転生したらオバロ世界のエルフだった件について   作:ざいざる嬢

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遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

今回は予定を変更して、アンティリーネの話になります。
お楽しみいただければ幸いです。


知られざる粛清騎士の過去

 

 

 

 今日からしばらく妹のアレーティアが魔導国の本拠地へと仕事に行く、ということで普段妹と一緒にいる私はいい機会だからと皇帝陛下に呼び出されていた。

 バハルス帝国皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス。歴代最高の皇帝と呼ばれる傑物。法国にいた頃は神官長たちが期待を寄せている人間だと聞いたことがあった。

 アレーティアと一緒に何度か謁見したことはあったが、こうして妹抜きで会うのは初めてだった。

 

「よく来てくれたなアンティリーネ殿」

 

「ご招待いただきありがとうございます皇帝陛下。 改めて、スレイン法国亡き今、バハルス帝国に忠誠を誓わせていただきます」

 

 私の身柄の預かりはアレーティアになっている。 今の私の身分は捕虜ではなく、粛清騎士という事になっている。

 アレーティア曰く、粛清騎士という存在は元々法国からアレーティアの素性を隠すために作られたもので、私が使っても問題ないとか。まあ、私もアレーティアももう素性を隠す必要はないのだけど。

 

「ああ、今はアレーティアの配下という事だが、今後は君にも仕事を任せることがあるかもしれん。 その時はよろしく頼む」

 

 自分の美貌を理解している笑みを浮かべた陛下の差し出された手を取り、握手を交わす。 これで友好的な関係は築けた──と思いたい。

 なにせ私個人の人間関係は法国にいた頃は常に秘匿されていて、神官長や漆黒聖典ら六色聖典の隊員たちとの接触ぐらいだったのだから、礼儀作法などには少々疎い。

 目の前の人物(皇帝陛下)は実力さえあれば、そういった事に目を瞑るという話を聞いたけれど、最低限の礼節は必要だと教わってはいる。

 

「さて、この後だが……折角だ、少しの間ここでゆっくりしていくと良い。 私はしばらく席を外すが、夜には時間を作る。 そこで晩餐会でもどうかな?」

 

「晩餐会ですか」

 

 アレーティア不在の今、エ・ランテルを預かるラナー様からは「誘われたら受けても構わないわよ」と言われていたが、まさか本当に誘われるとは思ってもいなかった。

 かつてはこんなことを考えずともよかったが、今はそうもいかない。仮にも妹が仕えている──いや、振り回している?──相手だ。 誘いを断るわけにもいかないだろう。

 

「そうですね、私で良ければご一緒させてください」

 

「そうか! なら、改めて晩餐会で会うとしよう」

 

 そう言って謁見を終えた。

 

 

 暇を持て余した私はどうしようかと悩みながら、皇城の廊下を歩く。

 エ・ランテルと違い、この国にはあまり明るくない。 観光するにも知識が必要だ。ただブラブラと歩き回るのもいいが──。

 

「おや? アンティリーネ殿か?」

 

 ふと振り返るとそこには普段エ・ランテルにいる人物──ルミリアがいた。

 

「あら、こんな所で会うなんて奇遇ね」

 

「ははは! 奇遇、といえばそうなのかもしれないな」

 

 このルミリア・リイル・アーチゾルテという人物はアレーティアの副官としてエ・ランテルで働いている女騎士だ。 優秀らしく、当時法国でも何度か名前を聞くぐらいには実力を持っている。

 今でも、かつての同僚たちには及ばないものの英雄の領域まであと少し、と言ったところか。いや、装備次第では英雄級は確実だろう。

 

「その言い草だと、奇遇じゃなかったってこと?」

 

「そうだな。 今日は報告書を提出しに来たんだが、ラナー様に万が一アンティリーネ殿が一人寂しくしていそうなら帝都を案内してあげて、と言われていてな」

 

 一瞬、時が止まったかのように固まってしまう。 あの女は、あの自称アレーティアの嫁はなんなんだ!?未来が読めているのかとゾッとした。

 あの女──ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ティアーズは恐ろしい女だった。ルビクキューでの一件で見てしまったあの貌。強者であったはずの私が()()()()()()()()()()()()と感じさせられたあの女は天敵に等しい。

