転生したらオバロ世界のエルフだった件について   作:ざいざる嬢

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書いてたら文字数一万超えてた……。

今回でようやくオーバーロードっていう作品を書けた気がしますね。

そういうわけで今回は鬱回になりますので、苦手な方は次回を待つか、あとがきまで飛ばしてください。



辺境騎士アンドレ

 

 

 アルス・ティアーズ辺境侯が割譲されたエ・ランテルを治めてから領内に存在した村での生活は大きく変わった。

 まずはそれぞれの村に騎士と魔法詠唱者(マジック・キャスター)が派遣された。そして騎士が中心となり村全体を治めることになったという。 これには元々村を治めていた村長が反発したが、この地を治める貴族──アルス・ティアーズ辺境侯からの遣いであり命令でもあったため聞き入れられることはなかった。

 しかし、彼ら村人達の生活が脅かされることはなく、逆に安心した生活を送れる様になった。

 派遣された騎士や魔法詠唱者は実力者で時折現れる亜人──ゴブリンやオーガ、モンスターは悉くが蹴散らされた。

 それだけでなく、辺境侯の意向で定期的に神官が訪れるため病に倒れ死んでいく者が減少し、村の人口の増加に繋がることとなった。 また、村を治める騎士からは自衛の手段を教えられ、冒険者とまではいかないがそれなりに戦える男達も増えていった。そうした力強い男に女達は自然と惹かれ一時結婚する者が増えたという話もある。

 

 またしばらくして、今度はモンスターや亜人を受け入れてほしいという辺境侯からの命が届いた。 これには流石に多くの村人達が反発した。村にモンスターを受け入れて、襲われたらどうするのだと。

 確かに村の男衆は自衛する手段を得たが、戦えるかどうかと言われれば話は別だ。隣人として受け入れられるとは思えない。

 しかし、そんな不安はアッサリと払拭されることとなった。新たな隣人としてこの村に来たのは森精霊(ドライアード)とトレントと呼ばれるモンスターだった。 森精霊は子供ほどの大きさしかないが、普通に言語が通じた。そして大木のモンスターであるトレントとは言葉は交わせなかったものの、森精霊を介することで簡易的にだが意思の疎通をすることが出来た。

 そうして隣人が受け入れられたのを機に、新たな計画が発表された。 それは森精霊の協力による新たなる作物の育成。及び、今まで育てていた作物の増産だ。

 聞けば森精霊は植物の管理に長けており、彼らの協力を得られれば多くの作物が育てられるという。これが成功した暁には税の支払いを減らしてもいいという辺境侯からの依頼を断ることはなかった。

 結果的に計画は上手くいき、作物の収穫量は例年よりも増加し村は豊かになった。飢える者はなく、モンスターと手を取り合い生きていくことの素晴らしいことか。 十年も経てば、この村も村ではなく町として発展出来るかもしれないと、その村を治める騎士は朗らかに笑った。

 

 そんな矢先だった。 この村が亜人でもモンスターでもない『人間』に襲われたのは。

 

 

 

 

 

「異教徒を抹殺するのだ!」

 

「穢らわしいモンスターや亜人を優先的に狙え!」

 

 突如現れた六大神の紋章を掲げた集団は馬を駆り、その手に持った凶器で森精霊(ドライアード)へと斬りかかった。

 

「や、やめろぉッ!」

 

 間一髪、農具を持った村人がそれを防ぐために森精霊の前へと躍り出る。 こうして咄嗟に人ではないモンスターである森精霊を守るために体を張れるぐらいには、森精霊はこの村に受け入れられてきた。

 しかし、庇い初撃を凌ぐことは出来ても続く攻撃を防ぐことは出来なかった。斬りつけられた村人はそのまま地面へと倒れ伏してしまった。だが息はまだある。

 それを見た襲撃者は忌々しいものを見たとばかりに憎々しい表情を浮かべ──

 

