転生したらオバロ世界のエルフだった件について   作:ざいざる嬢

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今回は鮮血騎士のメンバーをダイジェスト風味に紹介回です。



アレーティアと鮮血騎士 〜粛清騎士の愉快な仲間達〜

 

 

 帝都アーウィンタール、闘技場

 

 この日もまた、帝国最強の剣闘士──武王の座を賭けた闘いが繰り広げられていた。

 闘技場の中心には二つの巨大な影があり、一方の巨人はその手に持つ棍棒を振るう。対するもう一方の竜はそれを躱し、尻尾に取り付けられたテイルブレードが巨人に迫る。それを武技で受けながら果敢に攻め続ける巨人。

 二体の王──巨王ゴ・ギンと凍王サフォロンの激戦は迫力満点で、闘技場ではこの試合が組まれると観戦券を賭けた熾烈な争いが起きる。

 その為、この二体が戦う試合はそれから常にシークレットとされていた。

 今日の試合でもエキシビションマッチとしてこの試合が組まれたため、観客は大盛り上がりだ。

 

 この試合に何故ここまで人気があるかと言えば、神話の如き戦いをこの目で愉しめるからだろう。

 ただでさえ、ドラゴンが闘技場で戦うなど今まで前例もなく、冒険者でさえ討伐したと言う話は──一部の弱いドラゴンや幼体などを除いて──無かった。

 

 そんな試合も佳境に差し掛かり、凍王が切り札であるドラゴンブレスの体勢に入る。

 対して巨王は棍棒を構え、自らの持つ最高の武技による迎撃を試みる。

 そして互いの一撃がぶつかり合おうとした瞬間──!!

 

 

「はい、そこまで」

 

 

 間に現れた人影が巨王の棍棒を、凍王のドラゴンブレスをそれぞれ片手で防いだ。

 

「「なっ──!?」」

 

 二人の目に映ったのは自らの師であり、真に帝国最強の座を持つ人物──粛清騎士の姿がそこにあった。

 

 

 

「久しぶりですね二人共。楽しそうだったのでつい乱入してしまいました」

 

「しゅ、粛清騎士様。ご無沙汰しております」

 

「アレー……ゲフンゲフン。ご主人様お久しぶりです。今日は何用でございますか? まもなく私の勝利で決着が着くところだったのですが」

 

「何を言うか。今回こそお前のブレスを、俺の奥義〈剛撃無双〉にて破り勝利を収めるはずだったのだ」

 

 

 この二人、普段は仲が良いのですが向上心故か、それともライバル心かは分かりませんが、試合になると途端に不仲になるんですよね。

 どちらも負けず嫌いの様です。

 このまま言い争われて時間だけが過ぎていくのも無駄なので、話題を変えましょう。

 

 

「二人とも、喧嘩もいいですが程々に。今日来たのは鮮血騎士としての仕事があるからです。詳しくは後で話しますが……このままだと二人とも不完全燃焼だと思いますので、私がここから相手をしてあげましょう」

 

 

 無限の背負い袋からフロスト&フレイム・オブ・アゼルリシアを取り出し構えます。

 大丈夫、闘技場で死人が出るのはよくあることですが、私は殺さない様に加減してあげますから! 精々半殺しで済むはずです。

 

 

「サフォロン、分かっているな?」

 

「と、当然です。本気で抗わないと……!」

 

「準備はいいですか? では……!!」

 

 

 そうして私とゴ・ギンとサフォロンは闘技場で観衆が見守る中、闘技場全体を震わせるほどの激しい戦いが繰り広げられました。

 勝者? 当然私です。二人とも強くはなっていますが、あくまで単体の強さなので今後は連携して戦うことも教えなければいけませんね。

 

 

 

 後に、この戦いを観た観衆は語った。

 

 

『真の武王は粛清騎士なのでは?』

 

 

 異論はなかったという。

 

 

 

 ◯

 

 ◯

 

 ◯

 

 

 

 エ・ランテル領内、とある農村

 

 

 その男は畑仕事に精を出していた。

 体格に恵まれた心優しい男はこうした農村を定期的に周り、人手が足りない農作業などの力仕事を率先してこなしていた。

 

 しかし、彼の本職は農家などではなく神官だ。

 

 元々、善良だった彼は神殿の考えに疑問を抱いていた。

 救う術を持っているのに対価が無ければ無闇に他人を癒してはならないことや、それぞれが信仰する神に関しての諍い。他にも多くのしがらみがあり、この男はそれに嫌気が差して神殿を辞めてワーカーとなった。

