転生したらオバロ世界のエルフだった件について 作:ざいざる嬢
王国粛清編早く書きたい反面、エ・ランテル編ちゃんと書いておきたい気持ちがせめぎ合ってる……。
あ、今更ですけど章タイトル小分けにしてみました。これで読みやすくなるかな?
蒼の薔薇は競売会が開催される日までの数日、この都市を散策することにした。まだこの都市の全てを知らないので、なるだけ多くのことを知っておこうと言うことだった。
まずは冒険者組合に顔を出した。
組合の依頼の数はそれほど多くないが、一つ一つがこの都市のためになる依頼で依頼人が辺境侯名義で随時募集となっている。
仕事の内容は主に清掃や建築の手伝いなど、冒険者らしくないモンスターと戦わないものだが、それでも冒険者を目指す者には金銭を稼ぐと言う意味では良い依頼だろう。
上位の依頼を見れば主に商人の護衛やモンスターの生捕り、特定の植物の採取などの依頼があり、中でも商人に関する依頼が非常に多い印象を受けた。
聞けばエ・ランテルは現在商人達がこぞって集まり、市場や競売、路上販売などで多くの利益を得ているらしい。その仕入れの為、道中の護衛を依頼する商人が後を絶たず、上手い関係が築けた場合はそのままその商人がスポンサーになることもあると言う。
ただこれは現状、この都市最高位のミスリル級冒険者チーム『虹』に限った話であり、他の冒険者はそこを目指して活動していると言う話だ。
「なんと言うか、冒険者組合は大分商人や職人に重宝されているみたいだな……。素材の収集や護衛の依頼が非常に多い」
「多分、モンスター退治自体は騎士団が受け持ってる」
「定期的に領内をいくつかの隊に分かれて見回りをしているらしい。それだけじゃなくて村一つにつき騎士や魔法詠唱者が数名常駐しているとか」
「王国じゃ絶対考えられないことね……。そんなことが出来るぐらいに人材は潤っている、と言うことかしら」
「いや、そうでもない様だぞ。これを見ろ」
イビルアイが指差す方を見れば、それは依頼とは違い随時募集中と書かれた羊皮紙だった。
手に取ってみれば『文官募集中!』と銘打ってあり、読み進めれば条件に合えば、という枕詞が付くが中々の高待遇で採用する……と書かれている。
「恐らく、戦力的には充実しているのだろうが、こう言った関連の手は足りていないらしい。こう言ったことは主に貴族や教養のあるやつがやることだったんだろうが、その数を減らしすぎてしまったらしいな」
これはこの場にいる者は知らないことだが、アレーティアから更に仕事を押し付けられ、休む間が全くない程の忙しさに襲われていたジルクニフは『無能は無能なりに使い道があったな……。こうした面倒事を押し付けられたと言うのに』と遠くを見ながら言ったそうだ。
流石に悪いと思ったのか、ジルクニフが兼ねてより希望していたアレーティアの手料理を食べて
料理の支援効果のお陰で不眠不休で働き、効果が切れた頃にぶっ倒れたという。合掌。
「その穴埋めかは分からんが、平民向けの教育施設を建設中らしい。これは帝国にあると言う魔法学院の様なものだろう。ここから学のない者に知識を与え頭角を表せば引き上げる、と言う計画なのだろうな。
そう言う面でも、王国とは平民の扱いが天と地ほどの差があるな」
今の王国での平民の扱いはかつてないほどに酷い。貴族や八本指などの裏組織にいい様に使われては売られ、捨てられるディストピアと化していた。
その現状をどうにかしようと、ラナーと共に奮闘したが結果は……。
「とりあえず競売会の日までは各々で散策しましょう。宿は……」
「黄金の林檎亭でも構わねぇけど、その競売会でどれだけ金が必要になるか分からねぇからな。ここはあの辺境侯さんの好意を受けて、城で寝泊まりするのも有りだぜ?」
「しかし借りを作ることになるぞ?」
