいるリユロも招き、士族王から更に全体へと人間との付き合い方を広めてもらっています。
なお、ここにはドワーフも招いています。当初は過去の諍いから険悪な雰囲気になりましたが、バカなことをしでかそうとしたクアゴアを一体素手で
やはり暴力、暴力は全てを解決する……!
そして夜間は以前計画していた通り、共同墓地に発生するアンデッドの処理を任せており、見事にその仕事を果たしています。
斬撃には強いものの殴打系の攻撃は普通に通るクアゴアですが、共同墓地で発生する下級アンデッド程度ならどうにでもなります。仮にデス・ナイト級のアンデッドや太刀打ち出来ない
今後、上手く融和が進めば夜の都市の警備もクアゴアに任せたいです。そうすれば日中は騎士たちが、夜はクアゴアが警備することで治安が守られますから。
とは言え、課題が多いことには変わりないので時間をかけて進めるべき案件ですね。まだ二万程しか受け入れられてないので。
ドワーフに関しては……仕事に関してはバッチリ。それに作業員不足があっても、インフラ整備の際に貧民街の住民を起用した事もあり、そのまま鍛治や彫刻、建築などの仕事を教えてくれていて、何人かはそのまま弟子入りしたという話を聞きました。
この件に関しては、ドワーフの技術が受け継がれたという事で大変ありがたいことなので今後もお願いしたいところですが……。
問題はここから、クアゴアとの対立なんかではなく私への接し方です。
具体的には私の事を、鍛治神とか呼び始めた事ですね。神匠ならまだいいんですけど、鍛治神はやめて頂きたい……私ヘファイストスじゃないんですから。
キッカケは……私の鍛治の姿を見てからですね。どのドワーフも──鍛治工房長も含め──私の技術を見逃すまいと瞬き一つしないまま見学し、その末に誰もが涙を流し私を讃え崇め始めました。本気でやめて欲しいです。
その時作ったのはミスリル製の直剣。ルーンを五文字刻んだ一品でルーンを起動すれば風属性の追加攻撃が発生する代物で、私からすればまあまあな剣。
今度クライム君にでもプレゼントしようか。……なんて考えていたところ、鍛治工房長からドワーフの国で是非買い上げたいと打診を受けたので売り払いました。
その後も武具を作り続け一日を終え、ドワーフの感想会というか質疑応答の場を作り色々答えました。
しかし、どれもこれも今のドワーフの技量を超えているので、全く参考にならなかったと思いますが……逆にそれが職人魂に火をつけた様で熱狂してました。
そこから果ての頂に立つ存在、故に鍛治神と呼ばれる様になってしまった訳です、はい。やめて頂きたい。(二回目)
正直、スキルでの職業レベル置換で身につけられた技術なので、本職の人に申し訳ない気持ちでいっぱいです。まあ、それはそれとして利用出来るものは利用するんですけど。
それにユグドラシルのプレイヤーのガチ勢に比べれば雲泥の差ですからきっと!私データクリスタルとかユグドラシルのレア素材持ってませんしね!
