転生したらオバロ世界のエルフだった件について 作:ざいざる嬢
ジルクニフ、ドンマイ……。
お前がアレーティアと結ばれるには障害があまりにも大きいし多すぎるのだ。
「……ということで、エ・ランテル領内を案内して上手いこと帝国へと組み込めないかなと」
「……これで全て繋がりました。アレーティア様がエ・ランテルの発展にここまで力を入れてきたのか。他種族を受け入れられるだけの環境を整えようとしていたのかも。 あの
はい、今私はベッドに腰掛けるラナーの前で正座をし、ナザリックに関する情報共有を済ませていました。
え?構図が説教を受けている子供みたいだって? その通りです。さっきまで約束は守るものだと怒られていました。ごめんなさい。
当然ながら情報の入手先も問われたので、全てツアーと漆黒聖典の捕虜(一人は元漆黒聖典)から得た情報だと誤魔化しました。原作知識とか前世の記憶とか言ったところで信用出来るものではありませんからね。
「で、アレーティア様、そのナザリック地下大墳墓と戦って勝てる見込みは?」
「無いですね。ゼロ、虚無、可能性のカケラもありません。 まだ一対一なら私が全力で戦えば倒せるとは思いますけど、万が一でも倒したらエゲツない報復が待ってます」
「なるほど……だから懐柔したかったわけですね。 しかもその上で私並みの智者が複数いるとなると……」
流石のラナーも苦々しい表情をしています。 正直ナザリックと敵対するなら原作で天敵だったらしい『セラフィム』とかいうギルド拠点でも持ってこないと対抗出来ないと思うんですよね。
二十を含む世界級アイテムを十一個保有している時点で文字通り格が違うんですよ。私ですら運良く一つ手に入りましたけど、この世界で私が知る限り他にある世界級アイテムは八欲王の居城エリュエンティウにある推定世界級アイテムの
その代わりに始原の魔法がある?その使い手が私の知る限りツアーしかいないんでダメですね。
「一応確認なのですけれど、そのナザリック地下大墳墓の主人は見た目こそ異形……アンデッドであるものの、中身は凡人という認識で大丈夫ですか?」
「厳密には魔法の知識だったり、特殊な知識は持っていますが精神は一般人そのものですね」
アレを凡人と言っていいのか分かりませんが、概ね間違っていないでしょう。福利厚生なんかはしっかりしてましたし、帝国でメイドを雇った時は……確か週休二日制度を採用していました。 まあ、アレはブラック企業に勤めていたヘロヘロさんの影響が大きかった気もしますが、他のプレイヤーへのアピールも兼ねていたんでしたっけね?魔導国もその一環だったはずですし。
なお、前世持ちの私はそういったところをどうしているかと言えば、騎士団については四日に一度休日を設けています。給金も帝国での基準より上の額に設定してますし、日頃の成果──武技の修得率や相応の実力を身につければ──次第では色をつけて支払ってます。
ついでに言えば新たな武技を開発し、それが有用ならばその武技の教導職を与え追加報酬を支払っています。なので、騎士たちはこぞって武技の研究……研鑽を続けている次第です。 最近の例だとナザミの〈南山不落〉なんかがそうですね。〈不落要塞〉の更に上の武技で、私の通常攻撃でも耐え切れるほどの性能を誇っています。まあ、本気でやれば突破出来るんですけど。
「それならまだやりようがある……アレーティア様と同程度の価値観を持っていると仮定して………」
おっと、話が逸れましたね。 こうして見るとラナーもかなり本気で取り掛かってくれているようで安心します。
「……後は直接会って話してみないと分かりませんね。 エ・ランテルに招待するのはいつなのですか?」
「三日後の予定ですね。 最初はエ・ランテルを巡ってもらって、後にモンスターとの共存に成功した村々を見学してもらおうと思ってます。
そうすれば、労働力の貸し出しという形で友好的な関係を築くきっかけになるかなと」
アインズ様はアンデッドなら疲労しないからとやたらと推してきますけど、出来ればアンデッドは人のいない地域で──それこそ、アゼルリシア山脈のドワーフ国とエ・ランテルを繋ぐ坑道を掘るのに手伝ってほしいんですよね。あそこは罪人だらけなので別に気にする必要もありませんし。
後は偽のナザリックを作る時に悪魔だったりゴーレムなんかは借りられればとても役立ちそうです。ゴーレムは私も創れますけど、多分あっちの方が性能は上でしょうから。
「三日後……分かりました。その時は私も同行させてもらいます。
それと……今回のことは流石に私たちだけで対応するわけにはいきません。皇帝陛下と例の協力者とも連携をとるべきです」
……まあそうですよね。報連相は社会人の基本ですから、しないといけませんね。特にジルクニフからは念押しされてますから。
例のスマホもどきを取り出し、とりあえずツアーに連絡しましょう。 ジルクニフはラナーを連れて直で会いに行った方が早いです。
