今日も惑星内での探索に向かったプラティーナ御一行だったが、幸か不幸かついにレイオニクスと出くわしてしまう。しかも出会ったのはよりによって凶悪種族のアトラー星人だったが、レイオニクスバトルは未経験ながらも、プラティーナは第一戦になんとか勝利する。
しかし、敵の戦力は当然倒したガクマのみではない。敗れたガクマを処刑したアトラー星人が次にモンスロードしたのは――
『バトルナイザー、モンスロード』
アトラー星人のバトルナイザーから現れたのは、正統派な怪獣らしい見た目をしたガクマとは対照的な異形の怪獣であった。
「キッヒャアオオ」
石化魔獣 ガーゴルゴン
かつて地球の古代文明を石に変えて滅ぼし、さらには多くの星々もまた同様に石に変えて滅ぼしてきたという凶悪な魔獣。宇宙人並の高い知性を持ち、明確な悪意によって破壊と殺戮を繰り広げるなど、その邪悪さは単なる怪獣の枠を超えている。
青緑と黄色の体色、頭に生えた
戦闘能力及び再生能力は高く、肩の触手からは電撃状の光線を放つが、最大の武器は単眼から放つ石化光線。これはくらえば最期、全身が石となり、そのエネルギーをガーゴルゴンに奪い取られる。そして、元凶のガーゴルゴンが死ぬまで犠牲者の石化が解けることはない。
「あれはガーゴルゴン!? 何故、貴方がこの怪獣を!?」
現れた不気味な怪獣を見て驚愕するプラティーナだが、それも無理はない。
ガーゴルゴンは知的生命体並に知能が高い上、石化光線だけでなく単純な戦闘能力もまた数ある怪獣達の中でも上位に位置する強力な怪獣。いくらアトラー星人が凶悪な種族とはいえ、手下に出来ているのが不思議だからである。
「実に幸運なことに、たまたま休眠状態でいたのを偶然発見し、その隙に捕獲したのよ。
それでも伝説の魔獣。私の実力でも飼い慣らすのにはそれなりに時間がかかったが、今では忠実にして最強の下僕となった!」
「………っ」
焦燥感を滲ませたプラティーナは歯噛みする。ガーゴルゴンはガクマと同じく石化光線を放つが、総合的な戦闘能力は数段上回る。とてもレッドキングでは対抗出来る相手ではない。
「まさか君如きド素人にこいつを出す羽目になるとは思わなかったが……その報いは今これよりたっぷり受けさせてあげよう」
「うふふ。ガーゴルゴンが出てきた時は大いに驚きました。ですが、貴方の怪獣がどうやらこれで打ち止めの御様子。それについては安心いたしましたわ~」
「っ! 貴様ッ!」
ガーゴルゴンの召喚で絶望を与えようとしたが、生意気にもこの女は逆にこう煽ってきたため、アトラー星人の怒りはさらに増す。
「……フッ、まぁいい。そのやせ我慢がいつまで続くのか見ものだな」
けれども、ここは我慢である。本当なら今すぐこの場で蝋化光線を放ち、この女を蝋人形にしてやりたいところ。しかし、勝ち誇った顔で蝋人形になられたところで面白くないのはこちらだからだ。
故に、レイオニクスバトルを続行し、ガーゴルゴンで徹底的に蹂躙し、真の絶望というものを存分に味あわせてやる。そうすれば、この女の表情も悲嘆に暮れた、満足のいくものとなるだろう。
「レッドキング、戻りなさい」
「ピギャ」
「何?」
しかし、ここで不可解にも、プラティーナはレッドキングをバトルナイザーに回収してしまう。確かに左脇腹が石化し、初戦の疲労はあるがまだまだ戦えるにもかかわらずだ。
「姫様、次は誰をお使いになるおつもりで?」
セバスティアンも主の考えが気になり、問いかける。
「………」
「なっ!? 彼を使うので!?」
アトラー星人には聞き取れなかったが、プラティーナが小声で述べた名前に執事は仰天する。
「しかし、彼は…」
「これは賭けになりますが、あの魔獣相手では仕方ありませんことよ。
それに彼も馬鹿ではありません。きっと私達の期待に応えてくれるはずですわ」
そうセバスティアンに向けて微笑むプラティーナだが、それは強がりであることを彼女に仕え続けて長い執事は察したのだった。
