転生したらオバロ世界のエルフだった件について 作:ざいざる嬢
前回の粛清騎士団→鮮血騎士へと変更しました。
4/5 追記 内容加筆修正しました。文字数大分増えてますのでご注意を。今後はこの様なことがない様に努めます。
蒼の薔薇の皆さんが王都に帰ってしばらくして、私とラナーは夜の寝室で対面していました。
「概ね計画通りと言ったところでしょうか」
「そうですね。それにしても、まさか粛清騎士様が性別を変えられるとは思ってもいませんでした」
〈
「仮にも夫婦になる関係なんですから粛清騎士などと他人行儀な呼び方ではなくアルス、二人きりの時はアレーティアと……まあ呼びやすいように呼んでください。
それと、この〈性転換〉はあまり何度も使用したくはないんですけどね。本来の性別時より等身が変わって調整が面倒なので」
具体的に言えば男の時の方が身体がやや大きく、筋肉質になるんですよね。不思議と軽戦士職の動きが馴染む感覚もあり強化される反面、慣れすぎるとあまり良くないと感じてます。
「でもそのお陰で貴方も表立って動けるようになった。そうではないですか?」
「全くその通り。とは言え、変わらず顔は晒せませんけど」
「面倒ですね。その辺りは……法国が無くならないと無理ですか?」
「多分……少なくともあのクソ親父が討たれるか、法国がエルフを目の敵にしなくなるまでは難しいでしょうね」
最近も法国の息がかかった人間をチラホラ見かけます。その都度、元イジャニーヤこと帝国暗殺部隊に調査させた上で始末してますけど。
中でも元頭領、現暗殺部隊隊長兼
流石は法国のアイテム、とここだけは褒めてあげます。
「……いっそ、内乱を起こして滅ぼしてみます?」
あ、これマジで言ってますね。情報を与えたら直ぐにでも取り掛かりそうな勢いを感じます。
デミウルゴスやアルベドに匹敵する頭脳ですから、数年で滅ぼせそうなのが怖いですよね。ナレーションで滅んでそう。
多分、百年の揺り返しのこととか話したら周辺諸国にその情報ばら撒いた上で国民に扇動家を仕向けて……とかやりそうです。
いや、私程度の頭だとこれぐらいしか浮かびませんが、ラナーならもっと水面下で動いて気づいた時にはもう……みたいなこともありそうですね。
「まだやめておきましょう。法国には残りのズーラーノーンの拠点を潰してもらいたいですし、帝国としては法国に対して強く出られる切り札を何枚か握っていますから。そのうち、ジルクニフが行動を起こすでしょう」
法国への交渉材料として、一つは漆黒聖典十二席次の死体。
二つ目に十二席次の装備。
三つ目に法国の裏切り者のクレマンティーヌの死体。
四つ目に盗み出された叡者の額冠。
五つ目にズーラーノーン高弟の一人であるカジット・デイル・バダンテールの身柄。
ざっと思いつくだけでも、これだけの手札があります。しらばっくれようにも、どれも法国にとって始末、もしくは回収したいものばかり。特に装備と額冠に関してはなんとしてでも回収したいでしょうからね。
これを回収するために六色聖典を派遣しようものなら私自ら撃退する手筈になっています。
額冠と死体が保管してある場所は帝国魔法省の地下、デス・ナイトを捕らえてある階の更に下の階層。いざとなればデス・ナイトを解放して戦わせるのも有りですが……そう言えば最近フールーダが支配に成功したと泣きながら報告してきましたね。アレを使うのは極力避けましょう。フールーダに恨まれたくありませんから。
「皇帝ですか。私としても彼は優秀だとは思うんですけど、今は多忙ではないですか?文官も足りていないようですし、この前は遂に倒れたと聞きましたけど」
「それは半分私のせいだからなんとも言えないんですよね……」
アレは本当に予想外でした。支援効果付きの料理を振る舞ったら丸一日ぶっ通しで政務してぶっ倒れるなんて誰が思うか。支援効果も丸一日保つものじゃなかったのに……。
「なのでラナーも手伝ってくれません?私書類仕事苦手なんで」
「さり気なく私に押しつけようとしていませんか?」
「いや、私がやりたいことを確実にやるなら、私より頭が良い人に任せれば安心じゃない?」
