怪獣超無法惑星   作:フルメタル・ミサイル

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 今回からちょこちょこ以前登場したキャラを出していこうかと思います。よって今回はプラティーナの章。それとちょっと今回は若干短め。


白金王女(プラチナプリンセス)、邂逅!

 辛くも初レイオニクスバトルを乗り越えたプラティーナ。しかし、喜んでばかりもいられない。

 この惑星アシヨシでのレイブラッド星人後継者レースで優勝し、レイブラッド星人に相見えるためには、自分以外の全てのレイオニクスの持つ怪獣をバトルで倒さねばならないのだ。プラティーナの実力は順調に上達しつつあるが、それでもその道は果てしなく長く、そして険しい。

 

 

 

 

 

 ――とある川沿いの森――

 

 プラティーナ一行のやることは今日も変わらない。いつもと同じく周囲の探検を続けている。アトラー星人との戦い以後、多くの野生怪獣、さらにはレイオニクスと出会った。

 それらと戦い、時に勝利し、時に敗走した。強力な敵怪獣と邪悪なレイオニクスのせいで何度も命を失いかけはしたが、それでも彼女は生き延びた。幸運と、そして自分の怪獣達のおかげである。

 

「ここらにはまだスフィアは来ていないようでよかったですわ~」

 

 森の中をエアバイクをかっ飛ばしながら、姫は気の抜けた声で呟く。

 数日前、惑星全土の空を埋め尽くすほどの数が現れたスフィア。驚くのも束の間、連中はプラティーナ達にも襲いかかり、王女と従者は以前の拠点から()()命からがら逃げ出す羽目になったのである。

 そうして今日、まだスフィアのいないこの川沿いの森にようやく辿り着くことが出来た。

 

「スフィアがおらずとも、怪獣やレイオニクスがいるかもしれませんな」

 

 荷台にしがみつきながらそう答えるセバスティアン。確かにスフィアがおらずとも、他の先客はいるかもしれない。そして、そんな状況はこの星でもう何度も見てきた。

 

「……姫様に仕える従者として、本音を言えば危険な目にあってほしくはありませぬ」

 

 スフィアは並のレイオニクスや怪獣を超える脅威。さらには、そもそもレイオニクスバトルとも全く関係ない存在である。

 主人の意思は尊重しているが、それでも主人が危険な目にあってほしくないのが執事としての本音であった。

 

(わたくし)も今はレイオニクスの端くれ。危険は覚悟の上ですわ」

 

 風に煽られながら、毅然とした態度でそう語るプラティーナ。

 ギャラクシークライシス以降、怪獣被害の甚だしい母星の助けとなるため、彼女はこの惑星アシヨシでのレイブラッド星人後継者レースへの参加を決めた。凶悪宇宙人がライバルとして多数集うこの星にやって来て、今更平穏など求めない。もし自らの努力及ばず夢破れ、命を落とすことになったとしてもだ。スフィアが侵攻してきたぐらいで、今更泣き言など言わない。

 幾度ものレイオニクスバトルを経て、彼女はたくましくなった。初めは若く、そして現実を知らぬお姫様でしかなかったプラティーナも、過酷な戦いとサバイバルを経験したことで、段々と貴人としての風格を備えつつあった。

 

「姫様、ご立派になられましたな……このセバスティアン、生物であったなら喜びのあまり滂沱の涙を流していたことでしょう」

 

 過酷な日々を送ったことによる姫の精神的成長をしみじみと感じ取り、セバスティアンは感極まった様子で頷く。

 

「フフッ。大袈裟ですわ~」

 

 そう褒められて悪い気はしなかったらしく、プラティーナは笑みを浮かべる。

 けれども、その感情のせいで彼女の注意力は薄れ、前方不注意になってしまう。

 

「お願い、助けて――――グアア――ッッ!!??」

 

 突如物陰から飛び出してきた女性。しかしプラティーナは彼女の存在に気づかず、エアバイクで跳ねてしまったのである。

 

「!? 今何か跳ねましたわ!?」

 

