転生したらオバロ世界のエルフだった件について   作:ざいざる嬢

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心底(マジ)有難(アザ)っス!





この先、独自設定があるぞ。 だから、この先注意が必要だ。

 

 

 宝物殿から転移しナザリックへと戻ると、そこは第九階層であるロイヤルスイートでした。

 実際目にするとすっごい豪華。円卓には席が四十一……いや、四十二席用意されていて、円卓もピカピカで掃除が行き届いているのが分かります。 流石ナザリックのメイドは仕事も一流ですね。

 

「鍛冶場はこっちだ。 ああ、それと念の為来客用の部屋を用意させてある。 休憩や食事の際はその部屋を使ってもらって構わない。

 入浴に関してもこの第九階層にはスパリゾートがあるからそこを使うといい」

 

 おお!マジですか!いや〜至れり尽せりですね!

 役得ッ!役得ッ!役得ッ‼︎ ってやつですよ!

 

「わざわざ用意していただき、ありがとうございます

 私も腕を振るわせてもらいますね!」

 

 とりあえずナザリック飯は食べたい。

 ンフィーレアやエンリが食べたであろうエインシェント・フロスト・ドラゴンの霜降りステーキとかすっごく気になる。

 私も配下にオラサーダルクたちがいますけど、素材は剥ぎ取りますけど流石に食べたりしませんよ?本当です。

 まあ彼らも法国戦で何匹か死んでしまったので、死体はナザリックへと献上しましたが。 このことについてはオラサーダルクたちからも何も抗議を受けていないので無問題モーマンタイです。

 

 そういえばナザリックの副料理長はバーのマスターをしていましたけど、料理長はどんなNPCなんですかね? 副料理長がキノコみたいな種族だったので、料理長は案外ゴブリンとかだったりするんですかね?

 

 と、そんなことを考えていると鍛冶場に到着しました。

 

「オ待ちしてオりました、アインズ様」

 

 鍛冶場にいたのは──ゴーレムでした。大きさ的にはおおよそ五メートルぐらいでしょうか?

 全体的に丸みを帯びたシルエットをしていて、鍛冶作業をするためのエプロンを身につけています。

 

「アレーティア嬢、紹介しよう。 ナザリックの鍛冶長の動く石像(リヴィング・スタチュー)、モノリスだ」

 

「どウも、アレーティア殿。 私はモノリス。今日はアなたの腕前ヲじっくりと見学させてイただきます」

 

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 差し出された手を取り──モノリスの手が大きすぎて指を握るという形になりましたが──挨拶を終えてから、鍛冶場の説明を受けることになりました。

 説明を受けているとエ・ランテルの私の鍛冶場よりも様々な設備が揃えられているのがよく分かります。ナザリックですからね、当然です。

 ただ、一箇所気になるところが……。

 

「あの、あそこだけなんだか場違いに思うんですけど、あそこは一体……?」

 

 指差す方にはすごく綺麗に整えられたテーブル席がありました。呼び鈴まで置いてあります。

 ここだけやたら綺麗でこの厳かな鍛冶場から浮いてしまっています。

 

「アれは師匠──あまのまひとつ様が仕事の前に食事ヲするための場所です。 なんでも験を担ぐためとか」

 

「……そういえば、あまのまひとつさんは食事によるバフ効果を重視していたな。 なるほど、だからここで食事が摂れるようにしていたのだな」

 

 あー、確かあまのまひとつさんってそういうのを重視する御方なんでしたっけ? 

 まあ、バフが重要というのは同意するところではありますね。 ただ、ここでわざわざ食事をとる必要はあるんでしょうか? リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンがあるならそこまで移動に不便を感じないと思うんですけど。

 

「ではこの鈴は一体?」

 

「これは……こウする」

 

 モノリスが呼び鈴を大きな指で摘まんでチリンチリンと鳴らしてしばらくして……ドタドタという音と共に誰かがやってきました。

 

「モノリス!私を呼んだか……おお!これはアインズ様! まさかここでお会いするとはぁ!」

 

 現れたのは……イノシシのような頭を持つ亜人、でしょうか?緑肌のオークじゃないタイプのオークとか?

