転生したらオバロ世界のエルフだった件について   作:ざいざる嬢

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今回、妙に筆が捗りました。

何処が、とは言いませんが。

なお、本番は次回です。(何が?)


王国の長い夜 その5 〜国王失格〜

 

 ─王城 宝物庫─

 

 元請負人(ワーカー)で、現六腕に昇り詰めた男──エルヤー・ウズルスは最高に気分が良かった。

 

 今身につけているのは王国の至宝。その中でもこの剃刀の刃(レイザーエッジ)は、自分の持っていた刀を遥かに上回る逸品。それがこうも簡単に手に入れば心が躍るのも仕方がない。

 

 そんなエルヤーの足元には切り伏せられた戦士団の人間と──バルブロがいた。

 

「き、貴様……ッ!」

 

「案内ご苦労様でした国王陛下。これらの宝物は、今後私が有効活用してあげますよ」

 

「ふ、ふざけ……るな! それは、王家に伝わる……ぐわああああ!!」

 

 バルブロが食いついてくるのが煩わしかったのか、エルヤーは手に取った剃刀の刃で試し斬りをした。

 剃刀の刃の斬れ味は噂通り凄まじく、足元に縋りついてきた腕を綺麗に斬り落とした。

 

「ふふふ、優れた剣というのは剣が人を選ぶと言いますが、あながち嘘ではないようですね。

 この剃刀の刃は私に振られるためにあったと!そう思わざるを得ませんからねぇッ!!

 

「ぐうぅ……ッ!貴様は俺の護衛だったはず……!何故、何故裏切った……ッ!」

 

「それは当然でしょう?元々八本指には強い相手と斬り合えると言うから手を組んだんです。ゼロも私に見合ったマジックアイテムを用意してくれる約束をしていたんですが……新参者である私には中々支給されなかったんですよ。

 しかし、貴方の護衛に就くことになり──王国の至宝のことを知った私は、機を窺いそれを手に入れようと考えたのです」

 

 面白いほど上手く行きましたよ、とエルヤーはせせり笑う。

 

 バルブロという男は王でも愚かしい方の王だ。自らの地位や面子のためなら、なんでもするような。

 結果、八本指のような王国の闇を司る組織を利用した……と思い込み、今後も使ってやろうなどと甘い考えをしていた結果、ここにきてようやく自分が都合のいいように利用されていることに気づいたのだった。

 

「さて、この国ももう終わりです。八本指にもう用はありません。次なる新天地を目指すとしましょうか。

 次は何処に行きましょうかね……聖王国か都市国家連合か……」

 

エルヤーは自身の今後について思案を巡らせる。王国からの脱出は比較的容易だろう。王族しか知らないとされる地下通路を使うよりも、侍らせている奴隷エルフに魔法で穴を掘らせて、誰も知らない道から逃げれば見つかることはあるまい。

 その後は聖王国か都市国家連合か。それとも評議国に──いや、汚らわしい亜人が蔓延る評議国はありえない、などと考える。

 

 聖王国はアベリオン丘陵という場所に住まう亜人種からの侵攻に追われているとも言う。ならば、請負人としての需要もあるだろう。

 エルヤーとしては、そういった殺し合い──自分が気持ちよく勝てる戦い──を好む。

 自分の力は既に周辺国家でも最高峰だという自負もある。更に、王国の至宝を手にした結果、この至宝から伝わる力は自身を更に高みへと導いた。

 この力があれば、クーデターで破った元周辺国家最強の戦士と謳われたガゼフ・ストロノーフも最早敵ではない。そう確信出来た。

 

「いくぞ、そいつは放っておけ」

 

「ま、待て……!」

 

 追従する()()()()()()()()を引き連れ、エルヤーは宝物庫を去り、バルブロは出血が原因で意識を失った。

 

 

 

 ◯

 

 ◯

 

 ◯

 

 

 

 しばらくして、ザナックとガゼフと戦士団数名は逃げたバルブロを追っていた。

 恐らく逃げる先であろう王族専用の避難通路はとある鮮血騎士が既にその場所を押さえているため、そこからの逃亡の可能性は低い。

 現に、そこへ来たという連絡は来ていなかった。

 しかし、見つからない。当然ながらバルブロはザナックよりも長く生きており、もしかするとザナックも知らない逃走経路があるのかもしれない、と考えながらチッと舌打ちを打つ。

 現状、即座に思いつく場所は既に探した。元バルブロの居室、亡き父の──現国王部屋、酒蔵、中庭などを見回ったが、何処にもいない。

 そうして最後に、革命開始時に辺境侯との話題に上がった宝物庫へと向かう。

 そして辿り着いた先には──

 

「こ、これは!?兄上!」

 

「お、お前達まで……ここで一体誰が!?」

 

 目にしたのは血の海に沈んだ戦士団の仲間達とバルブロだった。

 

 (逃げるよりも先に王国の財を優先するほど、我が兄は愚かだったのか?)

