転生したらオバロ世界のエルフだった件について 作:ざいざる嬢
お待たせしました、コキュートス戦です。
なお、タイトルの武神は誤字じゃありません。アニメシーズン2のコキュートス回のタイトルからです。
私、アレーティアは緊張している、
何にかと言われれば、この戦いにだ。
対戦相手として決まった相手は第五階層守護者コキュートス。確かナザリックにおいて最強の攻撃力を持つ武人。
原作での戦闘描写は少ないものの、アインズ様への前衛での戦闘指南、訓練などを請け負っていたはず。
戦略についてはリザードマン編でもあったように数でゴリ押しする面があったものの、アインズ様とシャルティアの戦いをあのデミウルゴスとアルベドよりも先に結果を理屈ありきで宣言出来るほどの戦術眼を持っていることから油断は出来ない相手です。
ただまあ今回の神前試合はあくまで力を見せつけるのが表向きの目的であって、本来の目的は私が上位の存在との経験を積むためのものです。
そうなると、コキュートス以上にその役目に適任はいないでしょう。次点でセバスでしょうか?
『お待たせしました!これより神前試合を開始します!選手の入場です!』
アウラの声とともに入場し、訓練場の中心へと向かいます。
今回の神前試合に向けて改装した鮮血騎士訓練場ですが、元々帝都にある円形闘技場をパク……もとい参考にして似せて作ってありました。
そこを改装し、観客席の位置を高めに設計し見下ろす形にしてあります。こうでもしないと私たちの戦いに巻き込まれる可能性がありますからね。
その上で観客席に攻撃の余波が届かないようにかつて陽光聖典捕獲の時に使ったマジックアイテムを改良し、防護障壁(素材提供ナザリック)を野球場のネットのように張り巡らせれば〈
後は招待客の王族や貴族なんかは念には念をということで専用の部屋まで用意してあります。至れり尽くせりです。
さて、そんな会場ですが神前試合ということでちゃんとアインズ様専用の席を用意してあります。
現実世界における聖火台なんかの位置に玉座ならぬ神座を用意してあります。勿論ここの守りは一番厳重にしてあります。アインズ様に傷を付けるわけにはいかないので。
………まあ、あそこに座ってるのアインズ様に扮したパンドラズ・アクターなんですけどね?
アインズ様はナザリックで観戦です。間違いなく安全ですしね。
『この場にいる者なら知っている者が多いでしょう! バハルス帝国最強の騎士!粛清騎士、アレーティア!!』
今回、私は本名で──家名は名乗りませんが──参加しています。
もう匿名にして隠す必要性が無くなりましたからね。これもスレイン法国が亡くなったお陰です。ツアーにもバレてますしね。
とはいえ、粛清騎士という存在は帝国の抑止力として必要なので存続させるのですが、その内お姉ちゃんに譲ることになるかな? ……いや、お姉ちゃんには
また、今回の戦いでは最強装備の
『そしてそして──神聖アインズ・ウール・ゴウン魔導国より、至高の御方に創造されし最強の武人!凍河の支配者コキュートス!!』
コキュートスもハルバードを片手に……ん?刀も持って……いや、
『選手の入場が終わりましたので、この神前試合についてのルール説明を行います!基本的に──』
さて、今回の神前試合ですが当然ルールがあります。ルールがなければただの殺し合いになるので、ルールは必須ですね。
ルールとしては基本的には闘技場で行われている試合と基本は変わりはないものの、いくつか異なる点があります。
まず、マジックアイテムの使用は無制限というところでしょうか。今回の神前試合はナザリックと私の力を周辺国家に大々的に知らしめる目的があるので、所持するマジックアイテムすらも格が違うということを知らしめる意味もあるのでしょうね。
次に、これは表立って禁止されてはいませんが、互いの殺害は避けるようにということですね。私はともかく、コキュートスをうっかり殺してしまった場合、復活にはユグドラシル金貨五億枚は必要になりますし何よりナザリックと敵対が確定してしまうので絶対NGです。
後は会場や観客を直接破壊するのも基本禁止。当然ですね。
ああ、魔法の使用は勿論OKです。闘技場では〈
「コキュートスさん、今日は胸を借りさせていただきます」
「アア、私モナザリックノ守護者代表トシテ存分ニ
「では、遠慮なく。 それと、私もアレーティアで構いませんよ」
「……アインズ様ノ御友人ヲ呼ビ捨テニスルノハ不敬デハナイダロウカ……?」
「私はそういうの気にしないので、遠慮しないでください」
「ソウカ。 ──デハ、コレ以上ハ言葉ハ不要。剣ヲ交エ語リ合ウトシヨウ」
コキュートスは右手に持ったハルバードを地面に突き刺し、空となった手を差し出し握手を求めた。それを断るなんてことをせず、握手を交わし一定距離──試合の開始位置まで下がる。
『それでは始めましょう! 試合~~~!! 開始~~~ッ!!!!』
アウラが開始のゴングのようなマジックアイテムを鳴らし、試合が開始されました。
早速私は
「マズハ小手調べダ。〈風斬〉」
広範囲に広がる風の刃が瞬く間に私に迫り──あっぶねぇ!!ギリギリ〈超回避〉が間に合った!
