怪獣超無法惑星   作:フルメタル・ミサイル

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 初回は思ったより閲覧数が伸びなかったので、この話からは出来るだけ多くの人に読んでもらいたいと思います。
 あと、平成以後の作品は明らかに怪獣の大きさがインフレしており、昭和期の怪獣と並びあった場合大人と子供並の身長差がありますが、そこは気にしないようにお願いいたします。


緑の地獄(グリーン・ヘル)

 水と緑豊かな、生命溢れる惑星アシヨシ。だが、この星は楽園などというものでは決してなく、真実はレイブラッド星人が己の目的のために創り出した“蠱毒の壺”でしかない。“奇跡の星”である地球同様に生命に満ち溢れながらも、実際には地球をも超えるほどの圧倒的怪獣生息密度を誇る、宇宙屈指の超危険地帯であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――とある樹海――

 

 木々をなぎ倒しながら唸り声を上げ、ドラミングをして周囲に威嚇する怪獣。

 

「ゴオオオオオオ」

 

 剛力怪獣 シルバゴン

 

 地球とは異なる次元にある時空界の怪獣で、岩のような銀色の体表、羊のような巨大な巻いた双角が特徴。ガギⅡのバリアをも叩き割った300万馬力という圧倒的な怪力を持つと共に、ウルトラマンティガのゼペリオン光線にも耐えるほどの防御力を持つ。

 時空波に呼び寄せられ迷い込んだのか、それとも自ら望んでこのアシヨシにやって来たのかは分からない。

 

「!」

 

 臆病で、そして賢明な周囲の生き物達は、この怪獣の暴威を恐れて近づかない――かと思われた。

 だがシルバゴンが歩いていた中、突如上空の空間が『ひび割れ』、挑戦者が現れる。

 

「ガロロロロロロ」

 

 蛾超獣 ドラゴリー

 

 異次元人ヤプールが蛾と宇宙怪獣を合成して造った超獣。緑色に所々赤の混じった体表、口から覗く鋭い牙、大きな黒い目、短い2本の角、天狗の団扇のようなヒレが付いた両手が特徴。

 ウルトラマンAと三度激突し、その度追い詰めたほどの強さを誇る。武器は口から吐く高熱火炎と手からのミサイル、そして巨大魚怪獣ムルチ(二代目)を引き裂いたほどの怪力である。

 

「ゴオオオオオオ!!!!」

「ガロロロロロロ!!!!」

 

 そんな凶暴な二匹が出逢えば、当然争いになる。ドラゴリーが降り立つやいなや、シルバゴンは角を向けた前傾姿勢でまっすぐ突進する。

 

「ガロロロロ!!」

 

 対するドラゴリーは異次元移動能力を再び発動させ躱す――ことなどせず、あえて両手でシルバゴンの角を掴んで受け止める。多少後ずさっただけで、すぐに突進を押し留めた。

 

「ゴオオオオ!!」

 

 シルバゴンも300万馬力という怪力を誇る怪獣であるが、ドラゴリーもまた巨大魚怪獣ムルチをあっさり八つ裂きにしたほどの腕力を誇る超獣である。両者は一歩も引かず、戦いは膠着状態へと陥った。

 

「ガロロロロ!!」

「ゴア!?」

 

 だが、やがてドラゴリーが相撲の徳利投げのように、角を掴みながらシルバゴンを地面に捻り倒す。

 そうして倒されたシルバゴンに素早く組み付くと、左腕で頭を抱えてヘッドロックに固め、右拳でパンチを連発する。

 

「ゴオオ!!」

 

 首を絞められた状態の上、急所である頭部目がけてドラゴリーの怪力でパンチを連発されるのは、さすがのシルバゴンでもたまらない。振り払おうと必死にもがくが、御自慢の怪力も発揮しにくいうつ伏せ気味の体勢で、かつ同じぐらい力持ちの相手に押さえ込まれている。

 

「ゴオオアアアアアア!!!!」

「ガロッ」

 

 このまま超獣に殴り殺されると思われたシルバゴンだが、そうは問屋が卸さない。ここまで追い詰められたシルバゴンに湧いたのは、火事場の馬鹿力という奴だろう。300万どころか600万馬力はありそうな力だ。

 シルバゴンはなんとドラゴリーを組み付かせたまま立ち上がり――

 

「ゴオッ!!」

「ガギャッ!!」

 

 そのまま変形式のスープレックスのような形で、ドラゴリーの後頭部を地面に叩きつけた。

 

「ガロロララララララララ」

 

 さすがの超獣も、おもいきり後頭部を地面に叩きつけられたことで大ダメージを受けて悶絶した。

 