 胸元には「新鮮な肉!」という文字が彫られていて、頭には純白のシェフ帽、腰には純白のエプロンを着けた彼の正体は──。

 

「わ、私もまさかここで会うとは思わなかったぞシホウツ・トキツよ。

 おっと、アレーティア殿にも紹介しておこう。 彼はナザリックの食堂の領域守護者にして料理長、シホウツ・トキツだ」

 

 また知らないナザリックのNPCだ……。 私は副料理長しか知りませんでしたけど、料理長もちゃんといたんですね! 意外なことに亜人でしたけど。

 後、大きな肉切り包丁を持ってきているので、その形相と相まってちょっと怖いところもありますね。

 

「紹介にあずかりました、料理長のシホウツ・トキツと申します。 アインズ様のご友人であるアレーティア様の食事は私が腕を振るわせていただきます!」

 

 グッと親指を立てて微笑む料理長にほっこりしながら、ふとした疑問が浮かんできました。

 なんで食堂を預かる料理長(領域守護者)が鍛冶場に来たんでしょう?

 

「シホウツ・トキツよ、それでお前がここに来たのは一体どのような用件だ?」

 

「ははぁ! この呼び鈴はあまのまひとつ様が用意されたマジックアイテムでして、これを鳴らすと私がここまで転移し料理の注文を申しつけに来るようになっております」

 

 この反応の感じ、アインズ様も知らなかったみたいですね。 案外ナザリックには未だに知られていない機能が数多くありそうですね。

 るし☆ふぁーさんなんかが筆頭になりそうですけど。 後は……タブラさんとかも隠しギミックを用意してそうです。

 

「それで、注文の方はお決まりでしょうか? 何なりとお申し付けください。

 ──と、その前にこの人数では席の数が足りませんな!今すぐお持ちします!」

 

「──そういうことなら私たちも手伝います。 シズ、行くわよ」

 

「わかったー」

 

「おい、待てお前たち」

 

「ははぁ!」

 

 バッと立ち上がり後ろを向いた料理長がアインズ様の制止を聞くと振り返って再び膝をついた。 動きが機敏でちょっとビックリです。

 当然ユリとシズもその場で動きを止めています。

 

「……勘違いさせて悪かったが、今回はそういうことで呼んだわけではない。 私もその呼び鈴を鳴らすとお前が来ることを知らなかったのだ」

 

「おお、そうでございましたか。 しかし、モノリスのやつは知っておりましたので、そういう意図で呼んだに違いありません。 そうだよなぁ!?」

 

 料理長に問われたモノリスは「その通り!」とばかりにグッとサムズアップ。 それに対して同じくグッとサムズアップで返す料理長。仲良しか。

 いや、創造主があまのまひとつさんだから種族は違えど実質兄弟みたいなものなのかな……?

 

「そういうわけで少々お待ちください。すぐに準備を整えますので!」

 

「おい、待て」

 

「ははぁ!」

 

 デジャヴかな?

 

「そうだな……験を担ぐということなら食事を用意するのは良い事だと私も思う。あまのまひとつさんもよくバフ効果がある料理を食べていた。

 故に、今回は彼女──アレーティア殿だけの料理を用意せよ。 私たちはこの後別件でナザリックを離れることになるからな」

 

「おお、そういうことでございましたか。 では、アレーティア様メニューはこちらになりますのでどうぞ食べたいものを申し上げてください。

 メニューに無くとも必ずや! このシホウツ・トキツが! あなた様の舌に合う料理を作り上げてみせますとも!」

 

 すっごい熱意を感じる。 多分設定で料理か仕事に熱心とかそういうのがあるんじゃないかと思うぐらいには熱いです。

 とりあえずメニューを見て……ふむ。折角なら……。

 

「あの、これから鍛冶の仕事があるので、その、大変恐縮ですが……あまのまひとつ様が鍛冶をする前によく食べていたメニューとかってお願いできますか……?」

 

 それだけ験担ぎをしていたのなら、多分最もボーナス効果を期待出来る料理を選んでいたんじゃないかと思うんですよね。

 私はとあるゲームでのクエストへ行く前の食事は酒とチーズと決めていました。体力とスタミナが最大値になりますからね。

 そういうのとは別にユグドラシルのバフ効果があると思うので、折角なら至高の御方が食べていたメニューにしておけばハズレは無いかと。

 ただ、私風情が至高の御方と同じものを食べるなどと烏滸がましいとか言われたらお終いなんですけどね。

 

 ──と、思っていたらなにやら料理長が困った様子。どうしたんでしょう?

