転生したらオバロ世界のエルフだった件について 作:ざいざる嬢
UA70万突破しました!ありがとうございます!
皆さんお待たせしました、六腕戦です。
王都粛清編も後三、四話で収められたらな〜と思ってます。
「クソッ!面倒な事になった……!」
八本指警備部門の長である"闘鬼"ゼロは配下である警備部門の元請負人達に指示を出し、帝国からの襲撃に対応していた。
よもやドラゴンに乗って襲撃してきた挙句、第二王子ザナックと王国戦士長ガゼフ・ストロノーフの生存。更には残った反抗勢力である元王派閥の貴族達が手を組み、王都を取り囲むように自領の兵達を動員している。
ハッキリ言って詰みの盤面だ。しかし、だからと言って何もしないのは論外だ。
ゼロは今回招いた貴族達や他部門の長達を逃すために前線に立つ必要があり、逃げる時間を稼ぐことが求められた。
同時に程々のところで自身も逃亡し再起を図る必要がある。
この時点でゼロ自身は八本指を捨て、他国へ逃げる方へ算段を立てた。
直属の部下に資産や物資を非常時に避難するために用意した隠れ家へ移すように命じた。
六腕である自身を除く五人には帝国騎士を蹴散らし、ある程度被害を出したところで撤退しろと伝え、自分も戦場へ立った。
「ヌゥンッ!!」
「ぐあぁっ!」
「クッ!〈要塞〉!」
「その程度で俺を──"闘鬼"ゼロを止められると思うなぁッ!!」
「ぐぶうっ!?そ、そんな〈要塞〉が──」
ゼロは強い。王国裏社会最強の六人と称される六腕のリーダーでもある彼の実力はアダマンタイト級冒険者に引けを取らない。
いくらアレーティアによる強化を受けていても並の帝国騎士では刃が立たなかった。
「雑魚共がいくら群がろうと、この俺を倒すことなど出来ん!
この俺……"闘鬼"ゼロこそが王国最強なのだから!」
ゼロが再び何もない空に拳を放てば、衝撃波が帝国騎士達を襲い、耐えたとしても追撃に倒れていった。
相対していた帝国騎士達が倒れ伏し、この辺りで一度退くかと考え始めた時──
自身の足元から鋭いナニカが自身の顔を目掛けて飛来した。
「なっ!?〈回避〉!」
咄嗟の判断で武技を併用し奇襲を避け、ジッとその下手人を見据えた。
(コイツは……強いな)
ゼロが見たのは人間ではなく、亜人。
凶悪な顔をしていて、全身に生えている体毛は白磁の如く輝いていて、何らかの塗料で塗られたであろう二本の線が夜闇の中でもハッキリ見える。
そして、腕には帝国の紋章が描かれた腕章のようなものが巻かれており、何らかの部隊の一員であることを思わせた。
その亜人は油断することなくゼロを視認し、足元に転がる倒れた騎士達へ声をかけた。
「お前達、意識はあるか?あるなら一度撤退しろ。この場は俺が取り持つ」
「あ、貴方は……!」
「口が利けるのならサッサと動け。粛清騎士様が後で怖いぞ」
「は、はい……っ!!」
痛みに耐えながらゆっくりと、それでいて迅速に倒れた騎士達は亜人の掘り進んできたであろう穴へと消えていった。
「さて、待たせて悪かったな。八本指の者よ」
「いいや、構わんさ。あんな雑魚どもがいなくなろうがどうでもいい。
それよりも、お前だ。一体何者だ?見たことがない種族だが」
「申し遅れたな。私はバハルス帝国の配下に加わったクアゴア氏族の王──またの名を鮮血騎士が一人、ぺ・リユロである」
クアゴア。本来ならアゼルリシア山脈にのみ生息している亜人種のため、ゼロが知らないのは無理もない。
分かるのは目の前の相手──ぺ・リユロは油断ならない強さを持っているということだ。ゼロとしても負けるつもりは毛頭ないが、余計な消耗を避けるために交渉に出る。
「そうか。聞くがリユロよ、俺の部下にならないか?