「ゴオオ!!」

 

 その隙を突き、シルバゴンは倒れてのたうち回る超獣に今度は尻尾を上から何度も叩きつける。

 

「ギャイイ」

 

 追い打ちにたまりかね、よろよろと這いずるドラゴリー。ドラゴリーは天然の怪獣であるシルバゴンと違い、体には飛び道具や特殊能力も豊富ではあるのだが、さすがにそれを使う判断をする頭を攻撃されてはすぐには使えないようだ。

 

「ゴオオオオオオ!!!!」

 

 これは生死を懸けた野生の勝負である。隙を見せれば、そのまま畳みかけられる。

 頭部のダメージがまだ回復しきっておらず這いずるドラゴリーの体を、シルバゴンは蹴り飛ばす。

 

「ガロッ」

 

 蹴られた勢いのまま地面を転がるドラゴリー。そこへ走り寄ったシルバゴンがそのまま跳び上がり――

 

「ゴオオオオオオオオオオ!!!!」

 

 全体重を乗せた右肘でのエルボードロップを、ドラゴリーの胸目がけて叩き込んだ。

 

「ガヒュッ!!………………ガ………」

 

 この一撃がとどめとなった。短い断末魔を上げたドラゴリーは口から血泡を吹き、そのまま力尽きた。

 

「ゴオオオオオオオオオオ!!!!」

 

 相手の絶命を見届け、シルバゴンは胸を叩いて勝利のドラミングを行なったのだった。

 

「ほぉ、面白いね。まさか超獣でなく、こちらの怪獣が勝つとは」

 

 そして、その戦いを少し離れた場所で見届けている者がいた。

 

「こちらに来るといい。歓迎しよう」

 

 白装束を着た地球人の青年にも見えるが、彼もレイオニクスなのだろうか?

 

「ゴオオオオオオ」

 

 近くに観戦者がいるとは知らず、シルバゴンは気分良く胸を叩きながら、今度は樹海の奥の方へと向かっていく。

 

「!?」

 

 しかし、やがて森の中にあった一本の太い蔦を踏んづけたところ、突如森の地面から何本も蔦が飛び出し、シルバゴンの体に即座に絡みついた。

 

「ゴオオオオオオオオオオ!!!!」

 

 唸り声を上げ、怪獣は体や両腕を縛り上げる蔦を引き千切ろうと力を籠める。ドラゴリーと同等の腕力は、かつてバリヤー怪獣ガギⅡと縄張り争いになった際、ガギの張る強固なバリヤーを素手で苦もなく叩き割ったほどだ。

 だが、蔦は最初に飛び出したものだけでなく、次々と地面から突き出し、抵抗も虚しくシルバゴンの体を覆っていく。

 

「………オオ………………………」

 

 300万馬力のパワーも謎の蔦の前には通用せず、全身を隙間なく覆われたところで、怪獣はついに沈黙してしまった。

 

「ずいぶん頑張ったが、ここまでのようだな。君の方が勝ち残ってくれてよかったよ」

 

 男は嬉しそうに独り語る。確かにドラゴリーの方が生き残っていれば、怪力だけでなく口から吐く爆炎で蔦はあっさり焼き切られていただろう。

 もっとも、死体となった今は関係ない。シルバゴンが緑の像となったように、ドラゴリーの死体もまた既に蔦に覆われ、取り込まれつつあった。

 

「この星は実に良い。知的生命体の数こそ僅かだが、代わりの栄養となる生き物が多い」

 

 「もっとも、燃やしてくる奴が多いのは勘弁だが」、と青年は付け加えた。

 

「もっと森が広がれば、同化出来る範囲も広がる。やがては星全てを我等で満たすことも出来るだろう」

 

 男は一見地球人やそれに似た外見の種族にも見えるが、種族の方はともかく、この口ぶりからしてあの蔦に何らかの関わりがある存在なのは明らかである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんとも陰惨な光景だな」

 

 シルバゴンが蔦に覆われてから少し経った頃、地球人と思わしき中年男性が森の中を歩いていた。

 温帯気候で湿度がかなり高いため、短い黒髪も、着用している象牙色のローブの下の肌も汗にまみれ、不愉快に感じる。

 

「この森は一体どれだけ怪獣や宇宙人を取り込んだというのだ」

 

 独り言ちる男。しかし、そう言いたくなるほどに周りの光景は陰惨で異常だった。

 シルバゴンが取り込まれたのと同様、ここには数多くの怪獣や宇宙人が取り込まれ、樹木のようになっていた。そして彼等は栄養を吸い付くされてミイラ化し、不気味なオブジェとして森の中に飾られている。

