いきなり余談となりますが、グローリアがブラック星人を撃破したのとデスルーグがシャマー星人に逃げられたのは同日の出来事となります。
それと出オチとはいえ、こんなに怪獣出たのはこの作品で初めてやな。2人共ネオバトルナイザー持ちとはいえ、これほどの怪獣を所持しているのは間違いなく優勝候補と言えるでしょう。
あと、デスルーグの声優はデスレム同様に故・郷里大輔氏、グローリアの声優はグローザム同様に江川央生氏で想像してください。
それと今回出た怪獣のアイデアの一部は不死身のケダモノ様からいただきました。
――氷原と火山帯の間の谷――
グローリアとデスルーグのそれぞれの縄張りを隔てるのは、その間にある長い谷である。深さは100mほど、幅は1kmほど、長さにして数十kmあるそれは自然に形成されたものかは分からない。だが、ちょうど縄張りの間にあることで境界線として機能している。とはいえ、真逆の気候に挟まれた上に岩だらけの谷であるので生命のない不毛の地となっている。
たまに現れるのは互いの縄張りの怪獣か、そうではない迷い込んだ怪獣ぐらいか。そして怪獣が現れる時は、決まって両者の間で揉め事が起きるのだ。
グローリアがブラック星人を撃破し、デスルーグがシャマー星人に逃げられた翌日のこと。この谷底で強い怪獣反応が発せられた。
それに気づいた両者は互いに敵の侵攻かと思い、谷を挟む両崖で対峙する。
「頭でっかちの骨野郎め! 性懲りもなくまたやって来たか!」
「それはこちらの台詞だ、ウスラバカの氷野郎! 我が領土を奪いに来たとは良い度胸だ!」
『『バトルナイザー、モンスロード!』』
グローリアとデスルーグは左右の崖で罵り合った後、両者はすぐさま怪獣を召喚、谷に投入する。
「ギュイイアア!!」
核怪獣 ギラドラス
「アァーオォ――!!」
凶暴怪獣 アーストロン
「グウオオオオ!」
雪女怪獣 スノーゴン
「ギエエアアアア!」
蜃気楼怪獣 パラゴン
「キュイイーン!」
宇宙海獣 レイキュバス
しかし今回は総力戦である。両者とも相手を完膚なきまで叩き潰すため、さらに戦力を投入した。
「オロロロロロロ!!」
再生怪獣 サラマンドラ
かつて地球侵略を企むゴルゴン星人に操られ、地球でウルトラマン80と戦った宇宙怪獣。多数の角が放射状に広がった形の野球グローブにも似た頭部、五角形の特徴的な鱗に覆われた所々に金色が差した灰色の表皮、同じく野球グローブや熊手にも似た尻尾が特徴の爬虫類型怪獣である。
武器は鼻から吹く高熱火炎と口から吐くミサイルで、表皮も80のサクシウム光線に耐えるほど強固。しかし、一番の特長は細胞一片さえ残っていれば復活可能なほどの再生能力である。
この個体はかつて灼熱の惑星アペヌイで暴れていたところをデスルーグに捕獲され戦力となった。
「ブオオオオオオ!!」
古代怪獣 ギガザウルス
ジュラ紀後期の草食恐竜ブロントサウルスが突然変異して生まれた怪獣。桁外れの生命力を持ち、南極の氷山の中で氷漬けになっても成長し、ゴーデス細胞の侵蝕さえ跳ね返すほどである。長い首による殴打と口から吐く冷凍ガスが戦力。
この個体はかつて極寒の惑星コンルで暴れていたところをグローリアに捕獲され戦力となった。
「コロロロロロロ!!」
毒炎怪獣 セグメゲル
セゲル星人に侵略兵器として使役されている怪獣。緑色と金色で染められた鱗によって覆われた体表、ライオンのような鬣型の甲殻、焦点の合わぬ虚ろで白濁した目、鋭い牙を生やした口、棘の付いた尻尾が特徴。
口から吐く紫色の毒火炎【セゲルフレイム】が武器で、全身の体液にも猛毒が含まれている。
この個体はかつて惑星アペヌイでのレイオニクスバトルによってセゲル星人に勝利したデスルーグが奪い取ったもの。
「デェェアアアアンンンン!!」
冷凍怪獣 ペギラ
かつて南極から東京に飛来した怪獣。半開きの眠そうな目、下顎に一対の牙を生やした毛のないアザラシのような頭部、翼竜のような翼と長く太い尾が特徴。黒い煙を纏いながら空を飛び、口から吐く-130℃の冷凍光線は東京一帯を氷漬けにするほど強烈。
