転生したらオバロ世界のエルフだった件について 作:ざいざる嬢
余談ですが、前回の話の元ネタは『黒の魔王』です。
あの作品も好きなんですけどコミカライズは終わってしまい、書籍版も音沙汰無いのが悲しいですね……。アッシュ・トゥ・アッシュの続きが読みたかった……!
一番好きなのはクロノVSリリィ回ですかね。
「は?」
落とされた?アンドレの村が?何故?
原作通りなら時期的にエ・ランテル領内で法国による村への襲撃は確かにありましたが、王国は既になく、ガゼフを抹殺する必要もないので起こらないはずです。 だというのに襲撃?法国にメリットが何ひとつないと思うんですけど……。
「並びに、アンドレと同じ村に駐在しているアルベリヒから他の村にも襲撃があった可能性があるとのことで、各村に連絡を試みたものの連絡が途絶えている村が三つほどありました!」
…………。
やってくれたな。よりにもよってこのタイミングで。
怒りが込み上げてくる。なんで今なんだ。よりによって今日なんだと。
「ひぃっ!?」
「か、鍛冶神様! 怒りをお鎮めくだされ!」
ん? ああ、どうやら怒りのあまり怒気が漏れ出していたようです。
何の関係もないドワーフたちに当たり散らすのはよくありません。 深呼吸をして指示を出さないと──。
「騎士団に連絡を。 私はアンドレの村へと向かいます。 同時にロバーデイクにも緊急で付近の村を見回れと伝えるように」
「は、ははっ!」
さて、折角楽しんでもらえていたのにアインズ様たちには申し訳ないですがここでお開きとさせてもらいましょう。
また別の機会に接待させてもらうか、ザイトルクワエの素材でも納めてご機嫌を取るとします。
「申し訳ありません、アインズ様。 このような事態になってしまったので、案内はここまでに──「アルス殿、よろしければ我々が力になりましょうか?」──え?」
アインズ様はそう言うと虚空から一枚の鏡を取り出しました。確かこれって……
「これは〈
──え?マジで? おっと失礼、つい口調が乱れてしまいました。
現状、私はナザリックに対して魔法を使えることを知られていません。まだ隠しているぐらいです。 なので、現状取れる手段がどうしても時間がかかってしまうため──帝都にいるフールーダを呼び出せばどうにかなりますが──この申し出は願ってもないことです。
ただ、この場でそれをするとアインズ様の護衛がアルベドと私だけになってしまうので、その辺りはどうでしょうか? 外にいるエイトエッジ・アサシンを合流させないとアルベドは納得しないんじゃないかな……?
「アインズ様、それは……」
「アルベド、下がれ。 アルス殿、私の心掛けていることの一つに『受けた恩は恩で返さなければならない』というものがあります。 既に数日前から今日にかけて、私は貴方に多大な恩があります。その全てとは言いませんが、少しでも恩を返させてはもらえませんか?