そんな後三年もしたらお役御免になりそうな称号ですが、もういいやと投げやりになってます。それでドワーフのモチベーションが保たれるならいいんです。
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某日、リ・エスティーゼ王国 レ・ロンテ城
この日、宮殿会議が行われたがその空気は非常に重苦しいものとなっていた。
理由は一つ。帝国の要求を呑まざるを得ない状況になってしまったからだ。
エ・ランテル近郊を既に引き渡しているが、ここからは粛清騎士とガゼフの一騎打ちの結果要求される戦後交渉だ。
なんとか不利な要求は呑むまいと抵抗していたが、遂にかの皇帝から『そこまで要求を呑みたくないなら仕方ない。不本意だが粛清騎士を筆頭に再び王都に向け侵攻しなければならないな』と言う書面が届いてしまい泣く泣く呑まざるを得なくなってしまった。
当然、この事に負けたガゼフに責任を取らせるべきだと糾弾する貴族もいたが、そもそもガゼフを排斥したところであの死神──粛清騎士はどうにもならない。只々、王国の戦力を削ぐことになるだけだと当時の会議は荒れ、最終的に王の一声でガゼフへの処分はなくなった。
帝国からの要求は多く王国政治への介入。帝国に何らかの被害を王国が及ぼした場合、帝国の人間が調査するための協力。交易における税の増加など多岐に渡り、どれも王国がやがて不利になる様に──賢しい者にしか分からない様にされているが──なっている。
そして最後に書かれた要求。これがある意味で最も王の心を痛めることになった。
第三王女ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフとエ・ランテルを治めることになった辺境侯との婚約。
辺境侯という新たな爵位に就いた人物は誰か? 答えはあの粛清騎士。つまり、元々王族でも貴族でもない平民に王族を下賜しろと言う。この王国を侮辱する要求に王派閥、貴族派閥問わず怒りの声が上がった。
──だがその実態はと言えば……アレーティアの要求に、ジルクニフが折れただけ。そこまで考えが至っていなかっただけなのであるが。
しかし、これを突っぱねたところで待っているのは破滅しかない。これには王も、断腸の思いでラナーを嫁がせるしか選択の余地はなかった……。
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「と言う事で私はかの騎士……いえ、辺境侯の下へ嫁がなければならなくなりました」
「そんな……」
ラナーの私室ではラナーを含め、七人の男女の姿があった。
一人はこの部屋の主人であるラナー王女、その近衛であるクライム。
そして──ラナーの友人でありアダマンタイト級の冒険者チームである『蒼の薔薇』のメンバー五人。
その最も親しい仲であるラキュースの顔は悲痛なものに変わっている。
「いくら何でも横暴すぎるわ。仮にも王族なのに、皇帝へ嫁ぐならともかく爵位を与えられた一介の騎士に嫁げだなんて……」
「……推測ですが逆を言えば、帝国は私を彼に与える事で忠誠を誓わせたいのでしょう。自分で言うのもなんですが、『黄金』と称されるだけの評判がありますから」
「ハッ、違いねえな!お姫様ぐらいの美人を与えられりゃ、そこらの男なんざより一層帝国のために働くだろうな。もしも王族の血が絶えれば必然的にお姫様と辺境侯……だったか?その間に出来た子供が王位を得ることも出来るだろ?帝国にとっては美味い話しかないね」
戦士ガガーランの発言にラキュースは心を痛める。あの皇帝ならばそこまで考えているだろうと。
このままだと王国は帝国に呑み込まれる。ただでさえ戦後、多くの貴族が死ぬことで貴族間のパワーバランスが崩れている。それに加え、六大貴族の一人ブルムラシュー侯の裏切りが発覚、他にも裏切り者がいるのではないかと躍起になっては、誰も彼もが粗探しをしている真っ最中。
加えてそこに次期王位継承権を賭けた第一王子バルブロ、第二王子ザナックの権力争いまで加わり、上層部は地獄と言っても過言ではないだろう。
「ラナー様がその様な扱いをされる……!?」
「可能性は高いぜクライム。少なくとも今の王国じゃ帝国に逆らうことは出来ない。……いっそお前が攫っちまうってのはどうだい?なんだったら協力するぜ?」
「ちょっとガガーラン!」
「なんだよラキュース、冗談に決まってるだろ?……とは言え、これも一つの案だ。どうだいお姫様?」
その眼は真剣そのもの。ガガーランなりにラナーに助け舟を出したのだ。
ラキュースもそれを理解しているからか咎めはするものの止めはしなかった。
