怪獣超無法惑星   作:フルメタル・ミサイル

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 分割した方の後半。こんなに長くなるとは自分も思わなかった。
 ペルフェクト星人の声については、元ネタ的には大原さやか女史、もしくは井上喜久子女史か折笠愛女史、それらも気に入らなかったら自分の好きな声優で想像してください。


炎vs氷!! その4 災厄の獣達

 まさに前門のゴルゴレム、後門のクトゥーラ。グローリアとデスルーグが生きて帰るには、このスペースビースト達を撃破しなければならない。

 

「キシャオオオオ!!」

「ブギャアアアアアアオオオオオオ」

 

(どちらも異空間移動が出来るビーストなのは同じだが、肝心の移動先の位相がそれぞれ異なる。

 そして、やりやすかったのはゴルゴレムの方だ。あっちが良かったな…)

 

 博識なデスルーグは、ゴルゴレム及びクトゥーラの能力・特性は既に知っていた。

 どちらも異空間移動を可能とする。別の次元に逃げ込まれれば、こちらからは一切の手出しが出来ないが、向こうは一方的に攻撃してくる。

 ただし、移動先の位相はそれぞれ異なる。当然、対処法もだ。

 だが、それについては些か問題がある。ゴルゴレムは次元移動について明確な弱点が存在するのに対し、クトゥーラの方は特にないのである。

 

(チッ、グローリアの野郎だけ(ラク)しやぁがって! オレだけ貧乏くじを引かされたみたいでムカつくぜ!)

 

 何かこちらの方だけ損をさせられているような気分だったので、デスレ星雲人は憤る。

 

「しょうがねえ! こいつをブチのめして、奴よりもオレの方が実力は上だと証明してやるぜ!」

「ギュオオオオ!」

「やるぞグランゴンエヴォ! オレ達のコンビが宇宙最強であることを証明するのだ!」

「ウガアアアアオオオオオオ」

 

 闘志を漲らせる主従。そんな彼等を嘲笑うかのように再びクトゥーラの姿は薄れ、無数の触手のみがグランゴンエヴォに襲いかかる。

 クトゥーラはあまり俊敏に動けるようには見えないが、触手の方はそうでもない。その動きは素早く、かつ非常に正確であり、かつて戦闘機をも難なく打ち落としたぐらいである。

 

「ギュオ!」

 

 しかし、このグランゴンエヴォもまた数々の野良怪獣を倒し、敵レイオニクスとのレイオニクスバトルを制してきた強者。

 幾本もの触手の素早く複雑な動きを冷静に見切り、その全ての先端に口から吐いた火炎弾を全弾命中させたのである。

 

「ギャアアアアアアアア!!!!」

 

 たまらず悲鳴を上げるクトゥーラ。元々体中に苦しんでいる顔が付いているが、今回の悲鳴は見た目だけでない本物らしい。

 

「その触手、体表面温度が数千℃あるグランゴンエヴォを触っても平気なのは大したものだ。

 だがな、奴の口から吐く火炎弾のアツさはその比じゃないんだぜ」

 

 デスルーグの言う通り、グランゴンエヴォの体表面温度は進化前よりも遥かに高いものであるが、口から吐く火炎弾に至っては比べ物にならないほどに熱と威力が増している。あまりの熱量故、防ぐにはバリアのようなエネルギー系の防御手段が必須である。

 

 

 

 

 

「ほう、さすがは我が好敵手! オレ達も負けていられんなぁ、ラゴラスエヴォ!」

「キシャオオオオ」

 

 猛る主従に挑戦するかの如く、ゴルゴレムは口から火炎弾を連射し攻撃してきた。

 

「そんなものが当たるか!」

「ピギャアアオオオオ」

 

 ラゴラスエヴォは口から猛烈な冷凍ガスを噴射。火炎弾は着弾することなく全てかき消されてしまう。

 

「キシャオー!」

 

 ゴルゴレムは今度は口から伸縮自在の口吻を伸ばしてくる。

 

「ピギャ!」

「キシャ!?」

 

 伸びる動き自体は素早かったが、ラゴラスエヴォは難なく受け止め、おもいきり力を籠めて掴む。そしてそのまま綱引きの要領で敵の体を引っ張り、さらにはジャイアントスイングで振り回した。

 

「なかなか硬そうな見た目をしているな! どれぐらいの硬さなのか測ってやれ!」

「ピギャオオオオオオ!!!!」

 