 

 思わずそう思ってしまったザナックだったが、ここでバルブロに死なれるのは困る。

 念の為に、と渡されていた赤いポーションを振りかける。戦士団の方は残念ながら間に合わなかったようだが──

 

「ううっ……これは、傷が!?」

 

 幸いにもバルブロは生きており──斬り落とされた腕はくっつきそうにないが──ポーションが間に合ったようだった。ザナックは心の底から安堵した。何せバルブロが死んでいた場合、少々面倒なことになったからだ。

 そんなことも露知らず、目覚めたバルブロは傷が癒えたことに喜ぶが、同時に怒りが込み上げてきた。

 信用していた相手に裏切られて殺されかけた挙句、王国の至宝を奪われたのだ。しかも相手は平民。王族である──王である自身をこれ以上ないほどに貶されたのだ。これ以上ない侮辱であり、蔑まれた行為だった。

 

「おのれ……あの六腕め!」

 

「おはようございます兄上。どうやら、目覚めは最悪のようですね」

 

「お、お前はザナック!?何故ここに!?」

 

「何故って、兄上を捕らえるために決まっているでしょう。

 クーデターを引き起こして、革命が起こされないなんて思ってもいませんでしたか?どちらにせよ、王国は終わりです」

 

(終わる?俺が?俺の王国が?)

 

 バルブロはザナックが言うことを理解できなかった。

 そもそもまだ始まってすらいない。これからなのだ。今日を終え、明日から自分が王として王国を統治し、輝かしい未来へと歩き出すのは。

 それが終わるだと?

 

「ふ、ふざけるな!革命など起こしやがって!これから俺が王としての第一歩を歩もうとしたところに!!

 負けたお前が、今更出てくるんじゃない!!」

 

 バルブロは吠えた。まるで自分の玩具を取り上げられて怒る子供のように。

 その態度にザナックは心底苛立ち、唇を舐め語気を強めて返答した。

 

「……兄上。何故、私──いや、俺が革命を起こしたのか分かるか?

 いや、理解出来ないだろうな。王としての立場にしか興味がなかった貴方には。

 もしも、本当に国を想うのであれば俺も身を引いただろう。父上とまではいかずとも、国と民を想う気持ちがあれば。

 しかし、王国に潜む巨悪である八本指と手を組み、父すらその手にかけ、血塗られた玉座に座した貴方は『王』という立場にしか興味がない。

 そんな貴方に、この国を任せるわけにはいかない。だから──俺は帝国を頼ったのだ。王国を救うために」

 

 確かに、自分のした行いは結果的に王国を帝国に売り渡す売国奴と蔑まれても仕方のないことだろう。

 しかし、あのまま王国を放置して亡命し続けることは、王族として生まれた者として許せることではなかった。

 だから、せめて自らはどうなろうと、どう言われようともせめて民だけは救おうと行動を起こしたのだ。

 それに対して兄はどうだ?民を苦しめる八本指と手を組み、クーデターを起こし王位を簒奪した後は更に民を苦しめ、王国を八本指とそれに連なる貴族が好き勝手する無法地帯へと姿を変えた。

 これが王の行う統治なのか?いいや、違う。

 父とて強い政策を取れずに八本指の台頭を許してしまってはいたが、それでも民を想い常に行動してきた。

 良い例が平民であるガゼフ・ストロノーフを拾い上げ、彼のために騎士団とは別に戦士団という新しい枠組みを作り上げたことだろう。

 

 しかし、こういったことをバルブロは理解しなかっただろうなと、ザナックは少しばかり憐れみを抱きながらバルブロを睨みつけた。

 当のバルブロはかつてのザナックとはまるで変わった姿を、威風を見せつけられ萎縮してしまっていた。そう、まるで格が違うのを分からされたかのように。

 

「……このまま問答を続けていても仕方ない。兄上、聞きたいのですが……宝物庫から王国の至宝や金目の物を奪っていった賊は誰で、何処へ逃げたのですか?」

 

「……八本指から護衛として側に置いていた『六腕』のエルヤーという男だ。

 ヤツは俺を確実に守るためと至宝の貸し出しを申し出て……それを許可した。その結果、斬り伏せられて……逃げた先は分からん。ただ、王族の避難通路の方ではないことは確かだ」

 