 驚いたプラティーナは急ブレーキでエアバイクを停止させ、慌てて後方を確認する。

 

「女の人が倒れています!」

 

 目に入ったのは、森の中に仰向けで倒れる、自分と同じ地球人型種族(ヒューマノイド)と思しき女性。自分が何をしてしまったのかここでようやく気づき、プラティーナの顔に絶望が浮かぶ。

 

「わ、私、ひ…人を殺してしまいましたわ……」

 

 プラティーナは人身事故を起こしたショックの余り、顔が真っ青になって多量の汗を流し、過呼吸を起こしてしまう。

 

「慄いている場合ではありませぬぞ姫様! まずは救助と手当てです!!」

 

 慄き呆然としている主人をよそに、状態を確認すべく、セバスティアンは女の元へ早速駆け寄り、状態を調べる。

 幸い、女は死んでおらず、高速のエアバイクに跳ね飛ばされておきながら命に別状はなかった。

 

「ん…?」

 

 しかし、やがてセバスティアンは違和感を覚えた。

 女の姿は確かに地球人型種族のもの。そして、怪我の状況を確認すべく全身をスキャンしていた時に気づいたのは、それが()()()()()のものだということだった。

 

「姫様、ここから出来るだけ離れてください」

「!? どうしてですの?」

 

 この緊迫した今の状況にそぐわない従者の突然の発言に、姫は困惑する。

 

「!? うわぁ!?」

 

 その言葉がきっかけだったのか。仰向けに倒れていた女は目を見開いて突如上体を起こすと、セバスティアンの体に素早く銀色の硬質テープを巻き付け、身動きを封じてしまう。

 驚く主従に構わず、女はそのまま執事の背後に回り込み、左腕を首に回して締め上げながら人質に取ったのである。

 

「一体なんですの貴方は!?」

 

 エアバイクに跳ねられたにもかかわらず、女は平然としていた。訳が分からず、姫がそう叫ぶのも無理はない。

 

「イテテ……惑星に迷い込んだ旅行者を装って近づく作戦は失敗か! こっちはエアバイクに跳ねられたっていうのにな!!」

 

 それでもこの姫の迂闊さで余計な怪我を負ったには違いなく、肝心の作戦も執事のスキャン機能により()()を見破られ失敗した。

 それらに怒った女は、もう変身しても意味はないとばかりに正体を表した。

 

「バトルナイザーを奪い取る作戦は失敗した。これよりプランBのレイオニクスバトルに変更する!」

 

 凶悪宇宙人 ザラブ星人(RB)

 

 かつて初代ウルトラマン、ウルトラマンメビウスと戦った宇宙人の同種族。地球人を幼い弟、自分達は兄と称し友好的な態度を見せたが、正体は他の星の文明を滅ぼしてきたという凶悪な侵略者。いずれの個体も変身能力と狡猾な作戦を用いて人類を滅ぼそうとした。

 茶色くゴツゴツとした体表を除けば人間と同じ細身の体型だが、銀色の硬質な頭部は極端に大きくて目立ち、そのせいで頭部と肩がつながっているように見える。他に五角形のおちょぼ口、落ちくぼんだ極端に小さな両目、頬(?)の辺りの青色が特徴。

 戦闘能力はそこまで高くはないが、科学技術及び超能力に長けた種族であり、何より『にせウルトラマン』に変身し人類を欺いたことで有名。

 

「なぁんだ、跳ねたのはザラブ星人でしたか。それじゃ私は罪に問われませんわよね」

 

 プラティーナは先ほどはあれほど動揺していたにもかかわらず、相手が凶悪種族で有名なザラブ星人だと知るやいなや、即座に落ち着きを取り戻し素っ気なくそう言い放つ。

 この掌返しにはセバスティアン、さらにはザラブ星人までも呆れ果てたのだった。

 

「その髪型だけでなく、やることなすこと全てふざけてやがる!