「モンスターなど庇う異教徒に慈悲などない! 死ねい!」

 

「ぐふぅっ」

 

 村人はそのまま胸を刺し貫かれ絶命した。あまりにも呆気ない最期だった。

 

「そ、そんなっ!? どうして、どうして彼を殺したんですか!?一緒に生きていただけなのに!!」

 

 目の前で親しくなった隣人を失った森精霊はたまらず叫ぶ。 別に悪いことをしたわけでもない。 ただこの村で人と手を取り合って生きていただけだと涙ながらに訴える。

 

「……モンスター風情が人と同列になったつもりか? 思い上がりも甚だしいッ!」

 

 そんな森精霊の訴えもこの男たちには通じなかった。 彼らの教義では人こそが神に選ばれた種族であり、それ以外の全ては殲滅すべきというものがある。 それ故にこの森精霊の訴えもただの不快な鳴き声にしか聞こえない。彼らは教えを疑わなかった。だからこそ、このような暴挙を起こしたのだ。

 

 再び剣が森精霊へと向けられ、振り下ろされる。 森精霊は逃げられずその剣によってもたらされる結末を受け入れようとし──

 

 

 

 

 

「私が任された村でこのような蛮行……許せぬ!」

 

「りょ、領主様!」

 

 間一髪でその結末は防がれた。

 現れたのはこの村を任された騎士アンドレである。 そしてその後ろには魔法詠唱者が一人。彼はアルベリヒ、この村で騎士の補佐を任された人物だ。

 

「モンスターを庇うだと? 異教徒めが……その罪、この剣で贖ってやろう!」

 

 構わず再び剣を振るう襲撃者だったが、この村を任されたアンドレには遠く及ばず──

 

「武技〈流水加速〉」

 

「あがっ!?」

 

 あっという間にその肉体を三つに斬り分けられてしまい絶命した。

 

 

「後ろは任せたぞアルベリヒ! それとエ・ランテルに緊急の連絡を! もしかすると他の村も襲われているかもしれん!」

 

「応とも! 〈鎧強化(リーンフォース・アーマー)〉、〈下級筋力強化(レッサー・ストレングス)〉 武運を祈るぞアンドレ!」

 

 

 エ・ランテル領内において、村に派遣された騎士や魔法詠唱者はアルス・ティアーズ辺境侯によって実力が認められ、その村を上手く治めることが出来れば新たに領地と一代限りではあるが爵位が贈与されることが皇帝ジルクニフの認可のもとで決まっている。

 認められる条件は幾つかあるが、その一つに最低限度の強さを持つこと──冒険者でいう白金級程度の実力が求められている。 かの帝国四騎士や辺境侯の集めた精鋭鮮血騎士の様に一騎当千とまではいかないが、雑兵程度なら軽く蹴散らせる。 更に厳しい訓練に耐えた彼らは数多くの武技を扱うことも出来るため、下手な冒険者よりも腕が立つ。

 

「オオオオッ! 武技〈斬撃〉!」

 

「ぐぎゃあっ!?」

 

 アンドレの武技が襲撃者の鎧ごと体を両断する。 アンドレの持つ剣は村を任される際に辺境侯から贈られた自分専用のものだ。鎧もマジックアイテムも全てそうだ。

 

『あなたには期待していますよ』

 

 帝国最強の存在が自分を──このアンドレの活躍を期待してくれている。 それだけでアンドレのこれまでの苦労が報われたというものだ。

 

「く、くそっ! こいつ強いぞ!」

 

「焦るな!数では我々が勝っているのだ!囲んで叩け!」

 

「その程度で俺を倒せると思うな! 武技〈回転斬り〉!」

 

「「「ぎゃああああっ!!」」」

 

 

 

 ○

 

 ○

 

 ○

 

 

 

 

