転生したらオバロ世界のエルフだった件について 作:ざいざる嬢
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「これ以上はいませんね?……では、金貨三十枚で落札です!」
競売会が始まり、競売人であるソーリィ・ホライゾーの商品紹介や話の上手さ故か、次々と商品が落札されていく。
美術品に始まり、武具やマジックアイテム、調度品や中にはこんな物何に使うんだ?と言う珍妙な品もあったが、それも巧みな話術で魅力を引き出し、入札者が後を絶たない。
「……やはり彼は上手いな」
「ご存知なんですか?」
思わず隣のVIP席にいるオスクの呟きが気になり声をかけてしまう。
「ええ、彼は元々帝国で魔法詠唱者として上を目指していたそうなんですが……どうやら才能が無かったらしく、魔法省を去ってからは腐っていくのを待つ日々だったそうで。
しかし、元々ああ言う会話が上手い人で、それを活かして商人として生きていくことを決めたそうなんですよ」
よくあることだ。自分の目指す夢が、理想が、自らに才能が無いが故に諦めざるを得ず、そして腐っていく。もしくは足掻きに足掻いて、そして現実を突きつけられるか。
そんな中で、現実と折り合いをつけて活躍出来る人がどれだけいるだろうか。ソーリィ・ホライゾーはそうして這い上がることが出来た数少ない人間なのだろう。
会場での彼は拡声魔法で会場全体に声を届け、商品に関しても幻術を使い多くの人の目に映る様な工夫がされている。
如何に才能がないと言われようと、自分に出来ることを最大限活用する彼の姿は誰よりも眩しく感じた。
『続きまして……おや、これはエ・ランテルでは知らない方はいないでしょう。現在、カルネ村へと住まいを変えられたンフィーレア・バレアレさんからの出品です!』
予想もしていなかった有名人の登場に会場が盛り上がる。ンフィーレア・バレアレ、彼はエ・ランテルでポーション作りに勤しむ薬師であり、その生まれながらの異能は彼の名以上に知られている。
そんな彼が一体どんな品を出品したのか誰もが興味が尽きない。
『さて、ようこそンフィーレアさん。早速ですが最近ご結婚なされたとか?』
『は、はい……念願叶って……その……』
『これはめでたい!めでたいですよ〜!私からもお祝いを……と思ったんですが、あいにく私のポケットには銅貨どころか塵すら入っていないのでお渡し出来ないのが歯痒い……!
その代わりと言っては何ですが、競売の方を頑張らせていただきます。それで、お持ちの商品は?』
『あ、はい。これです』
ンフィーレアが取り出したのはポーション。しかし、ただのポーションではなく、色は淡いピンクでどことなく蠱惑的な印象を受ける。
『おや?これは綺麗な色のポーション、ですかね?皆様ご存知か分かりませんが、元来治癒のポーションは青い色と相場が決まっていますが、このポーションをご覧ください。そう、色が違うんです!ピンク色のポーションは見たことありません。これだけでどんな効果があるのか、おじさん気になっちゃいます』
ソーリィの語りに観客は目の色を変える。蒼の薔薇もそうだ。ポーションは冒険者にとっても生命線の一つになる。治癒のポーションが最もポピュラーだが、他にも身体能力を強化するポーションなどもある。
そして明かされたそのポーションの効果は──
『えっと……精力向上効果が……』
蒼の薔薇のポーションへの興味は消え去った。
反対に会場内は大いに湧き立った。
『せ、精力向上ですか!?ひょっとして男女問わず効く……?』
『あ、はい。元々は僕用に作っていたんですけど……』
『あー、なるほど!これは幸せのお裾分けですね!実に羨ましいです!』
「……あんな物も売られるのね」
「競売会的にはアリなんだろ……貴族連中は欲しがるぞ。だからここで商人たちもンフィーレアとなんとしてでも繋がりを持ちたいから落札する気満々だろうな」
貴族は自分の家の血を残す義務がある。その為、ああ言う精力剤などには目敏い面がある。子孫が残せなければ家が無くなってしまう恐れがあるからだ。