それにかつての仲間がこう言っていました。──『誰かが困っていたら、助けるのは当たり前』と」
ブルリと私の身体が震えるのを感じました。アインズ様がその言葉を使うというのはかなり重大な意味を持ちます。
たっち・みーという人物はアインズ様──モモンガさんにとってとても大きな存在です。なにせ彼との出会いがキッカケで彼はかけがえのない仲間を、友人を得ることになったのですから。
そんな彼の言葉を引用する程に私は好感度を上げることに成功していた様です。 これは嬉しい誤算ですが、悠長なことは言っていられません。
「よろしいのですか?」
「ええ、もちろんです」
「……アインズ様、ご厚意に感謝いたします。 ゴンドさん、二階の会議室を借りますよ。 それと、すぐに動ける騎士たちを動員し──「旦那様、騎士たちの指揮は私にお任せいただけませんか?」ん?」
またも言葉を遮られました。これはラナーですね。 クライムと実子以外のことで率先して動くなんて珍しいこともあるものですね。 まあ、ラナーに任せれば安心出来ますね。
「任せていいんですか?」
「ええ。 必ず良い報告をお伝えしますわ」
ん?なんだかラナーの表情が若干硬い気がしますが……多分気のせいですね。 一応、村の開拓計画にもラナーは関わっていたので何かしら抱くものがあったのかもしれません。
「それと、念の為蒼の薔薇の皆さんを雇っても構いませんか?」
「別に構いませんよ。 彼女たちがいればより多くの村人たちの助けになるでしょうし」
蒼の薔薇が本拠地をエ・ランテルに移してからは度々お世話になっています。 近いうちに冒険者育成機関の教導を任せたいと思っていたのですが、今回の件でそれは少し先延ばしになりそう……いや、ラナーに頼めばどうにかなりますかね。
私はただ今回のことをしでかした相手をぶちのめすことだけを考えればいいんです。
そういうことでラナーとはここで分かれ、会議室へと向かいました。
早速〈遠隔視の鏡〉を使って──アインズ様の拙い操作を見守りながら──アンドレの任された村へと口頭で案内しました。 すると鏡に映ったのは、焼き尽くされた村の跡。この村はアンドレの村ではない別の襲撃された村です。 あ、馬に乗った騎士たちが見えました。魔法詠唱者の姿も見えるので、多分速度上昇系の支援魔法で馬を強化したのでしょう。それならこの短時間で村まで駆けつけられますね。この場は任せるとしましょう。
そうしてしばらく、他の村の被害を確認しながら最後にようやくアンドレの村と思わしき焼け野原が映りました。
「ここです。 ここに転移させてもらっても?」
「分かりました。 ──〈
○
○
○
「これは酷い」
「…………」
見渡す限り見えるのは燃え尽きた家屋や焼かれた畑。 そして──晒し上げられた幾人かの生首。その中にはアンドレの姿もありました。アンドレの死体は最も損傷が酷く、着ていたであろう鎧や剣は奪われたようです。
ただそれでも最後まで死力を尽くして戦ったことだけは分かりました。
「アルス殿、この村は……」
「他の村と同様に襲撃されたようですね。 ここが一番酷いですが、住民の多くは無事のようです」
見たところ、死体の数はかなり少ないです。ということは、避難所へ逃げ延びた可能性はかなり高いです。そちらも確認しなければなりませんが、まずは彼らの尊厳を取り戻すところから始めなければ。
晒された生首をひとつひとつ手に取り、半開きになった瞼を閉じて別たれた体へと──もう回復魔法でも戻りませんが──返していきます。
私は高位の蘇生魔法を使えます。なんだったら、この状態でも蘇生は容易です。 しかし、安易にそれを行えば命そのものが軽くなってしまうため、そう易々と蘇生することはありません。神殿勢力の意向もありますしね。
ただそれでも帝国にとって失って惜しいと思える存在や私個人が気に入った死んでほしくない人物には、万が一死んだ時に一度だけ無料で蘇生するかどうかを尋ねています。 これに対してアンドレは蘇生を望みませんでした。 この状況ならば全員の蘇生を彼は望んだのでしょう。 しかし、それは叶いません。そもそもの問題、ただの村人では蘇生に必要な生命力が足りずに灰になる可能性が高いからです。
……確かアインズ様は原作でカルネ村での葬儀を見た際に殺された村人全員を蘇生出来るだけのマジックアイテムを持っていたような気がしますが、実際はどうなのか分かりませんし、流石に頼れませんからね。この現状を受け入れるしかありません。
そうして遺体の身体と首を元ある形に戻し、次に村人たち、モンスターたちの安否を確認しに向かいます。
このエ・ランテル領内にある全ての村には避難用の隠し洞窟を用意してあります。防空壕のようなもの、と言えば伝わるでしょうか?