 

(ここから見えるだけでも怪獣はケロニア、ドギュー、ゴキグモン。宇宙人はストラ星人、ナルチス星人、レイビーク星人、ゴドレイ星人。今さっきはシルバゴンとドラゴリーか。ずいぶんと大食漢なことだ)

 

 あれだけの騒音を鳴らしていたのだから、聞こえる範囲ならば気づかないはずがない。男はシルバゴンとドラゴリーの争いもしっかり目撃していた。

 

「油断していたら、私も取り込まれかねんな」

「その通り!」

「!」

 

 また独り言を漏らしたところで、彼の前に先ほどの白装束の男が現れる。

 

「ようこそ、緑の地獄(グリーン・ヘル)へ」

緑の地獄(グリーン・ヘル)か。ずいぶんと不吉な地名だ」

 

 男は白装束から聞かされてこの樹海の名を知るも、面白いとは思わなかった。

 

「で、いきなり現れた君は何者かね? 私を歓迎しにでも来てくれたのかい?」

「歓迎? そう言えばそうかもしれない」

「ほう」

「私は君を歓迎するよ!」

「!!」

 

 白装束がそう叫んだ途端、森の四方八方から先ほどシルバゴンを拘束した蔦が伸びてきた。

 

「チッ」

 

 とんだ歓迎に舌打ちした男は、ローブの下の腰回りのベルト左右に掛けられた光線銃二挺を抜く。

 

「!!」

 

 そして迫り来る蔦の先端目がけ、光線を浴びせていく。

 

「レイオニクスだから怪獣頼りだと思ったら大間違いだよ」

 

 そう語る通り、男の銃捌きは正確そのもの。次々に蔦を撃ち落とし、辺りには焦げた臭いが充満していく。

 

「やるね。確かに今までやって来た者達とは違うようだ」

 

 蔦を32本撃ち落としたところで、これ以上は無駄だと白装束は思ったのか。蔦が伸びてくることはなくなった。

 

「これが君の言う“歓迎”とやらかね?」

「正確には歓迎の最初の部分さ。楽しんでいただけたかな?」

「そして、君の言う歓迎の結末というのがあれかい?」

 

 男は木に取り込まれたストラ星人の遺骸を指差した。

 

「君は理解が早くて助かるよ」

「歓迎については結構だ。ああなることは私は御免こうむる」

 

 うんざりした様子で呟いた男は二挺光線銃を3点バーストに切り替えると、白装束に向けて撃つ――のではなく、何故かかなり射角高めに、それも明後日の方向に撃った。

 

「? どこを狙っている?」

 

 白装束も彼の意図が分からず、思わず尋ねた。

 

「君は理解が遅くて困る」

「それは皮肉か?」

「ああ。そもそも私の撃った先を見れば分かる話だというのに」

「ッ!?」

 

 そう言われて、白装束は男が何をしようとしたのか気づき、慌てて撃った方向を見やる。

 

「さすが強豪怪獣として知られただけあって素晴らしい生命力だ。あんな状態でも、あいつはまだ死んでいない」

 

 バーストショットが命中した先はシルバゴンのオブジェがある所だった。連発された高出力の光線が体を覆う蔦に命中、見る見る内に全身に延焼する。

 

「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

 

 まだ生きていたから栄養が吸収されなかったのだろうか。高熱に反応し、焼けていく蔦を全身に力を込めて一気に引き千切り、シルバゴンが復活する。

 

「なにィ!!」

 

 驚く白装束。対する男の顔には皮肉たっぷりに冷笑が浮かぶ。

 

「私だけにかまっていていいのか? あいつはこの樹海を粉砕していくだけのパワーはあるぞ」

 

 男はこの状況の打開を図り、シルバゴンを復活させたのだ。

 

「飛び道具こそないが、あれほどの生命力と超獣にすら勝ったパワーはなかなか魅力的だ。私の手持ちとして欲しい」

 

 そう呟くと、男は再び光線銃を発砲する。

 

「ゴオッ!」

 

 発射された光線に反応し、シルバゴンは木々を踏み潰しながらそちらに向かっていく。

 

「お前、まさか!」

「そうさ。「敵はここにいるぞ」――と彼に教えてやっただけさ」

 

 光線が当たったのは2人の遥か先、木々に覆われた小山『らしきもの』であった。

 

「君の正体が何なのかも大体分かっている。ここで多数のレイオニクスの失踪が起きていることと、そして伸びてきた植物の蔦。これだけで大分絞り込めるからね。

 ……とはいえ、私がここに来たのは君の討伐が目的というわけではないのだが」

 

