転生したらオバロ世界のエルフだった件について 作:ざいざる嬢
最近めっきりゲームをしなくなった……。
原神も魔神任務進めてないし、デイリーと樹脂を消化して終わる毎日。
マスターデュエルも同じ感じだし、ゼノブレイド2も買ったけどやってないし……。
昔はずっとやっていられたんだけどなぁ。
そんな訳で今回はブレイン回になります。
ガゼフとクライムの模擬戦から数日が経ち、召集をかけていた鮮血騎士が続々と集まって来ました。
しょっちゅう呼び出しているリユロに私の片腕でもあるルミリア、理想の神官としての務めを果たしているロバーデイク、元イジャニーヤ頭領のティラ、そして──
「ガゼフ・ストロノーフ……」
「ブレイン・アングラウスか……?」
遂に出会ってしまいました。ガゼフとブレイン。
因縁の再会ですね。まだ戦わせるつもりはありませんけど。
ラナーとクライム、アセロラはエ・ランテルに一時的に戻っています。
ラナーは行方が分かっていない蒼の薔薇の居場所に心当たりがあるらしく、そこへアセロラに手紙を届けさせるそうです。
ちなみに私も蒼の薔薇の居場所は知りません。ひょっとすると評議国なんかにいるんですかね?朱の雫は評議国内にいるらしいですけど。
「よそ見してる暇があるとでも?」
「うおおおおおおっ!?」
ほら、目の前の相手に集中しないと死にます……と言うか殺しますよ?死んでも蘇生出来ますし。
たとえ蘇生を拒否しようと、
「相殺してみなさい。出来なければ手脚が失われますよ〈六光連斬〉」
「ぐっ……〈六光連斬〉!!」
ギリギリ相殺出来てますね。及第点を出してもいいでしょう。
でもガゼフ・ストロノーフ。貴方の力はそんなものじゃないでしょう?
「では次です。〈六重連斬〉」
この〈六重連斬〉は言わば〈六光連斬〉の別種とも言える、私が作った武技です。
〈六光連斬〉は一度に六度の斬撃を与えますが、この武技は一度の攻撃で六回の斬撃を与えます。
某グルメ漫画の釘を打ち付けるパンチの様な感じです。防いだと思いきや二度、三度と斬撃が発生し中途半端な防御では六度目の斬撃で両断されることでしょう。
「ごはっ……」
流石にガゼフも受けきれずに、腹から夥しいほどの血を流して今にも倒れそうになっていますが、私は容赦しません。
何故ならこの男は、ガゼフ・ストロノーフと言う男は新たなる主人であるザナックを死んでも護り抜くと誓ったのですから、死にかけた程度で訓練を取りやめるなどする筈がありません。
「相変わらず容赦がありませんね……。アレは癒さなくてもよろしいのですか?」
「不要。むしろ、死んでも主人を守り通すと豪語したのだから、死ぬほどの傷を受けても戦い抜かなければ、あの方は認めない」
「四騎士の訓練を思い出すな。あの頃の粛清騎士様は今より容赦無く、四騎士全員を死の寸前まで叩きのめされたのは懐かしい思い出だ」
「いや、おかしいですってそれ。やりすぎでしょう」
「粛清騎士様から言わせれば、皇帝陛下を護る最強の盾であり、最強の矛である我々が死を恐れてどうすると──」
「いや、ルミリア様。今は流石にそこまでの訓練はしていませんよ」
「おおレイナース!久しぶりだな!お前まで集まるとは思わなかったぞ!」
「それはもう、大恩ある粛清騎士様のためなら四騎士としての立場だって捨てますわ」
「皇帝陛下に仕える四騎士として、マズイ発言なのでは?」
「陛下なんて粛清騎士様と比べたら石ころも同然ですわ。そもそも、あの時下賜されたポーションも元を正せば──」
鮮血騎士達が各々話し合ってますね。この訓練を脇目も振らずに見つめ続けているのはゴ・ギンとブレインぐらいですね。
もう大体主要メンバーも集まりましたし、そろそろ祭りを始めてもいいかもしれません。
その前に目の前のことを片付けましょう。
テンション上げていきましょう。
◯
◯
◯
訓練が終わり、その場で血に塗れ倒れた男──ガゼフ・ストロノーフの姿を見たブレイン・アングラウスは少しばかり昔を思い出していた。
あの頃、俺は知らなかった。俺をあの御前試合で破ったガゼフ・ストロノーフをも超える戦士がいることを。
──粛清騎士。帝国最強の存在であり、その存在はかつて秘匿されていた。それ故に俺がその存在を知ったのは王国が戦争に負け、エ・ランテル近郊を割譲した頃だった。
そして、同時にガゼフ・ストロノーフが一騎打ちで負けたと言うことも、その時に知った。
それを知った俺はエ・ランテル領内に留まった。
傭兵団へ加入し、生活費を稼ぎながら機会を待った。
見てみたかった、憧れを、宿敵を倒したその騎士を。
そして、叶うならば俺が──。
その時は思ったより早く訪れた。
領主となった粛清騎士が部下の騎士達を連れ、傭兵団を潰しに来たのだ。