 

「むむっ……それは少々難しい注文ですね。 なにせ、あまのまひとつ様が鍛冶の前に召し上がられていたメニューはいつも異なっていたので……お望みとあらば全てご用意いたしますが」

 

 え?そうなの?

 ふとアインズ様が何かを知らないかと目を合わせると、アインズ様も首を横に振って知らないアピール。

 意外と知らない一面が多くないですかね?

 

「確か……『リアルだと味気ないものしか食べられないから、ここは一種の天国だ』とおっしゃっていましたな。 故に、この場も一つの天国であると私とモノリスは考えております」

 

 ……ああ、確かにオーバーロードの現実世界ってものすごい貧富の差があるんでしたっけね?環境汚染とかしまくってた気がします。

 アーコロジーがどうとか、企業が支配しているとかでしたっけ? うーん、世界観がネオサイタマとかアーマードコアみたいじゃないですか? 流石にニンジャとACはなさそうですけど。

 同時にアインズ様も察したのか「ああ……」と思わず納得の声が出てしまっています。

 

「その話はあとで聞かせてもらうとして……それならシホウツ・トキツ、お前がナザリックで振舞う料理で得意なものを提供せよ。 それなら間違いあるまい。

 アレーティア殿もそれで構わないかな?」

 

「ええ、ご馳走になるんですから、我が儘は言いませんよ」

 

 得意料理か……。お腹に彫られた「新鮮な肉!」という文字通り、得意なのは肉料理ですかね?

 どちらにせよ、ナザリックの料理がいただけるのなら究極的に言えば何でもいいです。

 

「かしこまりました! では数日時間をいただきたく!最高の料理をご用意します!」

 

「おい、待て」

 

「ははぁ!」

 

 何回目でしょうね、このやり取り。職業にコメディアンとかあるんじゃないですか?

 その反面、本人はやる気に満ち溢れているのがそうじゃないという否定になっているんですよね。

 

「彼女はこれから仕事をするにあたって、料理にそこまで時間がかかると支障が出る。 今提供できるものにせよ」

 

「しかし、アインズ様のご友人に相応しい御料理となると──」

 

「あ、それはまたの機会にお願いできませんか? 次は予め来る日程をお伝えするので、それに合わせて最高の料理を作っていただければ」

 

「む、お客様がそうおっしゃるのであれば……次の機会にナザリックの料理長たるこのシホウツ・トキツの全力を披露いたしましょう!」

 

「期待しているぞ、シホウツ・トキツよ」

 

「ははぁ! それでは私は早速料理に取り掛かりたいと思います。 お客様、しばしお待ちください」

 

 アインズ様が「よく言ってくれた!」とアイコンタクトで会話をして、どうにか料理長の暴走を抑えることに成功しました。

 まあ、彼も一種の職人ですからね。ウチのルーン工匠たち(ドワーフたち)と同じで情熱に身を任せることもあるでしょう。 それが成功か失敗かはその後次第ですが。

 

「では、一通り作業場の説明は受けましたので、早速始めようかと思います」

 

「よろしく頼む、アレーティア殿。 ああ、そうだ。これらも渡しておこう」

 

 そう言ってアインズ様が虚空から取り出したのは……鍛冶用のハンマーや指輪、鉢巻などのアイテムでした。

 

「これらは生産職へのボーナス効果があるマジックアイテムだ。 良ければ使ってみてくれ」

 

 おお、こんなものまで貸してくれるとは……。アインズ様の持ち物かナザリックの所有物なのでレアリティは期待出来そうですね!

