転生したらオバロ世界のエルフだった件について   作:ざいざる嬢

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またもや難産でした。

そんな中気づけばUAが70000突破して80000に迫っており、お気に入りも3000を超えていました。

本当にありがとうございます。



バハルス帝国、アレーティアが来てからの日々その2

 

 アレーティアが帝国で暮らし始めて半年が経った。この頃ジルクニフ──鮮血帝の持つ最大戦力の一つ、粛清騎士の名が広まっていた。

広まった話によれば皇帝の命を忠実にこなし、その実力は()()()()()()()()()()()()()()()()。皇帝に暗殺者を仕向けた貴族を容赦なく屋敷ごと滅ぼし、跡には粛清された者たちの首だけが残っていたと言われ多くの貴族に恐れられている。未だ帝国外での活動をしてはいないものの、周辺国家最高位の魔法詠唱者(マジック・キャスター)であるフールーダ・パラダインですら粛清騎士は帝国最強の騎士と認めている。

 ただ、顔は隠されており騎士たちも粛清騎士の素性を外部に漏らすことはなく正体不明の人物というのが周辺国家での評判である。

 そんな、粛清騎士ことアレーティアの生活に迫ろうと思う。

 

 

 

 

 アレーティアの朝は早い。ジルクニフが目覚めるまでには起床し警護を出来る体制を整えている。日中は主にアレーティアが、夜間は近衛騎士が警護を行うという形式で騎士たちと話がついており、場合によって変更はあるがこうした措置が取られている。

 騎士になったアレーティアには武具が支給されており、高価な装備を身につけている。支給されている装備はミスリルやアダマンタイトなど希少金属を素材に作られており、彼女が元々所持していた武器に加え大剣、槍、斧など魔法が付与された武器を与えられている。極めつけは顔に装着されている目元を覆うバイザー。これはフールーダ率いる帝国魔法省で作られた一品。目元を隠すだけでなく耳元をエルフ特有の長耳から人間と同じように見せる幻術が付与されている。

 これにより対外的には人間に見えるようになり、外部の目も誤魔化せるというわけだ。鎧やマジックアイテム、バイザーを身につけ今日もアレーティアはジルクニフの私室へ向かう。

 

「おはようございます陛下。」

 

「アレーティアか、おはよう。今日もよろしく頼むぞ。」

 

「はい、本日も陛下の身の安全はお任せください。」

 

 しばらくすれば秘書官が数人来訪し今日の政務が始まる。新たな案を幾つも上げ一つ一つ吟味し裁決をしていく。余談だが、原作では人間以外だとドワーフまでしか保護されていなかった法案はアレーティアの存在故かエルフも含まれる様になっていた。対外的には奴隷として買われていたエルフが興味深い魔法を使っていたため帝国魔法省に技術提供する代わりに身分の向上を約束した、ということになっている。法国に疑われない様に実際にその役を演じるエルフは用意しており対策は問題ないだろう。優秀なものならどんな者でも利用するのが今の帝国だ。

 

 さて、ジルクニフの執務が始まると同時に警護中のアレーティアが何をするかと言えば勉強である。如何に前世があり知識があろうとも、転生し生まれた場所が場所だっただけに言葉は理解出来ていても文字は読めないのだ。

 帝国では帝国魔法学院が設立されているが、そこに通うと警護が出来なくなってしまうという理由をつけてこの場所でのんびりと自己学習に耽っている。分からないところがあればこの場にいる優秀な秘書官たちかジルクニフ本人に聞けばいい…という目論見もあるが。執務の邪魔になる、という風には考えないアレーティアである。

 

「アレーティア、そろそろ昼食にする。」

 

「はい、ご一緒させていただきます。」

 

 執務が進み程よくキリがいいところで昼食の時間。あらゆる改革を順次行なっているジルクニフは常に多忙だ。しかし、執務にのめり込みすぎると食事をする時間すらもどかしくなるが、根を詰めすぎてミスが出ては元も子もない。なので一度区切りがいいところで必ず昼食、もとい休憩を入れ程々に気を抜く。無論、食事に毒が盛られていないかを警戒しなければならないがジルクニフには一角獣の指輪があり、万が一に備えて解毒用のポーションも常備しているので対策は万全だ。

 この昼食時、アレーティアはどうするかと言えばジルクニフと同じテーブルで同じ食事を摂っている。本来なら身分違いもあり許されることではないがジルクニフはそれを良しとする。ついでにここでテーブルマナーも学べばよいと。

 過去一度、この食事中の隙を狙ってメイドに扮した暗殺者がジルクニフにナイフを突き立てようとしたことがあったが…。

 

 

 

「〈投擲(スローイング)〉…陛下、マナー知らずですいません。これが一番手っ取り早かったもので。」

 

「あ、ああ…助かったよアレーティア。…ところで今見えていたのか?視線は食事にしか向いていないと思うのだが…?」

 

「森の中で気配を消す厄介な敵なんて山ほどいましたから。森より狭いこの部屋の中の動きを察知するなんて普通なのでは?」

 

「…本当にお前エイヴァージャー大森林に居た頃どういう生活を送っていたんだ?」

 

「食事中にする話でもないのでまた今度にしましょう。それより、そこの身の程知らずを牢にでも入れておいてください。後で尋問して雇い主を吐かせるので。」

 

