転生したらオバロ世界のエルフだった件について   作:ざいざる嬢

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なんだか書くたび書くたび文字数増えていってる気が……。

話ごちゃついている感じがするんで後で修正するやもしれません。




アレーティア辺境侯のエ・ランテル統治part6 〜庭園に蒼の薔薇を添えて〜

 

 

 どうも、アルス・ティアーズです。

 

 ……はい、嘘です。アレーティアです。

 なんで男になってる……というよりTS転生してるんで前世からすると元に戻ってると言うのが正しいのでしょうかね? 今世ではかれこれ二十年程、女として生きているので最早男としての自分なんて忘れ果てていましたが。

 男になっているのは生まれながらの異能(タレント)で得た魔法、〈性転換(トランス・セクシャル)〉の効果ですね。

 効果は魔力を消費し続けている間、性別を反転する魔法です。〈完璧なる戦士(パーフェクト・ウォリアー)〉に似ていますが、こちらはあくまで性別を変えるだけの魔法なので、アレとは違ってデメリットは魔力が消費され続ける以外ほぼありません。強いて言うのであれば、性別指定の装備は身につけられなくなるぐらいでしょうか?

 

 なんでわざわざこんな事をしているかと言われれば、以前ジルクニフに男としての粛清騎士とアレーティアとしての粛清騎士を分けろと言われたからです。そこで、ダメ元で生まれながらの異能を使ったところ『性別そのものは変えられないが、一時的に異性に成る魔法を会得した』……という、答えが何処からか〈伝言(メッセージ)〉のように聞こえてきて使えるようになりました。

 余談ですが、ロクシーさんに披露したところ「男の状態で子を残す気はない?」と聞かれたのですが、あのクソ親父のように種をばら撒くだけばら撒くみたいな無責任なことはしたくないのでやんわりお断りしました。

 そもそも今世の私の性別が女なのに男になったところでデキるんですかね?検証すれば分かりそうですけど、そんなことを検証したくないので永遠の謎になりそうです。

 

 そんなこんなで今は男として、もといラナーの婚約者としてのアルス・ティアーズとして帝国外部の人間とは接することにしました。

 

 あ、ラナーも少し驚いた顔をしていますね。以前会った時とは姿形だけでなく声も元の声よりは低くなっているので、大分印象が変わっているからですかね? すぐに表情を戻してしまったので、周りの人間は誰一人として気づいていないようですが。

 

 

「王都よりよくぞ無事に辿り着かれました。今の王国は相当治安が低下していると聞いているので、心配していましたよ」

 

「ふん、心配していると言う割にはここまでの護衛を遣さなかったとはな」

 

 お、イビルアイが噛みついてきましたね。噛まれたら吸血されるんでしょうか? でも、イビルアイは普通の吸血鬼とは違うんでしたっけ……? よく覚えていませんが、今は関係ないので良しとしましょう。

 

「いえ、遣いを向かわせても良かったのですが、何しろ王国からすれば私は脅威そのもの。そんな人物の遣いをそう易々と受け入れることはしないのでは?」

 

「む、確かにそうだが……」

 

「それに、蒼の薔薇の方々とラナー様は個人的なお付き合いがあると聞いていたので、聡明な頭脳を持つ彼女なら貴女方を頼るだろうと思っていました。

 ああ、報酬の方は私の方から支払わせていただきます後で冒険者組合の方に届けさせますので」

 

「いえ、それには及ばないわ」

 

 イビルアイに下がるよう、片手で指示を出したラキュースが前に出てきました。

 アニメで見たドレス姿、正直言ってめっちゃ好きでした。冒険者としての姿も凛々しくていいんですけど、ドレスを着ている姿はまた違った雰囲気を感じさせて気の良いお嬢様って感じがして良いんですよね……。バニー服とか着てくれませんかね?え?それは別媒体で既にある?