見ただけで分かる。お前は相当な強者だ。お前が望むものをくれてやろう。どうだ?」
ゼロは強者には寛大だ。それがたとえ人間種でなくとも、話が通じれば懐に受け入れるだけの度胸がある。実際、六腕の一人"不死王"デイバーノックは
それにリユロをこの場で引き入れられれば、より逃亡が楽になる。先程現れた時の様に地中を掘り進み移動が出来る種族ならば、これから逃亡に使おうとしているルートより安全に逃げることも出来るという打算もあった。
「悪いが断らせてもらう。俺は──いや、我らクアゴアは粛清騎士へ忠誠を誓った。受けた恩もまだ返していないのでな」
「そうか。ならば──死ね」
交渉は決裂。ならば殺しあうのみ。
先手を打ったのはゼロだった。ゼロはシャーマニック・アデプトという職業に就いている。これには動物の霊魂を自らの肉体に憑依させ、その優れた身体能力を行使する特殊技能スキルがある。一日の使用回数に限度があるものの、使用すればその獣の優れた身体能力を発揮し、人にして獣という領域にまで到達する。
目の前にいるのは人間よりも肉体的には強固である亜人。ゼロがこの特殊技能を使うことに躊躇いはなかった。
「
足に刻まれた豹の刺青が輝く。これにより豹の如く強化され、速度が増した武技がリユロを襲う……が、リユロはこれを回し蹴りで迎撃。相殺した。
「なんだと!?」
「中々の威力だ。そして、お前も俺と同じ
リユロは修行僧としての構えをとる。同じ修行僧同士の戦いではあるが、互いに譲らぬものがあった。
しかし、肉体的にはリユロの方が上。それ故に本来一つしか起動しない特殊技能を惜しみなく使う。そうしなければ押し切られるのではないかという凄みを感じたからだ。
「ならば……
腕の刺青が輝き、強化された腕による正拳突きを空に放ち衝撃波を発生させる。並の相手ならばこれだけで十分すぎる一撃だが、リユロはこれを真っ向から受け、なんの痛痒も感じていないかの様にそのまま前進。お返しに突きを放ち、これをゼロが寸前で回避する。
(は、速い!足の豹で強化していなければ間に合わない程に!)
「どうした?その程度ではないだろう?」
「抜かせッ!!」
ゼロが自身を侮られたと憤慨し残りの
ここまでするとゼロ自身制御が難しく、ここから繋げる技は正面から踏み込み、全力で殴りつけるという攻撃手段に特化するからこそ、何とか技として成立する一撃。ゼロの誇る単純にして無敵の技。これを以って目の前の敵リユロを打ち破ろうとした。
それを見たリユロは焦ることなく構えを取る。左腕を高く、右腕を低く、不動の状態を保ち待ち構えた。
これはアレーティアから叩き込まれた防御の構え──曰く、天地を統べる構えなのだと、何度も何度も身につけるまでボコボコに殴られたのはリユロの記憶に新しい。
「ぬぅわああああああっ‼︎‼︎」
そうして、遂にゼロが踏み込み、正拳突きが繰り広げられた。
圧倒的な速さ。そして、それにより生み出される全てを破壊する一撃がリユロに迫り──
「くぅあああああああっ‼︎‼︎」
その一撃は低く、地に構えられた右腕によって防がれ、そして──高く、天から飛来した左腕による一撃でゼロの腕が叩き斬られた。
「なっ!?ば、バカなあああああッ!?」
自分の最強の、無敵を誇った技が敗れた。その事実をゼロは信じられなかった。否、信じたくなかった。
しかし、現実はそれを理解しろとばかりに事実を叩きつけていた。失われた腕から滴り落ちる血液と床に転がる腕を見ながら、思わずその場に尻もちをついてしまった。
ゼロは折れてしまったのだ。王国裏社会最強の六腕のリーダーである自負も、王国外からやって来た強者によって粉々に砕かれてしまった。
余談ではあるが、リユロはアレーティアによる地獄の訓練を受けたものの、上限レベルに達していたのかそこまで目立った強化はされなかった。
しかし、技術や知識を身につけたリユロの強さは見えない強さとして発揮され、対人戦ならば鮮血騎士でも上位の実力を得たのだった。
「……良い一撃だったが、俺の方が強かったようだな。
次はその一撃を連続して出せるようにするといい。──次があれば、だがな」
そうしてリユロは鋭い爪を露わにし、呆然とするゼロの胸元へ向け──心臓を刺し貫いた。
八本指警備部門の長、六腕が一人"闘鬼"ゼロはここに果てた。
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「これでターゲットは一人処分と。さて、この後は……他の六腕も倒した方がいいか?その方がウケもいいだろう」