なんのためにラナーを味方に引き入れたと思ってるんですか。こういう面倒ごとも全部やってもらうために決まってます。
「最初に言ったじゃないですか?帝国の繁栄に協力してもらう代わりに貴方の願いを叶えてあげるって」
「王国を帝国に併呑出来るなら、と言われた記憶がありますが?」
「その前に貴方を欲した理由を加味した上で貴方は乗ったでしょう?同意したも同然ですよ」
「それは……もうっ!」
ラナーが頬を捲れて怒ってますね、可愛い……じゃなかった。
でもこれ演技ですね、分かります。世界最高峰の頭脳を持つ彼女がこんなことに気づかない訳ありませんし、私のことを試して遊んでいるんだと思います。
「はぁ……分かりました。私は貴方の妻になる女ですから、この都市も、帝国になる王国のことも貴方のやりたいようにやるのをサポートしますよ。
でも、分かってますよね?私の願い」
「話が分かるようで助かります。ではこの鍵を渡しておきます」
取り出したのはとある一室の鍵。何が起きても誰にも感知されないようにと作った隠し部屋への鍵です。これはラナーの要望だったので頑張りました。一体何に使うんでしょうね?(知らんぷり)
「あ、一応言っておきますけどクライム君とまぐわうのはもうしばらく待ってください。彼との信頼関係を築き、同僚になる騎士達にも受け入れられるようになって、王国との戦いで手柄を立ててからにしてもらいたいです」
クライム君に私の代わりに子供を作ってくれと言うのは簡単ですが、そこに信頼関係がなければ、ただただ不審なだけでラナーを蔑ろにしているとしか思われません。
あの純朴なクライム君とは良好な関係を築いた上で、手柄を立ててもらい「君だからこそ頼みたい」と真摯に頼めば受け入れてくれるはずですから。
「そうですね、先日の競売会で思わずこのポーションを買ってしまいましたけど、少しばかり早すぎましたね」
「アレはちょっと驚きましたよ」
競売会で精力向上ポーションが金貨百枚という超高額で売れたのをンフィーレアとソーリィから聞いた上で落札者がラナーだと聞いた私の衝撃と言ったら……。性急過ぎだと思わずにはいられませんでしたね。まあ、原作でも王国滅亡してからすぐにお互いの初めてを交換しましょうね、なんて言う女なんで納得と言えば納得なんですけど。
「ちなみに粛清騎士様はご経験はお有りで?」
「無いの知ってて聞いてます?」
「いえ、男になれるのならもしかしてそっちの方は──」
「すみませんラナー、この話題は禁句で。あまり気分がいい話題ではないので」
あー、嫌なこと想像しちゃいました。ロクシーさんの時はそういうのは無かったんですけど、どうしてでしょう?
多分ですけど、無意識下でそういうことがクソ親父に結びつくんですよね。
いくら男になれた……もとい戻れたとしても、自分の子供を幸せに出来るのか。自分が子供を持ってもいいのか。
そんな思考が頭の中を支配して……死んでいった名前も知らない姉妹たちが私に手を──
「アレーティア様?いかがなされました?顔色が……」
気づけば目の前にはラナーの顔が迫っていました。私ともあろう者が、動転して警戒すら出来ないとは……。
「ああ、すみません。この話題には少々敏感でして。出来れば避けていただけると助かります」
「……知らなかったとはいえ、何かトラウマに触れてしまったようですね。こちらこそ、少々無遠慮でした」
意外なことにラナーは気遣いが出来るみたいです。一応ザナックにも救いの手をさり気なく差し出すぐらいのこともしてましたしね。人の心が無いわけではないようです。
「とりあえず、今後やりたいことを話しておきますか。夜もまだ長いですから。……ところで、夜更かしは美容の大敵という言葉があるのですが、長くなっても大丈夫ですか?」
「そんな言葉があるのですね。しかし生まれてからずっと美容関連で困ったことはないので問題ありません」
おおう、こんなところで美容チートのような何かを見せつけられることになるとは……。
ちなみに私も特にそういうケアはしていませんが、肌荒れなどはしていません。ストレスのない生活を送っているからでしょうか?