 

 しかし、ある時を境に冒険者もワーカーも仕事が激減した。原因は騎士団の勢力拡大による治安の向上により、モンスター退治などもカッツェ平野を除けば微々たるものになってしまった。

 

 それでも、そこそこ名が売れていた彼は食うに困らなかった。

 気の合う他のワーカーとチームを組み、カッツェ平野のアンデッド退治を主に行い、その間に受けたリスクは高いが実入りの良い仕事で生計を立てる日々を送っていた。

 

 そんなある日、突如としてソレは現れた。

 

 

「これから先、貴方の様な心優しき神官が必要です。どうか私の手を取ってはくれませんか?」

 

 現れたのは帝国で知らぬものはいないであろう粛清騎士。

 当時、ワーカーとして名を上げていた彼は、何らかの理由で粛清されるのではないかと心穏やかではなかった。

 だが、話を聞いているうちに、段々とその手を取りたくなって仕方なかった。

 

 

「神官が人を救うのに対価を支払わなければならない。これは仕方のないことですが、日々生きるのに精一杯な人々が高額な金銭を払えるとは思えません。そこで、貴方の様な無償で人を救いたいと願う人達に声をかけています」

 

「そもそも、支払えないのであれば領主である私が払えばいいのです。そういうことは、我々の様な力ある立場にある者がやればいい。人は簡単に補充できるものではありませんし、何より──神の愛は有償だと思われたら嫌でしょう?」

 

「貴方は強い。その手腕を私の下で発揮してみませんか? 当然待遇も保障しますし、今よりも力をつける気があるのなら私自ら鍛え上げてもいい。どうでしょう?」

 

 この申し出自体、男にとっては非常にありがたいものだった。何故なら自分の想う理想の神官になれるのだから。

 更に詳しく聞けば、神殿も既にこの件に関して了承しており、そちらの目を気にする必要も無くなった。

 

 共に過ごしてきたワーカー仲間の──ヘッケランとイミーナには悪いが、この男ロバーデイクは最終的に粛清騎士の手を取り鮮血騎士の一人として迎え入れられた。

 

 

 時は今に戻り、ロバーデイクは畑仕事を終えた後の汗を流し、自身の好物である甘味で腹を満たす。

 この土地に来てもう一つ良いことがあったと言えば、生活が豊かになり食文化が花開いたためか多くの新しい料理が生まれ、既存の料理もより美味しくなっている。

 エ・ランテルでは、時折品評会と称した料理人達による新作料理対決などが行われているらしいが、その恩恵をロバーデイクも受けている。

 ……とは言え食べ過ぎは良くない。うっかり食べ過ぎて腹回りの肉を増やそうものなら、かの辺境侯から地獄の訓練が再びやってきてもおかしくはない。

 

 そんなことを考えていると、手持ちのマジックアイテムが起動した。

 このマジックアイテムは全鮮血騎士に支給されており、登録した人物がマジックアイテムで連絡のやり取りが出来る物だ。なので、必然的に相手は同僚ということになる。

 

「なるほど。では、少し時期を見合わせてエ・ランテルへ向かうとしましょう。でもその前に……」

 

 ロバーデイクは更に甘味に手を出す。彼は仕事中は縁起を担いで、好物である甘味を一切摂らないようにしている。

 その為、その前にはなるべく多くの甘味を食い溜めすることにしている。

 

「この新作のドウナッツ、でしたか? フフッ、美味しくてついつい多く食べてしまいますね」

 

 後日、腹回りの肉が少し増えて訓練に勤しむ彼の姿があったとか。

 

 

 

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 ◯

 

 ◯

 

 

 

 アゼルリシア山脈、某所

 

 ここではドワーフの国との国交をより円滑にするため、山道の整備、及び新たな坑道を作るべく、日夜多くのドワーフやクアゴア、そして──

 

「オラァ! もっと腰を入れんか! そんなんじゃいつまで経っても進まんぞ!?」

 

「ひ、ひぃっ!? す、すいません! すいません!」

 

「おいお前さん、何サボっておるんじゃ? そんな暇があるなら、この岩を運んでくるんじゃ」

 

「ま、待ってくれ……もうへとへとなんだ、少し休ませ……」

 

「甘っちょろいこと言うんじゃないわい! お前さん達はここでの労働刑に処されたんじゃろ!? なら、罪を贖うべく休まず日夜働くんじゃ!」

 

「ひええええ!!」

 

 