 これなら遠慮はいるまい! エアバイクで跳ねられた私の恨みを晴らしてやる!」

 

 そもそも自分の方がプラティーナを罠にはめようとしていたのを棚に上げ、ザラブ星人は激昂。空いた右手でバトルナイザーを取り出す。

 

「そうそう、そっちの方がずっと分かりやすいですわ。下手に小細工を弄するとロクなことにならないと学習出来て良かったですわね~」

「ひ、姫様! あまり相手を刺激してはなりませぬ!!」

 

 セバスティアンが人質に取られているにもかかわらず、心底見下した様子でプラティーナはザラブ星人を愚弄する。

 あまりにナメられた態度を取られ、怒りのあまりザラブ星人のバトルナイザーを持つ手は震えていた。それを感じ取り、慄くセバスティアン。

 

「貴様は殺す!! 絶対にだ!!!!」

『バトルナイザー、モンスロード!』

 

 ザラブ星人らしからぬ真正面からの激しい怒りを見せ、ついに怪獣を召喚する。

 

「キャアアアア!!」

 

 狐火怪獣 ミエゴン

 

 かつてウルトラマンタロウと戦った怪獣の別個体。栃木県那須岳を根城としていた、伝説の妖怪『九尾の狐』の正体とされた怪獣。肉食かつ好物は人間という恐るべき怪獣で、食性のせいか鋭い牙が生えた口からは酷い悪臭を放っている。

 九尾の狐の正体と言われるだけあり、顔は狐に似ているが、狐よりやや吻が長い。焦げ茶色の体色で、頭頂部に5本の角を持ち、尻尾は九尾の狐の正体だけあり9本…でなく1本の長い尻尾の周りに枝分かれするように8本の房が生えている。

 角からは透明シャワーを自分の体に放つことで透明化する能力を持つ。他に空中浮遊能力や瞬間移動能力、そして別名通り狐火に例えられる口からの爆炎を武器とするが、動き自体も身軽である。

 

「ミエゴン……初めて見ましたわ」

 

 バトルナイザーに表示されたデータを見て、ミエゴンの口からの悪臭も気にせずに感心するプラティーナ。普段は高飛車だが、こういう場面では研究者気質が出る。

 

「なかなかいいですわね。貴方をレイオニクスバトルでぶちのめした後、その子もいただきましょうか」

「貴様、自分の置かれた状況が分かっていないようだな…!」

 

 セバスティアンが人質に取られているにもかかわらず、マイペースどころか不敵な態度のプラティーナに苛立ち、わなわなと震えるザラブ星人。

 

「姫様ー!」

「当然貴方のことは忘れていなくてよセバスティアン。こちらも怪獣を召喚いたしますわ!」

『バトルナイザー、モンスロード!』

 

 プラティーナのバトルナイザーから光が1つ放たれると、そのまま地面に吸い込まれた。

 

「! そのパターンは地底怪獣だな…」

 

 卑劣ではあるが、さすがにサードステージ進出者なだけはある。召喚パターンを見てプラティーナの怪獣がどういった性質なのか、ザラブ星人は一目で看破した。

 

「御名答。最近私の麾下に加わった子でしてね。この度初お披露目となりますわ」

 

 咆哮と共に、森の土がすり鉢状に崩壊。そこから怪獣が顔を出す。

 

「ピキャアオオ!」

 

 磁力怪獣 アントラー

 

 かつて初代ウルトラマンと戦った怪獣の別個体。中近東の砂漠にあった幻の街バラージ付近に五千年前から生息していた怪獣であり、その上空を飛行する飛行機、さらには科学特捜隊各支部のジェットビートルまでを撃墜して餌食としていた。

 二足歩行の昆虫型怪獣であり、青みがかった灰色の体色で、飛び出した目を持つ蟹のような頭部にクワガタムシのような大顎を持つのが特徴。普段は地中に隠れており、自分のいる場所に蟻地獄状の巣を作っている他、口から砂煙を放つことも出来る。

 大顎からは虹色の磁力光線を放ち、直接的な攻撃力こそないものの、航空機などの金属で出来た乗り物や鉄骨、さらには血中の鉄分に作用して人間やウルトラマンさえ引き寄せるパワーを持つ。また、全身を覆う外骨格はウルトラマンのスペシウム光線が直撃してもなんともなかったほどの恐るべき硬度を誇る。