 この通り、食事をしながら暗殺者に向けてノールックでナイフとフォークを武技で投げつけトドメに食べ終えた皿までフリスビーのように投げて戦闘不能にするというある意味暗殺者からしたらオーバーキルもいいレベルの撃退をした。ちなみにだがナイフとフォークはそれぞれの腕に深く刺さっており、皿は頭部に命中し見事に気を失っていた。

 その後は先の話の通り。雇い主を聞き出しジルクニフの制止を振り切り単騎でその貴族の屋敷ごと落してきてしまい、殺しはしなかったが〈土竜叩き〉を脳天に叩きこみ首から下を地面に打ち込んだという報告を聞いてジルクニフの胃は痛みを訴え始めたという。また暴走しやがったと。

 

 本人曰く「国のトップを暗殺しようとしたんですから、言い逃れ出来ない様に即座に襲撃して根こそぎ叩きのめすのが一番早いのでは?」

 相変わらずの脳筋具合である。本来踏まなければならないであろう手順を全て無視して暴力で解決するあたりが。万が一その貴族が依頼したという話が噓だったらどうするのか、という質問に対しては「その時は…どうしましょうか?陛下に丸投げしたらいいですか?」と答えた。

 ジルクニフは激怒した。無責任にもほどがあると。説教が始まり執務が滞ってしまったがそれでもこの胃の痛みの元凶に怒りをぶつけなければ気が済まなかった。説教は一時間ほどで終わったもののジルクニフは「頼むから私の命令があるまでは勝手なことをしないでくれ。」と言いアレーティアは流石に考えなしすぎたと猛省したという。

 

 そんなこともあったが、最も隙を晒しやすい食事中でもアレーティアは暗殺者の返り討ちが容易いということが分かり共に食事をするのは安全と言い切れるだけの安心感があった。

 

「陛下、今日のサラダのドレッシングは少々独特ですね?」

 

「む、そうか?いつもと変わらず美味いと思ったが?」

 

「じゃあ、私の味覚が悪かったのですね。失礼しました。」

 

「念のために聞いておくが、どういう味がするんだ?」

 

「そうですね…、一言でいえば()()()()()()

 

今すぐ食べるのをやめろおおおおおおおお!

 

 訂正、彼女は安全ではなかった。

調査の結果、かなり危険な毒が使われていたようだがアレーティアは「変な味だな」と思う程度で済んでおり毒が一切効いている様子がなかったことをここに記録しておく。

 

 

 

 

 昼食を終え再び始まる執務と勉強。二人はそれぞれの作業の最中、帝国四騎士についての話をしていた。

 

「帝国四騎士の任命だが、私が任命して構わんのか?お前と将軍たちで話し合って決めた方がより良く決められると思ったが。」

 

「いえ、ここは陛下が決める案件でしょう。陛下に直接任命された方が騎士たちも次は俺が!私が!という風に士気も上がると思います。と、いうより分かってて聞いていますね?」

 

「まあな。とはいえ以前のお前と騎士たちとのこともある。あまり彼らを蔑ろにすれば彼らの気持ちは私から離れてしまうだろう。」

 

「では、こういうのはどうでしょう?帝国四騎士は任命された後、私の代わりに陛下に付き従い行動を共にすることも増えるはずです。ならば、陛下が四騎士に任命したい騎士を選別してください。選ばれた騎士たちを私が鍛え上げます。四騎士に選ばれずとも鍛え上げれば今の近衛よりは強くできると思います。」

 

「待てアレーティア。どうやって鍛え上げるつもりだ?あの時のような面倒ごとは御免だぞ。第一、あの一件を隠し通すのにどれだけ労力を使った事か…。」

 

「流石にあんなことはしませんよ…。アゼルリシア山脈で一月ほど遠征をおこない、そこでサバイバルをします。最低でも四騎士になるなら冒険者でいうオリハルコン級程度の強さは身につけてほしいので()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ジルクニフは考える。多少の無茶、死にはしないという言葉はどこまで信じていいのだろうか。相手はアレーティア、こちらの常識は通用しないと思った方がいいと考え結論を下す。

 

「まず、その鍛え方…訓練内容を書きまとめ文書にして私に提出してくれ。それを見て判断する。」

 

「…陛下、私まだ文字読むのも書くのも手一杯なのですが。」

 

苦笑いを浮かべるアレーティアを見て、こんな顔もするんだなと思いながら不敵な笑みを浮かべる。

 

「なに、これも勉強だと思え。今後、私もお前も忙しくなる。そうなれば学ぶ時間も失われてしまうからな。遠征で学ぶ時間を失う前にゆっくりとでもいいからお前の案をまとめてみろ。秘書官たちにも話せば協力してもらえるよう手は回しておく。やれるな?」

 

 ここまでやれば勝手なことはしないだろう、とジルクニフは考えアレーティアに圧をかける。もう胃が痛むのは御免なのだ。

そんな圧を受けたアレーティアは少し悩んだ後、了承した。その後は文字の書き取りをしながら、ジルクニフは執務をこなしながら時間が過ぎていった。

 

 




アレーティアの現在分かっていること
・エルフ王族(神人)
・魔法使用時武技使用不可
・武技使用時魔法使用不可
・生まれながらの異能持ち
・脳筋
・毒無効

こんなところですかね?
まあ、まだ増えるんですけどね。

余談ですがアレーティアはエルフ国から装備して逃げてきた装備の方が支給された装備より性能は高いですが、これは前世で言う制服みたいなものだからと基本的にこちらがメインの装備になっています。

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