 おっと、脱線してしまいました。

 

「ティアーズ辺境侯、その報酬の代わりにと言ってはなんですが、いくつか聞きたいことがあるので答えていただいても?」

 

「……いいでしょう。ルミリア、彼女達を庭園まで案内してください。私も後から向かいます」

 

 何を聞きたいんですかね?エ・ランテルの情勢のことは多分ラナーに情報封鎖でもされていたから知りたいことが山程ある感じでしょうか?

 とりあえず、小難しい話になりそうなんで、どうせなら景色の良い所で話しましょう。

 

 

 ◯

 

 ◯

 

 ◯

 

 

 蒼の薔薇、ラナー、クライムが案内されたのは城を出て少し離れた場所に作られた庭園だった。

 なんでも、城を改築する際についでに周囲を取り壊した上で整備し、アルス自ら帝国やトブの大森林などから持ち込んだ樹々や花々を植えて管理していると言う。

 剪定された木々が並んだ並木道を通り、色とりどりの薔薇で作られたアーチのトンネルを抜けた先には、圧巻の美しさを誇る庭園があった。

 庭園の中心には円卓があり、先触れがあったのかエルフのメイド達が茶会の用意を整えていた。

 

「これはすごいですね。宮殿にも庭園はありましたけど、ここまで見事なものは……」

 

「もう何もかもに驚いてしまうけど、特にこの場所には力が入っているように思えるわね……」

 

「お気に召していただけましたか?」

 

 唐突に背後から聞こえるこの場にいなかった人間の声に振り返れば、この場にいなかったはずのアルス辺境侯がそこにいた。

 

「驚きましたか?」

 

「そりゃあ、驚くだろ……さっきまでいなかった相手の声が後ろから聞こえればよぉ……」

 

「ふふっ、それでも即座に警戒態勢に入る辺り流石はアダマンタイト級冒険者ですね。

 さて、茶会の前に少し環境を整えますか……」

 

 アルス辺境侯が両手を上げれば突如、空にあった雲が一斉に霧散する。それだけでなく辺りの空気が心地よいものに変わる。

 

「これは……〈天候操作(コントロール・ウェザー)〉か? いや、それよりも上位の魔法か?」

 

「それって確か……」

 

「ああ、森祭司(ドルイド)が使えるという第六位階の魔法だ。つまり……」

 

 蒼の薔薇の面々は信じられないような表情でアルス辺境侯を──粛清騎士を見つめる。騎士ではなく森祭司なのかと困惑の表情を浮かべ、もしも森祭司としてだけでなく騎士としての腕もあるならば戦争の活躍はおかしくないと思案する。

 それでも、最低でも第六位階の魔法を行使出来るという事実に只々、打ちひしがれる。

 粛清騎士は最早、英雄や逸脱者など遥かに上回っている。

 

 "神人"、"ぷれいやー"、かつてイビルアイが口にした存在こそ、彼に相応しい称号だと感じた。

 

 

「少々驚かせてしまったようですね。いやはや使い勝手の良い魔法なのでついつい使ってしまいます。

 ささ、用意は整ったようなのでどうぞお掛けください」

 

 アルス辺境侯は最初に卓に着き、隣に婚約者であるラナーを招き寄せる。席はルミリアとクライムを含めた人数分用意されていたが、クライムは身分が違う相手と同じ卓に着くのは失礼に当たるのでは、と躊躇った。

 それを見越してなのか辺境侯は口元に笑みを浮かべ──

 

「クライム君と言いましたか?貴方も掛けなさい。この度は無礼講です。それに──私は元々騎士故に身分などには囚われていませんから、安心してください」

 

「そ、そういうことでしたら、失礼します」

 

 ラナーの隣の席に着いたクライム。ようやく全員が卓に着き、頃合いを見計らってメイドエルフ達がティーカップを運び、それぞれの前に並べる。

 

「こちら、エ・ランテル領内の村で栽培されている茶葉を使用しています。お好みで砂糖とミルクをお入れください。また、軽食も用意しましたのでよろしければお召し上がりください」