この個体は極寒の惑星コンルで暴れていたところをグローリアが捕獲したものである。
「ゲアアアアウウウウ!!」
凶剣怪獣 カネドラス
メタルニア星からやって来た凶暴な宇宙怪獣で、地球でウルトラマンレオと戦った。背中に一対の小さな翼を生やした人間体型の肉食恐竜のような見た目をしている。両手の鉤爪と頭頂部に生やした刀剣状の角【ドラスカッター】、口から吐く高熱火炎が武器。
この個体はデスルーグの縄張りにやって来たため、彼の使役する怪獣と戦闘となり捕獲された。
「ホオオオオオオ」
八つ切り怪獣 グロンケン
かつて長野県松本市に突如現れ、ウルトラマンジャックと戦った怪獣。緑色の肉食恐竜が立ち上がったような体型はオーソドックスな怪獣らしいが、手には指でなく回転ノコギリが生えているのを始め、体の各所に回転ノコギリ状の部位を備えている。見た目通り手の回転ノコギリによる切りつけと、尻尾を使った両足蹴りが得意。
この個体はグローリアの縄張りにやって来たところ、彼の使役する怪獣と戦闘となり捕獲された。
「ウゴオオオオオオ!!」
超古代怪獣 ファイヤーゴルザ
かつてウルトラマンティガと戦った超古代怪獣ゴルザの別個体が、ファイヤーマグマエネルギーを蓄えパワーアップしたもの。先端の尖った兜のような頭部、鎧のような皮膚や青い下半身などはそのままだが、全身を血管のような筋に覆われているのが相違点。変化に伴い、超音波光線も強化されている。
この個体はデスルーグの縄張りにやって来たため、彼の使役する怪獣と戦闘となり捕獲された。
「やれー!」
「殺せー!」
主人達の号令の下、谷に降り立った怪獣達は各々が敵と殴り合う。その様はレイオニクスバトルというよりは最早単なる乱闘とでも呼ぶべきものであった。
狭い谷の中での敵味方入り乱れての殴り合いであり、下手な特殊能力や広範囲を巻き込む攻撃は使えない。その代わり殴打、蹴り、体当たり、噛みつき、尻尾振り回しなど、非常に本能的・原始的な戦いが行われた。
「ゲアア!」
「ホオオ」
「ギュイ!」
「ギエエ!」
「ブオオ!!」
「ウゴオオ!!」
「アァーオォ――!!」
「グウオオ」
「コロロ!!」
「キュイア!!」
「オロロロロ!!」
「デェアアンン!!」
両陣営6体ずつ、計12体の怪獣達の戦いは熾烈を極めた。
カネドラスとグロンケンは互いの手の得物を使って激しく斬り合う。
パラゴンとギラドラスは四足獣同士でぶちかましを繰り返し合う。
ファイヤーゴルザとギガザウルスは古代怪獣同士、激しい殴打を加えれば長い首での反撃をくらうという風に互いに一歩も譲らない。
そしてセグメゲルとサラマンドラとアーストロン、スノーゴンとペギラとレイキュバスは3対3で入り乱れて殴り合った。
「ちぃ!」
「またか!」
乱闘となって1時間ほど経つも、両陣営の実力は互角。そのせいで戦況は膠着状態に陥った。
そしてこれは前回、いや今まで繰り返してきた縄張り争い全てと同じ結末であった。
故に両者が苦々しげにそう吐き捨てるのも当然だった。
「団体戦ではまた勝負はつかんらしい」
「ああ、そのようだな」
やがて疲労困憊で皆ヘトヘトになり、呻き声を上げて座り込んでしまう。セグメゲルの毒が気化して谷の中に充満したため、体力の消耗が余計早まったのもその原因だった。
「「戻れ」」
残念ながらこれ以上勝負の続行は不可能と見た両者は、ネオバトルナイザーに怪獣達を回収する。
「次は個人戦だ!」
「望むところだ!」
『『バトルナイザー、モンスロード!』』
回収した怪獣達に代わり、グローリアとデスルーグは共に奥の手、最強の怪獣達を谷の中へ召喚する。
「ピギャアアアア!!」
進化怪獣 ラゴラスエヴォ
「ギュオオオオ!!」
進化怪獣 グランゴンエヴォ
両者は宿命のライバル同士であり、またお互い同胞を喰われた仇でもある。それ故非常に仲が悪く、縄張り争いの度に殺し合ってきたが、今まで決着はつかなかった。
「ピギャ!」
「ギュオ!」
グランゴンエヴォの早速のぶちかましを、ラゴラスエヴォは背中を向けての尻尾振り回しで迎撃する。
「ぬぅお!」