 

「フン、アントラーか。悪くないな。貴様をブチ殺した後、そいつをいただくとしよう」

 

 サードステージ進出者の目からも、このアントラーは戦力として悪くない怪獣と映ったようだ。とはいえ、それでもミエゴンに劣る怪獣として見ていたが。

 

「ピキャアオオ!」

 

 森の中の木々を薙ぎ倒しながらすり鉢状の巣を拡大するアントラーは、さっそくミエゴン目がけ虹色の磁力光線を放つ。

 

「………」

 

 しかし、ミエゴンは軽快な動きでこれをひょいと躱す。ならばとアントラーは光線を連射するが、今度は瞬間移動を使ってその場から消えてしまう。

 

「!?」

 

 そして、アントラーの背後に現れたミエゴン。アントラーが振り向くより早く、後頭部を蹴り飛ばす。

 怒って頭の大顎を振り回すも、狐火怪獣はその時には空中に浮かび上がって躱してしまうかと思えば、下りてきて今度は両足で頭頂部をおもいきり踏みつける始末である。そうしてアントラーの頭を踏み台にジャンプし、頭上から猛烈な爆炎を浴びせかけて怯ませた。

 

「ノロいな」

 

 反撃すらままならぬ一方的な攻防を見て、せせら笑うザラブ星人。雪辱を果たせると見てか、今度は先ほどとは真逆のご満悦な様子である。

 

「これなら決着は早そうだ。そして、貴様の命の終わりもな!」

「キャアアアア!!」

 

 さらに、ミエゴンは角から透明シャワーを自分に浴びせ、姿を消してしまう。これでいよいよ磁力光線は当てられなくなってしまった。

 

「あら、そう思うのは早計ではなくて?」

「負け惜しみを!」

 

 ザラブ星人がそう吐き捨てる通り、今のアントラーではミエゴンに攻撃を当てることは出来ない。にもかかわらず、何故かプラティーナは邪悪な笑みを浮かべたのだった。

 

「さすがはサードステージ進出者。さすがに一筋縄ではいかない怪獣をお持ちですこと。

 ですが、ここまではこちらも小手調べ。ここからは本気でおやりなさい、アントラー!」

「ピキャアオオ!!」

「何!?」

 

 ここで何故かプラティーナはエアバイクに飛び乗り、猛スピードでこの場から離脱する。あまりの逃げ足の速さ故、ザラブ星人もそれをただ呆然と見ているだけしか出来なかった。

 真上を向いたアントラーは、上空に自分の頭よりも極太の磁力光線を照射。すると周囲一帯の物体が光線目がけて吸い上げられ、さらには空中に浮かんでいたミエゴン、さらにはザラブ星人とセバスティアンまで引き寄せられてしまう。

 

「うおおおおああああああああああ!!?? 何だこれはァァァァァァァァ!!??」

「姫様ァァァァァァ私を置いていかないでェェェェェェ」

「キャアアアアオオオオオオオオ!!??」

 

 三者三様の絶叫を上げながら舞い上げられたところで、土に埋まったままのアントラーは上半身を高速で回転させ、磁力線も回転。竜巻の如く巻き上げられた物体も回転しながら、アントラーの口元へと吸い寄せられる。

 

「キュ!」

「ギャアアアアオオオオ!!??」

 

 そうして身動きを取れなくなったミエゴンが口元まで引き寄せられたところで、渾身の【ライジングシザース】が炸裂。大顎で挟み込まれ大ダメージを負って思考が飛んだところで、ダメ押しの大顎+両腕で押さえ込んだシザース・スープレックスをアントラーがさらに放つ。哀れ、すり鉢状の巣に叩きつけられて上半身が埋め込まれ、ミエゴンはそのまま動きを止めてしまったのだった。

 

「う…嘘だろぉ…私のミエゴンがァ……」

 