 

「他にも、様々な鉱石、インゴットは取り揃えてある。それらはパンドラズ・アクターに持たせているので必要ならば声をかけてくれ」

 

「……重ね重ねありがとうございます」

 

「なに、これぐらいは当然のことだ。 では、後のことは任せるぞモノリス、パンドラズ・アクター」

 

「ははァ!」

 

Wenn es Gottes Wille(我が神のお望みとあらば)

 

「ぐふっ」

 

 アインズ様!突然のドイツ語に思わず声が出てしまってます!

 耐えてください!

 

 

 

 ◯

 

 ◯

 

 ◯

 

 

 

「じゃあ、始めますか」

 

 軍服を脱ぎ、今は鍛冶用の装備〈金屋小神の衣〉に加えて貸し出されたマジックアイテムを持ち、早速仕事に取り掛かります。

 まずは普段帝国でも作っている一般的なロングソードやブロードソードをそれぞれ三本ずつ作り、そこから魔化、もしくはルーンを刻印する、何もしないの三つの派生に分けます。

 今回アインズ様から受けた依頼はまず私が作った武器での性能差を知りたい、ということでした。

 なので、まずは安価なもので性能差を把握する必要があったんですね。

 出来上がったものをモノリス、パンドラズ・アクターへと手渡し、一先ずの反応を見ます。

 

「どれも素晴らしい出来だ。 ただ、見たところ魔化とルーンを刻むのではアまり差異は見られなイか?」

 

「いえ、モノリス。そんなことはありません。 コストを考えると魔化に必要なアイテムを要さないルーンの方が優れています。

 ……アレーティア様、今度はこちらに魔化、ルーンを刻むということをしてもらってもよろしいですか?」

 

 パンドラズ・アクターが取り出したのは中々立派な宝剣が二つ。ただ、魔力は感じられませんね。見た目は豪華なんですけど。

 

「既存のものに私の技術が使えるかどうか、ですね。 分かりました」

 

 そうして私が魔化、ルーンを刻むという工程をモノリスとパンドラズ・アクターがジッと見ています。

 ……この二人表情が全く動かないから気を抜くとビックリするんですよね!まあ、動く石像と二重の影だから仕方ないんですけど!

 

 さて、結果ですが両方とも上手くいったものの、今回はルーンの刻印が上手くいきませんでした。普段低級の武具なら二文字は刻めますが、今回はそこそこレア度も高かったのですが四文字程度しか刻めませんでした。これぐらいなら、その倍は刻めてもおかしくないんですけど……。

 

「……なるほどなるほど。そういうことですか」

 

 ……どういうことでしょうね?

 よくよく思い返せばパンドラズ・アクターってアルベドやデミウルゴスに匹敵する頭脳を持っているから、こういう得意な分野なら二人を上回る何かがあるんじゃないですかね?私でも理解していない何かに気づいていそうな気がします。

 

「では、今度はこちらを使ってルーン武器を作っていただけませんか?」

 

 パンドラズ・アクターが差し出したのは……クリスタル?なんだろうこれ、見たことない……。

 

「その様子だと初めて見るようですね。 これはデータクリスタル。通常我々が高位の武具を製作する際に武器に組み込むアイテムです」

 

 データクリスタル!これが!?

 私の知る限りどの媒体でも形は謎に包まれていたあの!?

 

「ええ、組み込み方は……一度、実演しましょうか」

 

 すると、パンドラズ・アクターの姿が変わり蟹のような異形種の姿に──あまのまひとつさんへと形を変えました。

 

「オ、オオッ! 師匠マスター!そのオ姿は師匠そのもの!」

 

「んんっ! モノリス、申し訳ありませんが貴方の創造主の姿をお借りしますよ」

 

「構イません! アア、なんと言う幸運か!師匠が武具を打つ姿ヲまた見られるとは!!」

 

 モノリスさんの興奮っぷりが凄まじいですね。許可なく姿を変えたらブチ切れ不可避の守護者とかいそうですけど、モノリスは受け入れられるタイプだったみたいです。

 

「私では至高の御方のお力の八割ほどしか再現できませんが、今回はそれで十分でしょう」

 

 パンドラズ・アクターが金槌を手に取り、鉱石や素材を手にそれらを打ち始め……仕上げにデータクリスタルを組み込み、一振りの剣を打ちあげました。

 