リユロはゼロの亡骸からマジックアイテムを回収し、アレーティアから渡されている無限の背負い袋へと投げ入れる。
リユロ達鮮血騎士に与えられた主な任務は、基本的に一般の騎士達では歯が立たないであろう六腕との交戦だ。
アレーティア曰く、鮮血騎士であれば多少手こずることはあっても負けはないという判断と信頼から、この任務が与えられた。
現に、自分が相対した六腕最強である"闘鬼"ゼロを倒した感想としては、これぐらいなら鮮血騎士の上位陣なら負けはないなと安心していた。
(一先ず、ラナー様と連絡を取って指示を仰ぐか?いや、それよりもここで手柄を多く挙げれば、褒賞はもっと期待出来るかもしれんが……)
この革命が終わった後に、リユロには王国にある山岳地帯を一つ領地として与えられることになっている。
これには正直リユロも驚いた。なにせ、元々住んでいたアゼルリシア山脈に、エ・ランテルにある地下神殿を新たな住処として与えられ、そこに加えて更に領土を貰えるとなればクアゴア氏族は益々繁栄するだろう。
無論、そこに至るまでに多くの苦労が──主にアレーティアからの無茶振り──あるだろうが、それでも
なので、ここで更なる忠誠を示し、結果を残せば更なる躍進が期待出来るとリユロはあるかもしれない未来に内心ほくそ笑んだ。
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同時刻、王宮の別の場所では招かれた貴族達を逃すために六腕である"千殺"マルムヴィスト、"踊る
しかし、押し寄せる騎士達は自分たちより弱いと言っても、数は多く満足に戦えない。
騎士達の連携によって中々道が拓けないために、彼らは苛立ちを感じ始めていた。
「チイッ!"天武"はどうしたんだい!?」
「あの野郎、こんな状況なのに指令を無視しやがった!アイツとあの奴隷エルフがいればまだ何とかなっただろうに!」
「無駄口を叩く暇があるのなら手を動かせ!〈
デイバーノックの〈雷撃〉が炸裂し、直線上にいた騎士達が悶絶して倒れていく。しかし、死んではおらず、倒れた者を他の騎士が後方へと押しやり、騎士達の壁は崩れない。
「……こうなれば〈
「ああ、アレか!そりゃあいい!」
「……やれ」
デイバーノックは人間ではなくアンデッド。それも
元々がモンスターのため、魔力の量も人間とは比べ物にならない。かつて所属していた傭兵団では〈火球〉を連発してしまったことから正体がバレてしまったが、六腕で彼がアンデッドであることを知らない者はいないため、この場では心置きなく魔法を使うことが出来る。
──ただしそれは、余計な横槍がなければ、だが。
「な、なんだありゃあ!?」
「ば、化け物だ!?」
突如、請負人達の悲鳴が上がった。
何事かと六腕のメンバーは後方を振り返る。もしや、デイバーノックのことを言っているのか?と訝しんだがそうではなく──
そこには巨大な黒い騎士がいた。
赤い血管のような紋様があちこちにあり、所々に鋭い棘のついた全身鎧を身につけて、ボロボロのマントを靡かせている。
頭には悪魔の角の様な装飾がされた兜を被っており、その手には身の丈ほどの大きさのタワーシールド、凄まじい斬れ味を思わせる
ただ、普通の騎士と違うのは──眼窩は落ち窪み深淵の如く黒く、その肌には肉はなく骨だけで動いている。人間ではない、アンデッド──否、騎士の姿をした化け物がそこにいた。
「あ、あれはフールーダ様の支配されたアンデッド!」
「全員退避!フールーダ様が支配されているとは言え危険だ!この場は
先程までいた騎士達が続々とその場を見事な速さで脱していく。つまるところ、
なにせ既にそのアンデッドから与えられる
見たところ
で、あればやはり要になるのはデイバーノックだが……
「あ、あれは俺よりも上位のアンデッド……だと!?」
「お、おいデイバーノック?」
「アレを帝国は使役している……?ならば相当な魔法知識を持った存在が……」
「何をブツブツ言っている!?やるぞ!俺の『空間斬』でまず──」
「……〈火球〉」
「なっ!?」
デイバーノックが放った〈火球〉は目の前のアンデッド──
「で、デイバーノック、アンタ!?」
「ぎゃあああああ!!お、お前!お前ええええええ!!」
「裏切ったっていうのか!?」
突如行われた凶行にエドストレーム、マルムヴィストは驚愕し、ペシュリアンは自らを焼く炎を消そうとのたうち回りながら非難の声を上げた。
ここにきて突如裏切るとはどういう了見なのか。聞かずにはいられないが、状況がそれを許さない。
今にも死の騎士はデイバーノックに襲い掛かろうとし──デイバーノックを無視してペシュリアンを剣で突き刺した。