──尤も、この都市には子孫を残そうとも、後ろ暗いことをしようものなら容赦なくその家を物理的に潰す死神たちがいるのだが。
『ただ、作るのに特別な素材が必要で数に限りがありますので、今回は僕が使った残りの二本を出品させていただきます』
『特別な素材……これは秘匿情報ですねぇ。ちなみに今後は出品するとしたら何本出品になるご予定で?』
『そうですね……素材の入手周期と製作時間なんかを込みで考えると、大体四ヶ月毎に最大十二本になるかと思います』
『なるほど!貴重な情報ありがとうございます。では、このポーション二本の入札開始値は……金貨十枚から!さあ、皆さんの夜の生活を彩ってくれるかもしれないポーションに、貴方はいくら出しますか!?』
『金貨十五!』
『金貨二十枚だ!』
『三十出すぞ!』
あっという間に開始値から三倍もの金額に跳ね上がる。更に値が上がっていき六十枚まで駆けて行った。
金貨六十枚からはしばらく声が上がらず、ここで打ち止めかと思われた。
『金貨六十枚!現在【69】の札の方が最高額です!他の方いませんか?もう締め切りますよ〜?』
『金貨百枚』
空気がざわついた。ここに来て一気に突き放す金額を提示したのは──『92』の札を持ったラナーだった。
「ラナー!?」
「アイツあんな所にいたのか。あそこはVIP席ではないんだろう?」
「あそこは基本的に辺境侯が利用する席でございます。この会場を上から全て一望出来る特等席でして……」
「ああ、なるほどな……」
イビルアイはティーチが言わんとすることを大体察した。辺境侯は恐らく会場全体を俯瞰することで犯罪行為や違反行為を見逃さない様にしているのだろう。下手なことをしようものなら即座に降ってくる。
あの場所にいると言うことはラナーは公的に婚約者として認められ、入籍することが確定したことを示す意味合いもあるのだろうと解釈した。
『き、金貨百枚!これ以上はいませんか!?……いない様なので金貨百枚にて落札!おめでとうございますンフィーレアさん!』
『あ、ありがとうございます!』
『さあ今回買えなかった皆様も、次の出品に備えて金貨を貯めておくことをオススメしますよ。あ、今日使う金貨は抜いていってくださいね?』
会場が笑い声で僅かに震える。ソーリィの小粋なジョークはこうした空気を弛緩する役割を果たし、続く商品へと移る。
「それにしてもラナー大丈夫かしら?持って来たお金から捻出してるんじゃないわよね……」
「流石に辺境侯が出してるだろ……夫婦間での問題だぜ?」
「それにしたってこんなに早くから精力剤なんて、あの王女様意外と大胆」
「辺境侯って意外と淡白なのかもしれない」
思わぬところで辺境侯への風評被害が生じるが、辺境侯──アレーティアは元々女性なので実質ノーダメである。
そうして幾つもの商品が売れて行き、その中には冒険者にとって有用なアイテムもあったのでガガーランやイビルアイが落札した。
そして──ラキュース目当てのアイテムが遂に舞台に現れた。
『お待たせしましたぁ!!皆様、本日の目玉商品であるエ・ランテル領主であるアルス・ティアーズ様が作りし至高の作品が今ここに!』
会場がこの日一番の熱狂に包まれた。誰もがこの時を待っていたのだとばかりに歓声を上げる。
過去、何度か競売会に出た辺境侯の商品はどれも既存の物を遥かに上回る物ばかりだった。マジックアイテムも、調度品も、武具も、芸術品も何もかもが。
中でも一際際立ったのが水晶で出来た花束だ。茎から葉、花弁にかけて全てが水晶で出来ており、一つ一つの花の種類は異なっており、それでいて本物と見間違うほどの精巧な造りだった。
一体どんな手法で作られたのだと疑問に思わずにはいられない程の出来映え。水晶で出来ている為この花束は永遠に枯れることなく、その場を彩り続けることだろう。
この花束の競売は荒れに荒れた。商人も貴族も関係無く互いに金貨で殴り合う様な熾烈な競売だった。結果的に個人で購入するのではなく、幾人かのグループで集まり資金を出し合うことにより、この花束はなんと