ダメージがリンクし、デスルーグがよろめく。先ほどと違い、“真のレイオニクスバトル”を両者は発動していた。即ち、怪獣の敗北は己の死へと繋がる。
「ぐあ!」
今度はグローリアがよろめき、左膝を地に突く。追撃をかけようと両手を振り上げたラゴラスエヴォだったが、それを防ぐべくグランゴンエヴォが左膝に頭突きをかまし、よろけて倒れたのだ。
「ピギャ!」
「ギュオ!」
倒れたラゴラスエヴォにグランゴンエヴォがのしかかるが、右足で蹴り飛ばされて転がる。
「クソッ!」
同じく倒れたデスルーグは悪態をつく。
「とどめを刺してやる! ラゴラスエヴォ、【超温差光線】だ!」
「ピギャ!」
一方、敵が倒れたのを好機と見たグローリアは、ラゴラスエヴォに奥の手を使うよう指示する。
「グランゴンエヴォ!」
「ギュオ!」
ラゴラスエヴォが口から吐いた冷凍光線及び胸部からの火炎弾が融合、急激な温度差により何物をも破壊する光線となる。
しかしグランゴンエヴォもまたひっくり返った状態のまま同様に口からの火炎弾と背中のシンクロコアからの冷凍光線を融合し、同じく超温差光線を放つ。
「ぬおおっ!?」
「うおおおおっ!?」
超温差光線同士が衝突・反応し、やがて巨大な爆発が起きる。谷を挟む両側の崖を凄まじい衝撃が走ると共に崩落、デスルーグとグローリアは慌ててそこから飛び退いた。
「……また引き分けか」
「……残念ながらそうらしいな」
両者は谷の中、この戦いで出来た小さな窪みの内に共に降り立っていた。先ほどと違い、今はお互い息遣いが聞こえるほどの距離である。
「ギュオオオオ」
「ピギャアアアア」
崩れた崖に両怪獣は埋もれてしまったが、これで死ぬようなタマではない。すぐに残骸の山から両者は頭を出す。
「ピギャ?」
「ギュ?」
しかし、その時真上を向いたせいで、ラゴラスエヴォとグランゴンエヴォはある事に気づいた。
「「………………」」
谷の遥か上空、そこに何かが見えたのだ。
「……!」
埋もれているのに脱出もせず止まった2体をグローリアはやや当惑した様子で眺めていたのに対し、デスルーグは違和感を覚えて同じく真上を見上げた。
「……チッ。変だと思ったぜ」
デスレ星雲人の顔面の発光体が、谷の遥か頭上に浮かぶものを捉える。そして、デスルーグは忌々しげに舌打ちした。
「どういう意味だ」
「見ろ」
唯一状況が理解出来ていないグローリアだが、デスルーグが扇状の左手で頭上を指したので見上げる。
「…ああ、そういうことか」
そして、デスルーグが言った言葉の意味が、グローリアにはここでようやく分かった。
「今回はお前じゃなかったのか」
「馬鹿言え。攻め入るのなら、オレはもっとスマートにやるぜ。お前が駆けつけてくるほどもたつくなんてヘマはしねえ」
グローリアは今回デスルーグの方が縄張りを侵犯したのだと思っていたが、デスルーグは嫌味を言いつつ否定した。
「ヘッ! 嫌な野郎だぜ!」
「まぁ、それはともかく。興が削がれちまった」
「同感だ。
悪態をつきつつも、デスルーグはこれ以上レイオニクスバトルを続ける気はなかった。そして、それはグローリアも同じであった。
「漁夫の利を狙われるってのぁ、心底面白かねえ。そうだろ? グローリア」
「ああ。一時休戦だな、デスルーグ」
先ほどは怪獣総出で殺し合わせていたくせに、両者は戦いをやめることをすんなり合意してしまった。
「「降りてこい!!」」
両者が戦いを途中でやめてしまった理由――それは谷の遥か上空で、この戦いを見物していた者がいたからであった。
「なんだ、やめてしまったのか。せっかくお膳立てしてやったのになぁ」
空中に水平に浮かぶ金属の棒のような物に足を組んで腰掛けながら、下界の戦いを見物していた人物。2人と2頭はやがてそれに気づいたから戦いをやめた。
ラゴラスエヴォとグランゴンエヴォの実力は拮抗している。どちらが勝つかは分からないが、勝者は当然無傷ではないだろう。相当消耗しているか、あるいは勝った方もじきに死ぬかもしれないぐらい傷ついているかもしれない。