それも当然、この傭兵団『死を招く剣団』は半ば野盗と化しており、それ相応の被害を出していた。新たな統治者となった粛清騎士が、それを見逃す訳がなかった。
騎士達の士気は高く──傭兵団は呆気なく蹴散らされた──特に、女騎士達の活躍によって。団長も隠し通路から逃亡を図ったが、そこもすでにバレており逃げ場など何処にもなかった。
俺も応戦したが、何処から情報が漏れたのか……俺のことを知っていたらしい騎士達は、防御に専念していて碌に被害を与えられなかった。
そして──
「見つけましたよ、ブレイン・アングラウス」
俺の前に粛清騎士が現れた。
待ち望んでいたその時が来た。
「俺を知っていたみたいだな。お前が粛清騎士で合ってるな?」
「ええ、その通りです。この度エ・ランテルを治めることになったので、こう言った不穏因子を排除しているところです。
……で、ブレイン・アングラウス。貴方はどうしますか?私に抗うか。それとも投降するか」
「……俺はお前を探していた。あのガゼフ・ストロノーフを倒したって言う話を聞いてからずっとだ。
ようやく挑める機会が来たんだ。お前を倒して、騎士達を退けて堂々と逃げさせてもらうとするよ」
「それはそれは……いいでしょう。全力でかかってきなさい」
俺は全力で戦った。ガゼフを倒すべく生み出した奥義〈秘剣虎落笛〉を繰り出した。
だが……
思わず目を疑った。ありえない。正面から神刀の鋒を親指と人差し指で摘まれて止められた。理解出来ない。こんなことが、人間に可能なのか?
「この程度ではないでしょう?貴方にはまだ先があるはずですよ。持てる全力を出しなさい」
剣を抜き戦闘態勢に入った粛清騎士を見た俺は、その姿を見て悟ってしまった。
──勝てるわけがない。文字通り格が違う。
そこからは死に物狂いで抗った。
あらゆる武技を使った。〈斬撃〉、〈空斬〉、〈縮地〉、〈神速〉、〈領域〉、〈能力向上〉、そして──〈四光連斬〉
だが、どれも届かなかった。頂きは遥か遠くにあった。俺がいた場所は高みなどではなかった。
「なるほど、貴方の実力は十分に分かりしました。
では、これが最後です。私の武技を耐えて見せなさい」
初めて防御以外で剣を振おうとした粛清騎士を目にして、死を感じた。ストロノーフとの戦いでも感じなかった、濃厚な死の気配を。
「──〈八光連斬〉」
それは、あの〈六光連斬〉を上回る武技だった。
それを俺は──
「お見事です」
気がつけば、俺の身体はボロボロになっていた。神刀は中程で砕けたように折れている。
だが、なんとかあの武技を無意識ながら凌ぐことは出来たらしい。
「やはり凄まじい才ですね。独学でここまで至っているのは感嘆するに値しますよ」
粛清騎士は傷だらけの俺に、何処からか取り出したポーションをぶっかけてきた。傷は癒えたが、どう言うつもりなのかがサッパリだった。
「……何故だ? 何故殺さなかった?」
「ブレイン・アングラウス。私の下に付く気はありませんか?」
「なんだと?」
「貴方は独学で、その才能だけでここまで上り詰めた。しかし、ここから上を目指すのならば指導者が必要です。
貴方が目指したガゼフ・ストロノーフも、元アダマンタイト級冒険者であるヴェスチャー・クロフ・ディ・ローファンに御前試合の後に弟子入りしています。
そう、貴方もガゼフを追うのなら誰かの教導を受けるべきではないですか?」
魅力的な提案だった。
詳しく聞けばなんらかの仕事は任される事になるようだが、それでも俺もこうも子供扱いする強者に教えを受けられるのは悪くない。
無論、悩みはした。俺は頂きに立ちたかったが、その頂きはあまりにも高過ぎた。だが──
「俺はアンタを超えられるか?」
「さあ、どうでしょう?超えさせる気は毛頭ありませんが……貴方の奥義を指で抑えられないぐらいにはなれるのでは?」
目元こそ見えなかったが、唯一見える口元は笑みを見せた。
そして俺は──
「分かった。俺はアンタについていく。だから──」
「よろしい。ではブレインと、そう呼ばせてもらいます。私のことは粛清騎士、もしくは辺境侯でもアルスでも構いません。好きに呼んでください」
「最後まで言わせてくれよ! ……まあ、なんだ。よろしく頼むぜ、アルス辺境侯」
それから、しばらくして直に訓練を受け──
地獄を見た。
一切の容赦が無かった。今目の前で倒れ伏せているガゼフ並に何度も血の池を作り、そこに沈み、生死を彷徨ったか分からない。
だが、確実に掴めたものはあった。
独りで鍛えるよりも手応えを感じた。
そして、この前下された仕事。
『ズーラーノーンの拠点を一つ潰して来い』なんて依頼を受け、騎士団に混じって拠点を襲撃した。
正直、慢心していた。強くなった自信があった。
だが、上には上が──同格以上の存在とは思わぬところにいるものだと思い知らされた。