「コノ程度ナラ問題ナイヨウダナ。 ナラバ次ダ──〈
この魔法は……天候を変えるタイプの魔法ですか!自分の得意な
「〈天候──」
「ソウスルダロウト読ンデイタ。 〈
「なっ──ぐうっ!?」
魔法!?コキュートスってこんなに魔法を多用するタイプだったのか!?
冷気を宿した爪が私を切り裂き、身体の芯が冷えていくような感覚に襲われる。ダメージ自体はアインズ様のように最強化していないからか、そこまででもないもののそれでも〈猛吹雪〉による環境変化を阻止できず、あたりが吹雪で覆われてしまいました。
視界不良に加え、冷気が私の体力を奪っていく……そんな感覚に襲われます。
まずは反撃の一手を繰り出さねばとコキュートスへと向き直ると──いない。 僅かに目を離した隙にコキュートスの姿が消えた!?
「何処に──」
──行った。そう口に出し終える前に猛烈な殺気を感じ、咄嗟に飛びのけば直後に大刀──斬神刀皇を上段から振り下ろしたコキュートスの姿がそこにありました。
「ヨクゾ躱シタ」
大刀を振り下ろしたコキュートスは無防備!反撃するなら今──
「ダガ、狙イハ浅ハカダナ。 〈フロスト・オーラ〉」
「~~~ッ!!? 〈超回避〉!」
危なかった。あのまま〈フロスト・オーラ〉を受けていたら、恐らく凍傷かそれに準ずる何かしらの状態異常になっていた可能性が高い。
「良イ判断ダ。 ダガ状況ハ好転シテイナイゾ」
「……思った以上に本気ですね」
「ナニ、
「……小手調べ、ですか。それはいいことを聞きました。 ではひとつ──武器の打ち合いに付きあってもらいましょうかッ!!」
「イイダロウ。 ハァッ!!」
武技〈流水加速〉〈能力向上〉〈能力超向上〉を同時発動し、
コキュートスの持っている武器は大刀にハルバード。長い柄物なので、振り回すのには向いていないはず──と思いきや、コキュートスの四本ある腕の内、複腕──普段使っていない腕──がメイスとショートソードを手に私と剣戟を繰り広げる。
──なるほど、全ての腕に武器を持ってここまで十全に扱えるとは。驚きです。 そして驚いている暇もなく、コキュートスの本来使っている両腕で握っている大刀による斬り払いが迫り、これを最少の動きで回避──。
「目ノ前ニ集中シスギダナ」
「ぐっふぅ!?」
回避したつもりがナニカに思い切り殴られ呻き声を上げてしまい、追撃を避けるため一度後方へと下がる──と見せかけて武技〈残像〉で目の前に私がいるように見せかけ、私はコキュートスの背後へと回り背中に向けて剣を──
「見エテイルゾ」
「──は!?」
──振り下ろした剣はハルバードにより防がれてしまいました!なんで見えていた!?そういう騙し系統の特殊技能の無効化なんかがあったりします!?