 この時点で、男はこの白装束の正体が大体掴めていた。

 

「そもそも、君は単なる対話のための()()にすぎない。本体は別にいることも分かっている」

「!」

「出会った時にいきなり君を殺さなかったのもそれだ。まぁ、君を殺したところであの蔦は止まらないだろうからな」

 

 男が光線銃をあくまで蔦の破壊やシルバゴンへの誘導だけに用いて、白装束に向けなかったのもそれが理由だった。

 

「そもそも、私は君達の噂を聞きつけてここに来たのだよ。あのシルバゴンと同じく、私の手持ちに相応しいかどうか見極めるためにね…」

 

 この地域一帯で活動するレイオニクス達には、怪獣をも取り込む植物の蔦と、謎の白装束の怪人物が出没する噂がここ最近出回っていた。

 その噂を流したのが誰かは分からないが、興味を持った者はいた。この男もその1人であり、そして植物の蔦と怪人物の正体に関して大体の見当をつけてこの地にやって来たのだ。

 

「なんだと!?」

「驚くことはないだろう。私はレイオニクスなのだから、怪獣に分類されるもの全般に興味を抱いている。

 ましてや、これほどの樹海を形成するほどに成長した大物だ。自ら赴いて調べるだけの価値はある」

 

 そう言って、男は不敵な笑みを浮かべた。

 

「ゴオオオオオオオオオオ!!!!」

 

 そんな2人のやり取りなど知らず、シルバゴンは咆哮しながら小山へと近づいていく。しかし、ある程度近づいたところでその歩みを止めた。シルバゴン種は視力が弱く、本来ならばぼんやりとしか視認出来ないにも関わらずだ。

 

「ゴオオ!!」

 

 シルバゴンは屈むと、半ば木々の間に埋もれかけていた、怪獣の遺骸らしきものを強引に引っ張り出した。さすがは剛力怪獣の別名で知られるだけあり、自身に匹敵する大きさと重さの遺骸であろうと難なく持ち上げてみせる。

 

「ゴオオアアアアアア!!!!」

 

 そして気合一閃、小山目がけてぶん投げた。

 

「やはりな」

 

 男が神妙な顔でそう呟く通りだった。小山――いや、その怪獣の正体。

 

「キュイイイイ!!」

 

 宇宙植物怪獣 ソリチュラ

 

 かつてウルトラマンメビウスと戦った、宇宙から来た植物怪獣の別個体。大量の枝や木の幹が寄り集まって出来たような見た目をしているが、頭部及び蔦状になった両腕は存在する。ただし、植物怪獣らしく下半身は根の集合体となっており、根付いたその場から動くことは出来ない。武器は蔦状の両手による殴打及び、頭部から吐く神経を麻痺させる毒花粉。

 地球にやって来た個体は周辺の植物を取り込み巨大化したが、最終的には地球上の全生物を取り込み一体化することを目的としていた。

 

「キュイイイイイイ!!!!」

 

 小山は擬態を解き、樹木と蔦が集まって出来たような植物怪獣としての正体を現す。そして、すぐさま頭上より振ってくる遺骸を地面から無数に出現させた蔦で受け止めると、シルバゴンへと投げ返した。

 

「ゴオオ!!」

 

 シルバゴンは投げ返された遺骸を右手で払い除けるが――

 

「うお!?」

 

 運の悪いことに、そのまま地面を転がり落ちた遺骸はなんと2人の戦闘の場へと進む。男の方はテレポートですぐさまその場を脱出するが、そんな能力など持っていない白装束は巻き込まれてしまう。

 

「ガ……」

 

 転がってきた怪獣の遺骸に下半身と胸までを押し潰され、白装束はそのまま息絶える。

 

「さすがにテレポート能力までは身につけていなかったか」

 

 再びテレポートで戻ってきた男は、白装束の骸に近づくと、頭のフードをずらして正体を確認する。

 

「思っていた通りだな」

 

 宇宙植物怪人 ソリチュラン

 

 中にあったのは、頭頂部に白い花を咲かせた植物の茎で出来た頭部で、顔さえ存在しなかった。

 そう、白装束の正体は地球人や宇宙人ではなく、ソリチュラの落ちた花から生まれたソリチュランと呼ばれる人型の植物怪人であった。

 

「多数の命を奪ってきた因果応報……と言うのかは分からんがね」

 

 男はフードを戻して頭上を見上げる。怪獣達の戦いはまだ始まったばかりだ。

 

「ゴオオアアアアアア!!!!」

 