 騎士アンドレは平民の出だった。騎士に憧れ、帝国最強の騎士を目指し日々鍛錬を積んできた。

 しかし、その壁は高く分厚かった。騎士にはなれたがそれまでだった。彼は凡庸だったのだ。

 彼に転機が訪れたのは数年前のことだった。皇帝ジルクニフが即位し、それと同時に現れた粛清騎士という()()()。話によればカッツェ平野に現れ、帝国へと侵攻していたアンデッドの大群を一人で殲滅し、皇帝陛下により騎士へと──それも騎士団を差し置いて側近とした。

 アンドレは突如現れた粛清騎士が気に入らなかった。陛下に気に入られただけで側に置かれたあの存在が。他の騎士たちも同様だった。

 ただ、その認識はすぐに覆されることとなった。

 

 

 

『その程度で国を守るとかナメてます?私のいた森だったら死んでますよ?』

 

 

 

 粛清騎士による帝国騎士団との交流を目的とした模擬戦。参加した騎士、将軍全てを蹂躙することで、その強さをこれでもかと思い知らされた。

 

 

『あなた方には覚悟がない。命を捨ててでも帝国を、陛下を護るという覚悟が。だから私から逃げるのです。もし私が陛下の命を狙ったとしたらどうするのですか?陛下を見捨てて逃げるのですか?答えは不要、行動で示しなさい』

 

 

 それから陛下の介入によってこの騒動は幕を閉じた。同時にアンドレを含む多数の騎士に畏敬の念が生じたのは言うまでもなかった。

 

 

 

 それからまたしばらくして、四十人ほどの騎士たちが選抜され粛清騎士による強化訓練へと赴くことになった。

 新たなる階級──粛清騎士を除いた皇帝直属の四騎士を選抜するための訓練にアンドレは選ばれた。

 訓練は過酷なものだった。 いや、過酷ではなく地獄だった。

 予定していた訓練内容を無視していきなりギガントバジリスクと戦わされたり、疲れ果てた矢先に粛清騎士と一対一の訓練。 一度は予定通りの訓練に戻ったかと思いきや、闘技場の武王と同じ種族の“愚か者()”なるモンスターと戦わされたり、森の中で奇襲してくる粛清騎士を相手取ったりと滅茶苦茶なものばかりだった。

 挙句、本来一ヶ月の予定が半月ほど延長することになったと決まった時には「誰かあれを止めてくれ!」と願わざるを得なかった。

 

 とはいえ、この訓練を乗り越えたことでアンドレだけでなく他の騎士たちも腕を上げたのは事実だった。

 しばらくして四騎士が選出されたが、残念ながらアンドレが選ばれることはなかった。 悔しく思う気持ちはあったが、選ばれたのはあの訓練の中でも頭角を現していた者ばかりだったので妬むことはなく、寧ろ俺の分まで頑張れという清々しい気持ちだった。

 

 

 

 それから数年が経ったある日のことだった。 皇城で四騎士の一人であるナザミとバッタリ出会い、酒でもどうだと誘われたのは。

 実のところ、アンドレはナザミのことが苦手だった。 ナザミはあまり多くを語らない寡黙な騎士だ。それに帝国有数の英雄の一人でもある。

 同じ四騎士であるバジウッドはその逆で多弁だ。あの鮮血帝にも軽口を利いたりする。どう考えてもバジウッドの方が付き合いやすい。

 ナザミはアンドレから見て多くを語らない孤高の存在、遠い存在でありそれ故に苦手意識を持っていた。

 そんな相手とサシで酒に誘われるとは思ってもいなかったが、憧れでもあり誇りでもある帝国四騎士の誘いを断るわけにもいかず受け入れたのだった。

 

 場所は変わり騎士達が愛用する酒場へと足を運び、個室へと案内された。

 この酒場は皇帝ジルクニフが即位してから騎士たちの慰安にと用意された施設の一つだ。店の雰囲気もよく、給仕も若いエルフばかり──エルフは見た目が若々しいので実年齢は分からないが──で目の保養にもなる。それに加え、市場では少し高めの酒を手頃な価格で楽しむことが出来ると騎士の間ではよく話題に上がっている。

