綺麗な言峰とか呼ばれ始めた奴、番外編 作:温めない麻婆
運命のゼロ
それは、不意に起きた事態だった。
「レイシフトに同行しろ、だと?」
「ああ、頼めるかい?」
話を聞く限り、以前起きた特異点と同じ場所────その過去にてまた特異点が出来てしまったという。それが何度も起きるわけじゃないこと。言峰自身がそこの関係者だっただろうという話があり、藤丸とのレイシフトに同行してほしいと頼まれたのだ。
それに言峰は応じることにした。
ラスプーチンとして憑依している本人はともかく、言峰の意識としてはそれが愉悦に繋がることだと理解しているからである。
なんといっても諸葛孔明がレイシフトに同行すると分かり、彼と出会った瞬間あからさまに嫌そうな顔をしたことも、ロマニを見て「本気か? 本気でこいつが協力すると思っているのか? 明らかに場を引っ搔き回すだろうがファーック!」と面白おかしいことを叫んでいた事態に言峰はニヤニヤと笑いが止まらなくなった。
そんな明らかに様子がおかしい孔明に周りはびっくりしたが、言峰ならば仕方がないだろうと受け入れることにした。
いつの間にかカルデア内で言峰に対する評価が『生きている人、職員にとっては良い人で、サーヴァントたちにとっては害悪な存在』という認識をされているように言峰は感じたが。
「よろしくね、言峰さん!」
「ああ」
「言峰さんがいてくれてとっても頼もしいです! 先輩ともどもよろしくお願いいたします!」
「もちろんだとも」
「正気か? こんな明らかに酷い死亡フラグが堂々と存在しているっていうのに本気で頼もしいと思っているのか……?」
朗らかで楽しそうな藤丸達とは違い、顔を青ざめ胃が痛そうな孔明。それにニヤニヤする言峰。
温度差の激しい地獄絵図がそこにあった。
「ふむ……」
ニヤニヤとしながらも言峰は考える。
これからレイシフトするのは第四次聖杯戦争となった場所。おそらくは言峰本人が生前で活動していた世界だ。
それがどういう意味なのかラスプーチンとして憑依している『彼』は知っている。しかしもしも、もしもサーヴァントとして活動している自分が、言峰本人と出会ったらどうなるのだろうかと想像してしまったのだ。
きっとこれは言峰本人の意識。その感情。何が起きるのか分からないからこそ、愉しいと思えるもの。
今はカルデアで密かに裏切り、また味方している二重スパイみたいなことをしている言峰だったが、このレイシフトに同行することによって消滅しても構わないと思えた。
それもまた自分の力量、運命だと言えるだろう。とりあえず愉悦できるぐらいなら構わないかと。
これから先にて起きるであろう事態に、言峰は楽しくなってきたのだった。