ジルクニフは最近目の下の隈がすごかったのは覚えています。いくら忙しいからって睡眠疎かにしたら死んでしまうんですが……?
いざとなれば蘇生魔法を使えばいいんですけど、死ぬまで頑張るより死なない程度に頑張ってくださいよ。
「では、まずクアゴアやドライアドなどの亜人、意思疎通の可能なモンスターとの共存に関して──」
この後、私のやりたい事をラナーは黙って聞いてくれました。全てを聞き終えた後、いくつか草案を出してくれて、正式に政務に取り掛かる際に実行出来るように少しずつ動いてくれる事を約束してくれました。
本人曰く、暗躍しなくて済む分人手さえあればなんとかなるとか。流石はラナー、私に出来ない事を平然とやってのける。これでエ・ランテルはきっと安泰ですね。
私は私でクライム君の訓練なんかを考えておかねば。
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ラナーがアレーティアの下に嫁いでから半年後。
リ・エスティーゼ王国の歴史上、最大の事件が巻き起こった。
「ザナック殿下、お逃げください!ここは我らが食い止めます!」
「し、しかし!」
「殿下!アイツらの献身を無駄にしてはいけない!せめて、我らだけでも生きてこの状況を打破しなければ!でなければ、
ザナックとガゼフを襲っているのは武装した傭兵集団──八本指の手の者によるものだった。
事の始まりは何処だったかと言われれば、戦争の後の派閥間の争いだろう。王派閥だったブルムラシュー侯が帝国に情報を売っていた事を皮切りに、貴族派閥──バルブロ王子を王に推す貴族たちが暴走を始めた。
王派閥は最早ガタガタで貴族派閥へと鞍替えする者も少なくなかった。それでも幾人かの貴族がなんとか諌めようとしていたが、焼け石に水という言葉の如く無駄に終わった。
遂には裏社会を支配する八本指が貴族派閥を後押しし、表すら牛耳ろうとしている始末。最早王派閥どころか、ランポッサ三世ですら収拾がつかない泥沼へと浸かっていた。
そして今日起こった決定的な事態──ランポッサ三世とザナックへの襲撃。クーデターをバルブロが起こしたのだ。
誰かがバルブロの背を押したのかは不明だが、それでも彼が肉親の命を断ち、王の座に着こうとしたのは事実だ。
ランポッサ三世を護衛していたガゼフ・ストロノーフは懸命に襲撃犯を撃退していたが──ここに八本指が所有する最高戦力である『六腕』が参戦してしまい、奮闘するも数の暴力には勝てずランポッサ三世の命は奪われてしまった。
しかし、ランポッサ三世は命尽きる直前に自分が最も信頼する男に最期の任を与えた。──ザナックを護り、この国を救ってくれ、と。
ガゼフは己の不甲斐なさに血の涙を流しながら、王の遺体をそのままに逃亡。同じく襲撃されていたザナックを間一髪救出し、戦士団と共に敗走した。
「ククク、やはり私の方が上だったようですね。周辺国家最強は私にこそ相応しい」
「フン、『六腕』としての責務は果たしたようだな。ではお前はこのまま王子の守りにつけ。
「勿論ですとも。向かってくる兵は殺しても?」
「ああ、構わんさ。これで王国は八本指が裏から表を支配し、思うままに仕事が出来る。いい時代が来たものだな」
「ええ、全くです」
『闘鬼』ゼロと、新たに六腕に加わった新顔『天武』エルヤー・ウズルスは不敵な笑みを交わし、その場を後にした。
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「それで我が領地まで逃げてきたという事ですか。私が王都から離れた隙にそんなことが起きようとは……」
「すまんなレエブン侯。俺にはもう、貴方以外に信用出来る相手が思いつかなくてな……」
なんとか王都を脱しザナックとガゼフ、戦士団数名はレエブン侯が治める領地エ・レエブルまで辿り着きレエブン侯と接触することに成功した。