それからと言うもの、辺境侯の出す品々は全て最低でも金貨百枚で落札されている。辺境侯の素晴らしい作品を買えば他の貴族への自慢になるのと同時に、逆らう気はないと言う恭順の証にもなるとは言ったものだ。
『この度の作品は……こちら、木刀です!』
しかし、今回はある意味想定外の品だった。熱狂した会場が一瞬シンとする。現状興奮を隠せないのは内情を知っているラキュースぐらいだ。
『皆様、こちらの木刀はそこらの木刀とは違います!この木刀の元になっている木材は帝国でも希少と言われている入手困難なザイクトロル樹より作られております!この木材で作られた長机や椅子は以前この競売会でも金貨百二十枚で取引されたのは記憶に新しいです』
「えっ!?そんなに!?」
思わず焦るラキュース。それだけの素材で作られているのだから、あの木刀もそれぐらいか、それ以上の値がついてもおかしくはない。
念の為、ラキュースは今持てるありったけの金貨を持っている。その数およそ二百枚。実家に帰ればまだ自分が自由に使える金はあるが、この場にはない為、辺境侯に借りを作ることになるが支払いを待ってもらうしかない。
「そして、こちらの木刀ですが私が振らせていただきましょう。この木刀を使えば……せいっ!」
ソーリィが木刀を木剣へ叩きつける様に振れば木剣はバキン!という音を立ててへし折れる。
観客はその光景に目を剥いた。何せ木刀を振ったのは元魔法詠唱者で現在商人のソーリィだ。戦士の様な屈強な肉体を持っているわけでもなく、むしろ肉体的には一般人と何ら変わらないはずにも関わらず、木刀は木剣を難なく叩き切ったのだ。
『ご覧ください!見ての通りこの硬さ、この木刀には傷一つ付いていません!それだけではありませんよ!今度はこの石柱も……よいしょっ!』
これもラキュースの時同様、呆気なく砕き割る。ラキュースの時スパッと切れたのは戦士職を持っていたからだろう。
しかし、デモンストレーションとしてはこれ以上ない効果を見せた。
『石よりも硬いこの木刀、護身用にも持ってこいです!アルス様からの紹介によれば、熟練の戦士にもなれば鉄をも断つとのこと!しかし、刃は付いていない為手入れは不要です!
そしてなんと!この木刀、まだ魔化されていません!アルス様より、落札した方の要望に応えた魔化をさせて貰うと言うお言葉をいただいております!そう、貴方のための、貴方だけの木刀になるのです!』
これには大歓声が──ほぼほぼドワーフによるものだが──上がり、会場内のボルテージは最高潮だ。
対してラキュースは顔が真っ青になっている。落とせないかもしれないと。
「……ね、ねぇ皆。ちょっとだけでいいから」
「ラキュース、その先を口にすれば私はこのチームを抜けるぞ」
言い切る前にイビルアイからバッサリと切り捨てられる。ガガーランもティアもティナも口にはしないが、同じ気配を漂わせている。
ラキュースも流石に自分の我儘でチームが崩壊するのはゴメンだと思い、何よりそう言わせてしまった自分を激しく叱責することとなった。
「ごめんなさい、私冷静じゃなかった……」
「気にするな……と言いたいところだが、敢えて言うのであればもう少しリーダーとしての自覚を持ってくれ」
「ええ……」
『それでは、これから入札を開始します!では金貨五十枚から!』
「金貨二百枚!!」
「おいラキュース?!」
しかし欲しいものは欲しいのだ。持ちうる金銭全てをオールインしたラキュースにもう退くと言う考えはなかった。
あるのはあれが欲しいと言う欲望だけ。神官騎士としてどうなのだろうか、と思わずにはいられないが若気の至りと言うやつに違いない。
『おおーっと!『06』の番号札を持つ方がいきなり金貨二百枚の提示!さあ、他にはいらっしゃいませんか!?』
「金貨二百十」
「なっ!?」
ラキュースが声の方を見れば、VIP席ではない席で『35』と書かれた札を掲げた男がいた。青いボサボサした髪に無精髭を生やした男──身体つきをを見るにかなりの腕を持った剣士がラキュースの木刀を奪おうと立ちはだかった。