「もしもツアーズ?」
『む?これが鳴るということは……君か。一体何の用だい? 君の鎧の件のことなら、私ではあれ以上の強化が出来ないから他の竜王に協力を──』
「時間が惜しいんでざっくり説明しますね。 プレイヤーとギルドが私の拠点近くに現れたんで、私がミスったら対応お願いします」
『………………は?ちょ、ちょっと待っ』ブツッ
「これで良しと」
「本当に良しとしていいんですか……?」
いいんですよ。ツアーだって私を上手いこと使って鎧全部バージョンアップさせたんですから。ついでに言えば鎧の他にツアー専用の武具としてルーンの杖も沢山作ったんですから、これぐらい雑に扱ってもいいはずです。
まあ、代わりに私の理想の鎧も出来上がったんで、いずれお披露目しようと思います。本音を言えばパワードスーツを作りたかったんですけどね。妥協してます。
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そして翌日、ジルクニフに連絡を取り国を揺るがす大事態が起きたと緊急会議を開くことになりました。
参加者は私とラナー、ジルクニフにフールーダ、その高弟たち。四騎士であるバジウッド、ナザミ、ニンブルの三人。そして帝国騎士団の総まとめ役である将軍に、ジルクニフが重宝している有力貴族と中々にメンバーが揃っています。
「早速だが、会議を始めよう。 ではアルス、何があったかを話せ」
普段なら元の性別で参加する会議ですが、今回は騎士以外もいるのでアルスモードです。ジルクニフからのアルス呼びって中々新鮮ですね。癖になりません。
「先日の夜中、エ・ランテル近郊の平原にとある人工建造物──墳墓が何の前触れもなく現れました。
墳墓から執事、メイドと思われる男女二人が現れ、周囲一帯を何やら調べているようだったので接触し、その墳墓を治める人物と対談をしました」
「墳墓に執事にメイド? そんな趣味のわる──ッ!!?」
貴族が馬鹿な事を言う前にスキルで威圧し黙らせます。
お前誰がこの場の話聞いてるか分からないのに不用意なこと言うんじゃねえ!!うっかりアインズ様が聞いてたらどうするつもりなのさ!? 念の為、そういうことがないようにスキルで盗聴やら覗き見を防止するための魔法を強化しているとはいえ、絶対じゃないんだからな!!
「失礼、相手に聞かれている可能性もあるので不用意な発言は避けてください。 私も相手の怒りを買いたくないので」
「……この部屋はアレ……アルス殿自ら魔法で防御していると聞いておりますが」
「正直、それでも足りないと思っています。
先に言ってしまいましょう。その墳墓の主人であるアンデッド──名をアインズ・ウール・ゴウン。 多くの異形種──所謂モンスターを従えているアンデッドです。恐らく私でも勝てません」
そう言えばこの場にいる私と事前に話を聞いていたラナー以外の全員が戦慄しました。
帝国最強の個人、粛清騎士ですら勝てない存在が急に現れたなどと言われても俄かには信じられないでしょうが、それを言うのが私なのでより深刻さが伝わるという……ラナーの策です。
「お前でも勝てない……だと?」
「はい。更に絶望的な情報を叩きつけると、最低でも私と同格かそれ以上の強さを持つ者があの墳墓には十名ほどいます」
「はあッ!?」
ジルクニフが冷静さを失っています。 四騎士や将軍、フールーダの高弟たちも顔を引き攣らせています。貴族たちはと言うと……驚愕というより唖然とした顔をしてますね。しっかりしてくださいな。
「ここで、かつての王国との戦争で捕らえた法国の特殊部隊に所属していた暗殺者と白金の竜王から提供された情報を共有させていただきます」
ここで『百年の揺り返し』についてと、六大神や八欲王の情報を共有します。法国でも上層部にのみに──一度は大衆に伝えて暴動が起きたらしいですが──口伝として伝え続けられてきたことなので、帝国の上層部で共有しても問題ないでしょう。漏れたら揉み消します。
ああ、私が八欲王の子孫ということは黙っておきます。こっちは色々と面倒なので。
「神、か……」
「なので、現状敵対した場合まず間違いなく帝国は滅びます。 その対策を──」
「対策……出来るものなんですかい?そんな相手に」
恐る恐るバジウッドが私に問いかけてきました。 まあ、不安ですよね。私以上の強者が突然何人も現れて敵対したら勝ち目がないとか悪夢そのものですし。
「敵対するのならば、不可能です。いくら周辺国家で手を組んで挑もうが一蹴されます。
ただしこれはあくまで敵対するならば、の話です」
「……帝国に抱き込むつもりなのか?」
お、流石ジルクニフですね。話が早くて助かります。
「そのつもりです。 幸い、アンデッドとはいえ話が通じる理性的な人物でした。現状、人間を弄ぶようなことはしないでしょう。
