綺麗な言峰とか呼ばれ始めた奴、番外編 作:温めない麻婆
どうにも様子がおかしい。
言峰として記憶しているものとは違うようだと『彼』は理解した。
────そういえば、こういうイベントがあったなと。
おそらくはこれはカルデアで発生する面白おかしいイベント関連のものだろうと言峰は状況を理解する。
自分ではない生前の『言峰』はいない。衛宮切嗣もいなかった。
アインツベルンがマスターとして第四次に参戦している世界らしく、何かが変だと言峰は眉をひそめた。
「……藤丸立香。少し離れるぞ」
「分かった!」
「おい待て何処へ行くつもりだおい! お前も簡単に応じるな!」
「えっなんで?」
「言峰さんは偵察に向かわれるということですよね?」
「そんなわけあるか!!」
マシュと藤丸の問いかけに怒声を上げる孔明。そんな様子をニヤニヤと見ながらも言峰はその場から立ち去る。
おそらく自分がここに居ても解決できるだろう。自分が知る記憶とは違うが、孔明が協力しているのなら藤丸立香が安易に死ぬことはない。
本当だったら藤丸立香と共に協力しながらも結末を見届けるつもりだった。自分がいたなら愉悦するためにちょっかいかけるつもりでもあった。
しかし状況が異なってくるというのなら話は違う。
マシュの言うように偵察も兼ねての行動だった。やるべき責任は成し遂げよう。藤丸立香が死ぬかもしれない場面に遭遇したならすぐに助けよう。
そう思ってはいるが────本能的にだろうか。彼女たちから離れて一人で行動した方が面白い事態になると思えたのだ。
だから言峰はなるべく姿を見せないようにしながら周りの状況を探っていた。
出来るだけギルガメッシュから離れた位置で。襲撃を受けたならすぐ対応するために警戒して……。
「止まれ」
それは、突然だった。
背中にゴリっと何か硬いものが押し付けられる。おそらくは拳銃だろう。
聞こえてきた声に、笑いが止まらない。もちろん相手に笑っているのだと悟られて警戒され逃げられるわけにはいかないと言峰は衝動を抑え肩を震わせるだけに留めたが……。
身体を震わせたそれを、恐怖だと勘違いしたのだろうか。
歓喜にも似た衝動。
まさかこの場で会えるとは思っていなかったと叫びたいモノ。その殺意。
「衛宮切嗣……!!」
「っ────!」
振り向いた先にいた奴はフードをかぶっていたが、明らかに嫌悪感をにじませたまま容赦なく拳銃を打ち込んできた。それに反射的によけながらも上段蹴りをお見舞いする。
彼はそれを避け、距離を取った。
「いいだろう。あの時のように殺し合おう、衛宮切嗣!」
「僕は君の事を知らない。だが……なんでだろうな。君だけは殺さないといけないような気がするんだ……」
それが合図だった。