 残忍な笑みを浮かべた主人の命令に従い、ラゴラスエヴォは左右の崖や地面にゴルゴレムを叩きつける。

 

「キシャアアアア!!!!」

 

 これにはたまらずゴルゴレムも悲鳴を上げた。

 

「とどめを刺してやれ!」

 

 主人の命令に従い、ラゴラスエヴォは伸びた口吻を大上段に振りかぶり、地面に叩きつけてとどめを刺そうとする。

 

「キシャオオ!」

 

 だが、このまま殺されるほどこのスペースビーストは甘い相手ではない。ゴルゴレムの背中の水晶体が発光したかと思うと、掴んでいた口吻も含めて姿が急に薄らぎ、消えてしまう。

 

「んん!?」

「ピギャ!?」

 

 主従は敵の姿を見失った。

 

「何処行きやがった!」

 

 良いところで逃げられたため、気分を害するグローザ星系人。

 

(まさか逃げたということはあるまい。恐らくすぐ現れるハズ)

 

 とはいえ、冷凍星人だけあって思考自体は冷静なままである。敵がいきなり姿を消したといっても油断せず、慎重に辺りの様子を窺う。

 

「! 後ろだ! 避けろラゴラスエヴォ!」

「ピギャ!」

 

 主人に知らされ、すぐさま左に飛び退くラゴラスエヴォ。するとその3秒後に背後から電撃状の破壊光線が今までいた場所に浴びせられた。

 

「ピギャア!!」

 

 ラゴラスエヴォは背後に尻尾を叩きつけて反撃するも、手応えはない。

 

「なんだコイツは………もしや異空間移動を使うのか?」

 

 デスルーグと違い、グローリアはゴルゴレムに対する知識はなかった。だが、それでも歴戦のレイオニクスだけはあり、敵の能力がどういうものであるかはすぐに気づいた。

 

「ピギャ!?」

 

 突如伸びてきた口吻に背中を噛まれるラゴラスエヴォ。背中に手を回し四苦八苦しながらもなんとか引っ剥がすが、その時点でまた口吻は消えてしまう。

 

「チッ、鬱陶しい奴だ!」

 

 グローリアが苛立つ通り、伸びる口吻の存在が厄介である。何故なら、口吻は伸縮自在なため、伸ばした際に何度も折り曲げることで出処を分からなくさせることが出来るのだ。背後から攻撃されたとしても、実際には本体の位置はそうでなく、横あるいは前かもしれない。

 

(とはいえ、異空間から出てくる瞬間はあるハズだ)

 

 身を晒すことになる格闘戦こそ挑んではこないだろうが、かと言ってラゴラスエヴォは遠巻きに破壊光線だけ撃っていたところで倒せる相手ではない。

 進化したことで防御力も上がっているし、ウルトラマンマックスと戦った個体と違い、氷を利用した防御技も身に付けているからだ。

 

(しかし、根比べは趣味じゃない。出てこないなら出てくるように仕向けるだけだ!)

 

 グローリアは短気な性格で、持久戦・長期戦は嫌う。採る戦術も当然速攻型である。

 仮に敵が隠れて出てこないのなら、無理矢理引きずり出すか、出てこざるをえない状況を作る。

 

「ラゴラスエヴォ」

「ピギャ」

 

 グローリアは敵に聞かれないよう、口頭ではなくバトルナイザーで怪獣に指示を伝える。

 

「ピギャオオ!!」

 

 ラゴラスエヴォは急に足元の地面を両手で掘り始め、やがて地下へ完全に隠れてしまった。

 

「フッ。敵前逃亡か?」

 

 黙って見物していたペルフェクト星人だが、ラゴラスエヴォが地下に潜ったのを見て、鼻で笑った。

 

「キシャオー」

 

 別位相に隠れていたゴルゴレムだったが、さすがに地下深くに隠れた敵を隠れたまま攻撃するのは不可能だったらしい。口吻だけをこの次元に出し、潜った場所を探り始めた。

 

「キシャ」

 

 崩れた地面をまさぐる口吻。だが――

 

「むっ!?」

「!?」

 

 突如地中から飛び出してきた鋭利な氷の刃に、先端部分を切断される。

 

「キシャオオオオオオオオ!!!!」

 

 管状の口吻の先端は、まさにもう一つの口である。神経、そして痛覚が集中している以上、切断されてはいくら凶悪なスペースビーストといえど耐えきれず絶叫し悶絶する。

 さらには、はずみで別位相から口吻だけでなく本体までこの次元に出てきてしまった。

 