「報酬の一つとして受け取ったって言えばいい。それなら借りを作ったことにはならねぇだろ。……尤も、あれだけの力を持つ相手が俺たちの力を欲するかどうか微妙なところだけどな。それにラキュースもお姫様の安全確認もしやすいだろ」
「ガガーラン、あなたそこまで考えて……」
ラキュースがガガーランの心遣いに感激している中、同じく動揺していたティアがここで一言。
「脳味噌まで筋肉だと思ってたのに意外」
「おいティア!そいつはどう言うことだ!?」
「人の血は流れていないものかと思ってた」
「生まれてからずっと人間だよッ!」
台無しである。
とは言え、こうした冗談を交わせるのも彼女たちの仲が良い証拠なのだが。
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そして迎えた競売会当日。会場となる場所には多くの人が集まり列をなしていた。
並ぶ人は高名な冒険者に始まり、周辺諸国でも力を持つ商人、更にバハルス帝国であの皇帝から重宝されている有力貴族など様々な人が見て取れる。蒼の薔薇もその中の一つだった。
「すごい人の数ね。皆競売会目当てなのかしら?」
「そうみたいだけど、それだけじゃない」
「入口で身元確認をしている。かなり徹底してる」
「ここまで徹底しているのは、犯罪組織などにここでの商品が流出しない様にしている、とか言っていたか?
帝国は八本指と言った組織も警戒していると見ていいな」
そうして待っていると列は進み、受付に辿り着いた。
受付は数名いる様で、冒険者組合の受付と同じ様に女性職員が対応している。それだけでなく受付カウンターの手前には騎士が二人──街を巡回している騎士とは違った装いの鎧を身につけている──側に控えている。
「お待たせしました、蒼の薔薇の皆様。辺境侯様、及びルミリア様から話は聞いています。念の為、冒険者プレートの提示をお願いします」
先にもルミリアが言っていた様に、この競売会には参加条件として幾つかの決まりがある。
一つは身元の確認。冒険者であれば等級プレートとチーム名、個人の名前が必要だ。商人であれば商業許可証の提示と名前。貴族であれば貴族位の証明が出来る物と辺境侯からの招待状が必要だ。
出品者だとまた提示する物は異なるが、この場では割愛する。
「これでいいかしら?」
ラキュースが首に掛けているアダマンタイト級冒険者の証を見せれば「確認しました」と受付の女性が羊皮紙に何やら記入していく。
「では、会場に入場する前に入場料を頂きます。お一人につき銀貨五枚になります。ただ、今回蒼の薔薇の皆様は五人ですので入場料を割引きさせて頂きます」
二つ目に入場料。入場するのに一人銀貨五枚の支払いが必要で、団体になると割引される。蒼の薔薇だと五人なので銀貨二十五枚──もしくは金貨一枚と銀貨五枚必要だが、一人分割り引かれて金貨一枚で済んだ。
この入場料は後に、都市の治安維持や周辺の村々への支援金などに運用されると言う。
「お支払いありがとうございます。では、会場に入りましたら二階奥にあるVIPルームへお向かい下さい。
そして、最後にいくつか会場での注意事項を説明させていただきます」
ここまで来てまだ何かあるのか?と思いながら、これだけ厳重にする必要があると判断してのことだろうと納得し、説明を受ける。
「まず、会場内での魔法の行使、武器を抜くなどと言う行為は原則禁止です」
ごくごく当たり前の注意だ。魔法に関してはあまり聞かないが、恐らく精神系魔法による妨害を懸念してのことだろう。
「競売会が始まり商品の説明や出品者の紹介の最中に、何かしらの妨害や野次を飛ばすと言う行為が確認された場合、こちらの判断で会場から強制退場していただく場合があります」