 

「ナザミさん、四騎士になってからどうです? 相変わらずあの方に振り回されているんですか?」

 

「……ああ」

 

「自分も四騎士になったらそうなるのかと思うと、ちょっとだけゾッとしますね。 あの方は強いが故に滅茶苦茶ですから。

 そういえば、少し前にルミリアと一緒に貴族の粛清に向かって屋敷ごと真っ二つにしたとかいう話を聞きましたけど──」

 

「いや、それは間違いだ」

 

「なんだ、間違いだったんですか。 ならアレは陛下が誇張して──」

 

「テンションが上がったアレーティア様が、全力で武技を使って周辺地域にまで被害を出した上で屋敷を全壊させた」

 

「真っ二つの方がマシだったんですが!? てか、なんでそうなったんですか!?」

 

「……ルミリアがアレーティア様の最強の武技を見てみたいから煽てたら満面の笑みで披露してくれたらしい。 ただ、アレーティア様曰く失敗に終わったらしいが」

 

「それで失敗なんですか……あの方はつくづく底なしだな……」

 

 相変わらず粛清騎士──アレーティア様は話題に事欠かないと内心苦笑いをしながら再びグラスを口へと運ぶ。

 

 アンドレとナザミはそのままポツポツと会話を交わしながらグラスの酒を飲み干していく。

 先日行われた王都における八本指の掃討戦での話は武勇伝と共に虐げられてきた王国民に対する同情の言葉が多く出てきた。

 

「王国の裏にあんなドス黒い邪悪が蔓延ってるなんて思いませんでしたね。 俺も一つ拠点を落としましたけど、その中にいた奴隷たちの扱いの酷いこと……大半が八本指に与していた貴族どもの領地出身だったみたいですけど、領民をあんな扱いをするだなんて呆れてものも言えませんね」

 

「……王国にも陛下のような御方がいればよかったのだろうがな」

 

「崩御したランポッサ三世も聞けば悪政を敷くような王ではなかったそうですが、平民からすればああいう貴族をのさばらせている時点で何をしているんだって思ってしまいますね。

 それに比べて帝国は恵まれていますよ。 鮮血帝、粛清騎士と貴族たちからは恐れられていますが、民を想うならこれ以上ない存在ですから。

 そんな方々のために働ける俺たちは幸せかもしれませんね」

 

 少し気取ったことを言ってしまったとアンドレは顔を酔いと共に赤くしながら新たに酒を給仕に頼んだ。 新たな酒が届き、グラスを手につけたところでナザミが口を開いた。

 

「アンドレ、今日誘ったのには訳がある」

 

「……一体なんの話ですか? 貴方が俺を誘うなんて珍しいこともあるんで、何かあると思っていましたけど」

 

 一度グラスを置き、真剣に話を聞く姿勢を整える。 いくら酔おうとアンドレは騎士だ。ベロンベロンに酔っ払っていざという時に戦えないといった失態を犯さないような心構えは常日頃からしている。

 

「レイナースが四騎士を辞することになった」

 

「……なるほど。そうなると四騎士にまた空席が出来るわけですね」

 

「そこでだアンドレ、俺はお前を四騎士に推したい」

 

「……は?」

 

 何を言っているのか理解出来なかった。 目の前の男、ナザミは帝国騎士で〈勇猛〉の名を持つ最高の騎士だ。 現にナザミを除く他の四騎士、バジウッド、ニンブル、レイナースの三人を同時に相手取っても勝利し、王国との戦争では周辺国家最強と謳われていたあのガゼフ・ストロノーフをも圧倒したという帝国の英雄だ。

 そんな英雄が、自分を次の四騎士にと推す理由が分からなかった。

 正直に言えば、四騎士にはなりたいが同じ四騎士候補の中には自分より優れている者がいることも知っていた。だからこそ何故自分が選ばれたのかを聞き出さずにはいられなかった。