 可能ならばあまり顔を合わせたくないが、向こうは気を使っているのかどうか分からないが、こうして何気なくフォローをしてくるのだ。それが私に恩を着せようとしているんじゃないかと思うと、今後何をさせられるのか分からないという意味で恐ろしい。

 何故妹はあんな恐ろしい女と偽装結婚しようと思ったのか。ただただ疑問だ。

 

「そう、ね。 じゃあ折角だからお願いしようかしら」

 

「ああ、任せてくれ」

 

 とはいえ、こうして案内を用意してもらったのだから、使わない手はないわよね。

 私はルミリアの案内で帝都を散策することにした。

 

 

 

 

「エ・ランテルでも思ったけど、帝国は道の整備に力を入れているのね。 法都──いや、今は魔都だったわね。あそこと何ら遜色のない街並みね」

 

「ああ、最初は帝都、次に皇帝派の貴族、将軍や騎士の預かる領地を順に整備していった。 今後は魔導国と共同で街道の整備に力を入れ、流通路を確保する……という話が出ている」

 

 昔、そんなことを六大神の誰かが言っていたと教わった記憶がある。ただ、六大神の力をもってしてもモンスターや亜人、アンデッドが蔓延るカッツェ平野などに道を作るのは難しかったとも。 まあ、六大神が降臨された時は今ほど人間も強くはなかったからだろう。

 

「エ・ランテルは同時にドワーフ国との山道の整備や坑道の開発にも尽力している。 ここはアゼルリシア山脈に詳しいドワーフとクアゴア氏族、後は重犯罪者たちを強制労働させている」

 

「重犯罪者っていうと……帝国の歴史に鑑みると貴族たち、かしら?」

 

「ああそうだ。 領民を何とも思っていないような愚物は要らないからな。加えて言えば権力だけ持つ無能もな。そういった者は鮮血帝と粛清騎士の手にかかったものだ」

 

 ……そう言えばあの皇帝にはそんな異名もあったわね。でもその働きがなければ帝国も最悪王国のような道を辿りかねなかったかもしれないわね。

 

「ああ、あの辺りにある空き地だが、あそこは私とアレーティア様で吹き飛ばしたところだ

 

「はい?」

 

 何を言っているんだこいつは。そう思わずにはいられなかった。

 

「あれは私が当時の帝国四騎士に選ばれて初めてアレーティア様と一緒に任務に当たったんだ。 ここに拠点を構える悪徳貴族を捕えろという命を受けてな。

 ただ、相手も無駄に護衛を雇っていて、梃子摺りそうだったんだ。だから吹き飛ばした

 

「待って。話を飛ばしすぎてるわ。 もう少し詳しく話して」

 

 なんで梃子摺ると思ったから吹き飛ばしたのよ!意味が分からないわ!? いやまあ、アレーティアなら出来るとは思っているけど!

 

「そうだな。当時この辺りは貴族が住まう屋敷が多くてな、大っぴらに動くと結託して抵抗される可能性があった。 なので、出来るだけ速やかに事を運ぶ必要があったんだが、アレーティア様の性に合わなくてな。

 ならいっそ、奇襲をかけてここら一帯の貴族全員取り締まっては?と提案したんだ」

 

「……続けて」

 

「アレーティア様は『それだ!』と言い、嬉々として動き始めたんだ。 結果、この辺りにあった貴族の屋敷全てを巻き込むように襲撃を仕掛け──多くの貴族を捕えることに成功した。

 いやあ、見事な手腕だったぞ。私もそこで指導を受けながら護衛をバッタバッタと斬り倒してな! アレーティア様も意気揚々と武器を振り、気づけば全てが吹き飛び、貴族は全員捕らえられたというわけさ」

 

「まるで意味が分からないわ」

 

 え?あの子バカなの?そんな作戦とも言えない襲撃で成果を出したの?? これで成果を出しても色々問題があるって思われるんじゃない?