これは商品にケチをつけて価格を下げると言った行為を防ぐためだろう。出品者も自分が作った商品、もしくは売る商品にケチつけられて値が下がったらたまったものではない。
「また、会場内で犯罪行為が行われた場合、その場で裁かれる可能性があることをご了承ください」
「ん? その場で裁かれるって言うのはどういうことだ?」
「この場には多くの有力者が居られますので、安全確保の為そう言った輩は即処すべし、と言う辺境侯様の命令です」
ああ、と納得した。あの人物ならそう言いかねない。そう言う確信があった。
「本日は辺境侯様も出品者におりますので、その様なことは無いとは思いますが念の為です。
後は競売時、当然ですが提示する金額は必ず払える金額内で提示してください。以前、なりふり構わず高額値を叩きつけて払えない、と言うことをした愚かな方がおりましたので念の為。
問題がなければどうぞお進み下さい」
ここに来てラキュース以外のメンバーは、あの木刀にいくら出すのか不安になりつつも、その時は自分たちが止めようと決意を新たにした。
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案内されたVIPルームはVIPと呼ばれるだけあり、商品が並ぶであろう舞台を一望出来る場所にあり、高価な調度品が用意されていた。
各々が席へ着けば、スタッフが番号札を持って現れた。
「蒼の薔薇の皆様、本日は競売会へお越しいただきありがとうございます。わたくし、競売会の競売について説明に参りました。ティーチ・オークショナーと申します。まずはこちらの番号札をお持ちください」
手渡された番号札には『06』と書かれていた。
「商品の説明が終わり、競売人が競売開始の合図を出した後、その番号札を掲げその商品に幾ら支払うかを提示していただきます。他のお客様と支払う金額で競っていただき、最後最も高い金額を提示した方がその値で落札、商品の購入という流れになります。
また、受付でもご説明がありました通り、ご自身の懐財産を上回る金額を提示するのはご遠慮ください。
大まかな流れは以上ですが何かご質問など御座いますか?」
「……一応確認しておきたいのだけれど、支払い金額が足りない場合は後払いでも構わないのかしら?」
「おいラキュース!?」
「い、一応よ!?流石にそんなことはないとは思うけれど一応ね!?」
あたふたと慌てる素振りを見せるラキュースに、疑惑の視線が突き刺さる。正直言って今のラキュース程信用出来ないものは無いだろう。
流石に自制出来るだろうとは思っているが……。
「そうですね、蒼の薔薇の皆様はアダマンタイト級冒険者と言う肩書きに加え、辺境侯婦人となられるラナー様と親交がありますので、辺境侯から支払いをお待ちいただける可能性は十分にあります。念の為確認して参りますので少々お待ちいただいても?」
「お、お願いします……」
顔を赤らめ小さくなるラキュースを微笑ましい物を見たティーチはその場を去っていった。
「鬼ボス、そんなにあの木刀が欲しいの?」
「アレは凄い木刀だけど、鬼リーダーに合うとは思えない」
「そ、そうなんだけど……」
それとなくティアとティナに諌められるが、それでも諦められない魅力があの木刀にはあった。
アレを初めて見た時の高揚感が忘れられない。
アレを握り振るった時の感覚がどうにも忘れられない。
あの木刀に珍しく、年頃の少年少女の様にラキュースは執着していた。彼女自身もどうしてここまで欲するのか理解出来ていないが、理解せず感じるのがこの病気の特徴の一つである。
「おや、もしや貴女方はアダマンタイト級冒険者チームの蒼の薔薇ですか?」
振り返れば、そこには従者を二人、ラビットマンのメイドを連れた恰幅の良い、地肌が見える頭が特徴の男がいた。
「そうですけど、貴方は?」
