思い付いたので、指を走らせてみました。
今回の話のため、以前に投稿した二つの話に加筆修正を加えました。
予定では、この短編はクロヴィスの死亡辺りまで続く予定です。
ガンダムの方も少しずつではありますが、執筆しています。
皇暦2014年
神聖ブリタニア帝国 帝都ペンドラゴン
素早く、かつ確実に敵の急所を貫くために突き出されたランス。しかし、その攻撃はスタントンファにより上へと弾かれ失敗に終わる。
だが、安心もしてはいられない。眼前からスラッシュハーケンが迫る。それでも“彼"は、迫るハーケンに自身のハーケンを寸分違わずぶつけて止める。
“彼”と相対する敵は弾かれたランスを構え直すと、再び神速の突きを放つ。“彼”は機体を沈ませて回避するが、ランスが肩を削る音が響く。
だが、“彼”はそんなことは意に介さず、敵へと猛進する。力強く振りかぶられたスタントンファが、敵の命を奪うために振り下ろされる。
「それまで‼勝者、ルヴァンシュ・フラメンテ卿‼」
一人の男がマイク片手にそう叫ぶと、KMFから人が姿を見せる。無機質な仮面で顔を隠し、背中では一纏めにされた黄金色の髪が風でなびく。
初めて“彼”の姿を見た者も多く、この場に集まった貴族たちからは驚きの声が上がり、会場がどよめき始める。
「このような姿で失礼。訳あって、この仮面は外せないもので。ですが、“力”は十分に備えていると自負しております。如何でしょうか、皇帝陛下」
そう言って聞こえてくる声も、普通ではなかった。仮面を付けていることでくぐもった声なのではなく、機械を通した声。
その声に、さらに集まった人間たちからどよめきの声が上がるが、ルヴァンシュは気にすることなく闘う舞台となった闘技場を見下ろす位置にある貴賓席へと目をやる。
「確かに現ラウンズである、クレマチスを打ち破った実力は賞賛に値する。が……」
ルヴァンシュの実力を賞賛するもそう言って言葉を濁すのは、帝国最強の騎士【ナイトオブラウンズ】が一角を担うナイトオブフォー、ドロテア・エルンスト。
女性ながらもその実力は高く、女傑としてその名は知れ渡っている。
「同感です。過去の経歴が一切不明の人間をラウンズにというのは……」
ドロテアの言葉に同意の声を上げたのは、モニカ・クルシェフスキー。金髪碧眼でライトグリーンのマントを羽織った女性で、やや幼い印象を受ける。
「過去も素顔も思惑も、すべては些事に過ぎん。ブリタニアが求めるは、強者だ。力があるならば、それで良い。良かろう、貴様のラウンズへの加入を認める!」
「感謝します、皇帝陛下」
優雅に頭を下げ、仮面の下でルヴァンシュは冷笑を浮かべた。だが、それに気付けるものはいない。こうして、【円卓闘技】は幕を閉じた。
ルヴァンシュ・フラメンテは何を思い、何を願い、現れたのか。
1年後 皇暦2015年
ペンドラゴン宮
玉座の間へと続く長い通路にルヴァンシュ・フラメンテの姿。その顔には以前と変わらず無機質な仮面を着けており、感情を感じさせない人形のようだった。
ルヴァンシュは皇帝との謁見のために玉座の間へと足を踏み入れると、玉座の間は薄暗く明るさに慣れた状態ではほとんど見えない状況だった。
だが、ルヴァンシュは見えいてるかのように歩みを進め、玉座の正面まで来ると片膝をつき頭を垂れる。
「皇帝陛下、ご入来」
前触れもなく声がすると、照明が点き明るさが戻る。同時に、神聖ブリタニア帝国第九十八代皇帝シャルル・ジ・ブリタニアが姿を見せる。
「ナイトオブイレヴン、参上致しました」
「面を上げよ、我が騎士ナイトオブイレヴン」
皇帝は玉座に腰を下ろすと、ルヴァンシュは頭を下げながらそう声をかける。皇帝は威圧感溢れる声でそう口にすると、ルヴァンシュは頭を上げ皇帝を見据える。
「勅命を与える、ナイトオブイレヴン。第二皇女コーネリアに随行し、調子付いているEUを撃破せよ」
「Yes,Your Majesty」
ルヴァンシュは皇帝を見上げ肯定の意を示すと、シルバーグレイのマントを翻し玉座の間を後にする。
すると、正面から歩いて来る人物を見てルヴァンシュは仮面の下でやや目を細めると、歩いて来る人物のために通路の脇へと避ける。
正面から歩いてくるのは、先ほど皇帝からも名前が挙がった神聖ブリタニア帝国第二皇女コーネリア・リ・ブリタニア。その後ろには選任騎士ギルバート・G・P・ギルフォードの姿もあった。
一瞬だが二人はルヴァンシュを一瞥すると、そのまま通り過ぎていく。二人が通り過ぎると同時に、ルヴァンシュを歩き始める。
するとコーネリアとギルフォードは立ち止まり振り返ると、シルバーグレイのマントをなびかせ歩くルヴァンシュの背を見つめる。
「今のは……」
「ルヴァンシュ・フラメンテ卿です。ナイトオブツーのクレマチス卿に勝利し、ラウンズに加入しました。あの方が何か?」
「……いや、何でもない。忘れてくれ」
コーネリアは歯切れの悪い言葉で話を終わらせると、踵を返し本来の目的地へと歩き始める。
ギルフォードはいつもと違う様子のコーネリアとに疑問を抱きつつ、コーネリアの後を追いかけるのだった。
「(初めて見たはずなのに、何故か感じる既視感。私は、奴と会ったことがあるのか……)」