 

 そう言いメイドエルフ達はアルスの後ろへ控える。

 警戒を解くためかまず先にアルスが、続いてルミリアがティーカップに手をつける。するとアルスは顔を顰めミルクと砂糖を躊躇いなく投入する。

 

「辺境侯……相変わらず口がお子様で」

 

「うるさいぞルミリア。私は甘いものが好きなだけだ」

 

 どうやらアルスは甘党らしい。そんな情報を何気なく手に入れてしまったラキュースはもし次来ることがあれば、何かしらの手土産に甘味を持ってこようと決めた。

 

「まだ警戒されているようなので、雑談でもしましょうか。

 この庭園、私の自信作なんです。帝国の一等地に屋敷を持っているんですが、そちらでは少々立地と屋敷の使い方からしてこうした庭園を作るのが難しくてですね。こうしてエ・ランテルを任されて城を改築する時にどうせならと、庭先を整備して作り上げたのがこの庭園です。

 あの辺りに咲いている花は、トブの大森林の奥地にいる森妖精(ドライアード)から貰った種から咲いた花なんです。香りも良く、香水なんかに使えば喜ぶ令嬢もいるんじゃないかと思うんですよね。

 ああ、蒼の薔薇の皆さんも女性ですし良ければ一人一本、お試しでお使いください」

 

 そうしてアルスは控えるメイドエルフに指示を出し香水を持ってこさせた。

 ラナーの分も含めて六本用意された香水はラキュース達に配られた。

 貴族令嬢であるラキュースは香水に馴染みがあり、どんな香りがするのか少し気になり少し振り撒く。

 すると、とても甘い、それでいて爽やかな香りがラキュースの鼻を通り抜けた。

 

「とてもいい香り……王国でも嗅いだことのない種類の花ね」

 

「トブの大森林の奥地まで行けるのは、それこそ貴女達アダマンタイトか最低でもミスリル程度の実力がなければ難しいですからね」

 

「それにしても森妖精って言ったか?ありゃモンスターだろう?どうやって仲良くなったんだ?」

 

「モンスター……確かにそうですね。しかし、彼らは獰猛なモンスターとは違い明確な知性がありました。なので人に接するようにごく普通に話しかけたところ、友好関係を築けたんです。

 今では彼らの知り合いである森妖精やトレントを、大森林近くの村に移り住むよう頼んでは協力してもらっています。

 お陰でこの二年で農作物の収穫量も大分増えたのはありがたいことです」

 

 冒険者であるラキュース達からは想像も出来ない話だった。

 確かに意思疎通が取れるモンスター──エルダーリッチなど──もいるが、大体は人間とは相入れず敵対関係になってしまうことが多い。

 そんな中で彼は友好的な関係を築き、あまつさえそれを利用し都市の繁栄に役立てている。とても王国では考えられない、いや冒険者でも想像すらしなかった話だ。

 

「彼らは日当たりのいい土地と新鮮な水を好みますので、水源が豊富な村で暮らしてもらってます。

 勿論、村の住民にも理解を得た上で暮らしてもらっています。

 後は……ああ、ちょうどあそこですね。この庭園の管理を任せている森妖精の一人があそこにいますよ」

 

 アルスの指差す方を向けば、確かにそれらしい小さな小人のような影が見える。

 その影はこちらに気づくと手を振って挨拶し、消えていった。

 

「冒険者である皆さんに理解していただくのは難しいかと思いますが、帝国の方針として『有能なものは平民でも取り立てろ』というものがありまして、私はそれを拡大解釈しているだけです」

 

 この話を聞いたクライムは、まるで電流が走ったかのような感覚に襲われた。

 有能なものは平民でも取り立てろ。言葉にするのは簡単だが、実行するとなると難しいことをクライムは知っている。自分が敬愛する主人、ラナーぐらいしかそんなことは出来なかった。