 そう、ここで働く人間は主に帝国で処刑とはならなかった重罪人達──主に貴族や野盗──が連れてこられる流罪地でもあった。

 余談だが、一応ドワーフ基準で休みも与えられるし、食事も出る。しかし、種族が違う上に貴族など肉体労働をしたことがない者たちにとっては地獄そのものだった。

 

 また、労働はここだけではなく木が貴重とされるドワーフのため、アゼルリシア山脈麓に生えている木を伐採し、運搬する業務もある。

 こちらは護衛が着くとはいえ、時折モンスターに襲われる為危険度は差して変わらない。

 

 

「ふぅ、これで後は山道を整理すれば……む? これは……召集か?」

 

 そんな中、現場を預かる身であるクアゴア氏族王ぺ・リユロは渡されていたマジックアイテムを取り出し、内容を確認した後溜息を吐いた。

 

「リユロ様どうなされ……ああ、また召集ですか?」

 

「ああ、まただ」

 

 実のところ、リユロは割と頻繁に鮮血騎士として召集を受けていた。

 主に面倒事で。

 

 オラサーダルクに仕えていた頃よりはずっとマシな待遇だった。

 新たな住処を用意され、仕事を与えられ、対価も有益な物を与えられている。

 とは言え、何かと自分に多岐に渡る仕事を押し付けるのはやめて欲しかった。

 リユロは元々多忙の身だ。エ・ランテルに移住するクアゴア達の統治、人間達との付き合い方の教授。人間世界における様々な知識の収集に加え、こうしてアゼルリシア山脈での山道整備の責任者として多くの事柄に関与している。

 そこに鮮血騎士と言う更なる仕事が舞い込む。正直に言えばリユロは頭を抱えた。

 しかし、それと同時にこの鮮血騎士というのはアレーティアから信頼足りえる者にのみ与えられる立場という話をされ、少々気を良くして受け入れた。

 

 結果──ただでさえ多忙だったリユロは更なる激務に追われた。

 これは裏話ではあるが、アレーティアはリユロを原作通りジルクニフの友人にしてあげたかった為、現状気にも留めていないジルクニフの眼に留める為、多くの功績を積ませようとしているのだが、リユロにとってはいい迷惑だった。

 

 とはいえ、良くしてもらっているのは事実。同僚たる他の鮮血騎士とも上手く付き合えている。

 もう一度深く息を吸い込み、一気に吐き出す。そうして気持ちを切り替える。

 

「ヨオズよ。しばらく現場を任せるぞ。何かあればドワーフや帝国騎士に相談しろ」

 

「かしこまりました。ご武運を……」

 

 そうして、リユロは支給された太陽光を遮るマジックアイテム──サングラスをかけ、鮮血騎士専用の待機場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 帝都アーウィンタール、皇城

 

 

 先日のラナーによる精神ダメージからなんとか立ち直ったジルクニフは、再び政務に取り掛かっていた。

 そして政務がひと段落した中、唐突に背後から声をかけられる。

 

「陛下、少しよろしいでしょうか?」

 

 今日護衛として就いているレイナースだ。

 かつて、呪いに犯された顔半分を髪で隠していたが今は隠しておらず、その美貌をさらけ出している。

 あの時、褒美に渡したポーションは残念ながら効果はあまりなく、最終的にアレーティアによって解呪されたと報告があった。

 

 そして、これから何を言われるのか少々身構えながら──恐らく四騎士を辞めたいと言われるだろうが──聞く姿勢を整える。

 

「どうした?」

 

「はい。実はしばらく休暇をいただきたいのです」

 

 想定していたのとは違うことを言われたため、少しばかりホッとする。

 ()()()()()()()()()()()()()()()レイナースを手放すには惜しく、引き止めるための弁舌を考えていたがどうやら杞憂に終わった様だ。

 

「休暇? 急だな。他の四騎士には了承を得ているのなら構わないが……」

 

「勿論、ナザミ、バジウッド、ニンブルの三人は説得しました。一月程ですが、最終的に了承してくれましたわ」

 

「そうか……は? 一月!?

