-直哉くんと虎杖くん-
春の暖かさが体をぽかぽかとあたためる今日この頃。
恵くんの様子を見に東京に訪れていた。
入学早々、同級生を亡くしてしまったとのこと。
優しい恵くんのことだ。心に大きな傷を負ってしまったことだろう。
っと、思い携帯がブルブルと振動。
着信画面を見てみると『アホグラサン』の文字が。
...面倒ごとの予感。
しかし、このまま無視し電池切れてたーなんて言えるものでもない。
はあっとため息をつき、電話にでる。
「もしもし、禪院直哉です」
『ああ、直哉。今東京いるんだって。暇でしょ?高専の地下室までよろー。あとついでに今週のジャンプもお願いねー』
嵐のように向こうが告げたいことだけ、通話が終了。
僕は五条くんの着信名を『クソ目隠し』に変更した。
...
.....
.......
地下室の重たい扉を開け、扉の少し先にいた白髪にジャンプをぶん投げる。
「ジャンプ一冊、へいおまち」
「直哉ー、ジャンプは投げものじゃないよ」
「知っとるわ。...んで、今日はどないしたん?また面倒ごと?」
「うん、今までの頼み事より一番面倒。直哉くんには...ほれほれ」
五条くんが指をさした場所には、まだ幼さの残る少年。
「どうも初めまして!虎杖悠仁です!好きなタイプはジェニファー・ローレンスです!」
死んだはずの宿儺の器。虎杖悠仁がいた。
...だいたいのことは把握することができた。
「虎杖悠仁は死んだいう風に聞いたんやけど...まさか偽造したん?」
「んー、まあちょっと違うけどだいたいそう。一応言っとくけど、死んでも他言無用ね」
心の底からの大きなため息。
「...ほんまにエグイことしよるねキミ」
「僕もそう思うよ。それでキミにお願いがあるんだけど...悠仁の指導をお願いしたいんだ。僕よりも直哉のほうが適任だと思ってね。なーに心配せずとも、きっとすぐに悠仁のこと気に入るよ」
頭の上から大量のトンカチが一斉に落ちてきたような気分である。
...
.....
.......
結局五条くんはあのあとすぐに『任務があるからー』と出て行ってしまった。
部屋に残されたのは僕と虎杖悠仁くんの二人。
「あのーナオヤン」
「ナオヤン?」
「いや、禪院直哉だからナオヤンでいいのかなって?」
まずいな、このタイプはなかなか接してこなかった。
今まで接してきた年下のタイプでも極めて珍しい。
こんなときに七海くんでもいてくれれば話をうまくまとめられるんだが...
「あー、ええよ。それで。ほな改めまして自己紹介ね。禪院直哉、27歳。一級術師です。好きなもんは...アイスやね」
「そっか、よろしく!」
「うん、元気があってええね。それで、五条くんからどんなこと教えてもらった?」
「えっと、ジュリョクとコントロールの仕方。つってもジュリョクもふわっとした感じだけど」
「ほーん、それでその握っとる人形は夜蛾さんが作ったやつ?それで練習しとったと」
「そう!」
だいたい一から説明しなおしたほうがよさそうだな。
-直哉と悠仁の呪術教室-
「ほんじゃ始めていくで」
「おなしゃす!」
「まずはおさらいから。呪力が人間のマイナス、ようは負の感情から来とるって言うのは知っとる?」
用意されたホワイトボードに、黒の文字を書き込んでいく。
こういうのはあらかじめプリントを作ったほうがいいんだろうが、残念ながらそんな時間はない。
「知ってる!」
「ほんで、その漏れ出た呪力から呪霊ができる。やから術師は呪霊を生み出すことはない。呪霊を祓うには呪力での攻撃が必要やし、術者を殺すのにも呪力での攻撃が必要」
「先生、なんで人間に対しても呪力が必要なの?」
「下手に肉体の呪力が多かったりすると、そのまま呪いに転じてまうからやね。過去にあった事例では、とある術者が交通事故で死んで、呪いになってもうたことがあんねん」
「へー」
-直哉と悠仁の呪術教室2-
「ほんなら呪力の大体の説明は終わったし、術式の話に行こか」
「いえーい、待ってました」
「とはいっても虎杖くんには、術式はない。やから恵くんみたいな派手なことはできへんねん」
「なぬ!」
「でも、絡め手でチマチマ来られるよりもまっすぐに来られたほうが難しい。サンジやウヴォーギンみたいなもんやね」
「おお、かっけえ!」
少年漫画は履修しているみたいだ。よかった。