「私のガーゴルゴン相手に戦える怪獣がいるというのなら、是非もったいぶらずに見せてもらいたいものだ」
どうやらガーゴルゴン相手にも対抗出来るような怪獣らしい。しかし、それも所詮は素人のただの思い上がりにすぎない。アトラー星人は一刻も早く、それを思い知らせてやりたくてウズウズしていた。
「フゥー……いきなさい!」
『バトルナイザー、モンスロード!』
気持ちを落ち着かせるべく深呼吸し、プラティーナはレッドキングに代わり新たな怪獣を召喚する。
「キヒュヒュヒュヒュ」
「こいつは…」
「ヒャオオ…」
現れたものはガーゴルゴンと同じ、いや不気味ながらもその見た目から怪獣だと分かる彼と違い、生物感の欠片もない異様極まる姿をしていた。
手足を揺らし、体を振動させながらその巨大過ぎる単眼でこちらを見つめる怪獣の姿には、さしもの凶悪な主従も面食らう。
「キヒュララララ!」
奇獣 ガンQ(水)
温暖な海洋惑星ワッカで発見されたガンQの亜種で、同惑星の水を吸収して変異したと見られる。超巨大な目玉の下に同じくいくつもの目玉が不規則に配置された胴体と手足の生えたような外見はそのままだが、血のような赤だった体色がその真逆の透き通ったような水色へと変化している。
原種のガンQ自体が不条理の塊であるのと同様、亜種である本個体もまた輪をかけて謎だらけの存在である。元々は、四次元怪獣ブルトンのせいでフローレス星に召喚されたものを惑星軍がなんとか撃破・捕獲し、プラティーナに譲渡したもの。ただし、同じ境遇のレッドキングなどと違い、実質は体のいい厄介払いとしてである。
「キッヒャアオオオオ!!」
初めこそ面食らっていたが、同じ単眼の怪獣のせいか、それともガンQの不気味な動きを見て馬鹿にされていると思ったのか。ガーゴルゴンは怒っているように見えた。
そのためか、早速両肩の大蛇状の触手の口から稲妻状の破壊光線をガンQ目がけて発射したのである。
「!」
しかし、鈍重そうな見た目とは裏腹に、ガンQはなんと素早く跳躍。天高く舞い上がって、光線を躱す。
「ほう。さっきのレッドキングよりもさらに良い動きをする」
「いやああああ!!??」
こちらの先制攻撃を躱したガンQに感嘆するアトラー星人。しかし、一方でガンQが躱したせいで、そのままこちらにやってきた光線が真横を通り抜けたプラティーナは悲鳴を上げた。
「ガンQ! 躱すのではなくて防ぎなさい! 貴方の能力ならそれが出来るでしょう!?」
「………………」
主人から抗議を受けるが、着地したガンQは無視するかの如く、全く反応しなかった。
「…?」
そんな2人のやり取りに違和感を覚えるアトラー星人。先ほどのレッドキングと違い、今はこの主従からは絆のようなものは一切感じられなかったからだ。
(! そうか…)
しかし、レイオニクスとしての豊富な経験から、すぐにその真相に気づく。
(あの女はガンQを扱いきれておらんのだ)
本来、先ほどのガクマ戦においてもレッドキングよりガンQが適任であったにもかかわらず、プラティーナは出さなかった。それは一見ガンQが本命で温存したからにも思えるが、実際には先ほどの態度からしてプラティーナは召喚するのをギリギリまで渋っていたように見える。
今の光線を躱した件についても、まともなレイオニクスの使役怪獣ならば主人を危険にさらすような迂闊な真似はしないはず。知能の低い馬鹿な怪獣が時にはそういう真似をしでかしてしまうことはあるが、ガンQはそういう類の怪獣ではなく当てはまらない。
では、一体どういう事なのか?――ようするに、ガンQはガーゴルゴンの攻撃を自身の能力で十分防げたにもかかわらず、あえて躱すことで、
まだ主との絆を築けておらず、反感を持っている怪獣にありがちな真似だ。そして、当然そんな事態が起きるのは未熟過ぎるレイオニクスのみ、と相場は決まっている。
(ガーゴルゴンとの相性で考えたのが裏目に出たな! ここで一気に畳み掛けてやる!)