この地に来るまでに数日ほどしか経っていないが、襲撃されたショックと慣れない野営などでザナックは薄汚れ、見るからにげっそりと痩せてしまっている。あの太々しい容姿の見る影もなかった。
幸いと言っていいのかは分からないが、この襲撃にレエブン侯が関与しておらず、撃退した襲撃者曰くレエブン侯もターゲットの一人だったということで数少ない味方だと判別できた事だろう。
しかし、不利過ぎる状況は変わらない。唯一、頼りになる戦力であるアダマンタイト級冒険者チームである『朱の雫』は評議国へ依頼に出てから帰ってきておらず、連絡が取れない。『蒼の薔薇』も同等の襲撃にあったという情報を掴んだがその後の安否は不明。状況は絶望的だ。
「一度状況を整理しましょう。王は弑虐され、多くの兵が死に王の座にバルブロ王子が──いえ、バルブロが着いた。そのクーデターの首謀者はバルブロであり、犯罪組織八本指とその息がかかった貴族たちですね?」
「そうだ。誰がこの筋書きを書いたかは分からんが、随分派手にやってくれた。お陰でもう王国は終わりだ。王家ではなく犯罪組織が支配する国へと早変わりだ。兄上はそんなことにも気づかないだろうがな」
現状にザナックは憂いた。この国をもっと良い国にしたかった。だがもうそんな夢も理想も泡と消え、残ったものは虚しい現実だけだった。
どうにかしようにも、こちらが所持する手札はレエブン侯と元オリハルコン級冒険者チーム、ガゼフを含む戦士団数名、協力してくれるかもしれない王派閥だった貴族達。
これだけではバルブロの持つ戦力や八本指にすら敵わない。更に言えば八本指にはアダマンタイト級冒険者に匹敵すると名高い『六腕』の存在もある。
せめて朱の雫か蒼の薔薇がいればどうにかなったかもしれないが、無いものを強請っても仕方がない。冒険者の『国の政治や戦争への不干渉』という規約があるため、実際のところ協力は難しいと推測出来るが。
どうしようもない現状に抱える頭もなく、何もない空中をボーッと見つめることしかできない……が、ここで一人の身内を思い出した。
「……なあレエブン侯。一人、もしかしたらこの状況を打破するキッカケになる相手を思いついたんだが」
「相手にもよりますが一体何方ですか?正直王国にこの状況を打破出来る相手は──」
「王国にはいない。だが──帝国にはいるだろう?」
ハッと、この場にいるかつての戦争に参加した面々の脳裏に浮かぶ人物。そしてその騎士に、辺境侯へ嫁いだのは──。
「妹に……あの化け物ラナーに頼るしかもう道は無い。あの女ならアイツも帝国も動かせるだろうさ」
「し、しかし王子それは!」
「分かっている。これを実行すれば王国は帝国に刃向かうことが出来なくなる。下手をすれば王国そのものが無くなるだろう。だが、それでもこのまま腐り落ちる王国を黙って見ているぐらいなら──ッ!」
ザナックの瞳には覚悟があった。その瞳は決死の状況でも諦めずに立ち向かったガゼフのそれに似ていた。
「これよりエ・ランテルへと亡命する。そこでなんとしてでも帝国の協力を仰ぐ。王国を救うために、どうか協力してくれ」
覚悟の決まったザナックへの返答は無かったが、それは無視したということではなく跪くという形で行われた。
「陛下をお護り出来なかった私が言ったところで信用に足るか分かりませんが……王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ、殿下に忠義を誓います」
そうして、ザナック達は休息を取った後にエ・ランテルへと向かった。
全ては王国を、国民を救うために──。
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アーグランド評議国、某所