「そんで話を戻して、術式は術者が元来からもっとるもん。やから余程の例外がない限り後天的に術を授かることはない」
「...ナオヤンはどんな術式持ってるの?」
「僕のは...虎杖くんちょっと動いてみて」
「おっけ、わか」
動こうとした瞬間、虎杖くんの肩に触れる。
見事に1秒間見事にフリーズ、そしてすぐに動き出した。
「えっ、今止まった?」
「それだけやない。この部屋やとできへんけど、頑張ったら亜音速で動けんねん。その術式の名を投射呪法。効果は1秒を24分割することで自分の視界を画角とし、あらかじめ画角内で作った動きをトレースすることができる」
「すっげえ、いいなあ!」
ここまでまっすぐな瞳で褒められると少し照れくさくなってしまう。
っと、ここでこの説明をしておかなくては。
「では虎杖くん。ここで今の会話。呪詛師や対話が可能な呪霊に出会ったら注意すべき点があります。それは何でしょうか!」
「え、今の会話で?えっとー...」
「ヒントは呪力の時に説明した縛りの話」
「ああ!俺に術式の話をした!!」
「ピンポーン、大正解。術者が術式の開示をしたときは要注意。開示によって呪力や効果を底上げできんねん」
「なるほどー」
「まあ、術式を見た時点で詰み、なんてもんもあったりするから状況に因りけりやけどね」
「うげ、そんなんもあんのかよ」
「...よし。術式の話の深堀は明日以降にやるとして。今日の講義の最後の説明。反転術式について」
「ハンテンジュツシキ?」
「そう。マイナス×マイナスで呪力をプラスの力にできる。回復に使ったりが一般的やね」
「ほえー」
「こればっかりは才能がないとどうにもならんけど...虎杖くんでも習得できる可能性はある」
「マジで!?」
「うん。あくまで可能性ね。ちなみに反転術式はプラスの力、せやからマイナスの呪霊には効果がバツグン」
「う、うん?」
「薬草みたいなもんや。僕らが使うたら回復。モンスターに使うたらダメージ。そんな感じ」
「ああ、なるほど」
「じゃあこれでざっくりとした術式の説明は終わるけど、なんか質問ある?」
「ない!!」
「ほんなら、あれこれ考えるよりも体動かして覚えよか」
「体を動かす?」
「僕と組手。武道場は借りとるし、そこ使おか。僕の術式の本領も見せたいし、なにより虎杖くんの実力も見ときたい」
「...わかった、行こう!」
-直哉と悠仁の呪術教室3-
地面に息を切らしながら床に倒れ伏す虎杖くん。
最後に一発くらった右腕が少し痛む。
「すごいパワーやね、虎杖くん。これなら今の準2級が相手でも全然務まるよ」
「マジ?ナオヤンが凄すぎて想像つかないんだけど?」
「最後らへんは僕の動きにもついてこれてたし。呪力のコントロールもばっちりできとる」
「そっか...よかったー」
少しの沈黙。破ったのは僕だった。
「不躾なこと聞いてごめんな。なんで宿儺の指食うたん?」
「え?いや、あんときはそうしないと伏黒を助けられなかったし...それに」
「それに?」
「そん時たまたま爺ちゃん死んじゃって、正しい死ってなにか考えてさ」
「ほーかい。虎杖くんはあれやね...ごっつええ子やね」
「えっ?」
倒れ伏した虎杖くんの髪の毛をぐしゃぐしゃとかき分け、
「ほんまに辛うなったら、僕のとこ逃げておいで。ちゃんと力なるから」
「そっか。ありがとナオヤン。ねえ、ナオヤンはさ、なんで術師になったの?」
「うーん、お家柄かな。あとは...誰にも言うたアカンで。約束してん」
「約束?誰と?」
「僕の親友。小さいころに僕が君を守ったるっていう約束。まあ、果たせんかったけど」
「それって...」
「ご想像の通り。やからまあ...せめて近場の人間だけは死んでも守れる人間になったるわボケ...ってな」
「...そっか」
「...よし!ほんなら新しい生徒もできたとこやし、風呂入って寿司の出前でもとろか!」
「よっしゃ!ナオヤン太っ腹ー!」
「なっはっはっはっは」
-直哉くんと虎杖くん2-
あれから数週間後。
虎杖くんが任務にあたったとのことで、嫌な予感もしたので追跡。
案の定、七海くんが未確認の特級と遭遇。
僕としてはこのまま隠密行動を続けたかったが、学校が帳に包まれてしまった。
なんとかギリギリのところで滑り込み、潜入。