 ライジングシザースの時点で磁力光線は止まっていたものの、身動きが取れずにザラブ星人とセバスティアンは地面に落下して叩きつけられる。幸い、やわらかい泥となっていたすり鉢状の巣に落下した執事ロボットの損傷はかなり軽微だったものの、ザラブ星人の方はたまたま下が岩だったため全身を強打。先ほど跳ねられた分も合わせて最早身動きもままならぬダメージを負ってしまったのだった。

 

 

 

 

 

「ハッ!」

 

 気を失っていたザラブ星人だったが、やがて意識を取り戻す。すると先ほどとは逆に自分がロープで雁字搦めに縛られていたことに気づいたのだった。

 

「あら、目覚めちゃいましたか」

 

 少し離れた場所で、プラティーナは彼のバトルナイザーをいじっていた。

 

「な!? 貴様、私のバトルナイザーを返せ!」

「オーホホホホ! 私を罠にハメようとした罰ですわ! 貴方のバトルナイザーはいただきます!」

「何だと!? き、貴様ふざけるなよ!!」

 

 怪獣を丸ごと強奪しておきながら悪びれず、いつも通り豪快に笑うプラティーナ。その様を隣で、まだ特殊テープに縛られたままのセバスティアンが呆れた様子で見ている。

 

「レイオニクスバトルに勝ったのはこの私! 貴方は私に生殺与奪を握られているのですわ! むしろ生かしてもらえただけありがたいと私に感謝してほしいぐらいですわ!」

 

 プラティーナのレイオニクスとしての実力は確かに順調に成長しつつあるし、精神的成長もまた確かにしている。けれども、一方で図々しさや卑劣さといった面もまた増長しつつあった。

 

「ま、冗談はさておき。もう勝った以上、貴方に用はありません。惑星を離れるなり何なりしなさいな」

「だったらせめてこの縄を解いていけよぉぉぉぉ!!??」

 

 ザラブ星人は立ち上がりながらそう訴えるが、いくら傷を負っているとはいえ相手は凶悪宇宙人という別名を持つ種族。そういう輩にそんな真似をしてやるほど、今のプラティーナは自信家ではなかった。

 

「幸運を!」

 

 最後に憎たらしいほど爽やかな笑顔でウインクするプラティーナは、セバスティアンを荷台に乗せ、そのままエアバイクに乗ってここから立ち去ったのだった。

 

 

 

 

 

「畜生っ、あのクソ女め!!」

 

 しばらく時間がかかったが、なんとか縄を切り脱出したザラブ星人。しかしミエゴンを始めとする手駒はバトルナイザーごと奪われてしまい、最早レイブラッド星人の後継者になり、全宇宙を支配するという望みは叶えることも出来ない。

 

「私もここまでか……」

 

 業腹だが、その事実は認めざるを得ない。最早全ての手駒を失った以上、こんな怪獣だらけの超危険惑星に長居する意味はない。ならばあの女の言う通り、さっさとザラブ星に帰るべきだろう。

 

「クソッ、体が痛いから意識を集中することも出来ん!」

 

 痛みで集中出来ないため、今は精神集中を要するテレポートは使えない。おまけに戦闘に巻き込まれるのを恐れて、ある程度離れた場所に宇宙船を置いたのが仇となった。徒歩で行けなくもないが、それでも日が暮れ始めた今日中に辿り着くことは無理だろう。ましてや今は負傷している。ここは大人しく朝日が昇るまでじっとしている方が賢明だとザラブ星人は考えた。

 

「………………」

 

 疲れ果てたザラブ星人はその場に座り込み、物思いに耽る。内心はぐちゃぐちゃであったが、無理もない。自分が負けるなど、今日まで考えもしなかったのだから。

 

「……! おい、嘘だろう……ッ!」

 

 そして、そんな彼を今さらなる絶望が襲おうとしていた。

 夕闇に包まれつつある空が薄緑色へと変わったかと思うと、同時に何処からともなく現れる歪な球体(スフィア)の群れ。

 さらに、その中のキングスフィアの1体が彼の存在に気づき、緑色の光を真下へと照らす。

 