 バルブロが言葉を発する中、ザナックの後ろに仕えていたガゼフはある人物の名前に反応する。

 

 

 ──エルヤー・ウズルス。かつてのクーデターで五人のエルフを引き連れ、ガゼフを出し抜きランポッサ三世を殺した大罪人だ。

 そして同時に、ガゼフがなんとしても倒さねばならない敵。

 

 ザナックもそれを察したのか、ガゼフに向き直り──

 

「戦士長、追え」

 

 ただ一言、そう告げた。

 

 一度は護衛を任された立場で、護衛対象から離れることを躊躇ったが──ザナックの目は「父の無念を晴らせ」と語っていた。

 

「──ははっ。戦士長として必ずやその大任果たしてみせます」

 

 そうしてガゼフは駆ける。討つべき敵の場所へと。

 

 

 

 ◯

 

 ◯

 

 ◯

 

 

 

「見つけたぞ」

 

「んん?」

 

 逃亡を図るため移動していたエルヤーの下に何者かが現れる。

 

(追いつかれましたか。少々面倒ですね)

 

 振り返ればそこにいたのは──赤髪短髪のエルフの女戦士。背に大剣を担いでおり、身につけている防具も見るだけで相当高価なものだと分かる。

 そして、鎧越しにも分かる胸の大きさにエルヤーは少しばかり劣情を抱いた。自分の奴隷にはいないタイプなので──売りに出されている巨乳のエルフはより高価なため手が出せなかった──そういった感情を抱いても仕方がないとエルヤーは自分を納得させた。

 

「エルフ風情が私に何の用ですか?あいにく、先を急ぐ身ですので──ッ!!」

 

 腰から剃刀の刃ではなく、愛用していた刀を抜き急接近。所謂、抜刀術と呼ばれる類のものだ。しかし先手の一撃は寸前で躱された。

 

「速いな。だが、それだけだ」

 

「言ってくれますね。ともあれ、エルフ風情では人間である私に及ばないことを……身をもって教えてあげましょう!!」

 

 エルフの女戦士──アセロラは主人へ『対象を発見。これより交戦』とマジックアイテム──鮮血騎士専用スマートフォンもどき──を使い一報を入れる。

 これで分かれた別の鮮血騎士たちも集まるだろう。そして──目の前の相手にとっての死神も。

 

「鮮血騎士が一人、アセロラ。いざ参る!」

 

 

 

 

 

 アセロラは純粋な戦士職であり、魔法は使えない。

 奴隷の経験からかスレイブという職業を習得しているため、少しばかり劣る面もあるが、それはマジックアイテムにより補えているため、大きな問題にはならない。

 そして、アセロラは日々の弛まぬ努力により英雄の領域には突入していないものの、アダマンタイト級冒険者に引けを取らない強さを持っている。

 しかし──

 

 

「ば、馬鹿な……」

 

「ふふふ、今の私に!勝てるわけがないでしょう!!」

 

 

 アセロラは敗れた。実際、アセロラはエルヤーよりもレベルは上だ。ステータスも上回っている。しかし、何事にも例外がある。

 エルヤーの習得している職業にはスレイブホルダーというものがある。

 これはとある常時発動型特殊技術(パッシブスキル)を獲得出来る職業で、パーティ内にスレイブの職業を持つ者がいる場合ステータスが向上する効果を持つ。

 これによりエルヤーには常時支援効果(バフ)が掛かっており、この差を打ち消すどころか僅かに上回った。

 極めつきに──スレイブという職業の欠点として──隠し要素ではあるが──スレイブホルダーなどの職業を習得している敵と相対した場合、ステータスが減少してしまうというものがある。

 これによって、本来の強さが逆転するという事態が起こってしまった。

 

 

「さて、そろそろ行かなくてはなりませんが……」

 

 エルヤーは血を流し倒れたアセロラへと近づき、強引に鎧を脱がせようとし──そのままだと梃子摺ると判断し、剃刀の刃を鎧へと向け斬り裂いた。

 

「なっ……!?」

 

 そうして鎧を脱がせば、現れたのは山の如き双丘。インナー越しとはいえ、エルヤーは劣情を抱いたモノに対面することが叶った。

 

「実力は私に及びませんでしたが──中々良いモノを持っている」

 

 そうして片方を最初は感触を楽しむように揉みしだき──ギュウッと握りしめる。すると、目の前の女エルフは苦悶の声を上げる。エルヤーはこれを奴隷エルフにも好んでする。己の中の嗜虐心が満たされるのだ。

 握るそれが大きければ尚更だ。

 

「ああ、良い声を出しますね!とても良いですよ!