 

「まあ、事を終えて陛下に報告したらものすごく怒られたんだが」

 

「それはそうでしょうね!!」

 

「しかし、あの時はそれが最善策だったと思うんだ。 ちまちまと時間をかけるぐらいならドーンと一発で全て解決してしまった方がいいとアレーティア様も言っていたしな」

 

 ここで私はアレーティアのことをまた一つ理解出来たと思う。 ……あの子、かなり脳筋というか難しいことが苦手なのね。だから力で全てをねじ伏せるような……思えば法国への襲撃も似たようなものだったわね。

 

「む?どうしたんだアンティリーネ殿?」

 

「なんでもないわ……」

 

「そうか。 じゃあ、この先の市場を案内しよう。エ・ランテルほどではないが多くのマジックアイテムが売買されている。 もしかすると掘り出し物があるやもしれん」

 

 そうして私は夜までの時間を観光して過ごした。

 途中、露店で買い食いしたりもしたが、中々美味しかったわね。

 

 

 

 ○

 

 ○

 

 〇

 

 

 

「そうか、ルミリアの案内を受けたのか」

 

「ええ、帝都もエ・ランテルと同じぐらい栄えているのですね」

 

 晩餐会。 陛下と共に食事をしながら、私から見た帝都の話をして少しばかり盛り上がった。

 同時にこの機会にアレーティアと一番付き合いが長いともいえる相手から話を聞きたいという狙いもあった。ルミリアに会うまではそんなこと考えもしなかったけれど、あの子の知らない一面を知って、まだまだ知らないことがあるんじゃないかと思ったから。

 

「耳に痛いな。 実際のところ、活気があるのはエ・ランテルの方だろう。あそこは夢を追うにはうってつけの場所だからな」

 

「そうらしい、ですね」

 

 その辺りは詳しくないので濁して返答した。その辺りを察したのか陛下もそれ以上突っ込んだ話はしなかった。

 

「元々、エ・ランテルは三カ国の貿易の要となる都市だった。 今では王国は帝国に併呑され、法国は魔導国となり二ヶ国における重要な都市と化している。現状、魔導国の上層部──神とその眷属に顔が利くのもアレーティアと……忌々しいあの女ぐらいだからな」

 

 忌々しい女とはラナー夫人のことだろうか? 以外にもそれを口にしたとき、陛下の顔が曇ったように見えた。

 

「ああ、すまないな。ここでの話は他言無用で頼むよ」

 

「勿論ですわ陛下。 しかし、意外ですね。アレーティアからは陛下は優秀な人材が大好きと聞いていたので」

 

「……ああ、あの女は優秀だ。 恐らく、私よりも、な」

 

 なんだろう。自分よりも優れた相手に嫉妬しているのか。それとも……?

 

「アンティリーネ殿、貴女にだからこそ話すが、あの女には気をつけろ。 あの女はアレーティアがスカウトしてきたんだが……性格に難がある。あれの兄もそう言っていた」

 

「兄……というと、ザナック辺境伯のことですか?」

 

「そうだ。 彼も優秀な男だ。ただ働きづめのせいかストレスで過食気味という話を聞いて、少々心配しているところだ」

 

 ザナック辺境伯は王国と帝国の併吞の後、王冠を皇帝陛下へと差し出し旧王都を辺境伯位と共に預かることになった元第二王子だ。

 今も崩壊した領土の回復に忙しいらしく、私はまだ会えていないものの、鮮血騎士のブレイン・アングラウスがかつての周辺国家最強と謳われたガゼフ・ストロノーフを訪ねているという話を聞いているぐらいだ。

 そんな身内にまで性格に難があると言われているラナー夫人って一体……。

 

「一応、知っているとは思うがあの女は従者──鮮血騎士のクライムという男と結ばれることを望んでいてな。クライムは元々孤児だったために身分が釣り合わなくてな。そこを帝国に協力する代わりに辺境侯の地位を得たアレーティアが偽装結婚という手を打ってこちらに引き入れた、という経緯だ」

 

 ……あの子は頭が回るのかそうじゃないのか、どっちなのよ!?

