ちょっとクズな直哉くん   作:いかのシオカラ

1 / 6
こんな直哉くんがいたらなあって話です
どっちかっていうと糸目とか狐目に近いイメージ


ちょっとクズな直哉くん

昔からずっと思っていた。

禪院という家において自分は歪である。

なにが作用したかなどは今となってはどうでもいい。

それに...こっちのほうが面白い。

 

...

.....

.......

 

直哉と甚爾

 

「なあ甚爾くん」

 

「...なんだ」

 

うだるような暑さの今日。

縁側でだらける僕と、スイカを貪る野獣のような男『禪院甚爾』

 

「面白いこと言って」

 

「お前...それ何度目だ?退屈なら本でも読んどけ」

 

「ここにある本なんてカスみたいな呪術のあれこれぐらいしか載ってない暇人のための本やん」

 

「...仮にも御三家の人間が言っていいセリフじゃねえだろそれ」

 

「だってそうやん、おもんないし。どうせきっしょい禪院のやつが書きよったんやろ」

 

「ここがお前の屋敷でよかったよ」

 

しばしの沈黙。

五月蠅いセミと増していく熱さ。

そんな中不意に口が動いた。

言いたかった。でもなかなか勇気が出なかった。

言えば自覚してしまいそうで...嫌だった。

 

「ほんまに出ていくん?」

 

「んあ?」

 

「結婚してここ出る言う話、ほんまなん?」

 

「...ああ」

 

「なんで?」

 

「しゃーねえだろ、向こうは一般家庭なんだぞ。こっちの世界に引き込むわけにはいかねえんだ」

 

「知ってる」

 

「そうかい」

 

「僕も」

 

「ダメだ」

 

「...なんで」

 

「これから生まれてくる才のねえ奴には、てめえみたいなやつが必要だ。だから俺のとこに来るなんてのは許さねえ」

 

「...寂しいわ、ほんま。僕の家やったらいつでも帰ってきてええで」

 

「...」

 

一回りも二回りも大きな手が僕の頭を包み込む。

彼が本気を出せば、子供の頭なんて卵みたいに潰せるだろう。

でも、その手はただひたすらに優しかった。

髪がぐしゃぐしゃと音をたて、かき回される。

消え入りそうな声で彼はそっと一言。

 

「ありがとな、直哉」

 

悲しくない。自分にそう言い聞かせたが、

頬を伝い口へと運ばれる塩辛さが僕にこの想いを実感させた

 

あれから十と数年

小さかった背丈も彼に負けないほど大きくなり、掌だって彼と比べても見劣りしないだろう。

黒装束を身にまとい、目の前の無機質な石造りに花を添える。

 

「結局、帰ってこんかったね」

 

赤の花を添えたときに、そんな言葉が出たかもしれない

 

-直哉と双子-

 

日常に特に大きな変化はない。そんなある日、叔父の娘に会うことになった。

名前を真希と真依。双子で、一人は天与呪縛によって呪力が一般人程度しかないらしい。

屋敷の中を適当にうろうろしていた時、たまたま出会うことができた。

一度は面と向かって話をしてみたかったので、これ幸いと声をかけたが、どうやら母親もつれていたらしい。

自分しては話がややこしくなりそうで、できれば3人が良かったが...仕方ない。

 

「君らが真希ちゃんに真依ちゃん?ごっつかわええね、お人形さんみたいやわ」

 

「あ、ありがとうございます。ほら、二人とも」

 

フイっと二人とも僕から目を逸らしてしまう。

だんだんと青くなる母親の顔。

まあ、顔色を窺ってヘコヘコされるよりこっちのほうがよっぽどいい。

 

「なっはっはっはっは、僕フラれてもうたか、ほうかほうか。ええよ、ここにおるカスどもみたいに、人の顔見るよりそっちほうが僕は好きや」

 

「は、はあ」

 

「うん、カスどもが絡んできよったら僕のとこにおいで。そいつボコボコにしたるわ。ああ、僕の屋敷でもええで。お菓子も漫画もゲームもぎょーさん揃えとる、きっと飽きひんわ」

 