 

「……何故俺なんですか? 他にも四騎士候補とされている騎士はいるじゃないですか。 それこそ──」

 

「ああ、簡単なことだ。 俺がお前が四騎士に相応しいと思ったからだ」

 

「俺が、ですか?」

 

「……確かに四騎士候補には実力的に言えばお前より優れたものはいる。 だが、それでも俺はお前を推すだろう」

 

「……何故?」

 

「お前は四騎士に選ばれずとも研鑽を重ね続け、出来ることを増やしていた。 最近はトーマスに文官としての仕事を学んでいるのも知っている」

 

「なっ!? トーマス……ッ!秘密だって言ったじゃないか……ッ!」

 

「勘違いするな。アイツは何も言っていない」

 

「ならなんで……」

 

「俺がお前を見ていたからだ。 四騎士に空席が出来ると決まった時に陛下とアレーティア様に呼び出されてな。次の四騎士は俺が選んだ騎士にしようということになった。 しばらくは四騎士候補たちを見回り、指導して腕のいいやつを選ぼうと思ったんだが……そんな時に鍛錬を終えたお前を見つけた。トーマスと一緒にいるお前をだ。

 一度は何かよからぬことを企んでいるのかとも思ったが、聞き耳を立てれば何やら文官としての仕事を教えてもらっているようだったからな。それ以上は聞かないことにした。

 それに、お前がやっているのはそれだけじゃないだろう? 時折、魔法省を出歩いているとも聞いた。魔法の知識を得ようとしているのか?」

 

 アンドレ自身、それらのことは隠れてやっていることだった。

 魔法が使えずとも、どんな魔法があるかを知っておけば後に対策を立てることも出来ると、魔法省へと出向いてフールーダの高弟などと親交を深め魔法に関する知識を身につけている。

 学がなくとも、自分たちとは違うところで戦っている文官たちの仕事をひとつでも理解出来れば、後に役立つこともあるだろうと四騎士から文官へと転向したトーマスに教えを願った。

 他の騎士ならそんな時間があるなら鍛錬をするべきだと言うだろうが、アンドレは自分はこれ以上伸びないと限界を感じていた。だからこそ、悪あがきではあるが何か別のことを身につけようと躍起になっていたのだ。

 

「お前は出来る男だ。 きっと四騎士になればその立場に相応しい活躍をしてくれると思っている」

 

 ナザミはアンドレの眼を見据える。その瞳からは真剣にお前に任せたいという思いが視線を通じて伝わってきたのをアンドレは感じた。 帝国の英雄がここまで自分を評価してくれているのに、ここで引き下がってしまってはこの英雄の面子を潰すことになってしまう。 それはいけないとアンドレは決心しそれを受け入れることにした。

 

「……こんな俺で良ければ、その話受けさせてください」

 

「自己評価が低いのは難点だが、そこは追々どうにかしてもらおう。

 すまない、あの酒を──」

 

 ナザミは給仕に何やら注文をし──少しして運ばれてきたのは、高級感があるボトルに入った酒と専用のグラスが二つ。 アンドレは後から知った話だが、この酒は祝い事があった時に振舞われるものの中でも最上位に値するものだ。

 給仕からそれを受け取りグラスへ並々と注ぎ──

 

 

「昇進祝いだ。 遠慮なく飲め」

 

「ありがたく頂戴します、ナザミさん」

 

 二人は共に酒を飲み交わし、その後しばらく酒の席は続いた。

 

 

 

 ○

 

 ○

 

 ○

 

 

 

 それからは激動の日々だった。 四騎士に選ばれたことが広まり、他の精鋭騎士たちからはやっかみを受けたものの最終的には祝われた。

 四騎士として箔をつけるために粛清騎士が治めるエ・ランテルのとある村を治めることになり、この村で領地経営を学んだ後に四騎士の座と爵位と領地──余っている旧王国領──を与えられるという話になっている。 補佐として友人でもあるアルべリヒが共に赴任することとなり、アンドレは慣れないながらも少しずつ村人たちやモンスターと心を通わせ村を豊かにしていった。