「これは申し遅れました。私、帝国でしがない武器商をしているオスクと申します。高名な蒼の薔薇の皆様に会えて光栄です」
「蒼の薔薇のリーダーをしています。ラキュースです。ところで貴方も何か狙いの商品があるのですか?」
ラキュースはこのオスクと言う男が武器商を名乗った時点で最大限警戒していた。もしかすると、木刀を狙ったライバルになるかもしれない、と。
「ええ、今日はあの辺境侯が作った武具が出品されると聞いて来ましてね。他にも高名なドワーフの工房で作られたルーン武器が並ぶとも。我々の様な商人には堪らない日になりそうです」
和やかに答えたオスクを見据えたラキュースは、この時点で彼を競売会における最大の敵と見做した。
「ふふふ、今日はお互い良い日になれば良いですね?」
「ええ、本当にそう思います」
「……な、なあイビルアイ。お前見えるか?」
「……にわかには信じ難いが、それぞれの背後に鬼と巨人が見える」
「流石鬼リーダー」
「流石鬼ボス」
そうして互いに挨拶を終え、ティーチが『条件付きで支払いを一ヵ月程度なら待つ』と言う回答を持ち帰ってきた。
ラキュースはとても良い笑顔を浮かべていた。
その後、開催までもうしばらく時間がかかるということだったので、ここ数日各自で集めた情報交換をすることになった。
「俺は市場で色々と見て回ってきたんだけどな、ルーンとか言う聞いたことのない技術で作られた武具が結構な値段で売られてたぜ。
買いはしなかったが、少し興味を持ったな。イビルアイはこれについて何か知ってるか?」
「ルーンか。確かドワーフに伝わる技術だな。ルーン文字と言う魔法文字を刻むことによってその武器を強化する……所謂魔化の様な物だ。十三英雄の一人であるドワーフがその技術で作られた大地を激震させるハンマーを持っていたと聞いたことがあったな」
「そりゃあ、すげぇハンマーだな! そんなハンマーがあれば俺も欲しいもんだ」
「あのハンマーがどうなったかまでは知らないが、かつてはルーン武具が流通していた様だがある時を境にピタリと出回らなくなったらしい。その技術がこの都市で見られると言うことは、ドワーフの国との国交が再び始まったと言うべきか。あそこを見てみろ。VIP待遇のドワーフがいる」
イビルアイの言う方を見れば確かに豊かな髭を蓄えたドワーフが数人、酒を飲みながら競売会の開始をまだかまだかと待ちわびている姿が見えた。
服を見るに中々高価な物を着ているので、それなりに身分の高い人物なのだろう。
「彼らの国はアゼルリシア山脈の何処かにあると言うが、一体どうやってここまで来たのか……」
「それについては私たちが調べたけど、月に何度かドワーフたちが入れ替わると聞いた」
「入れ替わる?」
「そう。ドワーフに酒を奢って聞いたけど、この都市に移住したドワーフ以外は定期的に本国に帰るらしい。そして、帰ったドワーフと同じ人数がこの都市でまた働くって聞いた」
「なんでそんな無駄なことを?」
「ドワーフの国ではエ・ランテルでどうしても働きたい理由があって、その一つが辺境侯」
「辺境侯が武具やマジックアイテムを作るのを間近で見た上で、色々教えてもらえるらしい。神にも等しい腕を持つ辺境侯に、その技術を伝授して貰いたい工匠があまりにも多いから、定期的に交代しているとか言ってた」
ここに来て新たな事実。どうやら辺境侯の技術は最早ドワーフの更に上を行くらしい。
その情報にイビルアイはますます混乱した。確かにマジックアイテムを作ることが出来るとは言っていたが、まさかそこまでとは思ってもいなかった。
この前の質問に、辺境侯は自らを神人でもぷれいやーでもないと断言したが、そんな訳ないと考えている。
そうでもなければ、最低でも第六位階の信仰系魔法が使え、魔法無しの武技のみで万を超える兵を殺し、ドワーフをも超える鍛治の腕を持つなど信じられない。
