転生したらオバロ世界のエルフだった件について   作:ざいざる嬢

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今回、結構なキャラ崩壊があるのでご注意を。

……まあ、今更な気もするんですけどね?




王国の長い夜 その2 〜side レイナース&ロバーデイク〜

 

 

 ロ・レンテ城での戦いが始まった同時刻。

 王都のとある場所で一人の騎士が怒りに燃え上がっていた。

 

 彼女の名前はレイナース・ロックブルズ。元帝国四騎士が一人。現鮮血騎士の一員である。

 

 少し、昔話をしよう。

 彼女は元々は治める領地で、領民を守るために戦う貴族令嬢だった。

 女でありながら男顔負けの腕前で、彼女自身もそれに誇りを持っていた。

 

 だが、ある日遭遇したモンスターを討伐した際に、長きに渡って彼女を苦しめることになる呪いを受けてしまった。そこから、彼女の人生が音を立てて崩壊した。

 

 見た目に変化こそないものの、顔の右半分からは常に膿が湧くという呪いによって、彼女の美貌が失われた。

 更にそのせいで家からは「風聞が悪い」「これじゃあ政略結婚にも使えない」と言われ追放されてしまい、最後に縋った婚約者からも「お前のような呪われた女など必要(いら)ない」と見捨てられた。

 

 絶望の中何度も自殺しようと短剣を握り、喉へ──忌々しい呪いを受けた顔へと突き立てようとしたが出来なかった。

 やがて、絶望の中で彼女の中で黒い炎がメラメラと燃え上がった。

 自分を捨てた家族と婚約者に報いを与えてやる。その想いで彼女は立ち上がった。

 同時に、もしも呪いが解けたらやりたい事を空想したり、書き綴ったりもした。神殿の高位の神官でも解けなかった呪い故に、もう解けないものだと受け入れ始めたが、空想するだけでも多少の慰めになった。

 

 そんな中、僅かな伝手を辿り帝国騎士へと入団した際に、とある噂を聞いた。

 新たに粛清騎士という、皇帝陛下が自らの剣とまで言った騎士がいると。

 その騎士はあの帝国最高の魔法詠唱者フールーダ・パラダインをも上回る魔法を使えると。

 

 この噂を聞いたレイナースに希望が生まれた。

 もしも、皇帝に騎士としての腕を認められ、粛清騎士に近づけたのなら──この呪いが解けるかもしれない。

 

 そこから彼女は鍛錬に励んだ。

 元々それなりに腕はあったが、呪いを受けてから益々自身の攻撃力が上がっているのを理解し、それを活かせるように鍛え上げた。

 やがて、皇帝ではないが帝国四騎士の一人であるルミリア・リイル・アーチゾルテに認められ、次期四騎士候補にまで上り詰め、そして──遂にはルミリアを倒すにまで至った。

 

 そうして四騎士の座を勝ち取り、皇帝へと謁見する事に成功し──手始めに家と婚約者への復讐を果たした。

 そして、もう一つの目的である呪いの解呪を望んだ。

 

 

「なるほど、分かった。アイツに話はしておこう。

 だが、これから王国との戦争が近い。しばらくはそちらに専念してもらうぞ」

 

 

 王国との戦争。

 前回は四騎士であるトーマス・アルトランド率いる騎士たちの奮闘により勝利したと聞いた。

 それにより今回は王国も数を揃えて来るだろうと警戒していると。

 

 少なくとも戦争が終わるまでは呪いの件についてはお預けになってしまったが仕方ない。

 同時にチャンスでもある。ここで武勲を上げれば皇帝と粛清騎士の覚えもよくなるはず。そうすればきっと──。

 

 

 そして、王国との戦争を直前に控えたあの日。

 ルミリアに連れられて来たのは、あの粛清騎士のいる場所だった。

 

「アレーティア様!こんな所にいらしたのですね!」

 

「ん、ルミリアですか。一緒にいるのは……レイナースですか」

 

「……私のことをご存知なのですか?」

 

「ええ、それは勿論。ルミリアを負かして四騎士の座を勝ち得た唯一の騎士の名を知らないわけがないですよ」

 

 粛清騎士──アレーティアと名乗った騎士は、思ったより恐ろしい人物ではなかった。むしろ、付き合いやすい人物だと感じた。

 そして自分の名前を知ってくれている事に内心ほくそ笑んだ。後は武勲を挙げれば──!