基本的に入り口は私の作ったマジックアイテムで隠蔽されているため、高位の探知系魔法を行使しないと発見は困難でしょう。 そこへと向かえば……どうやらここへの襲撃は無かったようです。マジックアイテムによる隠蔽を解除し、中へと進むと……
「だ、誰だっ!? ……あ、ああ貴方様は!?」
「お久しぶりですね。状況を説明していただいてもよろしいでしょうか?」
「も、もちろんです! それと……アンドレ様たちは……」
「…………」
「……そうですか。 不躾なことを聞いてしまい申し訳ありません」
「いえ、構いませんよ。 では話してください」
真っ先に出てきたのはアンドレが派遣される前に村を治めていた村長です。 何度か顔を合わせていたのでスムーズに対応してもらえました。
そうして聞き出せば、襲撃してきたのは六大神の信者らしく、モンスターと共存しているこの村や他の村はその教えに反するため裁きを下しにやってきたと口にしていたとか。
最初に数人被害が出てしまったものの、迅速にアンドレが対応し襲撃者をバッタバッタと斬り倒し、その間にアルベリヒの指揮の下この避難所まで森妖精を含む全員が避難することが出来たというわけでした。
後は思ったより敵の数が多く、アンドレが不利になることを考えた上で村の自警団から腕利きの男たちが名乗りを上げ、アンドレの助けになるべく参戦しその後は不明ということです。 そして彼らの結末は私の態度から察したようで村長も悲しむ様を見せていました。
話を聞き終えた私は避難所を離れ天を仰いでいました。 まさかこんなことになろうとは思っても……いや、これが原作の強制力というやつなんでしょうか?ガゼフがいてもいなくても形を変えてこういった事態が起こりえると。 そうなると、今回の襲撃の裏にいるのは六大神信仰のこともあるのでスレイン法国、その指示を受けて動いている陽光聖典で間違いないでしょう。
ホント、どうしてくれようかあのクソども。
「アルス殿」
不意にアインズ様が話しかけてきてくれました。どうしたんでしょう?もうお帰りですか?
「あの晒されていた彼らの死体ですが、良ければ我々で綺麗にした後に返還いたしましょうか?」
……ああ、なるほど。
この時点でまだアインズ様は〈中位アンデッド作成〉でデス・ナイトを生み出せることを知っていても、死体がそうなるとは知りません。 それを知るのはカルネ村への襲撃があって自分の盾として使うために呼び出した際に初めて知ることになるので、そういった発想にはならないはず。
そう考えるとこれは本当に善意で言ってくれているのでしょう。
「……よろしいのですか?」
「ええ、私としても……あのような姿で埋葬されるよりも、少しなりとも綺麗にしてあげた方が彼らも浮かばれるでしょうから」
視線の先には亡くなったアンドレたちの遺体に泣きつく遺族や親しい間柄だったであろう村人たちの姿。 中でもアンドレの遺体に縋るように泣きついている女性は見てていたたまれません。
「それでは彼らのことをお任せします。 お礼の方は──」
「それならば先程お願いしたいと思っていたことがあるので、それをしていただけるのであれば構いませんよ」
先程の、というとアイテム作成関連ですかね? まあ、これだけよくしてもらってるので、腕を振るわないわけにはいけませんね。
「ええ、最高の一品を作り上げてみせましょう」
こちらから手を出し、それを見て手を出したアインズ様と握手を交わすことで互いに信頼関係が築けたと思います。
しばらくして〈転移門〉からセバスが現れ、丁重に遺体をナザリックへと運んでいってくれました。
同時に村に騎士たちが到着し、残された村人たちはエ・ランテルへと護送して今後の生活などの案内をすることになりました。新しく村を開拓するか、他の村に移住するかは彼らの選択に任せます。 もちろん、今回の損害における財産の補償もしないといけないので、その辺りも追々していくつもりですが、先にこっちを片付けなければ。
「……ラナー、エ・ランテルに常駐している全ての騎士と鮮血騎士全員に連絡を」
「全員生かして返すな」
自分でも驚くほど低い声が出ましたが、気にしません。
まずは陽光聖典、次に法国。 もう容赦はしない。こうした原作の流れに沿って動くのであれば次に