加えて、先程受けた攻撃の正体が分かりました。 それはコキュートスの尻尾の一撃だったんですね。私の血が微かに付いています。
確かに目の前の武器を持った手にしか注意が行っていませんでした。尻尾攻撃はアニメでもしていましたし、結構な威力があることを失念していました。
ただ、どうして私の〈残像〉を見切ることが出来たのか……あっ。
「なるほど、尻尾に加えて……恐らくですけどコキュートス、あなたの視野は相当広いでしょう?」
複眼。前世における昆虫が持つ眼のことだ。
にわか程度の知識しかない私でも、複眼を持つ昆虫の視野の広さは知っている。確かカマキリの黒い眼は眼ではなく、複数ある複眼のひとつ──だったはず。
加えて言えば同じ異形種で、同族(?)に違いエントマも原作において煙幕が効かないという能力を持っていたことから、コキュートスもそれと同じだと推測出来る。だからこそこの猛吹雪でも難なく動けるのではないか。
「正解ダ。私ニハコノ吹雪ノ様ナ目眩シハ通ジナイシ、視野ノ広サモ周囲全域ヲホボ全テ見渡セル」
「……厄介だなぁ」
強い。分かっていたけど強い。
これがナザリック地下大墳墓第五階層守護者コキュートス。武人武御雷が創造したNPC。
「あはっ」
思わず笑ってしまう。この笑いが何かと言えばきっと『歓喜』だ。
ここ数年、私に立ちはだかる壁はザイトルクワエと
だけど、目の前にいる
森にいた時はずっとそうだった。死力を尽くして、自分よりも強い相手を乗り越えてきた。それを
……同時に『流石私の娘!最高傑作のアレーティアだ!!』とはしゃいでいる
そう、私はずっと自分よりも強い相手を──超えるべき相手を求めていたんだ。
「来ナイノカ? ナラバ、コチラカラ行カセテモラオウ」
コキュートスが前進する。
対して私は白金の竜鎧の浮遊する武器たちを全て起動させ、迎え撃つ。
「──上等!」
──状況は依然不利。第二ラウンドの開始だ。
○
○
○
この戦いが始まって早数分。
既に観客席は驚愕や興奮といったものに包まれていた。
会場は発生した猛吹雪により視界が悪く全貌を観ることが難しかったが、ナザリックより派遣されたシモベたちが視界を良くする支援魔法によって解消されたものの、一部を除く観戦者はアレーティア、コキュートス両名の動きを視認することは難しく、ただものすごい速さで何かが起きているという事実を理解することしか出来ていなかった。
「ね、ねえ、ラナー?」
「なんですかラキュース?」
「あれって名前は違うけど辺境侯で合ってるかしら?」
ラキュースら"蒼の薔薇"はこの場にいる者では数少ない粛清騎士アルス・ティアーズ辺境侯という人物と直接面識がある者たちだ。
なので入場の際に宣言された名前、粛清騎士アレーティアという名に違和感を覚えた。
ただ、ラキュースは直接指導されたこともあり、その動きからあれはアルスであると確信しているものの、何故名前を偽っているのか疑問でならない。
その質問に対しラナーはフフッと小悪魔のように笑う。
「そうですよね。粛清騎士アレーティアが何者か、疑問に思って当然です」
そう言うと席を同じくしていた"蒼の薔薇"の面々へと向き直り「これは私と旦那様が信頼した相手にしか告げていないことなんですが」と前置きし、こう告げた。
「アルスとは、アレーティアである」
しばしの空白を置きその言葉を飲み込もうとするが……
「ど、どういうこと?」
「そのままの意味ですよ」
あまりに単純で、それでいて難解な──理解しがたい事実を一方的に叩きつけられたラキュースたちは混乱に陥ってしまった。
もしも、その言葉の通りなら──本当の粛清騎士とは何者なのだろうかと。
「詳しいことはこの神前試合が終わったら教えてあげますよ」
聞いたからには逃がしませんけど、という副音声が聞こえるようなことを言い、ラナーは視線を戦場へと戻した。
ついでにチラリとあの皇帝の方へと目をやれば、案の定狼狽えていた。
あの男の前では強いアレーティアしか見せていなかったのだから、やられている姿を想像したこともなかったんだろうと推測する。
ラナーはある意味で皇帝ジルクニフよりもアレーティアという人物のことを理解している。今のやられている姿を見て、彼女が楽しんでいると知っているのはこの場にいるごく少人数だけだろう。
そこにあの男は入っていない、と少し優越感に浸る。
「さあ、存分に楽しんでください。私の旦那様。 私も頑張りますから」
この後、聖王国で起こす事件が上手くいけばラナーは