「と、このようにデータクリスタルは使っていただければ。 一先ずは低級のデータクリスタルを用意しましたので、試しにこれと同じものをデータクリスタルとルーンを使って作っていただいても?」

 

「分かりました」

 

 一度見本は見せてもらえたので早速慣れた手つきで剣を打ちあげていき、データクリスタルを組み込み、最後にルーンを刻もうとした時……事件は起きました。

 

 パキィィィンッ………。

 

「は?」

 

「むゥ?」

 

「ほう、これは……」

 

 組み込んだデータクリスタルが壊れた。

 おかしい。最初は慣らしに低位のルーンを刻んだから、魔力量的にも余裕はあるはず。それなのにどうして……?

 

「すいません、もう一度試させてもらっても?」

 

「もちろんです。 どうぞ」

 

 念の為パンドラズ・アクターに鑑定してもらい、何の問題のないことを確認し、再び組み込み──パキィィィンッ──また壊れた。

 

「これってまさか……」

 

「……アレーティア様、では逆にルーンを刻んでからデータクリスタルを組み込んでみてはいかがでしょう?」

 

「ウむ。 それも試すべきだ」

 

「……分かりました」

 

 今度は逆の工程でルーンを刻んでからデータクリスタルを組み込もうとしました──が、今度はデータクリスタルが弾かれ組み込むことが出来ませんでした。

 これが意味することは──

 

「なるほど。 現状データクリスタルとルーン技術の両立は不可能、ということですね。これは大変興味深い……」

 

「パンドラズ・アクターさん、申し訳ありません。 データクリスタルを二つも無駄にしてしまいました」

 

「いえいえ、先ほども申し上げましたが、あれらは低級の……ナザリックでは使われることなく死蔵されるだけのものですので、ご心配なく」

 

 パンドラズ・アクターのフォローが有難い……! ただここまで上手くいかなかったのも初めてなのでちょっと動揺しています。

 

「ふむ……折角ですし、この辺りで一度休憩を入れましょう。 モノリス、片付けを任せてもよろしいですか?」

 

「ウむ、承知した」

 

 と、パンドラズ・アクター主導のもと一時作業は中断の運びとなりました。

 

 

 

 ◯

 

 ◯

 

 ◯

 

 

 

 呼び鈴を鳴らせば料理長が軽食を持ってきてくれました。

 流石はナザリック、軽食も美味しい……! 食材も見たところこの世界には無いものを使っていますね。 その内いくつか分けてもらえませんかね……?

 

「腹ごしらえを終えたところで少し議論をするとしましょう。 お聞きしたいのですが、この世界にデータクリスタルを使ったマジックアイテムの開発はない、ということでよろしいですね?」

 

「ええ、それは間違いありません……が、プレイヤーが関わっている国があった場合はその限りではないと思います」

 

「では次に、このアレーティア様が復活させたというルーン技術は現在帝国とドワーフ国にしか存在しないということで合っていますでしょうか?」

 

「そうですね。周辺国家では帝国とドワーフ国のみの技術のはずです」

 

 そう答えるとパンドラズ・アクターはなにかを考えているようで、無表情のまま固まってしまいました。

 それから一分ほど経過したあたりで、考えがようやくまとまったのか再び口を開きました。

 

「ひとつ、仮説なのですが……おそらくルーン技術はこのデータクリスタルの代替技術である可能性があります」

 

「代替技術、ですか?」

 

「ええ。 この世界にデータクリスタルがないことを知った過去のプレイヤーなる存在か、もしくはその子孫がそれを補うために作られ、次第に廃れてしまった……という仮説です。

 データクリスタルは先程の通りマジックアイテムに組み込みますが、ルーン技術はこれを魔力を刻む(データを直接書き込む)という形で解決していたのではないか、と私は考えます」

 

 なるほど、それならデータクリスタルとルーン技術が共存できないのにも納得がいく気がします。

 過去のプレイヤーが消費していくしかないデータクリスタルを如何に節約しようとして、現地の人間と協力して生み出した技術なのだとしたら、中々熱いものがありますね。

 

「よって、元から多くの魔力量(データ量)を持つデータクリスタルと後から刻み込むルーン技術では反発し合うのだと……。 魔化するとルーン文字が歪むというのも、そういった性質なのかもしれません」

 

「なら、この二つの技術の合作は不可能ってことになりますかね」

 

 私がそう言うと、パンドラズ・アクターは不敵にフフフと笑い──

 

「アレーティア様、試しにですが……このデータクリスタルに直接ルーンを刻んでいただいてもよろしいでしょうか?」

 

 差し出されたのはまた別のデータクリスタル。これに直接ルーンを刻む……?