 

 しかし身分の影響で王宮では貴族出のメイド達、同じ兵士たちから嫉妬と侮蔑の視線を、時には嫌がらせを受けてきた。

 ラナーと宮殿を去る時、ようやく目障りな奴がいなくなったと陰口を叩かれたのも聞いた。

 これから帝国の一部となったエ・ランテルに来て自分がどのような目に遭うのか想像しなかったわけではない。またあのような扱いをされるのか、それとももっと酷い扱いをされるのか。

 クライムはラナーによって拾われた平民だ。やはり、帝国でも自分の存在は面白くはないだろうと思っていた。

 だからこそ、自分はどうなろうとラナーの安全だけは──たとえ辺境侯、粛清騎士に刃向かうことになろうとも、この身を挺して守ろうと決めていた。

 

 ──だが、現実は違った。

 エ・ランテルに生きる民は皆幸せそうだった。王国の、王都に住む民と違い活き活きとしていた。

 騎士達は自分のような存在を受け入れた。自分より間違いなく身分が上の補佐官も「これからよろしく頼む」と言い握手まで交わしてくれた。

 クライムが生きてきた中で初めての体験だった。

 そして、平民でも取り立てろという、国のためならば身分すら問わないその考えにクライムは感銘を受けた。それを実現し平民だけでなく、人と敵対するモンスターにさえ手を差し伸べる辺境侯を信頼出来ると判断した。

 

 (ラナー様の婚約者がこのような方で本当に良かった……)

 

 クライムは心の底から思った。

 もしかすると、この都市……帝国でなら、ラナーの理想が叶うかもしれない。

 同時にそれはクライムの夢でもあった。平民にも分け隔てなく優しい国。自分の様な、親のいない子供が生まれない国が、この場所でなら!

 

 

「クライム君?」

 

「ハッ!? な、なんでしょうか辺境侯様!?」

 

「いや、難しい顔をしているようだから、何か心配事でもあるのかと思って声をかけたんですが……その様子だと何か考え事をしていたようだね」

 

「も、申し訳ありません。このような場でそんな」

 

「謝る必要はありませんよ。何せ私という存在は戦争に出るまで帝国外に情報が漏れないよう、徹底して隠されていましたからね。

 そんな相手との茶会だ。何を考えているのか、どうしたら主人を守り通せるか、なんて考えをしていたんじゃないですか?」

 

「……正直に申しますと、それに近い考えをしていました」

 

「構いませんよ。まだ信頼も何も築けていないのですからお気になさらず。とはいえ、私の妻になるラナーの身辺警護を任せることになる君とは早めに打ち解けたいところですが」

 

 そう言う辺境侯は、まるで純真無垢の少年のように笑った。

 

 

 ◯

 

 ◯

 

 ◯

 

 

「さて、そろそろ本題に入りましょうか。何かお聞きしたいことがあるのでしょう?私の素性に関しては……申し訳ありませんがお答え出来ません。顔を隠しているのはイビルアイさんが顔を隠しているのと同じ、とでも思っていただけると幸いです」

 

 世間話から始まり、都市の運営、異種族との共存化などの話を終えようやくこの時が訪れた。

 蒼の薔薇は聞きたいことが山のようにあった。最も聞きたいことの一つであった彼の素性については前もって断られてしまったが、知られたくない理由が──今まで存在すら他国には隠されていたことから国家機密なのだろうと推測し──あると納得した。

 その上で、最低限聞きたいことを各々が問うという形に収まった。

 

「早速聞きたいんだけどよ……あのマジックアイテム、城壁に配備されたのを作ったのは辺境侯だって聞いたぜ?見たところ相当な代物だ。

 ……でだ、そんなアンタが競売会とやらで出品するマジックアイテムってのは、どんな物なんだい?」

 