双子の姉妹が不思議そうな顔で僕を見つめてくる。

激怒されるとでも思ったのだろうか。まあ、ここにいる人間ならやりかねないだろう。

ゆっくりと腰を下ろし、繋がれた双子の手を包み込む。

彼ほどではないけれど、自分の手もなかなか大きくなったものだ。

気が付いた時には不思議と視線が真希ちゃんの方へと向いてしまっていた。

 

「せっかくの双子の姉妹や。仲良うやりや。...この手、放したアカンで」

 

それだけ言い残し、自分の屋敷へと帰っていく。

懐かしい影を瞼の裏側に感じながら。

 

 

あれから数週間。

漫画で暇な時間を潰している最中、不意に玄関の戸が叩かれる。

今日は女中なんかが皆休みで出払っているので、屋敷には自分しかいない。

仕方がないので、重い腰を起こし玄関へと向かい戸を開けた。

 

「あいあい、どちら様」

 

気だるげにあけた先には、いつぞやの双子と繋がれた手がそこにあった。

思わず表情が緩む。

 

「いらっしゃい、ゆっくりしていきや」

 

寂しい屋敷の玄関に、仲良く並べられた小さい二足の草履がそこにはあった。

 

-直哉と双子 その弐-

 

近くのコンビニで乾電池を購入し、屋敷に帰った時、なにやら騒々しい喧騒が聞こえたので、足早に向かう。

すると真希ちゃんが禪院の人間に何やら腕を掴まれていた。

 

「逃げるな猿が!お前、直哉様の屋敷で何をしていた!」

 

「だからさっきも...!」

 

「つくならもう少しマシな嘘をつけ!直哉様が...!」

 

「僕がどうかしたん?」

 

「ああ、直哉様。ちょうどいいところに。猿がなにやら直哉様のお屋敷でウロチョロしていたもので...ひっ捕らえていたところです」

 

額に青筋がビキビキと浮かんでくるの感じる。

 

「ほーん。ほーか。...手放せやドブカスが」

 

「えっ?はっ?」

 

「聞こえんかったか?手放せ言うたんじゃボケ。この子らにはちゃんと俺から入ってええ言うたし、中で好きにしてええいうた。...んで、君は?なんで俺の屋敷の敷地内入ってんの?許可した覚えないけど」

 

怒気をはらんだ声で、ゆっくりと聞き漏らしがないように伝える。

 

「わかったらはよ去ねや、殺すぞボケ」

 

負け惜しみなのか、キッと真希ちゃんをにらみつけ男はその場を去る。

最後までダサいやつだ。

 

「真希ちゃん大丈夫?なんもされてへん?」

 

「別に何も。腕掴まれただけ」

 

「ほーかい。すまんな、今日は誰も屋敷におらんし僕のさっきまで買い物いっとったし...。悪いことは言わんからなるべく屋敷の中おり」

 

「真依が、アイスを食べたいっていうから...」

 

「あれま、もう冷凍庫になかったんかいな」

 

以前に冷凍庫のアイスがなくなった際には、女中や屋敷の人間に頼めばいいと二人に伝えていたことを思い出す。

 

「...ほんで、屋敷に誰もおらんし僕を探してたと」

 

「だいたいそう」

 

「ふっふーん、こんなこともあろうかと、ちゃんと買ってきたで、アイス。ほんまは僕が食べよう思うてたけど、特別な」

 

「あ、ありがとう」

 

ぎこちないお礼。これでも最初よりは随分と自然になったものである

 

「なはは、」

 

...

.....

.......

 

「なんてことがあってなあ」

 

石造りの階段、上段に座った僕。

下段に座った真希ちゃんの同級生にそんな昔話をする。

 

「へえー、真希のやつにもそんな可愛い時期があったんだな」

 

「しゃけ」

 

「そ、そうだったんですか。あはは」

 

「なんや乙骨くん、反応が微妙やなあ」

 

「直哉、後ろ後ろ」

 

同級生3人が僕の背中に視線を向ける。

少し嫌な予感。ゆっくり後ろに首を向けると...

 

「直哉ぁぁぁぁぁああ!!」

 

屠坐魔を振りかぶった真希ちゃんがいた。

やべ、そう思い急いで術式を発動。

亜音速でグラウンドを逃げ回る。

 

「逃げるなア!卑怯者オ!」

 

見てるか、甚爾くん。

僕、今めっちゃおもろいわ。

やからまだそっちには行かんで。

せいぜいそっちで羨ましがっとき。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。