イビルアイはあまりにも底が知れない辺境侯に対し恐怖に近い感情を抱いた。
「イビルアイ大丈夫?」
「ん……ああ、大丈夫だ」
「なら良いんだけど。今度は私ね。私はあの後、この都市にある騎士たちの訓練場へ案内してもらったわ」
エ・ランテルのとある一角は騎士たちの詰め所になっていた。そこからそう離れていない場所には帝都にある闘技場に近い建物が建築されており、ここが訓練場とされている。
中に入れば騎士たちが鎧を着ながらひたすらに走っている姿や、武技を習得するための特訓、集団で二組に分かれて模擬戦などをしている光景があった。
このエ・ランテルにいる騎士達は
「それでルミリアさんに、『別途で報酬を支払うので良ければ手合わせ願えませんか?』って頼まれたから──」
「受けたのか?」
「ええ。ルミリアさんと模擬戦をして、その後は希望する騎士達数人とも。それで分かったのは、この国の騎士たちはそこらの冒険者なんか目じゃないぐらいに強いってことね。ルミリアさんなんかは特に」
「まさか負けたのか?」
「いいえ、負けはしなかったけれど……正直危なかったわ。彼女が攻撃に回っている間は防戦一方で、まるで何人もの戦士に同時に攻撃されている様だったわ。
結果的に連撃が途切れたタイミングで〈
後は一般の騎士も、冒険者で言えば最低でも銀級。中には金級、もしくは白金級の実力を備えた人もいたわ。」
「そりゃあ、この都市の冒険者の数が減るわけだわな……」
冒険者の強さは概ねその等級ランクで判断出来る。
冒険者の大半は新人の銅級。それなりに強い鉄級。そして、訓練された一般の兵士と同格とされる銀級。一国の精鋭兵と同等ともされる金級。ここまでが冒険者の大半を占める。
ここから上位に白金級、ミスリル級、オリハルコン級、アダマンタイト級があり、この四つに当たる冒険者は全体で見て二割いるかいないかとも言われている。級だけに絞って見ればアダマンタイトなどチーム数で見れば両手で数えられる程度しかいないだろう。
そんな中、帝国の騎士の強さは白金に手が届きかけている者がいる時点で、相当に高いものと推測出来る。
そんな騎士たちがこの都市を巡回し、都市外でも定期的に村々を巡り、モンスターを適度に討伐しているため、冒険者のモンスター討伐依頼は減少の一途を辿っていると言う。
「それと……辺境侯とも手合わせしたわ」
「「「「はぁ!?」」」」
ここに来て更なる爆弾が投下される。辺境侯とも戦ったと言う、とんでもない爆弾が。
「丁度、ルミリアさん達と手合わせを終えて、そろそろ離れようかと思っていたんだけど、そこに辺境侯が現れて……」
「で、手合わせしたと。はぁん、そりゃあ運が良いのか悪いのか……。で、どうだったんだ?」
するとラキュースは悔しそうな表情を浮かべ、ギュッと両手を握っていた。無意識なのか、ラキュース自身はそれに気づいた様子はない。
「……相手にもならなかったわ。私が何度も、幾度となく攻撃をする中であの人は傷一つ負わずに防ぎきったわ。その上、私は彼の剣が見えなかった……。気づいたら後方に吹き飛ばされてたわ」
ラキュースは強い。英雄級の実力を身につけ、法国の特殊部隊の隊長を相手にしても退けられる程に。
しかし文字通り相手は格が違った。それ故に起きた悲劇だった。
「しばらく呆然として……思わず泣いてしまったの。そのせいかしら、周りの騎士達が慌てふためいてたのは」
その光景を想像する。
外部から来た英雄に近い強さを持った人物が、頼まれて模擬戦をした後に、真打ち登場とばかりに絶対に敵わない相手と戦わされ、せめて胸を借りるつもりで自分の持つ全てを出し切った結果掠りもしなかった挙句、一撃で倒されてしまったのだ。
ここまでされたら、大抵の人物は心がへし折れるのではなかろうか?