 いや、多分地頭はいい。だけど、本人の性格やら気質に問題があるんじゃないかしら……。

 後はやりたいことと、やりたくないことで割く労力に差があるといった方が正しいかもしれない。

 

「……今、アレーティアの知能を疑ったんじゃあないか?」

 

「え……」

 

 心を読まれた?いや──

 

「心を読んだのではない。あくまで予測だが……当たっていたようだな」

 

「ご慧眼ですね陛下。 その通りです」

 

「まあ、アレーティアの知能を疑っても仕方ない。アイツは有能だが……息抜きを与えたり、誰かブレーキを掛けられる者がいないと時折暴走するのが、な」

 

「……ルミリアから少し聞きましたが、大分迷惑を……」

 

「……後から思えば、結果としては悪くなかったんだが、些かやり過ぎるきらいがあるのがな。 当時忙殺された身としては叱らずにはいられなかった──が」

 

 ここで言葉を切った陛下はどこか穏やかな雰囲気を醸し出して──

 

「それでも私は──いや、俺はアレーティアに何度も助けられた。この命も、帝国もな。 アレーティア無くして今の帝国は無いと断言してもいい」

 

 その表情にはあの子──アレーティアに対する親愛の情を感じた。

 それを見た私は少しばかり昔を思い出した。ナズルお婆ちゃんのことを。 ナズルお婆ちゃんもこんな風に想っていてくれたのだろうか。

 

「折角だ、アンティリーネ殿もアレーティアに今後振り回されるかもしれないからな。 アイツがしでかしたことを少し話そうじゃないか」

 

 陛下が鈴を鳴らすとメイドがグラスと酒、それに酒に合いそうなつまみの料理を持ってくる。

 この酒は……確かエルフが好むという果実酒かしら?

 

「既に終わったことだし、ここからは酒でも飲み交わしながら話そうじゃないか。 酒を飲んでいるからこそ話せる話もあるしな。どうだい?」

 

「……フフッ。こうして誰かと食事をとってお酒を飲む、なんてアレーティア以外とは初めてね」

 

 メイドたちは退室し、陛下自らグラスに酒を注ぐ。こういうのは本来私がすべきことだと思うのだけど……。

 

「マナーを気にしているのであれば、今夜は無礼講と行こうじゃないか。 私にもこうしてたまには皇帝としてではなく、ひとりの男としての時間が必要なのだ」

 

 そう言う陛下は私の至らないところをフォローしてくれているんだろう。 きっとアレーティアが何かした時もこんな風だったに違いない。

 グラスを手に取り、乾杯をする。

 

「さて、何から話そうか。 あれはアレーティアが──」

 

 

 

 この酒の席は思いの外盛り上がり、深夜まで続いた。

 

 ああ、私の妹は本当に良い人たちと出会えていたようで、安心した。

 ()にも周りの人間(当時の神官長)にも恵まれなかった、私みたいな目に遭ってなくてよかったと、法国の人間でなくなった私はそう思えた。

 

 

 






アンティリーネ
もう一人の粛清騎士として活動中。ラナーが怖い。
法国から解放されたことで色々と考えが変わってきている。
また、アレーティアのやらかしを聞いて内心震えていたりする。

ルミリア
アレーティアと組ませてはいけない要注意人物だった女騎士。実際は優秀な人物。
今ではその鳴りを潜めているが、当時はアレーティアの強さを妄信して、それに見合った作戦を提案してしまいとんでもない被害と成果をたたき出した。後にトーマスたちに矯正された。
アレーティアの教えには相変わらず忠実で、生意気な騎士を叩きのめすし、裸に剥いて全身の毛を剃り落とすのもお手の物。

ジルクニフ
アンティリーネを歓待した。
ついでにアレーティアのやらかしを話したり、こんなことをしてくれたなどの思い出話に花を咲かせた。
実はこれは作戦のひとつで、アレーティアを落とすためにまずは姉の心証を良くしようという下心があったりする。なお、ロクシーには呆れられた。

ラナー
エ・ランテルの裏ボス。
アルベドと協力関係を結んで、あることを実行しようとしている。
それはそれとして、夫の帰りが予定より遅くなってしまい、色々と溜まっている。仕事的にも別のものでも。



感想、高評価いただけると励みになります!

後、細々と初のオリジナルを書き始めたのでそちらも良ければ読んでいってください!

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