確かに、飛び道具も超能力も持たないレッドキングでは、ガーゴルゴンに対抗するのは無理だろう。だから、まだ制御出来ていないとはいえ、超能力に長けたガンQに頼りたくなるのは分かる。
しかし、その判断がこの度裏目に出たわけだ。おかげで今回は楽に勝利出来る。そう考え、アトラー星人はほくそ笑んだ。
「キヒュヒュヒュヒュ」
そんなアトラー星人の心情を知ってか知らずか、ガンQは攻撃を仕掛けることもせず、四肢をうねらせその場に留まっていた。
「……っ」
プラティーナの顔にまた焦りが浮かぶ。指示を出そうにも、他の怪獣と違い、そもそもガンQはプラティーナの指示を聞いた試しがないのである。
召喚した時にはいつも勝手に行動し、そして何を考えているのかも未ださっぱり分からない。そのため、どういう行動を取るのかも予測不能なのだ。
とはいえ、彼女の手持ちの中で能力的にガーゴルゴンへ対抗出来そうなのは現状彼だけである。同じ石化光線使いとはいえ、ガクマ程度ならまだレッドキングで倒せたが、それより総合能力が数段上のガーゴルゴン相手にレッドキングではきつすぎるからだ。
「キヒュヒュヒュヒュ」
「キッヒャアオオ!?」
「んおっ!?」
しかし、ここで突如ガンQは目からピンク色の破壊光線を照射、ガーゴルゴンに攻撃を仕掛ける。こちらもすぐさま触手の電撃光線で迎撃、相殺したものの、気づくのが僅かに遅れていればダメージを受けていた。
「なるほど。敵の敵は味方、というのは今回は当てはまらんか」
「キッヒャアオオ!」
「だとすれば、お前の存在は主同様目障りだ。諸共倒させてもらおう!」
目玉の怪獣に目障りと言うのも何か妙な話ではあるが、ともかくアトラー星人はそう決断した。それに伴い、ガーゴルゴンも完全な敵意をガンQへ向けた。
「キヒュヒュヒュヒュ」
にもかかわらず、ガンQは相変わらずその場で四肢をうねらせ、敵を見つめている。
(相変わらず何を考えているのか、さっぱりわからない……)
(私の頭脳にも行動が予測出来ませぬ)
そんなガンQの様子にプラティーナ一行は呆れた。
「キッヒャアオオオオ!!」
そんな敵の態度に苛立ったのか、ガーゴルゴンは両肩の触手から再び電撃光線を放つ。光線が森を焼き払い、一帯は所々燃え上がった。
「キヒュヒュヒュヒュ」
しかし、ここでガンQは単眼から水弾を連射。炎上した箇所に着弾させ、すぐさま消火する。
「なるほど、水の能力に変化しているのか」
アトラー星人はバトルナイザーでこのガンQのデータを調べ、今起きた出来事と照らし合わせて納得した。
「だが、ガーゴルゴンにはそんなことは何の強みにもならん」
「キッヒャアオオ!!」
肯定するかの如くガーゴルゴンが咆哮する。この魔獣は別に水属性の攻撃は弱点でもなんでもなく、ガンQの変化した属性は何の強みにもならない。
「それに何を考えているのかさっぱり分からんその態度は実に不愉快だ。
ガーゴルゴン! こいつを痛めつけて嬲り殺しにし、あの小娘にレイオニクスバトルがどういうものかを味あわせてやれぃ!」
「キッヒャアオオ!!」
嬲り殺しにしろという命令に今度は喜びの態度を見せ、ガーゴルゴンは両肩の触手をガンQに向けて伸ばした。
「キヒュ!」
素早く伸びた触手はガンQの両腕にそれぞれ噛みつき、身動きを取れなくさせる。
「キッヒャアオオ」
本来、この状態で石化光線を当てれば即座に勝利出来るだろう。しかし、瞬殺すれば今度はプラティーナに真の絶望というものを味あわせることは出来ない。だからこその嬲り殺し命令である。
それを実行すべく、触手はガンQを軽々持ち上げると、上下して何度も地面に叩きつけた。
「………!」