それを危惧した騎士達はどうにか持ち直してもらおうとフォローに徹した。あのルミリアでさえも。
「そうしたら、辺境侯が私の首根っこを掴んで立たせて……もう一度吹き飛ばされたわ」
「「「「なんで!?」」」」
「根性が足りないって……それでもアダマンタイトかって……」
それからラキュースが語ったのは、今日に至るまで騎士達と共に辺境侯の指導を受けていたからだと言う。
時に投げ飛ばされ──時に叩きのめされ──時に吹き飛ばされ──時に
しかし、確実に地獄を耐えた分の実りはあった。
「貴方達も時間があったら訓練を受けてみると良いわ。
なんて言うか……一つ限界を超えた様な、そんな感覚があったわ」
「そ、そうかい。次の機会があったら考えておくわ……」
「……もしかして鬼リーダー、進化した?」
「これからは鬼ボスじゃなくて悪魔ボスと呼ぶべきか……」
「どう言うことよ!?私は神に仕える神官戦士よ!」
そんな一幕があり、イビルアイが自分の報告をしようとしたタイミングで──
「お待たせしました。本日はお忙しい中足を運んでいただきありがとうございます。
本日、競売人を務めさせていただくソーリィ・ホライゾーと申します。
今日も新たな職人、新たな商品との出会いを楽しみながらご参加ください!」
黒髪の嗄れた声を上げる男、ソーリィが開催の挨拶を終えいよいよ競売会が始まった。
ラキュース
鬼!悪魔!ラキュース!!
訓練場に行ったが運の尽き……騎士たちと同じ地獄を体験した。
その結果、レベルアップして英雄の領域に完全入門した。
シレッと仲間を地獄に引き摺り込もうとしている。
木刀のためなら大金も惜しくない。
イビルアイ
辺境侯、コワイ。
後に語られるが、蒼の薔薇のメンバーで唯一クアゴアに接触している。
オスク
武王のオーナー
武器商人かどうかは不明だが武器も扱うということで何卒……
アレーティアと直接交流があるのでエ・ランテルにおける物流の三割程を任されていて、かなり大儲けしている。
ちなみに闘技場の方は巨王と氷王が武王の座をかけて激戦を繰り広げていることで有名。決着は未だに着かない。
ティーチ・オークショナー
ソーリィ・ホライゾー
オークション編のみの登場オリキャラ。
覚えなくても問題なし。
騎士達
受付に控えていたのは帝国騎士団ではなく、アレーティア直轄の鮮血騎士。アレーティアの訓練を受けた後、とある適性を見出された者が所属する。(例:ルミリア、レイナース)
それ以外は帝都の騎士団目指して研鑽を積んでいる。
アレーティアの扱きが地獄だが、逆に期待されている証拠とされているため案外耐える者が多い。
ある一定のレベルまで強くなると都市外の巡回を数名で組んだチームで行い、モンスター狩りを行い経験を積む様になる
そしてその中で優秀な者は村に派遣され駐在騎士となる。一部は飛ばされたと比喩されるかも知れないが、むしろ栄転でここで成果を上げればゆくゆくは爵位を与えられ土地も与えられると言う話。
アレーティア
キリネイラム欲しい。
それはそれとして、ラキュースをボコった上に強化した張本人。
まだマウント取って顔面ボコボコに殴ったりしないだけ温情がある。……温情とは?
騎士団が八軍から十軍に増えているのは領土が広がって以前の数では足りないと判断したため。
エ・ランテルにいる騎士たちが実質九軍、十軍に当たる。
粛清騎士団については少数精鋭とだけ。在籍しているのは騎士だけではない。
余談ではありますが、仮にアレーティアが王になった時の優秀度は部下に恵まれている状態でジルクニフ以上、ラナー未満。
部下に恵まれていないとドラウディロンと同等かザナックより上ぐらいの設定。
魔法とタレントでゴリ押し脳筋政策が始まります。