 粛清騎士──アルス・ティアーズ辺境侯からは「他の村を任せている騎士たちよりもよっぽどいい成果を出している」という高評価を貰い、同時に()()()()()を提示されたがアンドレはこれを断った。 断りはしたものの、辺境侯は「それがお前の選択ならば仕方がない。今後も期待している」という言葉と、幾らかの金銭──村ひとつを一年養えるほどの額──を与え去っていった。

 「今後も期待している」この言葉を受けたアンドレは嬉しさのあまり涙した。 あの英雄(ナザミ)だけでなく、帝国最強の存在までもが自分を認めてくれた──それだけでアンドレの今までの努力が報われたというものだ。

 

 

 だからこそ、今回のような蛮行を許すわけにはいかない。 アンドレは剣を振るい襲撃者を次々に討ち取っていく。

 襲撃者の数は多い。 正直に言って余裕はない。村に被害が出ることは間違いないが、最悪それは仕方がないとアンドレは割り切る。

 この場において最も重要なのは村人たちとモンスターの命だ。村が焼き払われようと、また作ればいいが人やモンスターはそうはいかない。特にモンスターは元々人と敵対している存在であり、友好関係を築けたモンスターが失われれば、また友好を築くまでにかかる時間のことを考えれば絶対に守り抜かなければならない。 なにより、辺境侯から預かったモンスターだ。失っていいはずがない。

 

「おおおおおおッ!!」

 

 だからアンドレは最前線に立った。俺が脅威だと敵に印象付けるために。

 狙いは上手くいき、襲撃者の多くは自分へと向かってくる。それを次々に斬り伏せる。 次第に襲撃者は恐れをなし、後退していっている。

 

 ただ有象無象がばかりではなく、腕の立つ者も賢しい者もいた。

 

「何をしている! 我々の目的はその騎士を倒すことではない!我らが教義に反する異教徒を断罪することにある! 非戦闘員を狙え!」

 

「何を勝手な……させるものかよッ!」

 

 アンドレは指揮官であろう人物へと突撃する。 剣などは持っておらず、高価そうな法衣を纏っていることから信仰系の魔法詠唱者だろうと当たりを付ける。ならば、こいつを倒せば後の襲撃者は雑魚同然と判断する。

 〈能力向上〉を使用し身体能力を上げ、敵指揮官へと向かい──

 

 

 

 

 

 

 

 目の前に天使たちが立ちはだかった。

 

 

 

 

 

 

 

 アンドレは知らないことだったが、この指揮官はかつて法国の六色聖典の隊員──それも亜人殲滅を主な任務としていた陽光聖典の一員であり、過激な思想から除隊されたという経歴を持っていた。

 そして、その司令官の周りにいるのも同じような存在であり、この一団では際立った実力を持っていた。

 

 

「天使たちよ、悪しきものに裁きを」

 

 

 召喚された炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)がアンドレに襲い掛かる。その数五体。それに加えて召喚者である魔法詠唱者が五人。アンドレは圧倒的不利な状況にあった。

 

「クソッ! 武技〈嵐の──」

 

「させんよ。〈衝撃波(ショックウェーブ)〉」

 

「ぐうっ!?」

 

 武技を放とうとすればその隙に天使が、魔法詠唱者による妨害が入る。かといって、目の前の敵を対処しようにも足止めとばかりにヒットアンドアウェイを繰り返してくるため、倒すのも難しい。

 そうしている間に後ろから村が燃やされる音が聞こえる。 村人の声は聞こえないがアルべリヒは皆を無事に避難所へと非難させることが出来ただろうか?そんなことを不意に考えてしまい隙が生まれてしまう。 当然敵はその隙を見逃さない。炎の上位天使の一撃がアンドレの片目を奪う。 あまりの激痛に悲鳴を上げる。敵の嘲笑の声が聞こえる。

 

 

(ああ、このまま死ぬのか俺は?)