朱の雫のリーダーであるアズス・アインドラはとある存在と対面していた。
それは竜だった。白金の鱗を持ち、その相貌には長い年月を生きてきただけの貫禄がある。御伽話にもある八欲王とも戦い、六百年以上の時を生きてきた竜王。始原の魔法を操る真なる竜王の一人──ツァインドルクス=ヴァイシオン。またの名を
「ツアー、王国の現状を知っているか?」
「王国で大きなクーデターが起きたようだね」
「ああ、だがそれだけじゃない。クーデターを起こしたのは第一王子のバルブロだが、その背後には裏社会を支配する犯罪組織八本指の影があった。奴らはバルブロを担ぎ上げて傀儡の王にしようとしている。このままだと王国は周辺国家における犯罪の……巨悪の温床になる」
アズスは一つ一つ言葉を選びながら発言する。相手は人ならざる存在で長く生きている分価値観も異なる。そんな相手の協力を得るために全神経を集中している。
「それで、私にどうしてほしいんだい?長い年月を生きてきた私としては、国が滅びる光景を幾度となく見てきたからね。非情な事を言うがこの件に介入する気は無いんだが……」
ツアーとしての見解は、そういった国は長く続かず、やがて滅びる運命にある事を知っている。如何に王国でその組織が動こうが、ツアーからすれば真の巨悪──八欲王や悪しき"ぷれいやー"、"えぬぴーしー"などに比べれば可愛いものだ。
「ああ、アインドラ家としてもバルブロには就かずに、抵抗するつもりらしい。俺も武力的に言えばあの
政治的には……生き残ったザナック殿下を探すか、王族の血を引いている親戚筋を新たな王にすることになるだろうな。
だがなツアー。俺が懸念しているのはそこじゃない。
俺が思うに、この混乱を機と見た帝国は何かと理由をつけて攻め込んでくると踏んでいる」
ここで一度言葉を切った。帝国は先の戦争で王国にとって不利な要求を呑む代わりに、十年間王国へ侵攻しないという約定を取り付けているため、実際攻め込んでくる可能性は低い。
仮に攻め込んできたとしても、周辺国家に帝国は約定も守れない野蛮な国という印象を与えてしまうことになるため、あの皇帝はそれを避けて行動に出ると読んだ。
しかし、この存在は別だ。かの戦場で音もなく二人の騎士──後の帝国四騎士──を引き連れて現れたあの死神は。
「あの国には粛清騎士がいる。ヤツが出てくれば軍を動かす必要すらない。一人で王国を蹂躙することだって可能だろう。そうなったら俺でも……アダマンタイト級冒険者でもどうすることもできないだろう。あのガゼフ・ストロノーフを一撃で倒すほどの実力だからな。……だから、ツアー。粛清騎士が王国に現れたら、アンタに抑えてもらいたい」
粛清騎士。その存在はツアーも知っている。
ある日突然現れた"ぷれいやー"を彷彿とさせる力を持ったエルフの少女。顔を隠し、なんらかの方法で情報系魔法に引っかからないようにしているようだが、始源の魔法には敵わない。
そして、その顔と気配がかつての八欲王の一人を彷彿とさせた。この世界を歪め、汚し、犯した最低最悪の存在に。
ただ、血筋に罪はあれど、あの娘は血を引いているだけだ。その身に宿る力で世界を汚す気が無いのなら、現状は監視に留めておくつもりだった。
「確かに粛清騎士は相当に強い。だからと言って私が手出しをする程のことでもないと思うが」
ツアーはアズスを窘めるように、言い聞かせるように言う。確かに粛清騎士は強い。自身もアレの強さを把握出来ている訳ではないが、この世界の存在で最上位に近い強さを持っているのは理解している。
それに、国に仕える騎士となっている以上、おいそれと手出しするわけにもいかないだろう。
だがアズスは引かない。粛清騎士の起こしたあの戦争の悲惨な末路を知っているが故に、それが再び王国を襲うのではないかという恐れを抱いているがために。