そうすれば──と妄想に耽りそうになる自分を必死に戒め、ラナーは観戦に戻った。
観客席のとある二人組──白金の鎧と漆黒の鎧の二人組は戦いの様子を見て、各々の糧としよう。そんな話を始まる前にしていたのだが……。
「…………」
「あの、大丈夫ですか?」
「…………大丈夫に見えるかしら?」
「…………見えません。すいません」
白金の鎧が頭を下げる。この光景だけでこの二人の力関係が分かるというものだ。
「…………そっちはどうなの?人間至上主義国家から亜人、人間入り乱れる評議国に飛ばされたあなたたちは」
漆黒の鎧を身に纏っているアンティリーネが白金の鎧──かつての漆黒聖典第一席次に問いかける。
話題を変えたのは目の前で自分より強い妹がやられている姿を見て騒めく心を少しでも落ち着かせようとしているからだ。
「まあ、なんとかやっていますよ。 この通り
ただ、祖国が亡くなってしまったことは未だ心にしこりを残していますが……」
漆黒聖典はその強さ故にナザリックの統治の邪魔になると判断したアレーティアが独断で評議国のツアーに押しつけたという経緯がある。
人類の守り手、最強の英雄部隊が要らないものと扱われてしまったことには、かつて番外席次として活動していたアンティリーネもしかめ面を浮かべる。
「それについてはもう諦めなさい。 少なくとも、あの神と敵対するのが愚かなことはもう分かったでしょう?」
「……そうですね。文字通りレベルが違います。 私でも勝つのは難しいですね」
漆黒聖典のメンバーはいつか祖国を取り戻そうと評議国で力を付け、原作で法国がそうしようとしたように数十年でも数百年でも雌伏し魔導国と帝国を打ち倒そうと計画を立てていたが、それも白金の竜王に露見してしまい、現実を知るべく元凶のひとつであるエルフの王女からの招待をツアーの監視付きでこうして向かわされたのだ。
評議国でも、鎧の眼越しに現地の映像を他のメンバーも見ているだろう。
「私もよ。 妹にも勝てないのにあんな戦士に勝てると思う?『絶死絶命』の力も失ったのに」
二人の目から見てもコキュートスという戦士はわずか数分の戦いを観るだけで絶大な力を持っていることを感じさせた。
それに加え持っている武器やマジックアイテムも六大神が遺したものを超えているのは間違いない。挑むにしても準備不足だ。
「この神前試合はこのままいけばアレーティア殿の負けで終わりそうですね。 あなたを倒した相手と言えど、神の従属神には敵わない、ということでしょうか」
「あら、それなら魔神戦争なんて起きなかったんじゃないかしら? この世に
絶死絶命を名乗っていた私が言うのもなんだけど、と付け加えてアンティリーネは戦場のアレーティアを見やる。
──笑っている。鎧越しでもそう感じた。雰囲気が楽しそうなのだ。
「思えば私と同じで自分より上がいなかったのよね」
隣の第一席次が傲慢だった頃は自分がボコボコにした上でその心をへし折った。
だが、アンティリーネを諫められる、上回るような相手は長らく現れなかった。だから、無意識に自分より上などいないと驕ったアンティリーネはアレーティアに敗れた。
ならば、次にそうなるのはアレーティアなのは必然か、それとも──。
「でも、あなたなら──」
乗り越えられる。そう口にしようと思って、やめた。
何故なら、アレーティアとコキュートスの戦いが再び動きだしたから。
この戦いを観て学ばないのは愚かなことだと、二人の一挙一動に武技を行使してまで観察する。
「私だって妹に負けっぱなしなのは気に食わないのよ」
いずれ、アレーティアを超えてみせると決意を新たにしたひとりの戦士は、心のどこかで妹を心配しながらもこの戦いを目に焼き付けるべく集中する。
それを見た第一席次は「この方も変わったな」と少し寂しそうに呟き、観戦へと戻った。
アレーティア
今回は分からされる側でもある。
序盤は経験の浅さから劣勢。
コキュートス
まだ序の口ではあるものの、ガチで、本気で戦いに来ている。
その為、最初から全ての手に武器を持っているし、魔法も行使する。
勿論、アインズ様から許可は得ている。むしろコキュートスの強さを曝け出すことで、他の守護者もコキュートスに匹敵、上回るという印象を与える役目を仰せつかっている。
それはそれとして、ちゃんと訓練らしく悪いところは指摘してくれる良い先生。
まだ盛り足りないので、もっと盛ります。
コキュートス戦は予定では後二話、全三話でお送りする予定です。
感想、高評価よろしくお願いします!!