 

 しばらくルミリアを交えて談笑した後、これから四騎士になる相手だからとアレーティアは普段隠しているその顔をレイナースに晒した。

 聞けば帝国四騎士とフールーダ、皇帝とごく一部の人間にのみ素顔を見せているという。

 その素顔は、レイナースよりも美しく、可憐だった。正直に言えば、嫉妬してしまうほどに。

 

 何故素顔を隠してしまうのか。私は呪いのせいで隠さざるを得ないのに何故?

 

 その理由が気になった私は思わず聞いてしまった。

 すると、粛清騎士様は己の出自を語った。エルフの王族であること。法国に命を狙われていること。皇帝との関係や顔を隠すに至った理由を。

 それを聞いたレイナースは己を恥じた。自分よりもずっと重い理由で素性を隠さざるを得ないというのに、それに比べて私は──。

 

 自責の念に駆られるレイナースを見たアレーティア様は微笑み、震える手を取った。

 

「気にしないでください。別に何とも思っていないので。

 それよりレイナース、貴方の方が大変だったでしょう?よく頑張りましたね」

 

 優しかった。ただひたすらにそこには無償の愛があった。

 あの日からずっと身を削るように生きてきて、呪いが解けていないのに何処か報われた気がした。

 それと同時に、この人の役に立ちたいと、打算なく思った。

 

 

 戦争が終わり、アレーティアに追従したレイナースは多くの貴族の首を討ち取り、十分以上の武勲を上げた。

 それにより、呪いに効くかもしれない超希少薬草から作られたポーションを褒賞として与えられた。

 戦勝会が終わり早速そのポーションを浴びるように顔に振りかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 ───呪いは解けなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく、私は立ち直れなかった。

 ここまでやったのに。どうして。

 

 望みが絶たれ、もう戻ることのないこの膿の湧く顔は絶望で彩られているだろう。

 この報告を受けた陛下は驚いた顔をして、後に新たな手段を模索すると言ったが、もうどうでもよくなってしまった。

 

 数日、四騎士の仕事を休みただただ無為に時間を過ごした。

 酒を飲み、少しでもこの現状を忘れたかったが、どうしても振り切れないあたり、相当に応えたらしい。

 

 そんな時──再びあの方は現れた。

 

 

「レイナース。生きてますか?」

 

「ああ、こんなになってしまって。綺麗な顔が台無しですよ?」

 

「え?醜い?何を言っているんですか。──ああ、なるほど。解けなかったんですね、呪いが」

 

「そうですか。辛かったですね。──それはそうと、私が尊敬する人物がこんな事を言っていたんです。『誰かが困っていたら、助けるのは当たり前』だって」

 

「だから、私がレイナースを助けてあげましょう。顔を上げて──ほら。鏡を見てみなさい?」

 

 そうして鏡を見れば、少し痩せた自分が映り、呪われた顔半分からは膿が──あれ?湧いて、いない?