「ブレイン・アングラウス。確かに王国で私と戦える強さを持つ戦士だけどさぁ。
英雄の領域に踏み込んだ──このクレマンティーヌ様が負けるはずがねーんだよぉ!!」
その女──クレマンティーヌは強かった。もしかすると、ガゼフ以上に。
繰り出される一撃一撃が強く、鋭く、そして疾い。
何よりも場数慣れしているのか武技の扱いが俺以上に上手かった。
だが、俺も黙ってやられてはいなかった。
訓練の結果、かつてより広い空間を知覚出来るようになった〈領域〉──もとい〈神域〉を駆使し、致命傷を避け、与えられた神刀に代わる──神刀を上回る剣で応戦する。
〈神域〉の中でなら、この女の動きは把握出来るようになり、徐々にではあるが押し始めた。
だが、決定打を放つには時間が足りない。クレマンティーヌもそれを承知の上で、手数で押し切ろうとしていた。
そんな時だった。救いの手がやって来たのは。
「ブレイン・アングラウス。援護しに来た」
「なっ!? ま、まさか……!?」
鮮血騎士の同僚であるティラと名乗る暗殺者が参戦してから状況は大いに変わった。
何故か分からんが、ティラを見たクレマンティーヌは、
しかし、逃すわけにはいかなかった。逃したらアルス辺境侯からどんな仕打ちがあるか分からないからだ。
〈神域〉の中にいるクレマンティーヌの動きは捉えられている。〈神域〉の外からティラの飛び道具が放たれ、クレマンティーヌは俺とティラを同時に相手取らなければならず──ティラと何かから逃げようと必死になっていて──やがて致命的な隙を晒した。
俺はその隙を逃さず、持てる最強の奥義〈秘剣指切り〉でクレマンティーヌの生命を絶った。
俺一人では勝てない戦いだった。正直に言えば一人で勝ちたかったが、俺もまだまだだと思い知らされた戦いでもあった。
◯
◯
◯
そして時は戻る。
目の前の男、ガゼフ・ストロノーフはかつての自分の様だった。
今なら勝てると言う確信もある。
だが、それでは意味がない。強くなったストロノーフを倒すことで俺の本懐は果たされる。
気を失ったストロノーフが、ロバーデイクに運ばれ退場していく。
そしてアルス辺境侯──いや、アレーティア様がこちらを見ている。
「さて、祭りの時間です。鮮血騎士もこれだけのメンバーがこの場に集まるのは久々ですからね。
では、どれだけ強くなったか私直々に見てあげましょう!」
(あ、ヤバい。これ死ぬやつだ)
俺たち鮮血騎士の心はこの時一つになったと思う。
「最初は武技だけで相手をしてあげます。魔法も解禁するので死に物狂いで抗ってくださいね?」
「いやいや、待ってくれ!武技に魔法は流石に無茶……!」
「諦めろブレイン。私たちには死に物狂いで戦うしか道は残されていない」
「そうだぞブレインよ。せめて今度こそ一太刀浴びせてやるぐらいのことは言うべきだ」
「な、なんでこんなことになるんだよ!こんなことするぐらいなら、現場に戻りたいんだが!?」
「リユロ殿、今の私たちは鮮血騎士だ。現場のことなど忘れて、訓練に勤しむべきだぞ」
「〜〜!!アンタとレイナースぐらいだろ!?こんなことされても喜ぶ変態は!」
「変態とはなんだ!? この生きるか死ぬかの訓練を終えた後に実感する、高揚感が堪らないのではないか!」
「ルミリア様はともかく、私はあの方の期待に応えるためならなんだってしますわ」
「準備万端みたいですね? では行きますよ~?」
数時間後、全員が地に伏せることになったのは言うまでもなかった。
ブレイン
英雄の領域に入門している。ズーラーノーン所属クレマンティーヌと互角に戦えるぐらいには強い。
もう少し戦っていたらギリギリだけど勝てていた。
武技は全体的に強化されていて〈秘剣指切り〉はアレーティアの指に傷を付けられた奥義。〈秘剣爪切り〉より上?
魔樹の根を抜くと〈神域〉外にも武技が届くようになる。
アレーティアの本名と素顔は指を切ったその日に知らされた。
クレマンティーヌ
敗因はティラの装備を見て、この場に漆黒聖典が来ていると勘違いして焦ったため。
ブレインの〈領域〉〈神域〉とクレマンティーヌは相性が悪いんじゃないかと思ってる。
死体はバハルス帝国魔法省の地下に保管されている。
ガゼフ
強化中。
英雄の領域には到達したものの、ズーラーノーン所属クレマンティーヌにはまだ勝てない。
アレーティア
テンション上がって鮮血騎士相手にやらかす。
とは言え、死ななければかなりの経験になるので程々に手は抜いている。
作者
筋トレしたら腰というか背中を痛めた雑魚。
息を止めたりして筋トレしていたので、多分今まで無意味なことしてた。
無駄に力みやすい。
次回、蒼の薔薇サイドの話を書いて、いよいよ王都粛清に入る……予定です。
予定通りに行くといいなぁ(遠い目)