「………!?」

 

 その中を下りて現れたのは、長い蒼髪を生やし、それをロシア帽でまとめた人間型種族(ヒューマノイド)の女だった。

 そして、微笑みを浮かべた彼女の姿が、ザラブ星人の見た最期の光景である。以後彼の姿は忽然と消えてなくなった。




用語解説

 凶悪宇宙人 ザラブ星人(RB)

 二つ名は“マッドネス・ブラザー”。かつて初代ウルトラマン、ウルトラマンメビウスと戦った宇宙人の別個体。地球人を幼い弟、自分達を兄であると主張し友好的な態度を当初見せたが、その正体は他の星の文明を滅ぼしてきた侵略者である。変身能力を持ち、かの有名なにせウルトラマンに化けたことで有名。
 初代と戦った個体は初めは地球に広がった放射性の霧を除去するなど友好的な仕草を見せたが、実際にはこれも自分で撒いたものでただの自作自演であった。目的は地球滅亡であり、そのために暗躍するもやがて正体が露見、ウルトラマンの姿に化けて街を破壊するも遅れて本物が現れる。戦いとなるもスペシウム光線をくらってすぐに正体を表し、その後空中戦を繰り広げるが2度目のスペシウム光線をくらって爆死した。
 のちに別個体が宇宙征服のためナックル星人、ガッツ星人、テンペラー星人と宇宙人連合を組み、Uキラーザウルス復活のために暗躍するも、メビウスに倒されている。しかし、彼のエネルギーを大きく消耗させるという目的は果たした。
 他に惑星ハマーでZAPのクルーを騙そうとした個体や、ウルトラマンベリアルを復活させるべくギガバトルナイザーを持ち込み宇宙牢獄から解き放った個体がいる(がこちらはベリアルに殺害されている)。
 茶色くゴツゴツとした体表で細身の体型をしているが、逆に銀色の頭は極端に大きく、そのせいで頭と肩が直接繋がっているようにも見える。ただし頭こそ大きいが、五角形のおちょぼ口や落ちくぼんだ目といった各部位は極端に小さい。
 戦闘能力はそこまで高くはないが、科学技術と超能力に長けており、特に超能力に関しては放射性の毒霧を撒く能力、変身能力、飛行能力、催眠術など多彩。またメビウスに化けた個体はメビウスの技まである程度再現していた。
 本個体はこの惑星アシヨシでレイブラッド星人の後継者となって全宇宙を支配すべくレイオニクスバトルに参加していた。ある時プラティーナを見つけ、無害な旅行者を装って近づこうとするも、前方不注意だったプラティーナは彼に気づかずエアバイクで跳ねてしまう。それでも多少のダメージを負った程度で怪我人を装ったが、今度はセバスティアンに違和感を抱かれてしまい、仕方なく彼を人質に取った。
 しかし、プラティーナはセバスティアンをあまり顧みずにバトルを進めた挙げ句、繰り出したアントラーにミエゴンは敗れてしまう。しかも大技に巻き込まれた際に落ちた場所が悪く負傷し、気絶してしまった。そしてその間にお返しとばかりに自分がロープで縛られた挙げ句、バトルナイザーを奪われて逃げられてしまった。
 踏んだり蹴ったりな目にあった彼であるが、命だけは助かった――のだが、その後突如スフィアに襲撃され、行方知れずとなった。
 ちなみにザラブ星人の割にはかなりキレやすい性格。かつて他の惑星を滅ぼす任務に従事したことがあるが上手くいかず、挙げ句現地民にそれがバレて逃げ帰るなど、惑星ハマーに現れた個体同様、間抜けな面も目立つ。また、プラティーナだからこそ取ろうとした作戦は有効だったが、他の凶悪なレイオニクス相手にもやろうとしていたのかは不明である。