 思わず何度も、何度も手を当て、布を当て、鏡を見つめる。

 膿はもう湧いていなかった。

 

「呪い、解けたでしょう?」

 

 呪いが解けた。

 ああ、この一言でどれだけ救われたか。

 もうこの身を苦しめた呪いはなくなった。

 心なしか身体も軽い。歌って、踊って、泣いて、笑いたい。

 だが、それをする前にすべきことがある。

 

 

「アレーティア様。心より……心より感謝申し上げます!!」

 

 

 アレーティアはそれを微笑みで返した。

 アレーティアはただ呪いを解いただけだと思っているだろうが、レイナースにとっては、もう解けないものを解呪してくれた恩人だった。

 

 レイナースはお礼にと、ありとあらゆるものを捧げようとしたが、アレーティアは全てを拒んだ。

 

「先程も言った通り『誰かが困っていたら、助けるのは当たり前』なんですよ。だから、私への感謝は不要ですよ。

 だけど、どうしても何かを返したいと言うのなら……私が困った時に手を貸してくれればそれでいいです」

 

 

 ──ああ、この人は。いや、この方は、アレーティア様は女神に違いない。

 元より六大神を信仰していないが、今日この時より、レイナースはアレーティアを我が女神と信仰を始めた。

 

 

 

 ◯

 

 ◯

 

 ◯

 

 

 そして現在。

 レイナースは鮮血騎士として与えられた任務を執行していた。

 

 王都に複数存在する八本指が経営する奴隷娼館の摘発、それがレイナースと鮮血騎士の同僚であるロバーデイクに与えられた任務だった。

 指揮する部隊として、騎士団二百名に加え、奴隷娼婦がどのような目に遭っているか不明なため、最悪の場合を想定して神殿より神官達を二十名、そしてレエブン侯の親衛隊であり元オリハルコン級冒険者であるロックマイアーが罠対策のため加わり、総勢二百二十三名の部隊が任に当たった。

 

「わざわざこんな扉をそんなに慎重に開錠しようとするなんて、はっきり言って時間の無駄ですわ」

 

「じゃあどうやって突入する気なんだ?罠があるかもしれないのに?」

 

 同行しているロックマイアーが鍵開けのための用意を始めたところ、レイナースは「そんなことする必要ありますか?」と尋ねた。

 入口は二つあり、ロバーデイクと二手に分かれ逃げ道を塞ぐ布陣になっている。

 客を迎える入口ならば罠が仕掛けられている可能性は低いだろうが、何かしらの合図を必要とする罠も稀にあるため、慎重になるべきと答えたが、それに対してのレイナースの返答が先ほどの会話である。

 

「敬愛すべき粛清騎士様は、こういった場合こうすべきだとおっしゃいました──

 

 

 

 

 

 罠なんて全て作動する前に破壊してしまえば何の問題にもならないと!

 

「待て、その理屈はおかしい」

 

 ロックマイアーのツッコミは尤もだった。しかし、レイナースは止まらない。神格化しつつある粛清騎士──アレーティアの言うことは絶対なのだ。

 

「では、突入しますわ。後続の騎士、神官騎士達は扉を破壊し次第突入。ロックマイアー様は罠があるか探知してください。全て破壊しますので」

 

 レイナースは血のように真っ赤な槍を構え──武技として投げ放つ。

 

「武技──〈真槍重爆〉ッ!!」

 

 投げ放たれた槍は鋼鉄で出来た扉を破壊しながら内部へと侵入し──

 

 

 

「「「ギャアアアアアアアアッッッ!!!!」」」

 

 

 

 中にいたであろう従業員達の悲鳴と共に爆発した。

 

 レイナース・ロックブルズ、彼女はアレーティアに傾倒しすぎたあまり、脳筋の系譜を受け継いでしまっていた。

 

「突入!」

 

「は、ははっ!!」

 

 正直、この場にいたレイナース以外の全員が今の一撃でこのフロアに居た敵勢力は全員無力化されたのではないかと訝しんだ。

 突入してみれば中は大惨事。従業員という名の八本指勢力は今の〈真槍重爆〉で全員瀕死になっていた。

 元よりレイナースの攻撃力は四騎士最強と称され、鮮血騎士でも上位を争う。その攻撃力、破壊力と言ったら、同じ鮮血騎士である()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことから相当なものだ。

 

「な、なんだ今の音は!?襲撃か!?」

 

「クソが!こっちはようやくおこぼれに与れたってのによぉ!!」

 