 ……ああ、なるほど。()()()()()()()()()()()()()もしかしたらってことですね!

 

「や、やってみます」

 

 早速、作業開始。 意外なことにデータクリスタルはルーンを刻んでも反発する様子が見られません。感覚的に三文字程度が限界だと判断し、刻み終えたところで──刻んだルーン文字がフッと消えてしまいました。

 

「え?」

 

「ほう……」

 

「……すいません、失敗してしまったようで──「いいえ、アレーティア様。 これは成功です」──へ?」

 

 成功?なんで?

 

Wunderbar(素晴らしい)! これはナザリックにおいて非常に価値のある結果ですっ!」

 

 ドイツ語?思わず出ちゃうぐらいには興奮してる?

 

「アレーティア様、ルーン文字に更なる価値がこの瞬間産まれたのですよ。 無論、検証はまだまだ必要ですが……これは早急に報告しなければなりません」

 

 そういうことで、パンドラズ・アクターはアインズ様へ報告に向かってしまったため、私は来客用の部屋で待機しています。

 あのまま鍛冶場にいても良かったんですが、一応NPCたちには警戒されているのでこうして何もしない方が無理な警戒をされずに済むでしょう。

 

 とりあえずはリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンが無いと私はナザリックから出られないので、私は待つことしか出来ませんね。

 一応数日は予定を空けていますし、いざとなれば伝言板でラナーに連絡すれば事足りるので問題はありません。

 新たな指示が来るまではナザリック生活を満喫させてもらいましょう。

 

 

 

 ○

 

 ○

 

 ○

 

 

 

「つまり、だ。ルーン技術はデータクリスタルの情報の書き換えが可能だと?」

 

「はいっ! 検証が必要なのでアインズ様の許可をいただきに参りましたッ!」

 

 アインズは再び頭を抱えた。アレーティアの規格外さに。

 データクリスタルはユグドラシルにおいてモンスターを倒すとドロップする──一部課金によって入手可能──マジックアイテムを作るうえで欠かせないものだ。

 かつては理想の装備を作るべく対象のモンスターを倒しに仲間たちと周回作業を繰り返し、欲しい性能のデータクリスタルがドロップしないので「クソ運営!」と罵り叫んだこともあった。

 

 そんなデータクリスタルの性能書き換えが可能という爆弾を持ち込んだパンドラズ・アクターにはよくやったと褒めてやりたい反面、この世界でまたユグドラシルの常識が通用しないということが証明されてしまい、頭を悩ませた。

 

 そもそも、今回アレーティアに頼んだマジックアイテム製作の依頼は金策のためだった。

 スレイン法国という隠れ蓑を手に入れたまではいいが、都市再建にも金がかかり宝物庫こそ無事だったものの、破壊され尽くした法都を修繕するだけの資金は残されていなかったのだ。

 ナザリックの資金を使えば解決することではあるのだが、それを安易に行うとナザリックの弱体を招きかねない。 よって、早急に金策を講じる必要があった。

 その一つの手がエクスチェンジボックスだ。 エクスチェンジボックスはこれに投入した物の材料の価値だけユグドラシル硬貨を排出する仕組みになっている。これを活用して、今後はアンデッドを利用した食料の大量生産で少しずつではあるがユグドラシル金貨に変えられる見込みがあった。

 もう一つの案がアレーティアを利用するという案だ。 この発案者はアルベドで、現在協力者からの周辺国家における鉱石類の採掘量が減り値段が高騰しているという情報があり、エ・ランテルにおける武具やマジックアイテムはどれもユグドラシルにはない珍しいものばかりだったが、どれも低級の素材が使われていることから信憑性は高いとされた。

 ナザリック地下大墳墓の第四階層『地底湖』には、ある程度のレアリティの鉱石が──ナザリック基準では対して役に立たないが──リポップするエリアがある。そこの鉱石を採掘し、交易に利用してはどうか、というものだ。

 この案にアインズは新しい友人を利用するようで心苦しいものがあったものの、一先ずはマジックアイテムを作ってもらう約束を取り付けてあるので、その反応を見て交渉しようという形に落ち着いたのだが……。

 

(その最中にナザリックの強化に繋がる技術の発見があるとか予想外にもほどがあるだろ!)