 シルバゴンはある程度距離をおき、怪獣の遺骸や地面に埋まっていた岩などを投げつけソリチュラに攻撃していた。

 

「ほう。まだくらっていないはずだが、警戒して距離をおいて攻撃している。怪獣にしては悪くない勘と判断力だ」

 

 ソリチュラの武器の1つに、口?からの麻痺花粉噴射がある。これをくらえばウルトラ戦士とてそれなりのダメージをくらう代物だ。

 とはいえ相応の距離をおけば当たらず、すぐに風で散って怪獣には効かない濃度まで霧散してしまう。シルバゴンはそのことを知らないはずだが、どうやら野生の勘でそれを察知しているらしい。だから、男はシルバゴンに感心していた。

 

「ギチュアアアアアア!!!!」

 

 苛立ったかのようにソリチュラは左右の腕代わりの蔦を揺らす。200mほどの距離が離れているが、これは本体の蔦がギリギリ届かない、間合いの外だった。

 とはいえ、これは両手の蔦の話。ソリチュラは他の怪獣と違い植物であるため、足の代わりに付近一帯に根を張っている。

 

「ゴオ!?」

 

 辺り一帯の地面から長大な蔦…いや根が無数に伸びる。シルバゴンを拘束した時の何倍もある数だったため、剛力怪獣は驚いた。

 

「ゴオオオオオオアアアアアアアアアア!!!!」

 

 咆哮を上げながら数歩引くと、シルバゴンはそこに埋まっていた怪獣の死体を引きずり出して振り回し、そのまま武器として迫り来る根の群れを打ち払う。

 しかし多勢に無勢、やがて先打ち払い切れなかった分が先ほど同様、体に絡みついていく。

 

「あ~、いかんな。これではさっきと同じだ」

 

 男はさっきと同じ展開になるのは避けたかった。今度こそシルバゴンがソリチュラに吸収され、ソリチュラがまたパワーアップする事態になるのは嫌だったからだ。

 

「ゴオオ……!」

 

 しかし、シルバゴンの剛力でも振り払えぬほどに根の力は強く、数も多い。やはりこれでは先ほどと同じ展開になるのは目に見えている。

 

「仕方ない。助け舟を出してやろう」

 

 男は懐からネオバトルナイザーを取り出し、シルバゴンの方へと向けた。

 

「いけ!」

『バトルナイザー、モンスロード!!』

 

 ネオバトルナイザーから光の塊が放たれ、シルバゴンより少し離れた場所で怪獣の形となって実体化する。

 

「ピポポポポポポ……」

 

 宇宙恐竜 ゼットン

 

 最早説明不要とすら言える、かつて初代ウルトラマンを倒したことで知られる宇宙怪獣。それ以降も何度もウルトラ戦士達と戦っているが、いずれの個体も最強クラスの強敵で彼等を苦戦させている。

 体色は頭部と胴体が黒、手足が銀色となっており、意思や生物らしさの感じられない見た目をしている。両胸に存在する発光体の他、頭部にある一対の曲がった角、眼球の存在しない眼窩、口の部分にある発光体が特徴。

 ウルトラマンを超えるパワー、テレポーテーション能力、光線を弾き返すバリア、そして1()()()という他の追随を許さぬ凄まじい温度の火球が武器である。

 

「ゼットン! シルバゴンを覆っている蔦を焼き払え!」

「ゼットン……」

 

 ゼットンは蔦を燃やし尽くし、かつシルバゴンを殺さない程度の温度という絶妙な塩梅の火球を顔面の発光体より放った。

 

「ゴオオ!」

 

 絶体絶命のピンチだったシルバゴンだったが、思わぬ援軍により危機を脱する。

 

「ギュイイイイイイイイイイ」

 

 思わぬ援軍の出現にソリチュラも危機感を覚えたらしい。甲高い咆哮を上げ、栄養を吸い付くしてミイラと化していたある死体に何らかの特殊な物質を送り込んだ。

 

「ガロロロロロロロロ」

 

 蛾超獣 ゾンビドラゴリー

 

 なんと半ば消化されかかったドラゴリーが復活する。しかし、体表は所々毒々しい紫色や茶色に変色しており、最早生前の面影は薄くなっていた。さらには背中にはソリチュラの太い根が突き刺さっており、そこから無理矢理操られているらしい。

 

「ガロロロロロロロロ」

 

 ソリチュラの操り人形と化したドラゴリーは、おぼつかない足取りでゼットンに向かって進んでいく。

 

「雑魚の相手は私達がしてやる。本体の方はお前にくれてやろう」

 

