転生したらオバロ世界のエルフだった件について 作:ざいざる嬢
執筆スピードが落ちてる……。
何か息抜きをするべきなのかなと思ったり。
今回短めです。
時は少し遡る。
蒼の薔薇は冒険者組合からの依頼を受けた後に、その依頼が八本指による罠で待ち伏せによる奇襲を受けてしまった。
総勢百程度のならず者──暗殺部門や警備部門の者達──が襲いかかり、中には六腕と呼ばれていた『幻魔』サキュロントの姿までもあり、八本指が本気で蒼の薔薇を潰しに来たことが見受けられた。
多くの罠もあり、幻魔と呼ばれた男の戦法に苦しめられもした……だが、イビルアイの機転で戦況を覆し、勝利することが出来た。
イビルアイがいなければ、負けはしなかっただろうが更なる苦戦は免れなかっただろう。それに加え、ラキュースがエ・ランテルで鍛え上げられて実力を伸ばしていたのも大きい。
そして現在、安全と言えるであろうアインドラ領へと身を隠し、情報を集めた結果──
王都で起こったクーデターにより、ランポッサ三世の崩御。第二王子であるザナック・ヴァルレオン・イガナ・ライル・ヴァイセルフ、及びガゼフ・ストロノーフもその時死んだということ。
そして、その首謀者は第一王子であるバルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフ。事実上の王位の簒奪だった。
それに加えて、この一件にはバルブロが持ち得ない程の戦力が投入されたという。
これはつまり、何者かの勢力が介入していることを示していた。即ち──王国の裏を支配していた八本指の勢力がバルブロを利用したのだ。
「王国はもう終わりだ。ランポッサ三世が死に、ガゼフ・ストロノーフすらいなくなった。逆らえる者はもういないだろう。精々六大貴族ぐらいか」
「そんな……」
ラキュースは善人だった。この荒んでいく一方の王国を、その元凶たる八本指をどうにか良くしようとラナーと協力し行動を起こしてきた。
それが全て水の泡と化してしまったのだ。最早王国は救えない、と。
「これからどうする?王都には帰れまい。八本指も私たちを警戒しているからこそ、王都から離れているうちにクーデターを実行し、襲撃までしてきた。王都に戻ればまた何かしら手を打たれるだろう」
蒼の薔薇に暗雲が立ち込める。
今後の方針として考えられたのはホームを王都から別の国に移す事。
候補としてはアーグランド評議国、バハルス帝国の二つになる。
しかし、ラキュースは冒険者ではあるが王国の貴族令嬢としての姿も持つ。国を捨てるという行為が出来るはずもなかった。
となると、取れる手段は一つ。
「皆はホームを移して冒険者を続けて。私は……一人でも戦い続けるわ」
ラキュースは戦うことを選んだ。領民を、友人ラナーの国を救うために。
そして、ラキュースの発言を読んでいた他のメンバーはと言うと……
「ったく、言うと思ったぜ。おい、ラキュース。お前俺たちがそんなに信用出来ないか?目の前で虐げられている人間を見捨てるようなヤツだと思ってるのか?」
「同感、悪魔ボスらしくない」
「私たちは五人で蒼の薔薇。一つ花弁が欠けた薔薇はとても歪」
ガガーラン、ティアとティナが迷うことなくその手を取った。
私たちは一蓮托生だと、言葉と行動で示した。
そして最後の一人であるイビルアイは──
「……全く、お前達というやつは……。私はお前達に負けた身だ。仕方がないから付き合ってやる」
「イビルアイ……」
「ツンデレ?」
「うん、そう」
「お前達黙れ」
緊迫していた空気が少し緩む。
一人で戦うことを決意していたラキュースもチームメンバーが協力してくれるとあってか、僅かではあるが安堵の表情が見て取れる。
「で、どう動くつもりだ?流石に私たちだけで戦うにも戦力が足りんぞ」
「まず、八本指が王都を押さえたとは言え、全ての貴族がそれに従っているわけではないわ。
王派閥だった貴族達がこの件で黙っている訳がない。彼らの協力を取り付けて連合軍を作り、反抗作戦を……」
「それは八本指も想定内だろう。恐らくだが、既に元王派閥の貴族達には圧力が掛けられている可能性が高い」
「そうなると厳しいな……朱の雫、お前の叔父さんの力は借りられないのか?」