 

 

 アンドレは残った片目の視界に自分の死の気配を感じ取った。 死ぬのは怖くない。この命は帝国に捧げたものであり、帝国を──村人を護るために使えたのであれば本望だ。

 だが、それは守り切った上での場合、アンドレはまだ村人たちの安否を確認できていない。

 

 

(諦めるにはまだ早い。 もう少ししたら、エ・ランテルから応援が来るかもしれない。 予定ではそろそろ見回りに来るはずのロバーデイク様が駆けつけてきてくれるかもしれない。 それまで倒れるな……俺が村を守るんだ)

 

 心を奮い立たせ、剣を握り隻眼で敵指揮官を睨みつける。 そうすると敵指揮官は〈火球(ファイヤーボール)〉を発射し、そこに他の天使たちを追撃させることで逃げ場を塞ぎ確実にダメージを与えてきた。

 

「最早死にかけではないか。 もう時間稼ぎも十分だろう。後ろを見てみろ」

 

 そう促され、前方に警戒しながら振り返れば──そこにあったのは燃え盛る村の姿だった。 燃やされているのは判っていたが、想定以上──全焼しているとは思わなかった。

 これでは村人たちの存命も絶望的──そう思った時だった。 燃える村から武装した村人たちが雄たけびを上げ駆けつけてきたのは。

 

 

「領主様を援護しろ!」

 

「「「うおおおおおおっ!!」」」

 

 

 やってきた村人の多くは中年に差し掛かった者ばかりだった。 この村はアンドレがおらずとも最低限戦える程度の自衛の手段を与えられており、敬愛するアンドレのために命を捨てて駆けつけたのだ。

 同時に駆け付けたのはアルべリヒ。 彼も村人とモンスターの避難を終え援護すべく魔法を放ち、村を焼いた襲撃者たちを仕留めていった。

 

「アンドレ! 避難は終わった!エ・ランテルにも連絡済みだ! もう少ししたら援軍が駆けつけるはずだ!それまで持ちこたえるぞ!!」

 

「……ああ! 後ろは任せたぞ!!」

 

 

 アンドレはアルべリヒから投げ渡されたポーションを浴び、最低限の傷を癒した。片目の欠損はポーション程度では癒えなかったが、体の痛みがマシになっただけでも十分だと判断した。

 そして再び敵と向かい合い名乗りを上げる。

 

「バハルス帝国四騎士が一人、アンドレ。 参る!!」

 

「チッ! 増援が来るとは……だが問題ない。 貴様ら異教徒はここで死ぬのだからなッ!!」

 

 そうして、最後の戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 ○

 

 ○

 

 ○

 

 

 

 

 

 

 

 戦いは終わった。 ()()()()()()()()どれほどの時が経っただろう。

 

「はぁ……はぁ……手古摺らせやがって……!!」

 

 

 

 

 立っていたのは全員襲撃者──スレイン法国の者だった。

 何があったかと言えば簡単な話、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 これにより数の暴力でアンドレたちは押しつぶされ敗れた。

 しかし、アンドレたちもただでは死ななかった。文字通り死力を尽くして元聖典の魔法詠唱者五人の内三人を討ち取り、部隊に相当な損害を与えた。 それにより、この日予定していた他村への襲撃は中止となり、被害はおさまることとなった。

 アルべリヒも魔力が尽きるまで〈飛行(フライ)〉による空中からの魔法攻撃による支援を行なっていたが、魔力が尽きた後に殺害された。

 

「指揮官殿、一先ずこの場を離れましょう。 こいつらは何処かに連絡したと言っていましたし、騒ぎを聞きつけた異教徒共が駆けつけるやもしれません」

 