 最初の口火を切ったのはガガーランだ。それはこの都市に着いてから道中の馬車内でルミリアが言っていた件について、ガガーランは気になっていた。

 マジックアイテム。それは冒険者にとって、生命線の一つだ。たった一つのアイテムが生死を左右することもある程に。

 それ故にガガーランは──他のメンバーもそうだが、辺境侯が月に一度出品するというアイテムに興味を持っていた。

 

「そうですね。買えるかどうかは他の方次第ですからお答えしましょうか。

 今回私が出品したアイテムは……ただの木刀です」

 

「……は?」

 

「ただの木刀です。魔力付与すらしていない、ただの──いや、素材自体はかなり希少性が高い木刀です」

 

「なんだそりゃ……マジックアイテムですらないのかい……」

 

 あまりにガッカリしてしまったが、それも仕方ない。

 いくら希少と言っても所詮は木製。精々訓練で使える程度のものだ。それにマジックアイテムでもないと言う。

 確かに刀という武器は南方にあるという国から流れてこない限りは入手困難な上、かなり強力な武器であるが木製という時点で劣ってしまう。

 これは期待出来ないな……と思ったところで辺境侯の手元を見れば、それらしい木刀が握られている。

 

「これがその木刀ですが……一足先に実演してみましょうか」

 

 そう言うと辺境侯は徐に立ち上がり、同時にメイドエルフ達とルミリアが動き出す。ものの数分で試し斬りに使われる石柱や盾、金属製の剣などが用意された。

 

「この木刀はただの木刀ではない……と言えばお分かりでしょうか?特にラキュースさんが食い入るように見てますから」

 

「うぇっ?!」

 

 辺境侯──アルス、いやアレーティアは見逃さなかった。

 木刀を見た瞬間、その瞳をキラキラと輝かせたのを。アレは前世の──そう、修学旅行先の土産屋で売っている木刀を見た時の、少年のような瞳だった。

 その瞳をアレーティアはよく知っている。自分もそうだったからだ。

 なので……

 

「……良ければラキュースさん、試しに持って振ってみますか?」

 

「えっ!?え、ええっと……その……いいかしら?」

 

「ええ、どうぞこちらへ」

 

 促されたラキュースは、少し顔を赤らめながらも辺境侯から木刀を受け取る──そして、その木刀の凄まじさを理解した。

 

 ──重い。下手な金属製の武具よりもずっと。

 魔剣キリネイラムを駆使して戦うラキュースにとってはそこまででもないが、木製とは思わせない程の重さがある。

 更に言えば非常に手に馴染む感覚がある。まるで昔からこの木刀を振ってきたような不思議な感覚に陥る。

 

「ではまずこの石柱から、その木刀で叩き斬ってください」

 

「お、おいおい木刀で石柱をってのは、武技でも使わないと流石に無茶じゃ……」

 

「行きます……ハアッ!!」

 

 ──スパンッ!!

 ラキュースが袈裟斬りに振った木刀は石柱に阻まれることなく、真っ二つに断ち切った。

 その切り口は、まるで名刀で斬ったかのような鮮やかさを残している。

 斬った本人であるラキュースも、思わず「おおっ!」と声を上げてしまう程だ。

 

「う、嘘だろ!?」

 

「す、すごい!木刀なのにあの石柱を斬れるとは、流石アダマンタイト!」

 

「いやクライム。アダマンタイトでも流石に木刀で斬るのは無理があるから勘違いすんなよ!?」

 

「驚くのはまだ早いです。続いて、その盾と剣も」

 

 続けてラキュースは、盾と剣を構えるルミリアに向けて木刀を振りかぶる。

 一撃──盾がゴシャッという音を立てて潰れる。

 二撃──受けた剣が容易にへし折れる。

 

 ──唖然。この木刀を振るったラキュースが一番驚いている。下手をすればキリネイラムよりも、単純に攻撃力が優っているのではないかと思わせるだけの強さが、この木刀にはあった。

 

「す、すごい……木刀だというのにこんなに強いの?」

 

「私がとある伝手から入手した木材を加工して作った一品です。更に……魔化をしていないのは、この品を競り落とした人物の意向に合わせた作りにするから、と言えばお分かりになりますか?