それを見たプラティーナの顔がこわばる。いくら言うことを聞かない怪獣とはいえ、憎んでいるわけではない。むしろ、彼女はそれでも仲間だと思っている。
だからこそ、瞬殺するより怪獣を痛めつけるのがむしろ効果覿面である。そして、その目論見通り、プラティーナの表情はアトラー星人好みのものへとなりつつあった。
「ヒュウウウウ……素晴らしい。ようやく流れがいつものものになってきたな」
アトラー星人はいたぶられるガンQとそれを観ているしかないプラティーナの表情を見て、ご満悦の様子であった。
「キヒュヒュ……」
やがて放り出されて顔面から地面に激突し、地面に突っ伏すガンQ。
「キッヒャアオオオオ」
そんなガンQにガーゴルゴンは背を向けた勢いで二股の尻尾を叩きつけ、ガンQは吹っ飛んで投げ出された。
「ガンQ!!」
そんな怪獣を見て、プラティーナは絶叫する。
「ヒュウウウウ……どうやら賭けには負けたようだな。どうかね? 今の気持ちを聞かせてもらえないかな?」
自分の勝利は決まったも同然だが、嗜虐的なアトラー星人はさらにこの惨めなレイオニクスの女に感想を尋ねる。
「……ガンQはまだ負けてはおりませんわ!」
「ふむ、実に見苦しい。まだ心が折れないのかね?」
しかし、まだ自分の怪獣が勝つと信じているこの愚かなド素人の女の態度に、アトラー星人は気分を害した。
「もう少し痛めつけるか。ガーゴルゴン!」
「キッヒャアオオ!」
倒れるガンQに、ガーゴルゴンはさらなる暴行を加えようと近づく。
「………………」
ここでよろよろとガンQは起き上がる。
「ん!?」
しかし、ここで清澄な水色だったガンQの全身が、原種の如く乾いた血のような禍々しい赤色へと一瞬で変化したことにアトラー星人は反応した。
「……怒ったのですわ」
自分で見るのは初めてだが、かつてフローレス星軍と戦った際のガンQの情報を知っていたプラティーナは、そう神妙な顔で呟いた。
今まではガンQの心はさっぱり分からなかったプラティーナだが、ようやく今ここでの彼の気持ちが少しだが分かった気がした。
「キヒュヒュヒュヒュ!!」
プラティーナに全く懐いておらず、戦う気がなかったガンQ。しかし自らを痛めつけ、殺そうとする敵に対しては、ついに戦う気を見せたのだった。
「ヒュウウウウ………それがどうした! 怒ったぐらいで私のガーゴルゴンに勝てれば苦労はない!」
ガンQが怒ったというプラティーナの発言を、アトラー星人はせせら笑う。
「まあ、その怒りもすぐ恐怖と絶望に変わるんだがな! あの身の程知らずに思い知らせてやれ、ガーゴルゴン!」
「キッヒャアオオオオオオ!!」
昂るアトラー星人に呼応し、ガーゴルゴンは触手から再び電撃光線を放つ。
「キヒュララララララ!!」
「ギヒョン!?」
しかし、ガンQは巨大な単眼から高出力の光線を照射。電撃光線を打ち消しながら、逆にガーゴルゴンに直撃させる。
おもいきり吹っ飛び転がったガーゴルゴンも、予想外の事態に混乱していた。
「なにィ!?」
レイオニクスパワーによる強化もなしにガーゴルゴンとの光線の撃ち合いに勝ったガンQに、アトラー星人は仰天する。
「馬鹿な!? あんなド素人が使う怪獣如きに何故ガーゴルゴンが撃ち負ける!?」
「キッヒャアオオオオオオ!!」
この結果に激昂するガーゴルゴン。だが起き上がろうとした矢先に、突如目の前に降り立ったガンQ。
「ギ!?」
そのままガンQの目から水弾が発射され、自分の単眼に直撃する。途端、目に激痛が走り、ガーゴルゴンは悶え苦しんだ。
そんなガーゴルゴンの顔を、ガンQは容赦なく蹴り上げ、さらには胴体を蹴り飛ばした。森を転がりながらも目の痛みは収まらず、木を薙ぎ倒しながらガーゴルゴンは苦しんだ。