──その前に全てを終わらせましょう。
ただ懸念すべきは神人二人と世界級アイテムであるケイ・セケ・コゥクですね。 まあ、
特に明確に法国最強とされている漆黒聖典番外席次“絶死絶命”は恐らくレベル百。 原作情報も合わせると、恐らくというかほぼ確実に私の姉に当たる人物なので、私より上なのは間違いありません。
それ以外にも確か六大神の従者が──NPCが最低でも一体いるはず。厳しい戦いになるでしょうが、私も引くつもりはありません。
「私の持てる全てをぶつけてやる」
あの装備のお披露目にもなりますしね。ついでにツアーにも協力させます。嫌とは言わせません。交渉のカードはいくつかありますしね。
……あ、ジルクニフにも報告しないとダメかぁ。 法国滅ぼすって言ったら絶対反対されるからどう伝えるか考えないといけないですね。
それからしばらくして、ラナーから報告がありました。
──襲撃者たちがカルネ村付近に潜伏中、と。
◯
◯
◯
「では、責任を持ってこの遺体の修復を任させていただきます」
「頼んだぞセバス」
「ははっ」
〈転移門〉が閉じ、この場にはアインズとアルベドの二人だけしかいない。 アルスはこの場を離れ何かをしているようだった。
「アインズ様、何故あのような人間風情の死体の修復などを買って出たのでしょう?」
人間風情、という言葉にアインズは無い眉を顰める。ナザリックのNPCたちは基本的にナザリック以外の存在──人間を見下している傾向があるのをアインズは数日前に知った。 それを知った上である程度友好的に接することが出来るだろう──表面上ではあるが──アルベドを護衛にしているが、他のNPCもそうなんじゃないかと思うと頭が痛くなる気分だ。
アインズもこの村の惨状を見て何も思わないことはなかったが、他人が死んでいるのを見ても何も思わないことから自分は身体だけでなく、心も人でなくなってしまったのを実感した矢先。 アルスからとてつもないほどの感情の波を感じた。 怒り、悲しみといった感情がその表情と握りしめる拳、発せられるオーラから。
この時、アインズは──否、鈴木悟は人の心を取り戻した。 遠いあの日、過労で亡くなってしまった母の姿を見た時の自分を思い出した。
(久しく忘れてしまっていたが、あの時の自分もここまでではないがこういった感情を抱いたかもしれない)
そこからはなるべく彼の助けになれるよう手を差し出した。 かつて、ユグドラシルを辞めようとしていた時に助けてくれた
戸惑いこそあったものの、彼はそれを受け入れてくれた。この世界での
「私はな、アルベド。恩には恩を、仇には仇を返すべきだと思っている。
彼との出会いによって我々はこの世界の知識を得ることが出来た。加えて金銭だけでなくユグドラシルにはない技術なども含めて、とても簡単には返せないほどの恩だ。
ならば我々は、アインズ・ウール・ゴウンの名に恥じない行いをすべきだ。 そう、困った時はお互い様というわけさ」
それを聞いたアルベドは深々と頭を下げ、それからは何も言わなかった。
アレーティア
漆黒の意思を持ってスレイン法国を滅ぼすことを決めた。まずは前哨戦。
ここからはガチで戦うし、手加減などしない。
ラナーのやらかしには気づいていない。原作の強制力だと思ってる。
アインズ様
村の惨状を見て酷いと思うも、他人の死についてなんとも思わなかった──が、アレーティアのブチ切れ様を見て人間性を取り戻した。
アレーティアに対する好感度はかなり高い。原作のガゼフ以上至高の四十一人未満。
ラナー
やらかしたものの、全力でリカバリーしている。
アンドレ
死亡。遺体に泣きついていたのは彼の想い人か、それとも家族かはアレーティアも知らない。
ジルクニフ
次回以降の被害者その1
ツアー
次回以降の被害者その2
スレイン法国
今章最大の被害国。大体ラナーのせい。
陽光聖典
原作知識のせいであらぬ誤解を受けた上で滅ぼされることが確定してしまった悲しい特殊部隊。
本当は過激派殲滅のために急遽出動しただけなのに…。
法国過激派
もう助からないぞ♡ ハイクを詠め。
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