「これならブッ殺せるぜ~~!!」

「ピギャアアオオオオオオ!!!!」

 

 地面を突き破りラゴラスエヴォが再び姿を現す。そんな彼の左手には地中の岩石を核に凍らせた氷の刃がくっついていた。この刃でゴルゴレムの口先を切断したのだろう。

 

「ゴルゴレム! 何をしている!」

「キシャオオオオ!!」

「今だ! 背中をやれ! ラゴラスエヴォ!」

「ピギャアアオオオオ!!!!」

 

 悶絶していたゴルゴレムだったが主の言葉にここで反応する――も、背後に迫っていたラゴラスエヴォの全力の冷凍ガスを背中に浴びせられる。

 

「!?」

「ピギャアアオオ」

 

 冷気攻撃により、背中の結晶体が凍りつく。そんな凍りつき脆くなった結晶体を、ラゴラスエヴォは左手の刃を叩きつけ、粉々に粉砕してしまう。

 

「!!」

「その慌てよう、やはりな。こいつの能力の発動には、その背中の結晶体が関わっているようだな」

 

 ゴルゴレムの慌てようを見て、グローザ星系人は冷ややかに呟く。

 ゴルゴレムが別位相に姿を隠した時、その背中の結晶体が妖しく輝いたのをグローリアは見ていた。歴戦のレイオニクスとしての勘で、別位相への移動能力の行使に、この結晶体が関わっていると気づいたのである。

 

「弱点を見抜いたのは褒めてやる。だが、一度壊されたら終わりというわけではない」

 

 ペルフェクト星人の言う通り、ゴルゴレムの結晶体は壊されても短時間で再生が可能である。一度目は再生に約480秒かかるが、壊される度適応し、段々再生時間が短くなっていくのだ。

 

「いいや、終わりだ」

「何!?」

 

 訝しがる女に、グローリアはゴルゴレムの背中を指差す。

 

「キシャオオ!!??」

 

 何故か背中の結晶体の再生が出来ず、ゴルゴレムは取り乱す。見れば、背中が完全に凍りついていた。

 

「ラゴラスエヴォの冷気攻撃を受けて死なないのは大したものだ。だがな、勝負はこの時点で着いていたんだよ!!」

 

 凄まじい冷気を浴びても尚、ゴルゴレムは死ななかった。しかし、背中に冷気を浴びた時点でゴルゴレムのその部分のビースト細胞は完全に凍りついて変質、機能を失っていたのである。

 

「そいつで厄介なのは別位相への移動能力だけだ」

「キシャオオオオオオオオオオオオ!!!!」

 

 怒り狂ったゴルゴレムは全身の発光体から電撃状の破壊光線を連射する。

 

「ラゴラスエヴォ! 【アイスウォールシールド】だ!!」

「ピギャ!!」

 

 ラゴラスエヴォは口から猛烈な冷凍ガスを吐き出し、なんと目の前の空気を凍らせて氷の盾を作り、破壊光線を防いだ。

 

「ピギャ!!」

「キシャオー!!??」

 

 破壊光線を防いだが、そのせいで脆くなった氷壁をラゴラスエヴォは蹴り倒してゴルゴレムにぶつける。

 

「キシャオオオオ!!」

 

 ゴルゴレムの体はスペースビーストの中でも防御力が高い。それ故、倒れた氷の壁をまともにくらったところでダメージは微々たるものだ。

 

「馬鹿者! それは目眩ましだ!!」

「!?」

 

 しかし、その攻撃はあくまで目眩ましであることを主人に怒鳴られたところでもう遅い。

 

「コオオオオ…」

「!!!!」

 

 ラゴラスエヴォが最大威力の超温差光線をチャージしていることにゴルゴレムは気づく。

 

「キシャオオ」

 

 ゴルゴレムはそこまで俊敏ではないので、光線を撃たれてから避けることは不可能。しかし俊敏でこそないが、ゴルゴレムを強力なビーストたらしめているのは、その能力の多彩さである。

 伸縮自在の口吻からの火炎弾、発光体からの破壊光線での高い攻撃能力。防御・回避は普段は別位相への移動で事足りるが、使えなくとも肉体は強靭。そして、極めつけにバリアを張る能力まであるのだ。

 

「キシャ…!?」

 