ただ、それでも相手はアンデッド。油断ならない相手に違いはありません。 なので……万が一のことがあれば私が持てる全てを使って押し留めます」
私の言葉にザワついた空気になりました。
「し、しかし先程粛清騎士殿は勝てないと……」
「誰が戦うと言いました? ただまあ、それはあくまで最終手段です。勝てはしないものの、
単騎でナザリック攻略なんて二十クラスの世界級アイテム持ってないと無理ですから。確か
それはそれとして、そんな世界級アイテムはありませんが、私には原作知識という最大の武器がありますから勝てないまでも
「なので、しばらくは私とラナーで彼らを帝国へと帰属するように行動します。 詳しい話はラナーからしてもらいます。ラナー、後は任せましたよ」
「はい。お任せください旦那様」
後はラナーに任せます。 私がやりたいことを思いついて、ラナーが計画、立案して実行する。完璧ですね。
後は私もナザリックの目を惹くようなものを用意して……あ、フールーダにも個別で話をしないといけません。 アインズ様に会ったら帝国を裏切るかもしれないので、今のうちに念押ししておかなければ。まあ、裏切ったら殺せばいいんですけど。
「待て待て、何処へ行く気だ?」
「へ?」
「お前が一番の大役だろうが。会議に参加しろ。面倒だからと抜け出そうとするな」
バレテーラ。 だからと言ってこの場を離れることを私はやめません。何故なら私にはエ・ランテルでやることが山ほどあるので!騎士団やらモンスターと共存している村とかカルネ村とか色々と!
「私には使命があるのでッ!〈転移〉!」
「おい待て!逃げるな!逃げるなァァァアアアッ!!」
ジルクニフの叫び声を尻目に私はエ・ランテルへと転移しました。
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会議を後にしたアレーティアはエ・ランテルに戻り、ルミリアと共にアインズ達を案内する場所や施設を選定し、予め訪問があることを伝えたり、モンスターと共存する村々へ現地を任せている騎士や神官、魔法詠唱者へ視察に行くことと注意事項を伝えるなど、慌ただしい時を過ごしていた。
これもそれもアインズ達ナザリックと敵対しないため。なんだったらこのエ・ランテルを明け渡してもいいとも考えていた。
しかし、アレーティアは失念していたことがある。
原作ではナザリックが転移して数日後に、王国戦士長ガゼフ・ストロノーフを誘き出し抹殺するためにスレイン法国の特殊部隊、六色聖典が一つ陽光聖典が動き出すことを。
ただ、この世界において既に王国は帝国に併呑されており、そのようなことをする必要もなく、それ故にアレーティアも警戒していなかった……のだが、ここでアレーティアが介入したことによって生じた法国の不安要素が爆発した。
原作において、超位魔法〈
法国では人こそが神に選ばれた種族で、他種族は殲滅すべしという理念を掲げているため、数多の亜人族が暮らす評議国とは関係は悪い。
王国を挟むことによって隣接を避け民意を抑えることが出来ていた……のだが、ここでイレギュラーが生じてしまった。
法国の目と鼻の先でもあるエ・ランテルの領主がアレーティア──粛清騎士アルス・ティアーズ辺境侯になってから、多くの改革が行われ目覚ましいほどの発展を遂げた。
その中の一つ──モンスターと共存する村というのが法国の民の目に触れてしまった。更に言えばエ・ランテルでは人間ではない亜人やエルフ、ドワーフまで人間に混じって生活しているという。
それは法国の理念では決して許されないことである。
勿論、法国上層部は粛清騎士の怒りを買いたくないため、しばらくは様子見し後々帝国との交渉で不可侵条約を取り付ければ良いと判断していた。 しかし、民意は違った。そういう判断を下さなかった。
それ故に──アレーティアも帝国も知らないところで悲劇が起きてしまった。
そして、それが──法国の破滅の始まりだった。
アレーティア
ナザリックを接待するため大忙し。贈り物はルーンのマジックアイテムかザイトルクワエの木材にしようと考えているが、それどころではない事態が近々発生する。具体的にはアレーティアがマジギレする。
ラナー
アレーティアの頭脳担当。彼女に任せておけば安心。
ナザリックが来ない世界線だと……。
ジルクニフ
【悲報】ジルクニフルート消滅のお知らせ。
厄ネタがやって来るわ、アレーティアはいつも通りだわで振り回されるのは変わらず。
ただ、禿げにはならないからそこだけは温情。胃は近々激痛が走ることになる
スレイン法国
陽光聖典が来ない代わりに、民意が暴走。やらかす。
今年も拙作を読んでくださり、ありがとうございました。恐らく今年最後の投稿になります。
よいお年をお迎えください。
感想、高評価などいただけるとお年玉を貰えた子供の様に喜びますので、どうぞよろしくお願いします。