 

 突然の一月の休暇にジルクニフは戸惑う。

 休むこと自体は構わないのだが、流石に長すぎやしないかと思った。

 確かに、レイナースの穴を埋めることは今の帝国なら容易だ。騎士団の層も厚くなり、四騎士候補の最精鋭の騎士達もいる。これを機に四騎士としての職務を体験させることだって可能だ。

 だが、あまりにも突然過ぎるのだ。不審に思っても仕方がない。

 

「確認するが、どう言う理由での長期休暇だ?」

 

「いえ、粛清騎士様から鮮血騎士として召集が」

 

 

 ジルクニフは思わず天を仰いだ。

 

 ──レイナース、お前もか。

 

 脳裏にそんな一言が無意識に浮かぶ。

 

 鮮血騎士のメンバーの一部は教えられたが、まさか四騎士にまで鮮血騎士がいると誰が思ったか。

 と言うより、勝手に任命しないで欲しいのが本音だ。

 

「そ、そうか。しかし、お前も鮮血騎士だったとは……」

 

「はい。とは言え、基本は四騎士としての仕事をメインに、有事の際に手伝って欲しいとのことで」

 

「……最初から四騎士を動員すればいいんじゃないか?」

 

「ええ、元々呪いが解けたら早々に四騎士を辞めて粛清騎士様に仕えようとしていたのですが、四騎士辞めるぐらいなら兼任して欲しいと言われたので……」

 

「……そうか」

 

 ジルクニフは内心、よく引き止めたとアレーティアを褒めた。

 

「正直、ルミリア様が羨ましいです。私も専属の部下になれれば……」

 

「俺の部下では不服か?」

 

「不服です」

 

「なんでだ!?」

 

「陛下に恩義はありますけど、私が忠誠を誓っているのは粛清騎士様なので」

 

 ジルクニフは思った。

 契約は果たされたとは言え、ぶっちゃけ過ぎだろ、と。

 

「私の忌まわしい呪いを解いてくれた上に、御礼をしようとしても気にするなと。()()()()()()()()()()()()()()()()だと、私の夢を叶えなさいと告げてくださった粛清騎士様に忠誠を誓うのは当然のことでは? 陛下にも感謝していますが……粛清騎士様は別格です」

 

 ああ、とジルクニフは頭に手をやる。

 どうやら呪いが解けたと同時にアレーティアに傾倒してしまったらしい。それもかなり重めの。

 

「分かった。お前が休んでいる間に次期四騎士をこちらで選定する。その後、エ・ランテルへ追加の増員としてお前を送り出そう。それでいいか?」

 

 すると、恐るべき速さでレイナースはジルクニフの両手を取り──

 

「陛下……初めて陛下に恩義以外のものを感じたかもしれません

 

「失礼にも程があるだろ」

 

 ジルクニフは、レイナースをアレーティアに押しつけることにした。

 今まで散々押しつけてこられたのだ。これぐらい良いだろうと無理矢理納得して、レイナースの休暇を承認した。

 

 

 






ゴ・ギン
鮮血騎士最強格その一
難度的に言えば110より上。
アダマンタイト級冒険者を凌ぐぐらいに強い。
〈剛撃無双〉はサフォロンのドラゴンブレスを相殺できる程度には連続で攻撃ができる。

サフォロン
鮮血騎士最強格その二
難度的に言えば110ぐらい。
レベル的なことを言えば種族レベル的には幼年(ドラゴリング)若年(ヤング)青年(アダルト)で合計23レベル。
残りはグラディエーターなどの職業レベルで構成されている。
武技も使えるのでその内オラサ―ダルクは超えられる。

ぺ・リユロ
苦労人。アレーティアのお節介でめちゃくちゃ多忙。
アレーティアは基本優秀な相手に仕事を丸投げする癖があるので、よく仕事を任される。
とは言え、そのお陰でオラサ―ダルクに仕えていた頃よりも良い生活は送れている。
この王国粛清編の後に王国の山岳地帯を一つ与えられる予定。

ロバーデイク
スカウトされた元ワーカー。
今の実力はオリハルコン級。
アレーティアの記憶に運良く残っていたため採用された。
ちなみにエ・ランテルの神殿勢力はアレーティアが毎月かなりの額を納める代わりに、領民の医療の無償化を実現させている。

レイナース
呪いが解けておりカースドナイトの職業がブレッシングナイトに変わっている。
祝福を得た神官騎士と言うカースドナイトとはまた違う職業。
アレーティアに返せないほどの恩を感じ、自分が納得がいくまで仕えるつもりでいる。
割と狂信的になるのでアレーティアも軽く引いた。


アルシェ
鮮血騎士に勧誘されたが、夢のため、妹のために断った。


残りの鮮血騎士
アレーティア、ブレイン、ティラ、ルミリア、クライム、アセロラ、○○○、○○○○○、元奴隷エルフ数名



このメンバーと戦う予定の八本指と六腕です。
彼らには頑張って欲しいですね!




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