「くっ! あんな怪獣相手にこれ以上恥をさらすな!」
ガーゴルゴンの回復力をもってすれば、多少の時間が経てば回復するだろう。しかし、あんな格下の怪獣相手にこれ以上自分の本命怪獣が醜態をさらすのを嫌がったアトラー星人は、レイオニクスパワーを流し込み、パワーアップさせて即効の部位回復を促した。
「ギッヒャオオオオオオオオ!!」
石化魔獣 ガーゴルゴン(レイオニックバースト)
体の青緑色と黄色の部分のどちらにも赤みがかかると共に、単眼が再生。これで部位破壊による不利はなくなると共に、さらなる能力強化を果たした。
「マズいですわ……」
ガーゴルゴンが大幅にパワーアップしたのを見て、顔をしかめるプラティーナ。
プラティーナはガンQがはっきり言って強いと思っている。しかし、それでも敵の不意や油断を突けたから今は優位に立っていたのであって、能力的にはこちらが劣るのも分かっている。故に、今の状況は非常にまずいのも理解していた。
「キヒュララララララ」
しかし、主人の心配をよそに、ガンQは恐れずに戦いを挑んだ。
「無駄だ! さっきとは違うぞ!」
ガンQは先ほどの高出力光線を放出するも、迎え撃つガーゴルゴンの電撃光線に今度は押し負け、逆にダメージを負う。体の所々から血が噴き出し、深手を負ったらしき様子だった。
「ガンQ!」
「ヒュウウウウ~~どうやらここまでのようだな。だが、大いに驚いたよ。
君のようなド素人のレイオニクスの分際で、私のガクマを倒し、今またガーゴルゴンにここまで食い下がるなんてねえ……」
今度こそ勝利を確信し、プラティーナを饒舌に煽り立てるアトラー星人。
「フフフフ、ようやく私の理想の表情となってくれたね。これで良いんだよ……」
さらにはプラティーナの怯える顔を見て、アトラー星人はようやくプラティーナを蝋人形に変える準備が整ったと思い、喜びを見せる。
「キヒュヒュ……」
ガンQはやがて仰向けに倒れると、痙攣を起こす。
「フン! 散々手こずらせてくれたな!」
「キッヒャアオオ!」
最早討たれるのを待つだけという奇獣に対し、悠然と歩を進める魔獣。
「キヒャ!」
ガーゴルゴンはガンQの両足を踏みつけ、へし折る。しかし、ガンQは満身創痍故に最早抵抗することも出来ない。
「これで逃げることも出来まい」
さらにはガンQの両手にも触手がそれぞれ噛みつき、逃げられないように固定すると共に、ガーゴルゴンの単眼が妖しい光を帯びる。
「や、やめて!」
「ヒュウウウウ~~~~、それは出来ないよお嬢さん。君も潔く諦め、ガンQの最期を堪能してはどうかね?」
先ほどまでの強がりをかなぐり捨て、ガンQへのとどめを刺すのをやめるよう懇願するプラティーナ。しかし、下衆な性根のアトラー星人はそんな彼女の弱々しい態度と表情に、この上ない喜びと優越感を感じながらも当然拒否した。
「やれぇガーゴルゴン!!」
「やめてええええええ!!!!」
絹を裂くような王女の絶叫が響き渡るも、ガーゴルゴンは容赦なく石化光線を発射する。
「キヒャララ」
「ギ!?」
「何だ!?」
「「え!?」」
だがそれと同時に、ガンQは単眼から溢れるような量の涙を流したかと思うと、それが即座に体全体を覆う鏡面のような防壁となる。ガーゴルゴン、アトラー星人、さらには姫と執事も皆驚いたのも束の間――
「キッヒャアオオオオオオオオオオ!!??」
石化光線は跳ね返ってガーゴルゴンに当たり、魔獣は絶叫を上げながら石化し始める。
「ギギ……」
「うわああああああああああああああああああああ!!??」
レイオニックバーストは発動中のままであった。つまり、“真のレイオニクスバトル”もまた起きていたということ。