 二階から武装した傭兵──請負人(ワーカー)たちがぞろぞろと降りてくる。

 発言を見るに()()()()()()()()()()()()()が、レイナース達には関係がない。

 

「ああ、今ので全員処理出来たと思ったんですが、思ったより虫ケラの数が多かったようですわ」

 

「テメェ!俺たちを虫ケラだと!?」

 

「ええ、お前達のような人を餌としか思わない輩など虫ケラで十分ですわ」

 

「この野郎!そこの騎士共も生きて帰れると思うなよ!!やるぞお前らぁっ!!」

 

 二階から降りてきた請負人達の数はおよそ二十人。よく見れば、帝国でもかつて知られた名前の請負人の姿も見られる。

 レイナースの記憶ではミスリル級冒険者程度の実力者だったとある。

 しかし、相手が悪かった。

 

「──フッ!!」

 

 瞬間、レイナースは請負人達に肉薄しその槍を正面の相手の胸目掛けて貫く。同時に背後にいた敵の顔面をも貫き、槍が抜ければ穿たれた二人はドサッと音を立てて崩れ落ちる。

 次いで何が起こったのか理解していない他の請負人達を武技〈一息・連突〉で顔や首、胸といった急所目掛けて四連続の突きを見舞う。

 

(アレーティア様なら四連続程度ではなく、もっと多く突けるはず……私もまだまだですわ)

 

 そんなことを思いながらレイナースはこの数秒で六人の請負人を始末した。

 この事実に遅れて気づいた他の請負人達は怯えた表情で一歩、二歩と後退していく。

 恐らく始末した誰かがこの中のリーダー格だったのだろう。リーダーが討ち取られた事により戦意が失われていく。

 ただレイナースは容赦しない。容赦してはいけないと、敵は徹底的に叩き潰せという啓示(教え)を受けているため、追撃の指示を出せば騎士達が制圧の為〈盾突撃〉の波状攻撃で次々と請負人達を無力化していく。

 

 こうして、呆気なく敵戦力を無力化する事に成功した。

 

 

 娼館の戦力を無力化した後、まずは二階から捜索すれば見つかったのは虫の息ほどの奴隷娼婦が数人、床に転がっている現場だった。

 どうやら、これから処分する奴隷娼婦を最後に楽しもうと、ちょっとした宴の最中だったらしい。

 他の騎士達や神官たち──娼館という場所を考慮して大部分を女性が占めている──もこの光景を目にして請負人達や八本指に隠しきれない怒りを感じていた。

 特に、心優しい神官でも知られているロバーデイクは一際険しい顔をしており、握った拳からは流血するほど力が込められている。

 とはいえ、これはまだごく一部に過ぎないため、未だ客の相手をしていると思われる奴隷娼婦の救出が急がれた。

 

「で、他の奴隷達は何処に?」

 

「そ、その地下への隠し扉を開けた通路の先だ!」

 

「そうですか。じゃあ貴方がその扉を開けなさい」

 

「うぇっ!?」

 

「罠を解除するのが面倒なので貴方が開けて、貴方が罠に掛かれば殺す手間も省けるし罠も私たちに被害なく突破出来る。

 実に効率的ですね」

 

「ふ、ふざけ――」

 

「なら死になさい」

 

 レイナースに一切の慈悲はなく、請負人の一人の生命が此処に散った。

 それを見た残りの請負人達は血相を変えた。このままだと理不尽に殺されると。

 請負人の多くは内面がおかしいと称される者が多いが、請負人達から見てレイナースの方がよっぽどイカれていると思わざるを得なかった。

 そしてその恐怖故に、依頼主を裏切ることを躊躇わせなかった。

 

「お、俺は知ってるぜ!この館の罠はマジックアイテムで管理されているんだ!俺を助けてくれるなら場所と使い方を教えてもいい!」

 

「おいテメェ汚ねぇぞ!!」

 