 そう言ったところで、男の顔が歪み、変化していく。

 

「弱い種族だと思わせてソリチュランを油断させるだったためとはいえ、変身しているのは疲れるな」

 

 変身怪人 ゼットン星人(RB)

 

 かつて宇宙恐竜ゼットンを操っていた宇宙人の同種族。ケムール人にも似た黒い頭頂部に生える1本の触手と一つ目という、奇怪な見た目をした種族である。

 変身能力を持ち、科学特捜隊の岩本博士に化けて潜入、科特隊基地を破壊している。

 

「では、さっさと退治するか」

 

 男の正体はなんとゼットン星人であった。ソリチュランも死に、もう擬態の必要がない故に変身を解いたのだった。

 もっとも、ソリチュランは例え凶暴な宇宙人が相手でも恐れずに近づいていたため、彼の正体を隠す努力は結局徒労に終わってしまったが。

 

「ゼットン! 死体の方に用はない! さっさと燃やしてしまえ!」

 

 正体を現したゼットン星人は、ゼットンに冷酷な命令を下す。

 

「ゼットン!」

「ガロロロロロロロロ」

 

 足音を轟かせ向かってくるドラゴリーは、先ほどのシルバゴン戦では披露しなかった口からの爆炎を吐く。

 しかし、その凄まじい威力の炎も、即座にゼットンが張ったバリアによって防がれてしまう。

 

「情けない威力だな。これならシルバゴンの素手の方がマシだ」

 

 かつて地球に出現したシルバゴンは、バリヤー怪獣ガギⅡのバリアを素手で叩き割っている。一方、このドラゴリーは爆炎を吐き続けてもゼットンのバリアを破れていない。

 

「これが限界か。情けない奴め!」

 

 ドラゴリーはゾンビと化し、その実力も知性も超獣と呼ぶには最早力不足なほどに劣化している。

 ゼットン星人はそんな情けない姿を見ていられないとばかりに、ゼットンにとどめを刺すよう命じる。

 

「おいゼットン。怪獣最強と言われるお前の火球を見せてやれ!」

「ゼットン!」

 

 主人の命令に応え、ゼットンは発光体にエネルギーを収束する。

 

「ガロロロロロロ」

 

 敵が必殺技の態勢に入っているにもかかわらず、ドラゴリーは前進してくる。生ける屍として最早知性は消え果て、敵に突撃してくるだけの木偶に成り果てていた。

 

「ガロ――――」

 

 やがて唸り声は途中で途切れ、ドラゴリーだったものは後ろに刺さった蔦ごと巨大な火柱へと変わる。

 さらにはそのせいで樹海の木々に引火・延焼し、それは地面にあったソリチュラの根にまで燃え移った。

 

「ギュ!?」

 

 頼みの根っこが一斉に燃やされ、ソリチュラは驚愕し動揺する。そして、敵はそんな彼の隙を見逃さなかった。

 

「ゴオオオオオオ!!!!」

「ギュジュ!!!!」

 

 シルバゴンは燃え盛る大岩を持ち上げ、そのままソリチュラの頭部に叩きつける。地下に張り巡らせた根が燃え、さらには燃える岩で核となる頭部を叩き潰されれば、さすがにしぶとい植物怪獣もついにその生命を終えたのだった。

 

「いかん。片方に肩入れしすぎたか」

 

 大岩から引火して燃えつつあるソリチュラの亡骸を見たゼットン星人は一つ目を手で押さえ、己の失態を嘆く。

 本来、彼はシルバゴンとソリチュラを両方手に入れる予定であった。しかし、ソリチュラはこちらが助太刀したとはいえ、結局叩き殺されてしまった。

 

「まあ、この程度で死ぬようだったら、どのみち駄目だったかもしれないな」

 

 そう思い、ゼットン星人は気を取り直す。

 

「さて…」

 

 戦いはまだ終わっていない。シルバゴンはゼットンを睨みつけ、臨戦態勢に入っていたからだ。

 

「せっかくここまでやったのだ。是非君を我が陣営に迎え入れたい。どうだろう、受けてくれるかね?」

 

 ゼットン星人の言葉など分かるはずもないが、あえてシルバゴンにそう語りかける。

 

「ゴオオオオオオ!!!!」

「ハァ、そうだろうねえ」

 

 シルバゴンは威嚇のドラミングを行う。予想した通りだ。

 

「ゼットン! 2回戦だ! だが殺すなよ!」

「ピポポポポポポ…」

 

 疲労しているシルバゴンと比べ、ゼットンは体力を大して消耗していない。だがそれでも、それなりに苦戦する相手だとゼットン星人は考えていた。

 もっとも、それでも殺さない程度に加減出来る実力がこのゼットンにはあるのだが。

 