『今度は二百十枚!これ以上はいませんか?』
ラキュースは悩む。欲しい、あの木刀が喉から心から欲しい。しかし、ここで無理してまで手に入れる必要があるのかと一瞬冷静になった頭が思考する。
どうする?もう時間がない。ここで声を上げれば木刀は間違いなく私の──いや、あの男が更に金貨を出す可能性はある。確実ではない。ではどうするべきか?諦めるか?しかし──。
ラキュースの脳はフル回転し一秒が数時間にも感じられた。そして何度も何度も考え考え抜いた末に──。
ラキュースは木刀を諦めた。
◯
◯
◯
『競売会も終わりの時がやって来ました。この度も様々な品に出会えた方、そうでない方もいるかもしれません。しかし、この出会いがやがて──』
「お、おいラキュース泣くなよ。な?手に入らなかったものは仕方ないだろ?」
「ひっく、ひっく……うぅ……」
ここだけの話だが、辺境侯に叩きのめされた時以上に泣いている。それだけ欲しかったのだろう。
あまりにも子供っぽい泣きざまにイビルアイも何も言えない。むしろ、こんなのにボコられたのか……なんて思っていたりする。
競売会が終わり会場を後にする。目的であった競売会も終え目ぼしいアイテムは購入出来た。ラナーの護衛の依頼も終えた今、この都市に留まる理由はなく王都へと帰ることになる。
しかし……
「……良い都市だったな。今の王国なんかよりもずっと」
思わずそう言ってしまうぐらいにはこのエ・ランテルは過ごしやすく、居心地がいい場所だった。それは今活動拠点にしている王都と比べてしまったからかは分からない。
「そうだな。私もそう思うぞ。王都のゴタゴタが片付いたらこっちに拠点を移してもいいと考えるぐらいにはな」
あのイビルアイですらそう考えるだけの都市。ここまで活きた都市を見ると王国に魅力を感じなくなるが、それはそれだ。王国はラキュースの故郷でもあり、彼女も貴族令嬢としての生活もあるため、そう簡単に拠点を変えるわけにはいかないのだが。
陽が落ち月が昇ろうとしている。出発は明日にして今日は休もうと部屋を借りている辺境侯の城へと歩を進めた。
「お、アンタか『06』のVIPさん。顔合わせるのは初めましてだな」
「あ、貴方は──!!」
更に辿り着けば、そこにはラキュースにとって因縁深い相手──木刀を落札したあの青髪の男がいた。
先程とは違い武装している辺り、同業者かと思ったがラキュースに思い当たる人物はいなかった。
「アンタ、王国の御前試合で見たな?確か戦士長と互角に渡り合ってた……ブレイン・アングラウスだったか?」
「ほう、知っているのか」
ブレイン・アングラウス。かつて王国で行われた御前試合にて、決勝で王国戦士長ガゼフ・ストロノーフと互角の戦いを繰り広げ敗れた戦士だ。あの戦いは伝説と呼ばれ語り継がれている。
「アンタ程の男があの御前試合の後姿を消したって聞いて、何処で何をしていると思ったら、まさかこんなところで出会うとはねぇ」
ガガーランもあの御前試合には参加していた。ガゼフとの戦いで敗れてしまった為、直接の対決はしていないがその実力は十分に知っていた。そして、目の前にいるブレインはその頃よりもかなり強くなっていることが見て取れた。
「いや何……思いがけない出会いがあってな。今はここで雇われているって訳だ」
「雇われている……?まさか!」
「そう、俺は今アレ……アルス辺境侯に雇われてる訳だ。色々条件込みでな」
「ブレイン、戻っていたのですね」
城の中から辺境侯が姿を現す。傍にはラナーとクライムもいた。
「ああ。仕事帰りだ。帰りがてら競売会に参加して……アンタの作ったコレ、落としたから俺専用に仕上げてくれ」
片手で持っていたソレを辺境侯へ手渡す。気安い間柄のような話し方をしているが、それを咎めるようなことを辺境侯は言わない。
少し驚いた様に見えた辺境侯はソレを受け取り、虚空から何やら道具を取り出す。
「仕様は?」
「アンタに砕かれた刀以上で頼むよ」