 だがしかし、バリアを張ろうとしたところで出来ないことに土壇場で気づく。破壊された氷の壁の礫が体に纏わりつき、バリアを張ろうとすると干渉してしまい、発動出来ないのだ。

 

「ギシャ――」

 

 その事実に気づいた時にはもう遅い。発射された超温差光線がゴルゴレムに直撃し、すぐさまスペースビーストは派手に爆散。超威力の光線によって原子レベルまで分解されたのだった。

 

「ゴルゴレムが敗れるとは………」

 

 さすがの女も自分の怪獣が敗れるとはあまり思っていなかったのか、意外そうな表情をしていた。

 

 

 

 

 

 少し時間は遡り、デスルーグサイド。

 

「醜悪な見た目の割には、ずいぶんとチマチマとしたやり口を好むのだな」

「ギュオオ」

「ブギャアアアアオオオオオオ」

 

 不気味な叫び声を上げて、触手を振るうクトゥーラ。しかし、その圧倒的にグロテスクな見た目とは裏腹に、異空間“異形の海”から触手だけで攻撃してくるという消極的戦法を取っていた。

 

「だがな、そんなセコいやり方じゃ俺達には勝てねえぜ」

「ウガアアオオオオ」

 

 しかし1番の安全策とはいえ、デスルーグの挑発する通り、グランゴンエヴォはそれだけで倒せる相手ではない。それを悟って単調なやり方を変えようと考えたのか、クトゥーラの全身の穴から、黒い靄のようなものが噴き出す。

 

「ギュオオオオアアアア!!!!」

「ほう、さすがはスペースビースト。他にも戦力はあったようだな」

 

 異次元から現れた靄はグランゴンエヴォに纏わりついたかと思うと、体の各所で爆発を起こす。

 

「だが、残念。こいつには効かねえ!!」

「ギュオオ」

 

 デスレ星雲人の誇る通り、靄が晴れた後もグランゴンエヴォは平然としている。もっとも、高熱に耐性があるグランゴンエヴォだからこそ大したダメージにはならなかったが、一般の怪獣であったら相応の痛手は与えられたであろう。

 

「ウガアオオ!!」

 

 相変わらずおぞましい鳴き声であるが、今回は苛立ちが籠っていた。

 

「まあ、そう怒るな。時間をかけて攻撃すればグランゴンエヴォは殺れるとは思うぞ」

 

 一方、デスルーグは余裕綽々といった態度でクトゥーラに語りかける。もちろん、内心では引き籠って攻撃してくる敵に彼もまた非常に苛立っていたが、おくびにも出さない。

 

「もちろん、そんなことはさせんがな」

 

 そう言うとデスルーグの全身が陽炎のように揺らぎ、オレンジ色のエネルギーが迸った。

 

「……!?」

「その異空間……確か“異形の海”だったな? 座標の観測に時間がかかったが、ようやく見つけたぜ」

 

 デスルーグはその両手からエネルギーをグランゴンエヴォ目掛けて照射。その途端、グランゴンエヴォ、さらにはデスルーグの実体がこの次元より消滅してしまう。

 

「ギュオ!」

「!?」

「ビンゴだったな! やはりオレの方がグローリアの奴より優れている!」

「!!??」

 

 それからすぐ、なんとデスルーグとグランゴンエヴォはクトゥーラの座す“異形の海”へと現れた。

 

「グハハハハ!!!! 驚いてくれたみたいだなぁ~~? なに、どうってことはない話だ。

 デスレ星雲人は時空を曲げる能力があるのさ。それを応用して、空間の座標さえ分かれば、どんな異空間であっても辿り着けるのよ!」

「ッッ!!!!」

 

 デスルーグの説明に仰天するクトゥーラ。このビーストの最大の強みである異空間移動能力が潰されてしまったのである。

 

「あとはこのままブチ殺されるだけだ。だが、オレは使えそうな怪獣には降伏勧告はするようにしている。

 どうだ? あの女でなく、オレに仕えてみないか?」

「ウガアアアアオオオオオオ!!!!」

 

 クトゥーラは即座に触手で足元の小さな岩を拾い、デスルーグに投げつけるも、彼は難なく躱す。

 どうやらこの態度からして、クトゥーラの返事は“No”であったようだ。

 

「そうか、残念だ」

 

 ため息をつくデスルーグ。元々自分の趣味でない怪獣である以上、敵対するというのならもう容赦はしない。

 