当然、そこを狙われるのは好ましくない。確かにグローリアとデスルーグは両者とも多数の怪獣を抱える実力派のレイオニクスではあるが、今は全ての怪獣が傷つき体力をかなり消耗しているからだ。実力の劣るレイオニクスや怪獣といえど、勝ち残った方をそのタイミングで襲撃すれば勝ち目は十分ある。
「余計なお世話だ」
「貴様の掌の上では踊らん」
デスルーグとグローリアはしのぎを削ってきたライバル同士。言い換えれば、お互い気心はそれなりに通じる間柄である。
故に、お互いの勝負の決着を特別なものと考えている。それは誰の横槍も入らない、神聖なものでなくてはならないのだ。
例えレイオニクスバトルがルール無用、乱入でさえ本来何も問題がないと理解しているにもかかわらずだ。
「だが、そうでもしないと、お前達は本気で殺し合わないだろう?」
谷の上空から2人のすぐ前まで、棒に腰掛けたまま見物者は降りてきた。そんな余裕綽々な態度に憤る両者に対し、白い棒に腰掛けた人物――長い蒼髪の女はそう言って微笑んだ。
「お前は地球人か? まさかこんな所でお目にかかれるとは思ってもみなかった」
グローリアは地球人には会ったことはないが、どういう見た目なのかは一応知っていた。何故なら、地球人という種族自体がこの宇宙において非常に有名だからである。
その理由は地球という星がこの大宇宙においても稀も稀、水と緑に満ちた美しい星で数多の侵略者達に狙われたこと。さらにはその星に住む彼等を守るため、遥か遠いM78星雲から光の国のウルトラマン達がやって来たことに尽きる。
「いや………………」
一方、デスルーグも地球人の知識はあったが、目の前の女の正体がそうだと安易に断定せず、じっと目を凝らす。
(長い蒼髪……)
身長は180cmを軽く超え、手足はすらりと伸びている。体躯は細身だが、出る所は出ていて豊満。そして非常に整った顔立ちも、肢体と釣り合っている。
ただし、顔に浮かぶ表情からは冷酷で酷薄な性格が窺え、全身から漂わせる危険な雰囲気は彼女を凶悪宇宙人同様の近寄り難い存在へと変えている。
しかし、何よりの特徴はその青い髪である。瞳も眉も同じ色ではあるが、何より女は膝まで届きそうなほどに長いスカイブルーの髪を生やしていた。
「……ペルフェクト星人か」
そのように、女の特徴を照らし合わせて推理した結果、デスルーグが思い当たる種族は一つだけだった。
「ほう。よく分かったな!」
女は少し驚いて目を見開いた。種族を言い当てられたことは、この星にやって来て初めてだったからだ。
「初めて聞く種族だ。どういう連中なんだ?」
グローリアは彼女の種族を知らなかったので、デスルーグに詳細を尋ねた。
「母星を失って宇宙を彷徨う哀れな連中さ。しかも失ったのは故郷だけじゃない………文明も文化も、ついには固有の言語も、みんな何もかも失っちまったんだそうだ。
だから、今は他の星の社会に寄生してるんだってな? こいつらに変身能力は無いそうだが、地球人を始め、不思議なことに見た目が似た種族は宇宙には結構いるからな。そいつらに紛れて暮らしてるんだそうだ」
何らかの理由で母星を失ったペルフェクト星人は、いわゆる地球人型の種族に紛れ、その社会に寄生して暮らしてきたという。そうデスルーグは聞いている。
「ハッ、それは哀れなもんだ」
しかし、グローリアはそんなペルフェクト星人の身の上話を聞いても鼻で笑うだけだった。
宇宙に名を轟かす強豪種族であるグローザ星系人である彼からすれば、他種族の社会に寄生することで生き永らえてきた弱小種族を嘲笑するのは当然であろう。
「お前がレイブラッド星人の後継者になろうとするのは、種族の復興のためか?」
デスルーグは女にそう問うたが、彼もまた宇宙に名を轟かす強豪種族であるデスレ星雲人の出身。グローリアと同じく侮辱的な態度を隠そうとしなかった。
「いいや、違う。そもそも、私はお前達のように競い合う立場にはない。
このギガバトルナイザーを見れば分かる通り、私は
「「!!」」
だが、そんな哀れな女からの返答は予想だにしないものだった。それに驚き、2人の意識は嘲笑でなく警戒へと変わる。
「てっきりオレ達の共倒れを狙っているもんかと思ってたが……運営側なら事情は違うらしいな」
では何故、女は両者を戦わせようとしたのか?