「連絡を取ろうにも、下手に今接触しようとすれば勘付かれるんじゃないかしら?それに、叔父の居場所は知らないわ。評議国の何処かにいるとは思うのだけど……」
「組合を通してっていうのも難しいな」
この襲撃の一件で、冒険者組合にも八本指の手の者が混ざっていることは明白だ。迂闊に顔を出すわけにもいかない。
「外部からの協力を得るべき」
「同感。もう王国内だけでどうにか出来る問題じゃない」
「でも、何処の国に?評議国と法国の手を借りることは難しいし、何より提示するだけのメリットが……」
「帝国はどうだ? お姫様が嫁いだ国だし、王位継承権は……王女だから無いか」
「それが出来れば一番手っ取り早かったのだけどね……」
リ・エスティーゼ王国では女性の立場が低い傾向にある。それ故か王国では女王が統治したことは一度もない。
そのため、王位継承権を持たないラナーを担ぎ上げるという行為は認められないだろう、という見解だ。
「それに帝国は王国には数年は侵攻しないと戦後交渉を交わしている。これを侵略行為と見られれば、周辺国家からの風当たりは強くなる」
「そうなると、帝国が動くのは難しいか……」
ここで全員の脳裏に一人の人物が浮かび上がる。
個で軍を凌駕する程の圧倒的な実力を持つ絶対強者を。
「……帝国がダメなら、粛清騎士……アルス辺境侯個人の協力は得られないかしら?
戦力は難しくても彼が保有する、もしくは作り出すマジックアイテムをこちらの勢力が持てば……」
「それならギリギリ可能かもしれんな。あくまで買っているという体でなら誤魔化しも利くかもしれん。
だが、今度は王国内でどれだけ協力者を募れるかだ。
冒険者は余程のことがない限り、政治には関わらないし、王派閥の貴族にも期待は出来ないからな」
「改めて考えると困難ってレベルじゃねえな。半ば詰んでるだろ……」
再び重い空気が生まれる。今の王国はたとえ英雄とも呼ばれるアダマンタイト級冒険者でも、どうにも出来ないという現実に阻まれているのを再認識してしまった。
それでも、この状況を見過ごすわけにはいかない。
出来ることを一つ一つ探していこうと、悪い考えを振り払うように頭を振り前を向くと──
「やはりここにおられましたか」
見覚えのない、真っ赤な短髪の似合うエルフが現れた。
その身につけている装備はどれも一級品、もしくはそれ以上。漂わせる風格も強者のそれだ。下手をすればラキュースと同じぐらいの実力を持っていると感じさせた。
そしてなりよりイビルアイも、暗殺者であるティアとティナもそこにいることに気づけなかったが、即座に警戒態勢を取る。
相手は八本指の刺客である可能性もあるため、少しでも怪しい動きをすれば全員で取り押さえるか逃げられるように──と、考えていたが、目の前のエルフは両手を上げ戦意がないことを示した。
どうやら刺客ではないらしい。
「突然の来訪失礼しました。私、ラナー様よりラキュース様へ手紙を預かって参りました。アルス・ティアーズ辺境侯直轄の鮮血騎士が一人、アセロラと申します」
「なんですって!? ラナーから!?」
懐から出された手紙を受け取ったラキュースはすぐさま読み始める。
そこには蒼の薔薇が手に入れられなかった様々な情報が書かれていた。
ザナック第二王子、ガゼフ・ストロノーフの存命。エ・ランテルで保護していること。
襲撃に遭った蒼の薔薇の居場所を予測して、辺境侯の配下を此処に向かわせたこと。
そして──ザナック第二王子からの要望で、アルス辺境侯とその配下である鮮血騎士と呼ばれる精鋭、それに加え帝国騎士団を派兵すると書かれていた。
「正直、帝国が手を貸してくれるのはありがたいのだけど、さすがに話が美味すぎると思わない?」
「ええ、そうです。今回の一件が解決し次第になりますが──リ・エスティーゼ王国はバハルス帝国に併呑されることになっています」
ラキュースは言葉が出なかった。確かに王国を救うためには帝国がメリットを感じるようなものを差し出さねばならない。
だが、まさか国全てを、他の貴族の相談も無しに差し出すとは思ってもいなかった。
「リ・エスティーゼ王国は無くなりますが、国民は救われます。