そう、恐ろしかったのだ。あの在り方が。たった一人で何万という人の命を奪っているのに、まるでなんとも思っていない、アンデッドのようなその精神が。
エ・ランテルへ行き粛清騎士と対峙したという姪──ラキュースには会えておらず、あの都市の情勢は未だ不明のまま。
ラキュースに会えていれば、また違った判断を下せたのかもしれないが『蒼の薔薇』も何者かの手による襲撃を受けたと聞いた。今でも連絡は取れず無事を祈ることしか出来ない。
「アンタから見たらそうなのかもしれない。だけどなツアー。俺が真に恐ろしいのはヤツがどれだけの力を持っているのか分からないところだ。
戦争では武技と思わしき技で王国軍本陣を壊滅させ、貴族の首を一つ一つ確認しながら落としていったと聞いた。
そんなヤツが王国に攻め込んできたら、どれだけの被害が出るか想像もつかない。
それだけじゃない。戦士団のヤツからも聞いたが妙なことが起こったとも聞いた」
「妙なこと?」
「なんでも、王を護衛して逃走する中で背後から迫ってきた粛清騎士は地面に何やら文字を書いたらしい。すると文字が輝き地面が隆起し、足場が不安定になったことで全員落馬することになったらしい。
……少なくとも俺はそんな魔法も武技も聞いたことがない。マジックアイテムって線もあるが、それにしても、文字っていうところが引っかかる」
「ふむ……」
文字を書くと地面が隆起する。それはかつての仲間の一人が持っていたハンマーに刻まれたルーンというものではないかとツアーは推測する。
しかし、当時聞いた話によればあくまでそれは武具に魔法文字を刻み強化する技術だったはず。そのような使い方は出来ないはずだ。
であれば、別のユグドラシルなどにあるマジックアイテムによるものか?八欲王の子孫ならば、そのようなアイテムを持っていても──大半のアイテムはかのエリュエンティウに存在するが──おかしくはない。
それとも、新たに始原の魔法とも位階魔法とも異なる魔法の類を身につけているのか。様々な可能性が浮かんでは消えていく。
ツアーは考える。百年の揺り返しは近い。いたずらに戦力を失うようなことは出来るだけ避けたい。
しかし、今後目の前に現れるかもしれないあの強者と一度接触する必要があるとも考える。どんな人物で、どんな力を所持していて──世界に対して協力的かどうか。
「……分かったよアズス。もしも粛清騎士が来たら私が対処しよう。ただし、条件がある」
「なんだ?俺に出来ることなら出来る限りのことはするつもりだが……」
「何、簡単なことさ。粛清騎士とは一対一で話したいからね。場所は変えさせてもらうよ。それと、私自身は王国の事態には関わらない。それが条件だ。どうだい?」
「ああ、それでいい。アイツを抑えてくれるだけで大いに助かる」
こうして、アズスは白金の竜王の手を借りることに成功した。
ツアーは遠くで動かしている自身の白金の鎧を操作し、リ・エスティーゼ王国へと進路を変えた。
出会う場は恐らく戦場。ツアーはアレーティアの事をあまり詳しくは知らないが、
それがどういう事態を引き起こすことになるのか。それは今はまだ分からない。
アレーティア
アルスの時に子供作れネタは基本禁句。ロクシーかジルクニフぐらいしか許されない。
ついでに法国は基本的に塩対応。
ラナー
二人発言の一人はクライム。もう一人はアレーティアだが、現状は厳しい。ちなみにポーションはアレーティアには効かない。
ジルクニフ同様にこのままナザリックが来ないならワンチャンあった。
リ・エスティーゼ王国
ラナーの裏工作など諸々が発動した結果、クーデター勃発。
原作より早くランポッサ三世が死んでしまうし、国そのものが八本指の手に落ちたも同然。当然バルブロは気づかないし、貴族たちも美味しい思いが出来るから気にしない。
ツアー
鎧が王国へ向け動き出した。