「……そうだな、そうするとしよう。 だがその前に……!!」

 

 指揮官は憤怒の形相を浮かべ、物言わぬ死体となったアンドレを踏みつけた。何度も、何度も。 彼は計画的に物事が進まないと苛立つ性格だった。アンドレたちによる被害がなければ、このままもう幾つかの村を浄化出来るはずだったと苛立つ気持ちを死体にぶつけ発散した。

 

「余計な被害を出しやがって……! おい!こいつらの死体の首を斬り落として晒し上げろッ! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ははっ!」

 

 

 しばらくして、襲撃者たちは一時態勢を見直すため焼けた村を後にした。

 その村にはアンドレ、アルべリヒを含む十四の首が晒されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは酷い」

 

「…………」

 

「アルス殿、この村は……」

 

「他の村と同様に襲撃されたようですね。 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 目が開いたまま晒されたアンドレの首をアルス──アレーティアは手に取り手を当て瞼を閉じた。 他の首も同様にし、分かたれた身体へと運んでいった。

 

「……ラナー、エ・ランテルに常駐している全ての騎士と鮮血騎士全員に連絡を」

 

 

 

 

 

 

 

「全員生かして返すな」

 

 

 





アンドレ
平民出身で国を守る騎士に憧れて騎士団に入団。地道に研鑽を重ねて四騎士候補まで上り詰める。
その後も自分に出来ることをコツコツと積み重ねて、文官としての仕事をトーマスに教えてもらっているところをナザミに目撃され、後に見出される。
その後、王国の八本指掃討戦での功績も兼ねてエ・ランテルの村を一つ任されて、ある程度経験を積んだ後に四騎士の席と共に領地と爵位を授与されるはずだった。
四騎士になった場合付けられた二つ名は『百錬』。

彼はただ地道に己を鍛え磨き続けた。磨き上げた原石はあと少しで宝石になり得たが、その前に無惨に砕かれてしまった。
砕かれた原石は火種となり、やがて法国を滅ぼす業火へと転じた。


アルべリヒ
帝国魔法省に所属する魔法詠唱者。第三位階まで行使できる。
村人とモンスターたちを避難させた後に自警団を伴ってアンドレを助けるべく参戦し、死亡した。


ナザミ
寡黙というか無口な帝国の英雄。最近では巨王と良い勝負が出来るようになったとか。
アンドレの死に一番悲しむのはこの人。


ルミリア
アレーティアと組むと度々やらかしていた元四騎士、現鮮血騎士。
やらかすことになった原因は大体アレーティアをヨイショするから。それに乗っかったアレーティアが実行するから大惨事になる。

例)最強の武技見たい! → よっしゃ!見せてやる!〈星砕き〉!!
  これってどうすればいいですか? → こうやってドーンってすればいいんだよ! → なるほど!こうですね!
大体こんな感じ。
ちなみにエ・ランテル在住だが、カルネ村を受け持つ騎士の一人でもある。


法国過激派
アンドレの村だけでなく、他の村にも同時襲撃していた。
部隊のメンバーには何人か聖典崩れが存在している。


アレーティア
次回、ガチギレ。
「アインズによろしく」を100とすると、120ぐらい。しかも精神が抑制されないため、更に上昇する。死んでも許さない(ガチ)
余談ではあるが、殴打系最強武技誕生の経緯はまさかのルミリアが原因だったりする。〈土竜叩き〉をもっと強化したら隕石ぐらいのクレーター作れるんじゃない?という思いつきで出来た武技。ジルクニフの胃にも穴が空きかけた案件。ちなみに素手でも撃てるが、威力が落ちる。(小規模の地割れが起きる程度)



展開が展開なので、次はもっと早めに更新できるようにしたいですね。ダークソウルⅢに手を出す前に書き上げられるかな……?頑張ります。

感想、高評価などいただけると励みになりますのでよろしくお願いします!



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