「レイオニクスは怪獣を使役し戦い合うのが本分だ。
縄張りに引き籠もること自体をとやかく言う気はないが、あまり保身に走られて本分を忘れられるのも、運営側としては看過出来ないのだよ」
「そう考えたから、この谷で怪獣反応が出るように仕掛け、互いに縄張りを侵犯したと思わせてオレ達を戦わせようとしたってわけか…」
「その通り。そうでもしないと、お前達は縄張りから出てこないだろう?」
納得はしたものの、両者は非常に不愉快げだった。
「最後の1人となるまでレイオニクスバトルを行い、勝ち続ける。それがレイオニクスであるお前達の義務なのだ!
さあ、戦え! 誰が相手であろうと躊躇うな! レイブラッド星人の後継者となり、己の野望を叶えたいのであればな!」
戦いをやめてしまった2人のレイオニクスに尚、女は戦うよう強要する。
「お前が何者であろうとどうでもいいが、その態度は気にいらねえな」
「まずはお前から殺そうか?」
しかしデスルーグもグローリアも、再び燃え上がった戦意を向けたのはライバルではなくこの女にであった。
互いに決着をつける気はもちろんあるが、それはあくまで自分達の意思。他者から、ましてや無理矢理強要されるものではない。
女の差金は彼等の勝負の決着をつけるどころか、かえって不愉快な第三者を排除するために一時的に手を組ませてしまったのである。
「ふぅ、まったく。レイオニクス同士なのだから中途半端に団結などせず、素直に戦い合えばいいものを」
戦意と殺意を向けられた女は笑顔から一転し、目を瞑ってため息をつく。
「ラゴラスエヴォ!」
「ピギャアアアア!!」
「グランゴンエヴォ!」
「ギュオオオオ!!」
主人の呼びかけに応え、ラゴラスエヴォとグランゴンエヴォは岩塊を跳ね飛ばして脱出する。
「やる気はまだあるようだな。もっとも、私の狙いとは違う方に向いてしまっているが。
まぁ、それならそれでいいか。ならば、私が直々にお前達のレイオニクスとしての実力を測ってやろう」
女は今度は陰惨な笑みを浮かべる。すると二大怪獣の少し先の空間が揺らめき、半透明の怪獣のシルエットが浮かび上がる。
「お前達に試練を与えよう。見事くぐり抜けて見せよ!」
「キシャオー!」
怪獣のシルエットが実体化し、その禍々しい姿が現れる。
「キシャオオ!!」
インビジブルタイプビースト ゴルゴレム
かつてウルトラマンネクサスが戦ったスペースビーストの別個体。四足歩行型で、口から伸びる管状の口吻【ゴルゴレムプロポセス】、背中に生えたいくつもの結晶体、体表にいくつも点在する目のような黄色の発光体が特徴。
「ヘッ! ずいぶんとグロテスクな見た目の怪獣だな」
好みに合わなかったのか、グローリアはそう吐き捨てるように言う。
「こいつはゴルゴレムか。オレも見るのは初めてだ。
だが、ちょうどいい……昨日はグランゴンエヴォがミスってガルベロスを殺っちまったからな。こいつをその代わりにしよう!」
逆にデスルーグの方は、昨日グランゴンエヴォの不手際で殺してしまったガルベロスの代わりに自身の戦力に加えようと考え、やる気を出した。
「グランゴンエヴォ! 叩きのめしてやれぃ!!」
「ギュオオオオ!!」
ゴルゴレムを戦力として欲するデスルーグの意思を受け、グランゴンエヴォは目の前のスペースビーストに向かおうとする。
『『ケイコク! 敵怪獣反応!』』
「「ん!?」」
しかし、そこで2人のネオバトルナイザーが同時に警告を発した。
「ピギャ!!??」
「ギュオオ!!??」
目の前のスペースビーストに意識が向いていたため、背後から伸びる複数の触手に2人と2頭は気づいていなかった。
まんまと近づくことに成功した触手はグランゴンエヴォを絡め取り持ち上げると、背後へとぶん投げて地面へ叩きつけた。