ガーゴルゴンの石化に伴い、ダメージがリンクしたことで、アトラー星人もまた全身が石化し始める。
「うっ嘘だァァァァァァ!!!!……わっ私がっ、レイブラッド星人の後継者となるのに相応しい存在であるこの私がっ!!!!………こんなド素人の小娘に敗れるのか!!??………そんなことあるはずが!! あってたまるかァァァァァァァァァァァァ!!!!」
髪を振り乱し体が急速に石化していく感覚に恐怖しながらも、アトラー星人は突如降ってきた敗北と死が信じられなかった。
「ギ」
「ァァァァ……」
怒り、恐怖、絶望その他の様々な感情が目まぐるしく駆け巡るも、それはすぐに途絶えた。
そして、両者の石化が終わり、完全な石像と化したのもまた同時であった。
「キヒュヒュヒュヒュ」
足が折れて動けないガンQ。しかし周囲の土と木を吸収し、折れた足を再構成して何事もなかったかのように立ち上がる。
そして今では物言わぬ石像と化したガーゴルゴンの方を見やり――
「キヒュララララ」
目から大きめの水弾を発射。為す術もなく直撃したガーゴルゴンの石像は真ん中で上下に折れ、さらには倒れた衝撃でバラバラに砕けてしまった。
こうして、宇宙に悪名高き魔獣は、最期は皮肉にも自分が石像となり滅び去ったのである。
「ありがとう、ガンQ」
「!」
下から声をかけられ、ガンQがそちらを向くと、プラティーナが手を振っていた。
「………………」
興味なさげに、ぷいと背を向けるガンQ。お前のために戦ったのではない、とでも言いたげであった。
「相変わらず何を考えているのか分かりませんわね……」
そんなガンQの素っ気ない態度を見たプラティーナは苦笑した。
「彼の信頼を得られるかどうかが今後の課題の1つですな」
「えぇ、セバスティアン。道は長そうね。でも、それでも歩みきってみせますわ」
改めて決意を述べたプラティーナは背を向けるガンQにバトルナイザーをかざし、回収した。
「色々勉強になりましたわ。そこは感謝しておきます」
物言わぬ石像になったアトラー星人。人格的には何ら褒めるところのない猟奇的な悪党だったが、それでもプラティーナは最低限の礼儀として、ペコリと頭を下げた。
「姫様、この星では少しの油断が死を招きます。それを努々忘れられませぬよう」
執事はアトラー星人、さらには彼の犠牲となった蝋人形を示し、姫に教訓とするよう忠告した。
「確かに。今回は勝ったからいいとはなりませんわね。今後も精進いたしましょう」
今回の初レイオニクスバトルは色々思うところ、学ぶところがあった。その感慨に耽りながら、姫と執事はエアバイクでこの森を去っていく様を、物言わぬ石像と化したアトラー星人が見送ったのである。
用語解説
石化魔獣 ガーゴルゴン
かつて地球の古代文明を石に変えて海に沈めたと伝わる宇宙怪獣。戦闘能力が高いだけでなく、宇宙人並の知性・狡猾さを持ち、本能ではない明確な悪意をもって破壊と殺戮を行うなど、ガモスやギマイラなどと同じく単なる怪獣を超えた凶悪さを持つ。
青緑と黄色の体色を持ち、
しかし、この怪獣の最強の武器は別名の由来となった、単眼から放つ石化光線である。これをくらえば問答無用で体が石化しガーゴルゴンにエネルギーを奪われてしまうが、ガーゴルゴンの死で解除される。また、ガーゴルゴン自体は実は石化への耐性を持っておらず、仮に何らかの手段で石化光線を跳ね返された場合、自分が石化してしまう。
本個体はある無人の小惑星で休眠状態にあったところをアトラー星人(RB)が偶然発見、捕獲したもの。それでも最初は言うことを聞かなかったらしく、調教にはそこそこ苦労したらしい。彼の使役怪獣ではガクマより強いことから、同じ能力を持ちながらもこちらが本命として扱われている。