「そうですね……大変魅力的な案ですけどお断りさせて頂きます。これでも王族ですから、民のためにこの身を捧げなければいけません。私一人の犠牲で済むなら、それに越したことはありません」
カップに注がれた紅茶を飲み、口を潤したラナーは少し困った様な、人によっては諦めた様な顔をしていた。
それを見たクライムは、ラナーにより一層の忠義を尽くそうと心に決めた。例え帝国に利用されることになろうとも、ラナーの未来を必ずや守り抜こうと。
「ところでなんですけど、皆さんは私と婚約する辺境侯──粛清騎士様についてはどれだけの情報を持っているのですか?」
「そうね、私たちが聞いた話だと皇帝の右腕。貴族に対してなんらかの恨みを持っている、後は一人で帝国騎士団全軍に匹敵するとか言う……眉唾な話は耳にしたわね。
他は貴女も知っている様に戦争での虐殺、戦士長ガゼフ様を一蹴出来る実力者、何らかの理由でマジックアイテムで素顔を隠しているとか……後、一番有名なのは暗殺組織であるイジャニーヤと、エ・ランテルに潜伏していた秘密結社ズーラーノーンの掃討ぐらいかしら?」
「改めて聞くとやべえな。イジャニーヤなんて特に」
チラリとラキュースたちがティア、ティナへと視線を移すと少しばかり青ざめている姉妹の姿が目に入った。
この姉妹はかつてイジャニーヤに所属し、ラキュースを暗殺すべく襲撃を仕掛けた敵だった。だが、その末に敗れ説得を受けた後、蒼の薔薇に加入した経緯を持つ。
残るもう一人の姉妹はイジャニーヤの頭領として残留していると言う話は聞いていたため、この話を聞いて以来気には掛けていた。
「鬼ボス、アレと敵対するのは絶対にやめた方がいい」
「同意、暗殺出来ない」
「貴女たちがそう断言するってことは」
「少し前ティラから手紙が届いた。正直生きてるとも思ってなかった」
「内容は今は帝国の諜報部隊のリーダーを任されているって近況報告。それと──」
「「粛清騎士だけは絶対に敵に回すなって」」
「……お前達、すげぇ青褪めてるぞ。その手紙に書いてあったのってそれだけか?」
「……手紙にはイジャニーヤの拠点に襲撃してきた粛清騎士について書かれていた。多分バレたらティラの首もやばい」
「書かれていた事は詳しくは話せない。でも断言出来るのは粛清騎士の前に暗殺、潜伏は無意味。この前の戦争でも、騎士達に囲まれた皇帝を狙った暗殺者を誰もが気づかない中、一人だけ当たり前の様に見つけて殺したって話もある」
「だから敵対するなって事ね。……全く、戦争が始まる前に欲しかった情報ね……」
この話を聞く限り、アダマンタイト級冒険者である蒼の薔薇でも粛清騎士には敵わないだろう。
──ただ一人を除いて。
「イビルアイ様はどうですか?何かご存知なことはありますか?」
「………」
蒼の薔薇のイビルアイ、血のように赤いローブに仮面で素顔を隠した魔法詠唱者。その強さはこの場にいる全員を相手にしても問題なく──リグリットなどがいたら別だが──勝てるだけの強さと技量を持つ。
そんな彼女が重々しく口を開く。
「私も、お前達が持っている情報以上の事は知らない。しかし、強さに関しては恐らくだが"神人"なる存在ではないかと思う」
「"神人"ですか?」
「ああ。かつて"ぷれいやー"なる存在がいたらしく、その血を引く者の中に時折強大な力を覚醒させるものがいた。法国では六大神の血を引き覚醒させた者を神人と呼ぶらしい。それだけの強さを持つならば十分考慮するに値する」
「因みに良い機会だから聞いておきたい。イビルアイなら粛清騎士に勝てる?」
「……実際に相対しないと分からない。だが聞く話だけなら〈
「うわ、えげつない」
「リグリット達と囲んで、私をボコったお前たちが言う事か?」
どっちもどっちでは?それがこの話を聞いたクライムの感想だった。
その後しばらく歓談が続き、ラナーは最後にそもそもの目的であった事柄を口に出した。
「それで、一つ依頼したいことがあるんです」
「依頼?一体何の依頼かしら?」
「はい、実はもう来月にはエ・ランテルへ旅立つ事になりまして……国を出てからエ・ランテルへ辿り着くまで護衛をお願いできませんか?」
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──深夜の密談
「起動──粛清騎士様、今よろしいですか?」
『ええ、大丈夫ですよ。何かありましたか?』
「はい。王国の方は後一年程あれば、ゴミ掃除を終えれば綺麗にお渡しできるかと。もう私が裏で舵を切る必要もありません。後は暴走に身を任せるだけです。
邪魔な『八本指』も拠点は掴みましたし、黒粉や奴隷もエ・ランテルへ密輸すると言う情報も得ましたので、後で書類を取りに来て頂けると」