「ああ、あの刀。望みならあの刀以上の大業物でも作ってあげるというのに」
「そいつも良いかもしれないが……今はこれでいい。これ以外にも貰った武器があるからな」
そう言うブレインの腰にはマジックアイテムと思われる直剣がぶら下がっている。その魔力量は恐らくキリネイラムを上回っている。
「はい、終わりましたよ」
「え?もう?」
「私を誰だと思っているんですか?」
そう言った辺境侯の手には先程とは明らかに違う木刀があった。存在感が増しており、魔化された影響か強大な魔力を感じる。この木刀は最早木刀と呼ぶことすら痴がましい程に。
「名付けるのであればそうですね。
「随分物騒な名前だが……まあいいだろう。って、なんだぁ!?」
魔樹の根を受け取ったブレインを凝視──否、羨望の眼差しを向けたラキュースがそこにいた。それはまるで、商店で売られている宝剣やマジックアイテムを見つめる冒険者志望の子供の様な姿だった。
「……いいなぁ、魔樹の根」
「いい加減にしろラキュース。お前にはキリネイラムがあるだろう」
「でも「いいなぁキリネイラム…」えっ!?」
今度はキリネイラムをジッと見つめる辺境侯がそこにいた。それはもう、羨ましそうに。
「アルス、そろそろ」
そんな辺境侯をラナーが窘める。少しばつの悪そうな顔をして目を伏せてから、んんっと咳払いをした。
「すいません、少々欲望が前面に出てしまいました。さて、蒼の薔薇の皆さんも競売会が終わったことですし近日中にはこの都市を去られるのでしょう?
折角なので食事を一緒にと思ったのですが、いかがでしょう?
「どうかしら?しばらく皆にも会えなくなってしまいますし……」
嘆願する様にラナーが見つめてくる。
確かに、数日この城に滞在したがラナーと顔を合わせるタイミングはほぼ無く、明日旅立とうとしている身としては今日が最後のチャンスであることは確かだった。
王国の今後を考えれば次この都市に来れるのはいつになるか分からない。ならば、友人の願いを無碍にせず受け止めるべきだと判断した。
「そうね、ご一緒させて貰おうかしら?皆は?」
「いや、俺は遠慮しておくぜ。友人同士の語らいを邪魔する気はないよ」
「私たちも遠慮しておく」
「同意」
「そうだな、私もまだ少し行きたい場所があるからな」
「そうですか。ではラキュース様、案内させますのでどうぞ」
後から現れたメイドエルフ達が先導し、案内されるままにラキュースとラナー、クライムの三人は城の中へと消えていった。
残ったメンバーもそれぞれ別行動を取り、夜が更けていった。
◯
◯
◯
「それで、目標は達したんですか?」
「そりゃあ俺がここにいることが証明だろ?苦戦はしたが……なんとかなった。ティラのヤツにも感謝しないとな。俺だけじゃああのイカれ女は仕留め切れなかった」
私はブレインとティラと数名の部下にズーラーノーンの拠点への襲撃を任せていました。
〈
ブレインが何故ここにいるかというと、以前エ・ランテル近郊を根城にしていた野盗に落ちぶれた傭兵団こと死を招く剣団を掃討した時に出会ったからですね。シャルティアが襲撃を仕掛けた時と同じ様に。
ようやく見つけた将来の有望株ですから、念入りに叩きのめしました。
〈領域〉と〈神速〉を合わせた奥義〈秘剣虎落笛〉を指先で押し止め、〈八光連斬〉を叩き込み刀を砕いた後はボコボコにした上で強制的に連行しました。隠し通路なんて使わせません。
その後の野盗はルミリア含む騎士団に任せました。性欲処理用の女がいると教えれば、その場にいる女騎士達も怒り心頭で全員捕らえた後に股間を踏み砕いたり、刺したり、火炙りにしたりと中々過激なことをしたと報告がありましたが自業自得と言うやつです。なんならその後、拠点の洞窟が再利用されないようにと、私の作ったマジックアイテムで徹底的に破壊して地形が変わったという報告もありましたが些細なことです。
そんなこんなでブレインを連行した後は、私がガゼフより上だと言うことをこれでもかと言うぐらい身体に教え込み服従させました。