「待ってくれ!俺もどこに罠が仕掛けられているか──」

 

 

 こうなれば誰も彼もが命惜しさに情報を吐き出す。その足掻きっぷりに呆れたもののレイナースは部下の騎士たちに命じ、順当に娼館の罠を解除し地下へと向かった。

 

 

 

 

 ○

 

 ○

 

 ○

 

 

 

 

「おらぁっ!どうした!?もっと悲鳴を上げろ!!」

 

 娼館の地下の一室、全身に贅肉をこれでもかとつけた醜悪な豚男──スタッファン・へーウィッシュが己の欲望を奴隷娼婦にぶつけていた。

 この男は高い嗜虐心を持っていて、役人であるため金銭にも困らず奴隷を買って発散していた。

 しかし、運悪く奴隷を全て使い切ってしまい、いたぶり甲斐のない奴隷を買う気にもなれず、悶々とした日々を過ごしていたが、主人である貴族からこの娼館を紹介され、こうして発散していた。

 八本指のために権力を行使することになってしまったが、今や八本指は王国全土を支配しかけていることを知っている。そんな組織に力を貸せば後々にもっと良い女を用意してくれるかもしれない。そんな下卑た欲望から、彼は八本指に従うことに何の抵抗もなかった。

 

「あ~、あの女……″蒼の薔薇″のラキュース。あの小娘をぐしゃぐしゃに痛めつけられたら、どれだけ、気持ちがいい、だろうなぁ!!」

 

 今や八本指から懸賞金が懸けられているアダマンタイト級冒険者チーム″蒼の薔薇″のリーダーであるラキュース・アルベルン・デイル・アインドラ。

 その美貌はかつて王国にいた″黄金″ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフには及ばないものの、それとはまた違った美貌がスタッファンの嗜虐心をくすぐる。

 殺さず捕えて、あの顔をこの拳で歪められたらどれだけ気持ちがいいだろうか。

 

 (もしもそうなった場合、高い金を出してもいいから楽しませてほしいと頼んでみるか)

 

 そんな妄想に耽り、目の前の奴隷娼婦を思う存分いたぶり、そして最後に性欲を発散させようと──

 

 

「何を、しているのですか」

 

 

 振り向けば見知らぬ男がそこにいた。

 真っ赤な全身鎧を装備し、如何にも騎士という風貌を持つその男の声には怒気が含まれていた。

 

 

「き、貴様、何者だ!?」

 

「質問を質問で返すな!!何をしているのかと聞いているんです!!」

 

「ひぃっ!」

 

 男は顔を真っ赤に染め、憤怒の表情を浮かべている。あまりの恐ろしさにスタッファンは後ろに退き──男、ロバーデイクの目に映ったのは暴力の限りを尽くされ今にも死にそうな女の姿だった。

 

 

「──貴様ぁぁああッ!!」

 

「うぎゃああああッ!!」

 

 スタッファンの顔面にロバーデイクの拳が叩き込まれ、あまりの威力に部屋の外へと飛ばされるほどに。

 そして飛ばされた先には──

 

「……こんな所に肥え太った豚がいるとは思いませんでしたわ」

 

 レイナースがいた。

 ただ、レイナースだけでなく、この娼館を利用していた他の客もスタッファンのように騎士達の手により部屋から引き摺り出されている。

 

「こ、これは……」

 

「えー、貴方方はこれより帝国における法に則り、逮捕させていただきますわ。

 王国の法では許されているようでしたが、今日よりリ・エスティーゼ王国はバハルス帝国に併呑されることになりましたので、帝国の法を遵守させていただいてます。どうか、ご納得していただけるように」

 

 レイナースの見下すような視線にスタッファンは怒りを覚えた。

 何故自分がこんな目に遭わなければならないのか。ただ奴隷で楽しんでいただけではないか。他の客にも同じ様な感情が浮かんでいるのが見て取れる。

 

「帝国に併呑だと!?何を勝手なことを言っているのだ!それが本当なら貴様らは戦後交渉の不可侵を破った蛮族ではないか!

