転生したらオバロ世界のエルフだった件について 作:ざいざる嬢
UAとお気に入りがものすごいことになっていました。
読んでくださる皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです。
今回難産でしたがお楽しみいただけると嬉しいです。
アレーティアの年齢が暴露されてからしばらく、ジルクニフとフールーダはアレーティアを別室に待機させ情報の照らし合わせを行っていた。
エルフの国出身、年齢に見合わぬ実力、人間性など…。少ないながらも今後帝国で受け入れる人間──エルフの娘だ。知っておくに越したことはない。万が一ということもある。
「アレーティアを受け入れると言ったのは爺だったな。強者を帝国に引き入れるという目的は分かったが彼女は何者なんだ?明らかに常軌を逸した強さを持っている。とても同年齢とは思えん。何か気がついたことはないか?」
「…恐らくですが、エルフの王族には他のエルフとは違う特徴を持った人物がいると聞いたことがあります。それを前提にすると
「彼女はエルフの王族と考えられるわけか…。エルフは今スレイン法国と戦争の真っただ中だと聞くが?」
「彼女はその戦争であれだけの実力を身につけたのかもしれません。その辺りの情報は詳しく調べてみなければ分かりませんがしかし…」
「藪を突く可能性がある…か。スレイン法国を敵に回すのは避けたいところだ。」
アレーティア・ホウガンと名乗ったあの娘、恐らくスレイン法国が狙っている可能性がある。法国は人間統一国家、人こそが神に選ばれた種族という宗教概念を持ち、人以外の他種族──特に今はエルフ──は殲滅すべしで纏まっている国だ。法国もエルフの国との戦争の最中、彼女相手に甚大な被害を受けていて六色聖典などを派遣していてもおかしくないと思えるだけの力を秘めている。推測が正しければ対エルフとしては王族であり強者である彼女は何としてでも排除したい相手だろう。
ある程度情報を絞り出したら、法国に売り渡し国同士の関係を良くするという外道な策もあるが帝国とアレーティアとの力量差的にそれは不可能。逆に返り討ちに会うのが関の山だろう。
それにフールーダはそんなことをするために彼女を帝国に招いたわけではない。あれを野放しにしておくのは危険だ。だが彼女はその力でなにかを起こそうとはまだしていない。ならば帝国でその力を奮ってもらおうとあの条件を提示したのだ。
「爺、近隣諸国、及び爺が知る限り過去にアレーティア程の強さを持った戦士はいたか?」
「いいえ、近隣諸国ではとても思いつきません。しかし、200年前ならば十三英雄や魔神が争っている時代。その当時ならそれだけの強さを持ったものがいてもおかしくはないかと。」
「であるなら決まりだ。アレーティアは帝国で囲う。法国にバレないよう色々と工作する必要がある。爺、協力してくれるな?」
「勿論ですとも陛下。」
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帝国の一室で待たされているエルフ、アレーティアです。
ジルクニフとフールーダが私の処遇を決めるのでこの部屋で待っていてくれと言われて体感で1時間ほど経過しました。
ここはバハルス帝国の首都アーウィンタールの皇城。流石豪華な作りをしています。エルフの国の王城とはまた違った良さがあります。
待たされている間に出された飲み物、これは美味しいですね。前世ではよく飲んだ甘い飲み物。飲んだ感じレモネードに近いと言えば伝わるでしょうか?程よく甘酸っぱい感じがいいですね。この世界に転生してからは甘いものといえば果実とそれを搾って作ったジュースぐらいでした。クソ親父のお陰か質のいい物をよく飲めましたけどあの果物、少なくとも森に生っているのを見たことがないんですよね。何処で手に入れて来たんでしょう?