「さて、お手並み拝見といこう」

 

 そうして、今度はシルバゴンとゼットンの戦いがスタートした。




用語解説

 剛力怪獣 シルバゴン

 灰白色の体表、羊のように巻いた一対の角、ゴツゴツとした硬い皮膚、相手の動作を真似出来るそれなりの知能が特徴の怪獣。肉弾戦型で飛び道具を持っていない一方、動体視力が極端に悪いせいで動いていない物は見えないという、肉弾戦型の特性からすればかなり致命的な弱点を持っている。とはいえ300万馬力のパワーはバリアを力任せに叩き割れるほど凄まじく、さらには皮膚はウルトラマンティガの光線をものともしないほどの防御力を誇るため、弱点も実質そこまで問題ではない。
 かつて別個体がネオフロンティアスペースの地球・日本の獅子鼻樹海に現れ、バリヤー怪獣ガギⅡ及びウルトラマンティガと交戦した。ウルトラマンダイナの時代にはクローン個体が昆虫怪獣シルドロン、さらには超クローン怪獣ネオザルスと交戦している。
 また、クローン個体とメビウスと交戦した改造体のキングシルバゴンは生体改造により動体視力の悪さを克服させている。このように、侵略者が用いるにはやはり動体視力の悪さは不都合な模様。
 しかし、この個体も視力は悪いが目の付け所は良く、ソリチュラの麻痺花粉を事前に見抜くなど、なかなか勘と判断力は優れている。肉弾戦能力の強力さはもちろんのこと、ゼットン星人(RB)はそこも気に入ったようだ。

 蛾超獣 ドラゴリー

 かつてウルトラマンエースと戦った超獣の別個体で、異次元人ヤプールが蛾と宇宙怪獣を合成して造った。
 しかし、蛾が元になった怪獣であるが、見た目にその要素はない。緑色に所々赤が混じった体表、大きな黒い目、口から覗く鋭い牙、天狗の団扇のようなヒレに覆われた両手が特徴。
 地球に現れた個体はメトロン星人jrに操られ、マリアミサイル破壊のためにウルトラマンエースと死闘を繰り広げ、ウルトラマンメビウスの時代にも同個体が復活し暗躍した。また、惑星ハマーにおいてもメトロン星人(RB)が使役し、レイのゴモラと戦っている。
 巨大魚怪獣ムルチを簡単に引き裂いた怪力、口からの爆炎や手からのミサイル発射能力を持つ。さらには巨大な蛾への変身能力と人間への憑依能力や空間をガラスのように割って異次元を移動する能力など、生物兵器として造られただけあって多芸な怪獣。
 怪力自体もシルバゴン同様だが、本個体はなまじ最初に力勝負で勝ってしまったが故に油断し、その多芸さを活かすことなく途中で逆転され死亡。そしてすぐ後にソリチュラにゾンビとして使役されるなど不憫な扱いであった。

 宇宙植物怪獣 ソリチュラ

 星に根付く植物怪獣で、宇宙から飛来した別個体がかつて地球でウルトラマンメビウスと戦い、ソリチュランに誘拐させた地球人を人質にするも倒されている。複数の樹木や蔓が一体化し、頭部と蔓状の両手を形成しているが、下半身はそのまま根っことなっている。植物怪獣なので下半身が固定されて動けないとはいえ、それ以外の部位は割と活発に動く。またソリチュラン共々植物とは思えぬほどの知能の高さを誇り、誘き出した人間達を根本に取り込み事実上の人質とするなど狡猾な振る舞いを見せる。
 本個体はアシヨシに根付き、緑の地獄(グリーン・ヘル)とソリチュランが自称するほどの広大な樹海を形成していた。この星にやって来た経緯については、四次元怪獣ブルトンによって召喚されたのか、それとも自らこの星にやって来たのかは不明。
 惑星アシヨシは地球と違い、人質になるような地球人も、人質への攻撃を躊躇うような宇宙人もいないため、本個体は取る戦法が異なる。また多数の怪獣や宇宙人を返り討ちにして同化吸収しており、そのせいで他個体より強さは向上しているようだが、植物故炎に大変弱いという弱点は変わっていない。
 怪獣の死体に何らかの物質を送り込んでゾンビ状態にして蘇生させるという新能力を見せているが、所詮ゾンビなので蘇った怪獣は生前より強さは落ちる。
 余談ではあるが、毒花粉に含まれる『ソリチュラ化合銀』は、植物もどき怪獣ゾラの放つ花粉にも同じ成分が含まれており、両者は近縁種であると考えられる。ただし、ゾラは同じく毒花粉を操る植物怪獣であるがソリチュラとは外見が全く異なり、また光合成を全く行わないなど性質も本種とは大幅に異なるため、どの程度近い関係かは不明。