石化光線だけでなく高い戦闘能力を持ち、対峙したガンQ(水)を叩きのめすも、光線の撃ち合いで負けた上に謎の液体を目にかけられ視力と石化光線を封じられる。しかし、ここで主の助け舟によりレイオニックバーストしてパワーアップし、ガンQの足をへし折り、勝利目前まで迫るも、ガンQが直前で張った鏡面防壁により石化光線が跳ね返され、自分の方が石化してしまう。直後、復活したガンQに水弾をくらわされて真っ二つにされ、落下の勢いでさらにバラバラとなった。
ちなみに、アトラー星人には忠実に従っていたが、彼のことがそこまで好きというわけでもなかったらしい。また、ガンQが同じ単眼の怪獣であったからかは不明だが、彼に対しては強い敵意を見せた。
奇獣 ガンQ(水)
温暖な海洋惑星ワッカで発見されたガンQの亜種で、同惑星の豊富な水を吸収して変異したと見られる。原種は魔頭鬼十朗と呼ばれる戦国時代の呪術師が呪力で現代に復活し変身した姿であるが、この亜種が魔頭鬼十朗と関係があるのかは不明。数々の奇怪な超能力を持つことは共通しているが、一部の攻撃が吸収した水を利用したものに変化している。また、元が生物でなく周囲の物体を吸収して体を作るという性質上、負傷しても周囲の物体を吸収し迅速な体の再構成が可能である。
超巨大な目玉に胴体、指のない鞭状の両腕、足が生えており、体の各所に小さな目玉があるのは原種、より正確に言えば[コードNo.01]と同じ。ただし、原種及び[コードNo.02]は乾いた血のような禍々しい赤色の体色だったが、こちらは真逆の水色に変化しているのが最大の相違点。ただし、怒った際は原種と同じ色に変わる。
本個体は四次元怪獣ブルトンによってフローレス星に喚び出され、暴れていたところをフローレス星軍が捕獲したもの。ただし、超能力を使うだけあって同軍をかなり手こずらせたそうで、レッドキングと違い人馴れもせず、その結果封印装置を作りそこに封印することになった。プラティーナに譲渡されたのも実態はレイオニクスバトルの戦力という名の、体のいい厄介払いである。
バトルナイザーにセーブされてはいるが、レッドキングと違ってプラティーナに全く懐いておらず、彼女も彼の考えていることは未ださっぱり分からないという。また、命令を聞いた試しもなく、バトルは良くも悪くも自分で考えて行動するが、そもそも今回やる気を出して戦いになったこと自体がラッキーと言えたとのこと。
今回の初レイオニクスバトルでも多彩な超能力を持つことからガーゴルゴンに対抗出来る唯一の怪獣として選出されたが、案の定言うことは全く聞かなかった。それどころか、プラティーナにわざと危害が及ぶような真似までしでかしたが、敵の敵は味方というわけでもなく、ガーゴルゴンに攻撃を仕掛けている。
本来、レイオニクスパワーで強化されたガーゴルゴンには実力で劣るが、本腰で放った光線の出力自体はガーゴルゴンを超えており、初めこそ圧倒されたが敵の油断もあって一時は優位に立つ。とはいえ、敵がパワーアップしてからは再び窮地に陥り、さらには両足をへし折られ両手まで拘束されるが、ダメ押しの石化光線を体内の水分を利用した鏡面防壁を作ることで反射、逆転勝利する。
プラティーナも知らないことだが、実は巨大な単眼は高い洞察力・サーチ力を持ち、敵の未公開の技や能力まで事前に把握することが出来る。彼が叩きのめされたのも実は演技で、敵が勝利を確信して必殺の石化光線を放ち、かつそれを跳ね返した際避けられないよう至近距離で発射させるよう誘導するためである。