 これに懲りたらエルフの分際で人間に刃向かうなんてことを二度と考えないように……ああ、そうだ。良いことを思いつきましたよ」

 

 握りしめていた片胸を手放すと、今度はそのままエルフの特徴である長い耳を掴み取った。「ぐうっ!」とアセロラの声が響き、それが奴隷エルフ達のトラウマを刺激する。

 

「二度と人間に刃向かえないように、奴隷商人に代わって私が──人と同じぐらいにまでその耳を切り取ってあげましょう。

 まあ、多少痛むでしょうが、この剃刀の刃ならスパッといけるのでご安心ください」

 

 これを聞いて一体何を安心しろというのか。

 アセロラが恐怖の感情に支配される。かつて、法国の人間に捕らわれてから受けた調教や教育という名目の拷問。耳を切り落とされ、お前達は人間以下の存在だと鞭を振るわれた記憶。

 買った貴族にされた尊厳を破壊するような行為が脳裏をよぎり──それが現実として再び目の前に襲い掛かろうとしている。

 剃刀の刃が耳元に迫る。抵抗は出来ない。正確にはトラウマが蘇り、恐怖で動けないのだ。

 

 エルヤーの奴隷エルフ達も過去のことを思い出してか、痛ましい表情を浮かべている。それだけはやめてあげて欲しいと訴えようとも、主人であるエルヤーが止まることはない。

 自分たちに意見する権利など無いのだと改めて思い知らされる。

 

 そして剃刀の刃がいよいよ耳へとその刃を沈めようとし──

 

 

 

「だ、誰か助けて──」

 

 

 

 アセロラは震える声で助けを求めた。

 誰でもいいからこの剣を止めてくれと。

 恐怖に囚われた私を救ってくれと。

 

 そして──。

 

 

 ガシッとエルヤーの腕が誰かに掴まれるのと同時に、何者かが廊下を全力疾走し駆け抜けて──

 

 

「〈閃光烈斬〉ッ!!」

 

 

 

 音をも置き去りにする一撃がエルヤーを襲った。

 

 

「グゲアァッ!?」

 

 

 

 左肩から右腰にかけて〈閃光列斬〉はエルヤーを斬り裂き──しかし、身につけている王国の至宝の一つ守護の鎧(ガーディアン)によって致命傷は避けられたが──確かなダメージを与えた。

 

 そしてもう一人、エルヤーの腕を掴み離さない人物がいた。

 その人物を見てアセロラは込み上げる涙を抑えることが出来なかった。

 

 

 ──ああ、貴方様はまた私を救いに来て下さったのですね。

 

 

 

「アセロラ、無事ですか?」

 

「ア、アレーティア……様。わ、私は……私は……ッ!!」

 

まさかこんなことになっているなんて……急いでよかった。

 もう大丈夫ですよアセロラ。何故かって?

 

 

 

 

 

 ──私とガゼフが来た!

 

 

 かくして、六腕最後の男"天武"エルヤー・ウズルスと王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ。そして──粛清騎士アレーティアの三名がこの場に集った。

 

 

 




バルブロ
愚王。その内アレーティアに頭の出来は愚か者()と同列とか言われる。
死んでたらちょっと困ったが、死んでても蘇生されて最後の仕事をやらされることに変わりはない。

ザナック
エ・ランテルに行って一回り以上成長して帰ってきた。
ガゼフとはアイコンタクトで意思疎通できるぐらいにまで打ち解けた。

エルヤー・ウズルス
現六腕"天武"。八本指入りしたお陰で資金が潤沢にあったため、その金で奴隷エルフを追加購入している。
結果、スレイブホルダーと言う職業を得ていた。
フルアーマー化しており、強さ的にはハムスケに勝てない程度。
なお、ゼロからマジックアイテムを支給されなかった理由は、単純にマジックアイテムより先に金をせびって奴隷エルフを買ったせい。要は無駄遣い。

アセロラ
職業的相性で負けてしまった。普通に戦えていれば、腕ぐらいは斬り落とせた。
スレイブの派生職業のリベレーターを習得していれば勝ち目があった。
奴隷時代がトラウマ。

ガゼフ・ストロノーフ
個にして最強の武技疑惑のある〈閃光烈斬〉を初お披露目。
どんな武技かはオバマスを参照。

アレーティア
私が来た!!
スキルに〈天賦の才(オールマイティ・ジーニアス)〉があるからシナジーあるなと思ったのでついやってしまった。
アセロラが負けることは全く予想していなかった。


感想や高評価などいただけると大変励みになります。次回でエルヤーが分からされる予定なので、どうぞよろしくお願いします。
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