 宇宙植物怪人 ソリチュラン

 ソリチュラの体に咲いた『ソリチュランフラワー』と呼ばれる白い花が地面に落ち、人型に成長したもの。顔面のある場所には代わりに花が咲いている。
 本体であるソリチュラが宇宙人や同じ植物怪獣のケロニアを吸収してその知性を取り込んでいたため、彼自身も種族としては本来考えられないほど知能が向上し、多弁饒舌になっていた。
 しかし、知的生命体の油断や慢心、嗜虐心といった余計な部分まで取り込んでしまっており、行動から合理性が薄れていた。そのためゼットン星人からすれば並の個体よりかえってやりやすくなっていたとのこと。尚、アシヨシは無人惑星だったせいか、ソリチュランを誕生させるメリットは薄かったのか、この個体しか確認されていない。

 変身怪人 ゼットン星人(RB)

 かつて初代ウルトラマンに宇宙恐竜ゼットンを送り込んだ侵略者達の同種族で、最強の怪獣として名高いゼットンが生息しているという(噂の)ゼットン星のレイオニクス。ハマーにいた個体及びベリアルの手下とは別人。
 尚、ゼットン星人という名称で知られているが、本当に彼等の星がそう呼ばれているかは定かではない。また、頭頂部に生えた短い触手に1つ目と、ケムール人と酷似した外見だが、これらの関係性も不明。地球人への変身能力を持つのが別名の由来となっている。
 ネオバトルナイザーを所持しているだけあり、レイオニクスとしての腕はかなりのもの。二挺拳銃の達人でもあり、また種族としては弱い部類に入る地球人の姿に化けることで相手を油断させる狡猾さも持つ。
 目標はレイブラッド星人の後継者となって宇宙の支配者となることと、ゼットン種を宇宙最強の怪獣として証明すること。特に後者へのこだわりは強い。

 宇宙恐竜 ゼットン

 最早説明不要の有名怪獣。全身黒と銀のボディに、一対の頭の角に顔面の発光体と眼球のない眼窩が特徴的な、ゼットン星人(RB)の使役怪獣。かつて初代ウルトラマンを倒したことで有名な種なだけあり最強の怪獣との呼び声も高く、戦闘面での全ての能力において優れている。またこの個体はレイの姉ケイトのものと同様、種族の中でも戦闘能力の優れた個体であるとのこと。
 最早この種の代名詞である1兆℃の火球、ウルトラマンの八つ裂き光輪すら砕くバリア、光線を吸収し撃ち返す【ゼットンファイナルビーム】、テレポートなど、強力かつ多彩な能力の持ち主。格闘戦の方でもウルトラマンを圧倒しているなど、攻撃能力面で全く隙はない。とはいえ、岩本博士の開発したペンシル爆弾によってとどめを刺されている。
 のちに別個体がウルトラマンジャックの地球防衛時代に、地球侵略を目論むバット星人によって地球に持ち込まれている。とはいえ、その個体はバット星人と2人がかりでやっと一進一退の攻防に持ち込んでおり、最期はウルトラハリケーンで空に投げ飛ばされ、スペシウム光線で撃破された。初代と違いバリア能力やゼットンファイナルビームは使っていないが、手から放つ火花状の【ゼットンナパーム】を代わりに使用している。
 ウルトラマンメビウスの地球防衛時代にはGUYSで本種のデータを再現したプロトマケット怪獣が作られた。だがプログラムカプセルを地面に落としてぶつけた影響か起動時に暴走、GUYS基地をジャックしてしまう。対処のためウルトラマンメビウス=ヒビノ・ミライが自身をデジタルデータ化して仮想空間に乗り込み対決。同じくデータ化したマケット怪獣達の援護もあり撃破に成功した。
 レイの姉ケイトもまた使役しており、かつてウルトラ戦士達の戦った個体以上の強さを見せている。キングジョーブラックとも互角に戦い、レイ達の怪獣総出でも歯が立たなかったが、最期は進化したEXゴモラによって散々叩きのめされ、とどめにEX超振動波を照射され倒された。
 本個体はゼットン星人(RB)に使役されている。彼とは以心伝心の関係で、テキトーな指示でもその真意を理解し即座に実行出来るほどの絆がある。そのため今回は見せなかったものの、進化形態に到達している。
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