 狐火怪獣 ミエゴン

 かつてウルトラマンタロウと戦った怪獣の別個体。栃木県那須岳を根城としていた、伝説の妖怪である九尾の狐の正体とされる怪獣。鋭い歯を生やした狐のような顔だけあって肉食であり、しかも人間が好物だという。食性のせいか、その口からは酷い悪臭を放っている。
 ある村に住む少女の母親を口からの炎で焼き殺した挙げ句、この怪獣に襲われたことがねじ曲がって伝わり、少女が迫害される原因となった。その後、少女を追い立てていた村人達の前に現れ、彼等も焼き殺している。
 その後那須ロープウェイを襲撃し、逃げていた少女を焼き殺そうとするがタロウに阻止される。タロウに殴り飛ばされても空中を浮遊し戻ってくる、爆炎を吐きかけタロウを怯ませるなど善戦する。しかしタロウバリアーを張られたところで破ろうと近づいたところ解除され、転びそうになったところで後頭部を蹴られてふらついたのに爆炎を吐き続けたのが仇となり、最期は自分に引火し自爆してしまった。
 狐のような顔をしているが、本物の狐よりはやや吻が長い。頭には5本角を生やしており、九尾の狐の正体とされるだけあって尻尾は9本…ではなく太く長い尻尾に8本の房が枝分かれするように生えている。この角からは透明シャワーを自分の体に放つことで透明化することが出来る他、口からは別名の狐火に例えられる爆炎を吐く。浮遊能力・瞬間移動能力も持つなど、地球怪獣の割には超能力にも長けている。
 本個体はザラブ星人(RB)に使役されている。サードステージに進出しただけあってそれなりに強く、事実最初はアントラーを圧倒した。しかし、アントラーが必殺技を発動した時には能力を使って回避する暇もなく、そのまま大顎に挟まれて大ダメージを負った挙げ句、スープレックスで地面に叩きつけられ生き埋めにされ敗北。その後、ザラブ星人が気絶していた隙を突いてプラティーナに他の怪獣共々バトルナイザーごと奪われてしまった。

 磁力怪獣 アントラー

 かつて初代ウルトラマンと戦った怪獣の別個体。中近東の砂漠にある幻の街バラージの付近に潜む怪獣で、上空を通る飛行機を虹色の磁力光線で撃墜し乗客を餌食としていた。科学特捜隊日本支部到着前にも調査に訪れていた各支部のジェットビートルを撃墜して犠牲者を出しており、科特隊にも特に多大な人的被害を与えた怪獣である。
 少なくとも五千年前からこの一帯にいたことが分かっており、その時に出現した際は『ノアの神』なるウルトラマンそっくりの神に退治されたと伝えられている。しかし、この時出現したアントラーはバラージの街を襲い、迎え撃ったウルトラマンも強固な防御力で苦戦させるが、最期はノアの神の像が持っていた青い石を投げつけられ、全身が大爆発して死亡した。
 青みがかった灰色の体色をした、二足歩行の昆虫型怪獣。目の飛び出たカニのような頭部とクワガタムシのような大顎が特徴。全身が強靭な甲殻で包まれており、ウルトラマンのスペシウム光線が直撃してもなんともない恐るべき硬度を誇る。
 虹色の磁力光線を放ち、これで飛行機を吸い寄せて撃墜していた他、なんと生き物やウルトラマンさえ引き寄せることが出来る。砂煙を吐く他、普段は全身を蟻地獄のようなすり鉢状の巣に埋めて隠れている。
 惑星ハマーではババルウ星人(RB)に別個体が使役されており、レイのゴモラの超振動波にすら耐える驚異の防御力を見せつけた。だが、レイオニックバーストとなったゴモラには敵わず大顎を引き千切られ、バトルナイザーに回収されている。
 本個体は惑星アシヨシのある砂漠地帯でプラティーナに捕獲された。地の利と能力を活かした強さは厄介で、捕獲には怪獣数体を出す羽目になった。レイオニクスバトルはザラブ星人戦が初陣となったが、敵のミエゴンに序盤は翻弄されるも、大技の【マグネティックストーム】を繰り出したことで形勢逆転。ミエゴンに追撃のスープレックスを決めて生き埋めにしたことで勝利した。
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