 そもそも、そんなことを王家が許すわけあるまい!周辺国家も許すはずがない!」

 

「そうだ!第一、平民など──奴隷などどう扱おうと我らの勝手ではないか!平民などいくらでもいるだろう!?」

 

 スタッファンを筆頭に各々が身勝手な言い分を口に出して喚いている。その光景に多くの騎士や神官は顔を歪ませ嫌悪感を示している。

 同時に王国はここまで落ちぶれていたのかと幻滅してもいた。

 民を消耗品のように使い捨てるなど、帝国でやろうものなら物理的に首が飛ぶ事になる。アレーティア基準なら裁判無しで即殺案件だろう。

 そして──

 

「……レイナースさん」

 

「ええ、構いませんわ。どうせ処刑する事になりますし」

 

「しょ、処刑!?な、なな、何故私がそんなぁ!?」

 

「……感謝します」

 

「何かの間違いだっ!!私は何も──ぶぎゃあっ!!」

 

 スタッファンの顔に今度は拳ではなくモーニングスターが叩き込まれる。頬を砕き、棘により片目が潰れる。あまりの激痛にスタッファンは地面にのたうち回る。

 それを見たレイナースは嫌悪の表情を浮かべる。彼女もまだ乙女であり、いくら仕事でもこんな贅肉でパンパンに膨れ上がった豚男が全裸でのたうち回る所など見たくもないだろう。

 

「いいいいじゃい!!いばあああああ!!」

 

「痛いでしょう。ですけどね……お前が殴っていた彼女はもっと痛かったんですよッ!!〈土竜叩き〉ッ!!」

 

「ぐぺぇあっ!」

 

 再びロバーデイクは怒りのあまり、モーニングスターでアレーティア直伝の〈土竜叩き〉をスタッファンに繰り出し、文字通り頭部を叩き潰した。

 目の前にあるのは頭が潰れた死体だった。

 

 

「はぁっ……はぁっ……お見苦しいところをお見せしました。神に仕える身でありながらこのような……」

 

「粛清騎士様ならもっと凄惨に苦しめていたでしょうから、ロバーは優しい方ですわ。

 ……さて、残りの客は──いいことを思いついたので痛めつける程度に済ませて、一時的に牢へ。

 奴隷達は神官達に引渡し、ラナー様へ報告。次の指示があるまでこの娼館を隅々まで調べ尽くしなさい」

 

「「「ははっ」」」

 

 

 こうして、八本指奴隷部門が経営していた闇の娼館は制圧。

 その後に小規模拠点などが追撃され多くの奴隷が救出されたのであった。

 

 その中には、とある貴族に拐われ、飽きて売られてしまった女性(ツアレニーニャ)の姿もあった。

 

 





レイナース
アレーティア教の敬虔なる信徒。一緒に行動したらルミリアより被害がデカくなるのは確実。
強さ的には四騎士時はノーマルガゼフ未満。鮮血騎士時は英雄の領域に突入。
今回はそれに加えてアレーティアの飯バフがあるのでフルアーマーガゼフ超え。

ロバーデイク
心優しい神官。なので今回の任務を与えられ、あまりの惨状に怒った。
〈土竜叩き〉はアレーティア直伝。強さ的にはアダマンタイト級冒険者程度。第四位階の神聖系魔法を扱える。

ロックマイアー
出番のほとんどがレイナースの脳筋行動で無くなってしまった上に振り回された悲劇の人。
ロバーデイクと行動するべきだった。

スタッファン・へーウィッシュ
頭が潰れて死んだ。
原作とは違い、奴隷売買が禁止されていないのでラナーに対する悪感情はないが、代わりにラキュースにそれが向いていた。
多分四期の例のシーン見たら興奮する。

奴隷娼婦たち
この後皆助かる。原作と違って処理されないからご安心を。



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