さて、飲み物を飲むと思い出すのは原作の帝国の面々にナザリックが出したウェルカムドリンク。アレはきっとこれよりもずっと美味しいのでしょう。今後どうするかは別として味は気になります。機会があれば飲んでみたいですね。
そんなことを考えているとようやくジルクニフとフールーダが話を終えた様で皇帝の私室に呼び出されました。私室に招かれるって確か相当信頼した相手にしかしないとか聞いたことがある気が…。ともかく、執事──多分秘書官──の方に案内していただき居室へと辿り着きました。
「やあ、待たせてすまなかった。こちらへ掛けてくれ。」
豪華なソファーにゆっくりと腰掛けます。やはり高級品、座り心地は最高です。さて、ここからどういう褒賞になったのかを確認していきましょうか。
「まず最初に、フールーダからは帝国での生活面での最大支援。衣食住の提供、ここまではいいだろうか?」
「ええ、勿論です。正直それだけでも大変ありがたいのですけど。」
「いやいや、そうもいかないさ。そして、礼金として手始めに白金貨50枚を進呈したい。ん?少ないと感じるかい?金貨で渡してもいいと思ったが、そうすると金貨500枚と嵩張ると思って白金貨にしたのだが…ここはまあどちらでも価値はあまり変わらないだろう。好きな方を選んで欲しい。」
あ、顔に出てたっぽいですね、たった50枚かって。でも、金貨で500枚…確か金貨1枚で現実値段で換算すると10万円あたりでしたっけ?貨幣価値は王国と帝国で変わらないっていうことぐらいしか覚えがないので合ってるかどうかは不明ですけど単純計算で5000万円程でしょうか?これだけあれば当面の生活にも困りませんね。万ではなく兆ならもっと嬉しかったのですがそれは欲張りというもの。でも5000兆円欲しいでしょう?
「では白金貨を40枚、金貨を100枚でお願いします。」
「ああ、構わないとも。…しかし、そのような半端な量を分けるのは何か理由でも?」
「いえ、保管は楽でしょうけど、あまり額が大きすぎると使いづらいでしょう?それなら、貯蓄と普段使いで分けておこうと。」
「なるほど。思ったより現実的な考えを持っているようだね。」
「普通だと思いますけど…。これも文化の違い、というやつですかね?」
「エルフと人の価値観の差か、それとも地位的な差か、色々と想像はつくがまあ良しとしよう。それから、住居についてだが…」
ここからジルクニフの目つきが変わりました。本題ということでしょう。何を言われるのかちょっと不安です。
「知っているかどうかは分からないが、私は皇帝になったのはおよそ1年ほど前でね。それから、無能な貴族などを順々に廃して平民でも有能な者なら取り立てようと努力しているんだ。…しかし、当然そんなことをすれば貴族にとっては都合が悪く暗殺者などを仕向けられるのは日常茶飯事と化している。」
なるほど。原作の“鮮血帝”の呼び名の由来が皇族である肉親の処刑、そして今行なっているであろう無能な貴族の粛清。つまり、ジルクニフは
「無論、普段はフールーダや近衛が侍っているが今回のようなことがあり警備が手薄になってしまうこともある。そこで君さえ良ければ私の…いや、帝国のために力を貸してもらえないだろうか?もちろん、今回の件とは別に報酬は用意する。もし帝国の手を取ってくれるならこの宮殿の一室を与えよう。それと貴族位と領…」
「いいですよ。」
「え?」
「いいですよ。身辺警護をする代わりに、私の望みを叶えることを対価としていただきます。これでいかがでしょう?」
ジルクニフが呆気にとられた表情をしている。多分断られると思ったのでしょう。それとももっと条件を吊り上げられるとか考えていたのかもしれません。しかし、それは与えられるだけの一方的な関係になってしまいます。私が望むのはWIN-WINな関係です。
それに帝国に居ることで何かしら変化を起こすことができるかもしれません。原作を変えよう!という気はありませんが、きっとジルクニフの悩みの種を少なくすることぐらいはできるでしょう。
「あ、ああ。ちなみにだが望みというのは…。」
「そんなに身構えなくても大丈夫ですよ。望みといっても様々です。あれが食べたいとか、欲しいとか。
私の差し出した手をジルクニフ…陛下は恐る恐る握る。これで契約成立。
こうして私のバハルス帝国での生活が始まるのでした。
ジルクニフとアレーティアの会話中、フールーダは置いてきた騎士と弟子たちに帰還指示を出しに戻ってます。置いてきちゃってますからね。
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