罠などがないかを探知し、虎杖くんのもとへと向かう。
校庭を恐る恐る調査していたところ、校舎から大きな音が。
術式を発動し全力ダッシュ。
「順平ってさ、君が愚かだって思う人間より、よっぽど」
「やめろー!!」
呪霊が術式を発動しようとした瞬間。0.0001秒。
窓を突き破り、呪霊を蹴り飛ばし、吉野順平を救い出す。
「遅れたで虎杖くん」
「ナオヤン!任務には俺とナナミンがあたってるって聞いてたけど!」
「かわいいかわいい生徒のためや。無給の休日出勤なんのその!!」
「ナオヤン...」
「ああ、それと吉野くん。君のお母さん生きとるで。何言われたか知らんけど、今高専で預かっとる」
「でも現場には破れた衣服と血液が...」
「それに関しては申し訳ない。ギリギリやったもんで右腕の先だけやられてもうた。あとで僕のこといくらでも殴ってくれてええ。そん代わりここはちょっと協力してもらっていい?」
「は、はい!!」
目の前の学校の壁にめり込んだ呪霊にありったけの怒りをぶつける。
「オイコラボケ、こんクソ呪霊が。よう好き勝手やってくれよったのう。とっととくたばれや!」
「いいぜ、来いよ!」
「悠仁!俺が死んでもカバーしたる!気張れよ!」
「応!」
-直哉くんと順平くん-
結局あの真人とかいうツギハギは取り逃がしてしまった。
途中で七海くんと合流しみんなで総攻撃を仕掛けたが、ダメージはなし。
唯一悠仁の攻撃だけが有効打だった。
っと、順平くんのお母さんと順平が高専の会議室へと到着した。
ぼそぼそと隣で座している五条くんに話しかける。
「なあ、今日順平くんが入学するかどうか決めるって話やろ?なんで僕呼ばれたん?」
「今回順平がほとんどお咎めなしなのはキミと僕の根回しによるものだし。七海は今は任務でいないし。向こうの親御さんと吉野くんからの希望」
「えー、なんかプレッシャー」
「静粛に。では吉野くん。君が出した結論を教えてもらえるだろうか」
奥に鎮座した学長が低い声を唸らせる。
「僕は...高専に入学します」
「それはなぜか」
「たまたま目覚めてしまった力とはいえ、僕はこの力に対しての責任を取りたいんです。今度こそ、自分の手で誰かを守れるようになりたいんです!」
...自然と口が開いていた。
「順平くん」
「は、はい!」
「落ち着いて聞いてほしいねん。16人。これがなんの数字かわかる?」
「...わかりません」
「もともと高専におって、死んだ僕の先輩後輩同級生の数」
「...」
「ほんまにいつ死ぬかわからへん。なんなら隣におる最強くんも明日には死んどるかもしらん。そんな世界や」
順平がそっとうつむく。
「やから、僕もスパルタ教育で行くけどええか?」
「え...?」
「夜蛾さん、ええよな?」
「悟ならともかく。直哉、お前なら安心して任せられるだろう。頼んだぞ」
「任されたわ。ほんで順平くん、どないする?」
「...!お願いします!!」
こうして、僕の生徒が一人増えた。
...
.....
.......
この日、僕はとある人物に電話していた。その相手は...
「どうも、歌姫先輩。ごめんなさいね急に電話して」
「い、いやそんな、全然大丈夫よ!...何の話からしましょうか...あ、そうそう最近物流が!」
「いやいや、どないしたんですか急に。...歌姫先輩って生徒に配るプリントとかってどうしてます?」
「プリ...ン...ト?」
「もしかしてあんまり作ってないですか?」
「あー、えー、そのー、ごめん...いやでも親戚とかからかき集めてるから!ほんと任せて!」
「いや無理せんでも」
「全然無理とかじゃないよ!よーし、ちょっと集めてくるかなー、それじゃ、あとで写メで送るから!!」
ピッと通話が途切れる。
うん、まあもらえるのはうれしいが...あの人も変人なんだなあ...。
なんか直哉が脳内で腐女子が喜びそうなキャラになってしまう。
なんで?
ちなみに元カノは3人。
全員向こうが体調不良を訴えて別れた。なんでやろね。
-評価-
順平 5
「厳しいけど、要所はちゃんと教えてくれる。あと頼りがいもある」
七海 3
「人として当然のことをしてくれるので文句なし。関りは少ないけど」
夜蛾 4
「高専の教員にならないか?」
歌姫 5
「直哉くん、ありったけをかき集めてきた!」