「グランゴンエヴォ!! ビースト細胞も二度と再生出来ないよう、こいつを跡形もなく焼き尽くしてやれ!!!!」

「ギュオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 主の抹殺指令により、グランゴンエヴォの全身がさらに赤熱化。周囲には口から火炎弾を連射し、シンクロコアからも上空及び周囲に凄まじい熱波を放出。四肢からも凄まじい熱が伝わって、足元の大地がマグマ化し、ドロドロに融解していく。

 

「………!!」

 

 薄暗く不毛な闇の空間が爆炎とマグマにより、天空も大地も一気に真っ赤に染め上がった。

 

「グハハハハハハハハハハハハ!!!! 燃えろ燃えろ燃えろ燃えろォォォォォォッッッッ!!!!」

 

 大焦熱地獄と化した特殊位相空間。その有様を見て、狂ったように高笑いを上げるデスルーグ。

 

「ウギャアアアアアアオオオオオオオオオオ」

 

 あまりの熱に耐えきれず、体の各所から火を吹きながらクトゥーラは悲鳴を上げる。

 焼き尽くされた大地は業火が燃え盛り、マグマの煮え滾る海と化し、空気も表皮が火膨れを起こすほどの熱を帯びていた。

 

「ギュオオオオオオオオオオオオ!!!!」

 

 グランゴンエヴォはその中を平然と泳ぎながら、スペースビーストの足元から飛び出してきた。

 

「!!??――――ウギャアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 反応したところで、周囲のあまりの凄まじい熱量からクトゥーラは最早動くことも出来ない。そんな彼は敵怪獣が前足で踏みつけるがまま、マグマの中に沈められた。

 体の各所にある歪んだ顔が火を吹き、嘘偽りのない心からの絶叫を上げる。せめてもの抵抗なのか、先ほどの爆発性の黒い靄を体の各所から吐くが、出した途端引火爆発し、かえって自分を燃やす羽目になるだけだった。

 

「マグマの熱に焼かれるのは苦しかろう。介錯してやろうか?」

 

 デスレ星雲人は自分だけ耐熱性の特殊バリアに包まれながら、焼かれるスペースビーストにそう優しく語りかける。

 

「オオ……オオ………」

 

 ドロドロに溶けつつあり、もう返事も出来ないスペースビースト。元々醜悪極まる見た目のクトゥーラだったが、今の姿は余計見るに堪えないものとなっていた。

 

「殺れ」

 

 それは武士の情けか、それとも見苦しいと思っただけか。グランゴンエヴォに、デスルーグは右手で喉を掻っ切る仕草をする。

 

「ギュオオオオアアアア!!!!」

 

 グランゴンエヴォは最大威力の火炎弾を口から、冷凍光線をシンクロコアから発射・融合し、超温差光線を放つ。死にかけのスペースビーストは避けることも出来ず直撃し、大爆発して木っ端微塵となった。

 

「帰るか」

 

 爆発で舞ったビースト細胞の塵もマグマに呑み込まれ、二度と再生することはないだろう。

 それを確信した主従は踵を返して、この地獄と化した空間から出ていった。

 

 

 

 

 

 グローリア達がゴルゴレムを撃破した直後、異形の海からデスルーグ達が帰還する。

 

「ほぉ。クトゥーラもやられたのか」

「ケッ! その驚きようからすると、意外って感じだな。ナメられたもんだぜ」

 

 戻ってきて早々、デスルーグは不満げに吐き捨てる。どうやら、女は試練を与えはしたが、この2人が試練を突破する見込みはあまりないと見ていたようだ。

 

「コングラッチュレーションズ!」

「「………………」」

「なるほど、さすがは“予選突破組”。これはお前達を甘く見過ぎていたようだ」

 

 両者共に試練を突破したことで、女は認識を改めたらしい。意外そうな表情から一転、笑顔で拍手する。

 しかし、試練を無事突破した2人は共に無言であった。レイオニクスバトルで殺し合うように誘導された挙げ句、今度は試練と称していきなり怪獣を送り込まれたのだから、面白いはずもない。

 

「試練を突破した御褒美をくれるってんなら、そのギガバトルナイザーを貰ってやるよ」

「まぁ、何もくれねえって言うなら、力づくで奪い取るけどな」

 

 いいように誘導されてきて怒り心頭に発した2人は、白いギガバトルナイザーに腰掛けたままの女にじりじりと近寄る。

 

「やれやれ、命があっただけ有難いと思わないのか。強突張りは命を落とすぞ?」

 