「ぐげえっ!?何故お「悪いなお前たち。〈火球〉」」
ペシュリアンの言葉を遮り、トドメの〈火球〉を直撃させ──ペシュリアンは沈黙した。
その光景を見た二人はジリジリと後退する。最早デイバーノックを仲間とは思わない。アレは──人を、生者を憎むアンデッドだと再認識させた。
「このアンデッドは俺よりも高位のアンデッド。それも伝説級と称される死の騎士だ。コイツ一体で一国を滅ぼすことすら可能な強大なアンデッドだ。これが意味することが分かるか?」
「……つまり、帝国が何らかの方法でソレを使役しているってこと?」
「そうだ!そしてこのアンデッドはゼロなどより遥かに強い!請負人共が束になっても勝てやしないさ! だが!俺は違う。俺はアンデッドだ。コイツの標的にはならない。
それにだ……これだけ強大なアンデッドを支配できる
デイバーノックの目的は多くの魔法の習得であり、ゼロとの契約で魔法技術の教授と仕事に見合った報酬を対価に配下になった。
しかし、この状況では最早それすら困難であり、帝国に滅ぼされるのが目に見える。
そんな時に、目の前に現れた死の騎士を見てゼロを──六腕を裏切ることにしたのだ。全ては自分の目的のために。
「ではさらばだお前たち。せめて、お前たちの死体は有効活用させてもらおう」
「この……クソアンデッドが」
マルムヴィストとエドストレームは最早ここまでと覚悟を決める。だが、せめて目の前の裏切り者は殺すと決意し、向き直る。
そして──
「へっ?」
デイバーノックは死んだ。
後ろにいた死の騎士の剣で真っ二つになって。
──そう、確かに通常なら死の騎士は同じアンデッドであるデイバーノックを襲うことはないだろう。
しかし、この死の騎士はあくまで使役された存在であり、使役者の命令に従うのは当然のことであり、そこを失念していた。
死の騎士に与えられた命令は一つ。『八本指に与するものの粛清』だったのだから。
何故先にペシュリアンを殺したかと言えば──単に死にかけていたから一番初めに殺そうと思ったに過ぎない。
「……ははっ。ざまあみやがれデイバーノック」
「最後にいいもの見れた気がするよ。ペシュリアンは見れなくて残念だったろうが」
死の騎士が前進する。『次はお前たちだ』と言葉に出さずとも行動で示している。
そうして二人と一体は衝突し──
後に残ったのは
そして──
「あ゛あ゛……」
「う゛う゛……」
数分前まで六腕だったマルムヴィストとエドストレームの成れの果て──二体の
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◯
sideバルブロ with 六腕
「さて、宝物庫は何処でしょう?バルブロ王」
「な、何故そんなことを聞く!?まさか貴様……」
「あはは!勘違いしないでくださいバルブロ王。私は貴方を守るため馳せ参じましたが、確実に帝国の者を殺すには──王家の宝物を装備した私がいれば事足ります。
陛下も覚えていらっしゃるでしょう?あのクーデターで誰が、あの戦士長を退けたかを!」
「そ、それは……確かにそうだが」
「ご安心を、事が済めばお返ししますので。……どうか、ご決断を」
「……そう。それでいいのです」
リユロ
レベル的には四十を超えたあたりで上限に達した。
その為、技術や知識を身につけ補っている。
天地の構えの元ネタはアレで概ね合ってる。でも武技ではない。
なおアレーティアがやるともっと容赦ない。
ゼロ
相手が悪かった。
最強と驕ったのが最大の失敗。
ペシュリアン
多分一番可哀想な死に方をしたけど、アンデッドにはならなかったのでまだいい方。
マルムヴィスト
死んでスクワイア・ゾンビになった。この後はフールーダの実験に使われる。
死因は心臓を一突き。
エドストレーム
死んでスクワイア・ゾンビになった。この後はフールーダの実験に使われる。
死因は首をタワーシールドでへし折られた。
デイバーノック
本質は多分フールーダと変わらないという設定。
裏切ろうとしたら、裏から斬られた。
デス・ナイト&フールーダ
鮮血騎士最後の一人……もとい一体。
フールーダは現地に来ておらず、帝国からデス・ナイトを支配し動かしている。
今回はアレーティアによる協力の元、スクワイア・ゾンビはゾンビ以外のアンデッドの発生源になるかの実験材料集めも兼ねている。
一応、デス・ナイトが暴走しないか常にフールーダが監視している。
エルヤー・ウズルス
命令無視して暗躍。
フルアーマー・エルヤーになろうとしている。
感想や高評価などいただけると大変励みになりますので、どうぞよろしくお願いします。