「何だ!?」
デスルーグは驚愕し背後へと振り返ると、同じく怪獣のシルエットが浮かんでおり、すぐに実体化する。
「ブギャアアアアアアオオオオオオ」
その姿はあらゆる怪獣の中でも群を抜いておぞましく、生理的嫌悪感を煽るものであった。
「ブギャアアアアアアオオオオオオ」
フィンディッシュタイプビースト クトゥーラ
かつてウルトラマンネクサスと戦ったスペースビーストの別個体。体型こそ二足歩行型ではあるが、体の各所にサンゴやタコ、イソギンチャクといった海洋生物と歪んだ人間の頭蓋骨を無秩序に融合させたような、途轍もなくグロテスクな外見が特徴。
「何だコイツ!!?? キモチワリィ!!!!」
今まで見てきたどんな怪獣も及ばぬ不気味でグロテスクな姿には、思わずデスルーグもそう叫んでしまった。
「フフッ、その趣味の悪いブヨブヨはお前にくれてやるぜ」
「プギャギャッ」
「あっ、貴様ァ!!」
グローリアもラゴラスエヴォも同じ感想だったらしい。グランゴンエヴォがそちらを相手させられそうなのをこれ幸いとし、自分達はマシな方であるゴルゴレムを相手することにした。
「チッ、こいつはオレも趣味じゃねぇんだよ!!」
苛立ち気味にそう吐き捨てるデスレ星雲人。クトゥーラのあまりの気色悪さ故に、デスルーグはつい先ほどとは逆に戦いに乗り気ではなかった。
「だが、お前に拒否権はない。
これは試練。戦わねば死ぬぞ?」
浮遊するギガバトルナイザーに腰掛けながら、ペルフェクト星人は美しくも腹立たしい笑みを浮かべ、デスルーグにそう告げる。
「ああ、分かったよ、お嬢さん。見事突破してやるから、そこで指をくわえて大人しく見てな!」
苛立ちながら、デスルーグは女にそう言い返す。
果たして、グローリアとデスルーグは試練を突破出来るのだろうか?
用語解説
再生怪獣 サラマンドラ
かつてウルトラマン80、ウルトラマンメビウスと戦った宇宙怪獣の別個体。地球侵略を企むゴルゴン星人によって地球に送り込まれたが、惑星ボリスでも野良の個体が現れている。
多数の角が放射状に広がった形の野球グローブにも似た頭部、五角形の特徴的な鱗に覆われた所々に金色が差した灰色の表皮、同じく野球グローブや熊手にも似た尻尾が特徴。
武器は口から吐くミサイルと鼻から放つ高熱火炎で、表皮もUGMの戦闘機の攻撃や80のサクシウム光線に耐えるほど強固だが、最大の特長は細胞一片さえ残っていれば復活可能なほどの再生能力。ただし喉に再生能力を促す酵素を出す器官があり、ここを事前に破壊されると再生不可能になる。
本個体は灼熱の惑星アペヌイに現れたものをデスルーグが捕獲したもの。従来の個体より戦闘能力は高いらしく、デスルーグからの評価は高い。
古代怪獣 ギガザウルス
かつてウルトラマングレートと戦った古代怪獣の別個体。太古の草食恐竜ブロントサウルスが突然変異で怪獣化したものだが、並の怪獣の倍近い大きさとギラドラスに匹敵するほどの重量を誇る。グレートと戦った個体は南極にて氷漬けで仮死状態になっていたが、その状態で成長を続けており、ゴーデス細胞の侵蝕すら跳ね返すほどの生命力を誇る。
大まかな特徴はブロントサウルスと似るが、頭と首の境目から一対の突起が下に伸びているのが違い。原種と違い、口から冷凍ガスを吐く能力を持つが、今まで氷漬けになっていたせいか太陽光や熱に弱い。また、性格は草食恐竜らしく大人しい。
本個体は極寒の惑星コンルで暴れていたところをグローリアが捕獲したもの。地球の個体同様性格は大人しく、あくまで自衛のためにしか戦わないが、グローリア曰くいざという時は頼りになるらしい。
毒炎怪獣 セグメゲル