 

 全く予想していなかった事実に頭を抱える羽目になったのだ。

 

「…………検証はお前の裁量に任せよう、パンドラズ・アクター」

 

「ははっ! では、早速一つお願いがあるのですが──」

 

「…………なんだ?」

 

 アインズは警戒した。 またこの動く黒歴史(パンドラズ・アクター)が己の心の平静を奪うのではないかと。

 しかし、それは杞憂に終わる。

 

最古図書館(アッシュールバニパル)の利用許可をいただきたいのです」

 

「あそこをか?」

 

「はい。 恥ずかしながら私にはルーンという物の知識がありませんので、最古図書館にそれに関する書物がないかと……」

 

 一瞬、考えを巡らせるが特に問題はないと判断したアインズは許可を出す。

 

(多分、タブラさんがそういう関係の本を収納していると思うんだよな。あの人、そういう知識に長けてたし。 ……あ、そうだ)

 

「ついでだ、司書長には話をしておくからアレーティア殿も案内せよ。 確か、この世界の巻物(スクロール)に司書長が興味を持っていたはずだ。第四位階までは魔法を込められるが、それ以上は困難だとな。

 アレーティア殿がもしかすると何かしらのヒントをくれるやもしれん」

 

 アインズも流石にアレーティアが巻物まで手を出していないだろうと思い、話のタネになればいい程度の考えでそれを口にした。

 まさか、こちらもアレーティアが第十位階の魔法を込められる巻物の開発に成功しているとは思ってもおらず、後にデミウルゴスに()()()()()()()()()あるものを持ってくるのは完全な余談である。

 

「畏まりました! では戻り次第、早速案内させていただきます!」

 

 こうして、アレーティアの二日目のナザリックの行先は最古図書館に決まったのだった。

 

 

 

 

 




粛清騎士アレーティア
至高の御方のご友人。
何気に職人関連の登場人物と相性がいい。
天賦の才で生産職、支援職も最も効率がいい職業構成に成れるが、腕を十全に振るえるわけではないので、ナザリックのそういった役目を担っているNPCを師と仰ぎ良好な関係を築けている。
実はパンドラズ・アクターが一番相性がいいNPCかもしれない。

鍛治長モノリス
ナザリックNPC。創造主はあまのまひとつさんらしい。
作中で司書長のように語られていないので、オリ設定でゴーレムにしました。名前は思いつかなかったので知り合いに考えてもらいました笑
モデルは鍛治ゴーレムのテウル。テウルのHP全然減ってねえぞ!!

料理長シホウツ・トキツ
食堂の領域守護者。レベルはなんと七十八。プレアデスよりもずっと高い。
やる気に満ち溢れている仕事人といった印象。
原作においてアインズが食堂に現れた時のやる気は凄まじかった。
この世界線においてはアレーティアがナザリックの食材に興味を持ってしばらく入り浸り料理人として友情を育む……かもしれない。
裏話として、今回の話の投稿が遅れた元凶。当初は出す予定がなかったのに、気づいたら動いていた。

宝物殿の長パンドラズ・アクター
唯一、創造者が転移している領域守護者。忠誠心は誰よりも高い。
孤独なモモンガに新たな友人が出来たことをルビクキュー大会の影武者を頼まれた時に聞かされていて、アレーティアにそれなりに重い感情を向けている。
具体的にはナザリック内における後ろ盾など。


今年最後の更新になります。今年も閲覧ありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願いします。

お年玉代わりに感想、高評価をいただけると子供の様に喜びますので、合わせてお願いします。

良いお年を!

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