ザナック殿下は我が主人に土下座をして、王族の最後の務めとして罪なき国民を救ってほしいと懇願しました。
それを見て、懇願を聞き届けた主人は協力を約束したのです」
「土下座……」
王族たるもの頭を下げることは基本的に避けるべき行為だ。何故なら王族は国を背負った存在であり、王族が頭を下げるということは、国が頭を下げるということに等しい。
更に言えば、土下座という地に伏して頭を下げるような行為をしてまで、あのバカ王子──ザナックがするとは思えなかった。
「それに、併呑したとしてもその『八本指』やバルブロ第一王子に関わりのない貴族は、そのままその土地を治めることを認めるそうです。
細かいことは、事が済み次第擦り合わせが行われることになりますので」
「それならまだ貴族達の反発はマシになると思うけど……」
「どちらにせよ、こんな状況で快と悦に入っているような愚か者は帝国にも王国にも不要ですので。
民を想う貴族だけ残っていれば良いのです」
そう言うとアセロラは懐からマジックアイテムを取り出した。
見た目はただの板状の黒い板だが、何らかの魔化がされているのか、見たことのない文字が刻まれている。
「それは主人から預かった連絡用のマジックアイテムです。一日に四度までですが、使えばラナー様が持つ同じマジックアイテムが起動し〈
ああ、通常の〈伝言〉とは異なりこのマジックアイテムを通したやり取りなのでその点はご安心を」
〈伝言〉という魔法は非常に便利ではあるが、過去にこの魔法を頼りすぎてしまい、三つの虚偽情報で内乱が起き、様々な不幸が重なり滅んだ国があった。
そのため、〈伝言〉を過信しすぎるものは愚か者とまで言われる風潮があり、仮に使用したとしても裏を取る必要があるとされている。
それを踏まえた上で、このマジックアイテムはこのアイテムを持つ相手とのみ〈伝言〉のやり取りができると考えればある程度の安心感がある。
何より──
「やっぱり、これを作ったのもアルス辺境侯なのかしら?」
「ええ、その通りです。勿論、登録者を増やすことも可能ですが、今回はラナー様だけで十分だと判断しましたので。
では、私はこの辺りで。詳しいことは後程ラナー様から連絡があると思いますので」
そう言い残し、アセロラは去っていった。
残されたのはこの板状のマジックアイテムとラナーからの手紙だけ。
しかし、これだけで先程のどうしようもない空気からは脱することができた。
「……私たちも備えましょう。一先ずは、ラナーと連絡を取るところから」
マジックアイテムを起動するとプルルルルという音が鳴る。そして──
『只今、相手が〈伝言〉を出来る状況ではありません。しばらく時間を置いたうえで、もう一度使用してください』
聞き覚えのない女性の声が聞こえ、マジックアイテムは沈黙した。
「「「「「……は?」」」」」
アレーティアの作ったこのスマートフォンもどきは、この世界にはまだ早すぎたらしかった。
サキュロント
死んだよ!六腕から失脚して蒼の薔薇を倒せば『六腕』に戻れると奇襲したものの、相手が悪かった。
それなりに善戦した。
蒼の薔薇の皆さん
お留守番サービスは時代が早すぎた。誰一人として理解していないし、半ば騙しやがったと思っていたものの、数時間後にラナーから連絡があったので一安心。
ちなみに蒼の薔薇への襲撃の元の原因はラナー。
アセロラ
元々はエイヴァーシャー大森林のとある村で戦士をしていた。
法国の襲撃で敗れ捕らえられ、帝国の貴族に買い上げられ苦しむ日々を送っていたが、アレーティアによって解放され、忠誠を誓い、目覚ましい成長を遂げた。
蒼の薔薇に気づかれなかったのはアレーティア謹製のマジックアイテムのお陰。
以前語った強さで言うとナザミ、ラキュース、アセロラ、ルミリアの順に強い。
スマートフォンもどき
アレーティア開発の〈伝言〉用アイテム。不特定多数に連絡できる〈伝言〉より、登録した相手同士しか連絡できなければ安全じゃない?と言う安易な考えから作られた。
ジルクニフ非認可である。
六腕の皆さん
サキュロントがやられたか。だが奴は所詮六腕落ち。我々の中でも最弱よ!
ラナー
連絡が来たときはザナック、ジルクニフ、後から合流出来たレエブン侯の四人で会議中だった。