 その人だけの、最強の木刀が出来上がるわけです」

 

 その話を聞いてなるほど、と納得する。

 ある意味冒険者にとって専用武器というのは夢だ。

 もしも競り落とせた場合、あの辺境侯自らが要望に合った魔化をしてくれると聞けば多少無理をしてでも手に入れたくなるだろう。

 そしてそれはラキュースも同様で──

 

「この木刀欲しいわ! いくらで落とせるかしら!?」

 

「ラキュース!?」

 

 見事、この木刀に魅入られてしまった。とある病持ちにしか効かない類の魅了である。

 

「この木材を原料とするアイテム持ちは、帝国ではある種のステータスになっています。故に、それなりに高額になるとは思いますので……ここではなく、懐と相談してから入札をお願いしますね」

 

 木刀をラキュースから回収し、後片付けをメイドエルフ達に任せ各々は席へと戻った。

 

「さて、そろそろいい時間ですしお開きにしたいと思うのですが……」

 

「最後にいいか?」

 

 口を開いたのはイビルアイ。ここまで静観していた彼女は、ここまで辺境侯を観察した上でどうしても確認しておきたいことがあった。

 

 

「何でしょうか?」

 

「お前は……"ぷれいやー"か?それとも"神人"か?」

 

 一瞬、空気が凍りつく。

 聞いてはいけないことだったか。それとも核心に触れてしまったか。どちらにせよもう後戻りは出来ない。

 この確認はイビルアイにとって必要なことだった。少なくとも神人ならば何かしら法国と繋がりがあり、帝国に派遣されている戦力……それこそ六色聖典の一つ、英雄部隊の漆黒聖典の一員の可能性もある。

 もしそうだとしたらイビルアイの存在はバレればマズイことになる。確実に排除されるだろう。それだけはどうしても避けたい。

 答え次第では即座に動ける様に〈転移(テレポーテーション)〉の用意をする。

 そして──

 

「いいえ、違いますよ」

 

 あっけらかんと答えた。何を言っているんだと言わんばかりに。

 

「私はただ願っただけですから。誰にも負けないぐらいに強くなりたいと」

 

 そう答えた辺境侯のバイザーに隠された眼は真剣そのものだったと、不思議と思えた。

 

「さて、ではお開きにしましょうか。ああ、まだ宿が決まっていないようなら我が城へどうぞ泊まって下さい。部屋は余っているのでご安心を。

 それとルミリア、ラナーとクライム君を居室まで案内してください」

 

「かしこまりました」

 

「それではまた、競売会の日に会いましょう」

 

 

 

 こうして、茶会は終わりを告げた。

 

 

 

 

 





アレーティア=アルス・ティアーズ辺境侯
まあ分かりきっていた正体ですね。
TSを更にTSさせる暴挙。とはいえ性別変えてるだけなんで生殖機能はありません。
庭園はアレーティアのお気に入りの場所。自分で直接管理するし、庭師を雇い監理をドライアドにも任せている。
余談ですが仮に男として生を受けていた場合はエルフ国から出ずにデケム暗殺からのエルフ国統治ルートになります。そして法国を退けながらエルフハーレムを築くために奮闘するハードモード。

ラキュース
木刀の魅力に取り憑かれた。
ちなみに作者は木刀を買わなかった。でもドラゴンの剣と盾のアクセサリーは買った。
なお次回も競売会で厨二心を刺激させる予定。

木刀
素材はザイトルクワエの素材の端っこ。
ぶっちゃけただの在庫処理。でも素材が素材で、作ったやつが作ったやつなんでかなり強い。
ブレインやエルヤーの刀を受けて折るぐらいのポテンシャルはある。
装備時のボーナス効果はすごい。
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