『分かりました。頃合いを見て転移して例の場所に取りに行きます。それにしても流石ですね。貴女が本気になればこうも容易に場を整えられるとは』
「それはもう!私の願いが叶うんですから本気になるのは当たり前じゃないですか!それで、新居の方はどうなっていますか?」
『現在、ドワーフや建築家の力を借りて急ピッチで作成中です。
「わあ! 嬉しいです! これでクライムとあんな事や、そんな事を……うふふ、毎日が楽しくなりそうで仕方ありませんね……!」
『流石に少し待ったを掛けさせてもらっても? クライム君も、私と貴女でそう言う関係にあると信じてもらうぐらいには信頼関係を築きたいので……』
「あ、いけませんね。ついつい欲望に身を任せてしまうところでした。それでは来月、蒼の薔薇の方々をお連れして、そちらへ嫁ぎに向かいますので宜しくお願いします」
『分かりました。来月を楽しみにしていますね』
「ええ、それでは」
愛しい旦那様との〈
この二年間
その原因は戦争での敗北だけではなく、王派閥であったブルムラシュー侯の裏切りだった。それが発覚してからと言うもの、御し切れていなかった王派閥を攻める口実となっていた。
ブルムラシュー侯は処刑され爵位、土地資産を剥奪。だがそれにも関わらず、アレだけ財をなしていたはずの領地には価値あるものは残っていなかった。オマケに領地の財源となっていた筈の、保有していた鉱山すら掘り尽くした後だったと言う話だ。
ラナーは知っていたがこれは粛清騎士──アレーティアによって引き起こされた事態であり、王国の人間は誰もこの事実を知らない。
これを引き金に、貴族派閥に必要のない貴族たちをメイドなどを使って誘導し次期王位をバルブロへと押し上げた。当然、ザナックやレエブン侯、王派閥の貴族がどうにか収めようと奮闘するも、勢いには勝てず日に日に追いやられていくしかなかった。
更に裏組織『八本指』も、王国の支配を完全なものにすべく貴族派閥により深く関わり始めた。結果、今の王国は奴隷売買、麻薬の栽培販売などが横行してしまい、民がいたずらに傷つけられる悪しき時代へと突入しようとしていた。
──しかし、それも長くは続かない。
近いうちに帝国と粛清騎士による、かつて行われた鮮血帝の粛清をも超える被害を出す大粛清が行われるのだから。
自分の望みを叶えるために、対価として王国を差し出す。その王国が長い間民が苦しめられるのをかの騎士は望まない。
なので短い間に最大の痛みを国民に与え、王国から帝国へと心を傾ける様にした。自分達を救ったのは、王国ではなく帝国だったのだと。
「うふふ、こんなにもやり甲斐があることは今まであったかしら?」
かつては国のために様々な案を出してきたが、どれも誰にも理解されず心が死んでいくだけだった。
それが今はどうだ?クライムというかけがえのない存在を手に入れ、自分という存在を認知し共に歩んでくれる
ああ、私は今満たされている──!!
自分しかいないこの部屋で、ラナーはくるくる、くるくると回りながら踊り出した。
アレーティア
鍛治神になった(大嘘)
暴力は全てを解決した。ラナーの手腕に内心驚いていると同時にこれと同等の知能を持つアルベド、デミウルゴス、パンドラズ・アクターが数年後に現れることに改めて危機感を抱いている。
ラナーとの仲は非常に良好。
クアゴア
暴力で分からされた。力ある者に従うのは当然だよな!と思うことで種族の思考の統一を図った。
一先ずフロスト・ドラゴンのパワハラはどうにか回避できそうな雰囲気。
ドワーフとはそれなりの仲に。夜間の地下墓地巡回の際は帝国の紋章が入った腕章を着けた上に月の光で光る染色剤で身体に何本かのラインを引いている。
ドワーフ
アレーティア様マジ神!パネェ!?
クアゴアとか諍いがあったけどそんなことはどうでもいい。鍛治神の導きの下に。
エ・ランテル
ドワーフの影響か芸術、彫刻、建築、鍛治と多くの分野で働く人材が増えた。その内交易都市としてだけではなく、そういった面でも名を知らしめることになる。
ラナー
本気モード。願いを叶えるためならなんだってする。
アレーティアの意図も汲み取り最短、かつ最速で処理できる様に手を回したスーパーガール。
アレーティアという自分を理解してくれるある種の同類と出会えたのでものすごく喜んでいる。
なお、この世界線では奴隷売買禁止の法律は作っていない。
リ・エスティーゼ王国
末期。最早世紀末。
まともな貴族も残っているがバカと無能の声が大き過ぎるのとラナーのバックアップでどうにもならなかった。
バルブロが王になる一歩前。
アレーティアは世界級アイテムを原作合流までに
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