 女が妖艶に微笑むと、白いギガバトルナイザーに備えられた100個の画面に映る怪獣達が蠢いた。

 

「「それがどうした!!!!!!」」

「ピギャアアオオオオオオ!!!!」

「ギュオオオオアアアア!!!!」

 

 2人は歴戦のレイオニクスである。例え敵の怪獣が100体いようが、突破する自信と戦力はあった。

 

「今お前達を叩き潰すのは可能だが、運営的にはよろしくない。

 これ以上お前達を相手にせず退くこと――それが私からの今回の褒美だ」

 

 けれども、ペルフェクト星人はこれ以上2人を相手する気はないことを告げると、その体が実体から燃え盛るエネルギー体へと急速に変化していく。

 

「今後もさらにレイオニクスバトルに励むがいい。

 お前達が“我が父”レイブラッド星人の期待に応えられる、強いレイオニクスになることを祈るぞ」

 

 そうして、白いギガバトルナイザーと共に、女の姿はここから消えてしまったのだった。

 

「偉そうなクソ女め。次はその自信と首をへし折ってやる」

「まったくだ。次は怪獣の餌にしてやるぜ」

 

 グローリアとデスルーグは共にあの女への復讐を誓った。

 

「グローリア。決着をつけるのはまた今度だ」

「ああ。お前の首を切り落とすんだから、首は洗っておけよ」

「「戻れ」」

 

 今決着をつける気力は2人にはもう無いらしく、相棒をネオバトルナイザーへ回収する。怪獣達の疲れと傷を癒やすべく、2人は谷から出ると、互いの縄張りへと帰っていったのだった。




用語解説

 インビジブルタイプビースト ゴルゴレム

 かつてウルトラマンネクサスと戦った四足歩行型スペースビーストの別個体。口から伸びる伸縮自在の管状の口吻【ゴルゴレムプロポセス】で人間を捕食する。この口吻、背中に生えたいくつもの結晶体、体表にいくつも点在する目のような黄色の発光体、溶岩が冷え固まったような全身の甲殻が特徴。
 合体戦闘機ストライクチェスターの攻撃が通用しないほどの防御力を持ち、点在する発光体からの電撃状の破壊光線、口吻からの火炎弾が武器。口吻そのものも背後への攻撃が可能なほどのリーチがあり、攻撃を防ぐバリアまで張れるという隙のない能力の持ち主だが、最大の特性は別位相へ移動して透明になる能力。
 この状態では敵の攻撃は素通りする無敵状態となるが、一方でこちら側の一部攻撃も素通りしてしまうので、口吻などで攻撃する際はその部分だけこの次元に出さねばならない。またこの能力を司っているのは背部の結晶体であり、この部分を破壊されると能力の行使が不可能になる。しかし結晶体は約480秒で再生が可能である上、壊される度順応し、その度再生時間が短くなっていく。
 本個体はペルフェクト星人に使役されており、デスルーグとのレイオニクスバトルから逃げたシャマー星人(RB)を捕食している。かつてネクサスと戦った個体より強いようだが、グローリアのラゴラスエヴォは強化状態にすらならずに倒してしまった。

 フィンディッシュタイプビースト クトゥーラ

 かつてウルトラマンネクサスが戦ったスペースビーストの別個体。体型こそ二足歩行型ではあるが、体の各所にサンゴやタコ、イソギンチャクといった海洋生物と歪んだ人間の頭蓋骨を無秩序に融合させたような、文章では形容し難い醜悪極まる見た目が特徴。また、体の各所に配置された頭蓋骨の口からは触手を伸ばすことが出来る。
 体の穴から噴き出す爆発性の黒い靄と、先述の触手が戦力。体型からは素早い動きをするようには見えないが、触手の動きは俊敏かつ正確で、クロムチェスターδを捕らえたほど。しかし最大の特徴は“異形の海”という異空間を根城にしていることで、この空間から一方的に攻撃・捕食出来る。またゴルゴレムと違い、異空間から引きずり出したり封じたりする手段は特にない。
 本個体はペルフェクト星人に使役されている。ゴルゴレム同様、かつてネクサスと戦った個体より強いらしい。
 しかし、“試練”として差し向けられたデスルーグには異形の海の座標を特定され、デスレ星雲人の能力を応用されて侵入されてしまう。そして、異形の海も侵入してきたグランゴンエヴォによって火の海にされ、向こうは強化形態にすらならないまま一方的に蹂躙された挙げ句倒されてしまった。
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