他の星への侵略行為を繰り返すセゲル星人に兵器として使役される怪獣。緑色と金色で染められた鱗によって覆われた体表、ライオンのような鬣型の甲殻、焦点の合わぬ虚ろで白濁した目、鋭い牙を生やした口、棘の付いた尻尾が特徴の禍々しい怪獣である。
最大の武器は全身に帯びた猛毒で、血や体液、さらには吐く炎にまで含まれている。セグメゲルを傷つければこの毒を浴びることとなり、他の怪獣より対処を難しくしている。
セゲル星人の召喚士は侵略兵器として都合良く利用し、死亡した場合でも別個体を召喚して投入するほどだが、一方で『セグメゲル様』と呼び崇拝するような一面を見せる。
本個体は灼熱の惑星アペヌイにてセゲル星人(RB)とのレイオニクスバトルに勝ったデスルーグが奪い取ったもの。元々かなり凶暴な怪獣で、一度暴れればセゲル星人の召喚士でも命令を聞くことはないというぐらいなので、デスルーグも制御には苦労しているとのこと。
冷凍怪獣 ペギラ
南極に棲む飛行怪獣の別個体。地球怪獣であるが、惑星ボリスを始め、他の惑星でも生息が確認されているが、理由は不明。
コウモリや翼竜のような手の付いた大きな翼を持つが、怪獣らしく胴体もがっしりしており、頭部は下顎から一対の牙を生やしておりアザラシやセイウチとやや似ている。口からは反重力効果を伴った-130℃の冷凍ガスを吐き、東京一帯を凍らせた。南極に生えた苔から採取される『ペギミンH』という物質を嫌う。
本個体は極寒の惑星コンルで暴れていたものをグローリアが捕獲したもの。怪獣でも数少ない飛行怪獣だけあり、スピードと冷凍ガスで翻弄する戦法を得意とするとのこと。
凶剣怪獣 カネドラス
かつてウルトラマンレオと戦った、メタルニア星からやって来た宇宙怪獣の別個体。鋏にも似た両手の鉤爪、背中から腕にかけて生える翼膜、頭頂部の刀剣状の長い一本角【ドラスカッター】が特徴。口からは高熱火炎を吐き、頭頂部のドラスカッターはブーメランのように投げつけることも出来る。また、背中の翼を広げての高速飛行が可能。
地球に現れた際は梅田兄妹を庇うレオを遠慮なく叩きのめすなどやりたい放題だったが、ドラスカッターを投げ返されて目を潰された挙げ句、首を切られて倒された。
本個体はデスルーグの縄張りにやって来た際に捕獲されたもの。地球に現れた個体はウルトラマンレオにドラスカッターを投げ返されて目を潰された教訓から、デスルーグによりドラスカッターの不用意な使用をしないよう戒められている。
八つ切り怪獣 グロンケン
かつてウルトラマンジャックと戦った怪獣の別個体。当時の個体は長野県松本市へ突如現れ、観音像を真っ二つにするなどやりたい放題だったが、ジャックによって倒されている。
緑色の体色に二足歩行の爬虫類のような見た目という一見オーソドックスな怪獣体型だが、頭部、両手、顎、腹部、両脛に回転ノコギリを備えた点は異彩を放つ。地球怪獣だが、あまりに攻撃に特化したその見た目は超獣にも見える。戦力は体の各所の回転ノコギリでの切りつけだが、両手が切断された後も発達した尻尾で飛び蹴りを繰り出した。
この個体はグローリアの縄張りにやって来た際に捕獲された。グローリア曰く、そのノコギリの切れ味は怪獣すら切断するとのこと。
超古代怪獣 ファイヤーゴルザ
かつてウルトラマンティガと戦った超古代怪獣ゴルザの別個体が、ファイヤーマグマエネルギーを蓄えパワーアップしたもの。レイの姉のケイトも使役していたという強豪怪獣である。
見た目はゴルザ同様だが、全身を覆う血管のような筋があるのが違い。能力全般が強化されており、超音波光線もパワーアップしている。
本個体はデスルーグの縄張りに現れた際に捕獲されたもの。本来ゴルザ種は邪神ガタノゾーアの尖兵であるが、デスルーグ曰くこの個体は特にそういう振る舞いはしていないとのこと。