ただ私も鬼ではありません。ブレインのガゼフを超えたいという想いは知っているので、私が師になり鍛えることを条件に部下になると言う形になりました。ガゼフとヴェスチャーのような間柄ですね。
そして、今回与えた任務はズーラーノーンの掃討ですが……この拠点にはあのクレマンティーヌがいました。クレマンティーヌと言えばあのガゼフを超える強さを持つ戦士。本来のブレインならば良い勝負が出来ても勝てる見込みは無いはずでしたが、今の彼は私がみっちり鍛え上げただけあり、見事勝利して帰ってきた様です。
「よくやりました。……そろそろ挑むのですか?」
「いいや、まだだ。まだアンタから教わっていないことは山ほどある。それを自分のものに出来てから……俺はアイツに挑むさ」
「そうですか。では私は厨房に行きますので、しばらくは自由にしていてください」
「はいよ。折角だし俺もあのガガーランとか言う戦士と話してみるかね。もしかすると、何か掴めるかもしれないな」
向上心のある人は好ましいですね。原作であのコキュートスに認められたブレインはこれからどう成長していくか。
……今度は原作同様にクライム君に関わらせてみようかと悩みながら、厨房へと向かいました。
ちなみに出した料理は大好評でした。
あのラナーも目を見開いて無言で味わうほどに。フッ、勝ったな。胃袋は掴んでやりました。
ンフィーレア
原作より早くエンリと結ばれた。
描写していないものの、アレーティアと知り合い神の血と呼ばれる赤いポーション作成に力を入れている。
カルネ村に生息するドライアドやトレントなどの植物系モンスターから採取出来る素材で今回のポーションは出来上がった。
夜はいつも負けてる。
ラキュース
木刀買えなかった。でも諦め切れない。
キリネイラムと引き換えにアレーティアが新しい武器をくれると言われたら、多分死ぬほど迷う。
蒼の薔薇ルートだとキリネイラムをアレーティアに貸してあげたりする微笑ましい光景が見れたりする。
オスク
木刀に入札しなかったのは抱えている剣闘士に合う武器ではなかったから。彼が欲しい武器は実際に使われた武器なのでコレクションでも使われなければ買わないのではないかと言う作者の解釈。
ガガーランのファンなのに絡みが無かったのは推しの前だと委縮してしまうタイプのファンだと思ってください。
ラナー
その精力向上ポーション誰に使うの?と聞かれればアレーティアには『二人』とだけ答える。
ブレイン
原作から超強化。現時点でズーラーノーンクレマンティーヌと互角。つまりノーマルガゼフは超えている。
シャルティア相手に心折れたのに、アレーティア相手に折れていない理由は相手が人間種だから。この身でもあの高みに届くと信じて彼は今日も剣を振るう。
鮮血騎士のメンバーの一人。
魔樹の根
元木刀。ブレイン専用仕様になっていて、更にルーンまで刻まれた。起動すると伸縮する。
クレマンティーヌ
枠外で死んだよ!
強化ブレインと天上天下武装ティラの前には敵わなかった……と言うより天上天下の装備見た瞬間に、法国にバレたと内心焦りまくった結果の敗北でもある。死体はティラが帝国に持ち帰っている為、蘇生されることはない。
アレーティア
地味に錬金術師の職の経験のため、ンフィーレアとも交流を持っている。カルネ村への移住を薦め、村の発展のため結構な額を投資した。
水晶の花束についてはWEB版にこんなのあったなと思い、趣味がてら作った。あまりにも高く売れたので次は宝石で作ろうと考えている。
ちなみに木刀はラキュースが落札すると思っていたので、ブレインに渡された時は素直に驚いた。
食事を振る舞った後にラキュースに、剣に巻き付いた竜をイメージして作った金製のアクセサリーをプレゼントしている。ぶっちゃけ土産屋で売ってる少年の心を掻き立ててやまないアレ。
忘れかけていた中二心を取り戻そうと、「陰の実力者になりたくて!』を全話見た結果、どハマりしたので次回更新遅れるかも……?
アトミックと〈大厄災〉どっちが被害としては上かな……とか考えたりしてます。