怪獣超無法惑星   作:フルメタル・ミサイル

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 今回はヤプールの女エージェント・ファム再登場。そして超獣祭りです。
 それと今回の超獣の案は不死身のケダモノ様にいただきました。


超獣vs超獣

 ヤプールの手先として数々の星で暗躍した女エージェント・ファム。当然ながら、ヤプールに虐げられた人々には彼女のことを恨んでいる者は非常に多い。

 彼女を恨む者達は彼女に高額の懸賞金を懸けている。現在ファムはレイオニクスとしてこの惑星アシヨシで戦っているが、彼女を仕留めてその賞金を得ようとする者はこの星にもまたいるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――とある海岸――

 

 諜報員としての(さが)か、定期的に居場所を移動し続けているが、現在ファムの拠点はここにある。より正確に言えば、そこからさらに奥にある森の中であるが。

 レイオニクス狩りとレイオニクスバトルの傍ら、ファムは時折()()と称し、この星でのバカンスを満喫していた。

 

「~~♪」

 

 海でサーフィンをひとしきり楽しんだ後、今度は砂浜に置かれたパラソル付きのビーチチェアで鼻歌を歌いながら寝そべるファム。トレードマークの赤く長い三つ編みこそそのままであるが、その姿は普段のビジネススーツ姿ではなく、黒のサングラスに、やたら面積の少ない黒のタイサイドビキニのトップスとショーツ。しかもショーツの後ろ側はTバックという非常にセクシーな格好である。

 おまけに椅子の隣のクーラーボックスの上には、ご丁寧にグラスに入ったトロピカルカクテルや地球産と思しき各種の酒の瓶が置かれている始末。惑星のあちこちで毎日激しいレイオニクスバトルが行われ、弱者は淘汰される地獄が繰り広げられる中、彼女だけは関係ないと言わんばかりの光景であった。

 

『警告! 宇宙人反応!』

「……!」

 

 しかし、そんな楽しいバカンスも突如終わりを告げる。傍らに置いていたバトルナイザーからの警告を受け、ファムはサングラスを外して上半身を起こした。

 

「バカンス中にアポ無し訪問とは無粋な方ですね」

 

 バトルナイザーのテレポートでビーチチェアのすぐ近くに現れた宇宙人を見やり、ファムはいつも通りの笑みを浮かべながら声を掛ける。

 

「それは失礼。まぁ、そこまで時間もかからんとは思うよ」

 

 突然の来訪を詫びながら、宇宙人は早速バトルナイザーを見せつける。エイリアンタイプの宇宙人故か、ファムのセクシー極まる格好に対し、何ら感じるところはないらしい。

 

「用件は分かっているだろ?」

「レイオニクスバトル……いえ、あと()()1()()ありそうですね。

 貴方でしょう? 最近私の主人の支配下にあった星を解放して回っているという方は」

 

 ファムは現れたレイオニクスをひと目見た途端、その正体を言い当てた。

 ヤプールがウルトラ戦士に敗れて消滅することは幾度もあった。無論、その後は蘇るのだが、復活までにはそれなりの時間を要する。今回レイブラッド星人にヤプールは敗れ消滅したわけだが、その直後支配下にあったいくつもの惑星が反乱を起こし、ヤプールの手下達を追い出し主権を取り返すという出来事が起きた。

 そして、彼等に協力した者がいる。ファムが読んだそのブラックリストの中にあった顔の1つと、目の前の宇宙人の顔は一致するのである。

 

「ほう、さすがはヤプールのエージェント。すぐバレるとはな。

 なに、そう綺麗な話じゃない。私は向こうが大金を支払うというから協力しただけのこと。

 そして、君にもまた向こうが高い懸賞金をかけていてな。レイオニクスバトルの傍ら、君を仕留めてそれをいただこうと思っただけだ」

 

 銀河星人 ミステラー星人(RB)

 

 宇宙で最も好戦的と恐れられる宇宙人。他の星との戦争を何度も経験しているが、特に近隣のアテリア星との戦争は数十年もの長きに渡って続けていた。

 オレンジがかった赤と緑の体色で、口吻が長く伸びた、タツノオトシゴによく似た顔が特徴。ただし、頭の鰭や胸部の形状などの細部は各個人で差が大きく、本個体は頭頂部の鰭がモヒカンのように縦に長く伸びている。他星との戦争を長く続けられるほどに高い科学力を持つと共に、テレパシー・巨大化・変身能力・念動力など、超能力も豊富。

 宇宙一好戦的と揶揄される種族であるが、長く続いたアテリア星との星間戦争にはさすがに多くのミステラー星人が嫌気が差し、逃亡する者も多く出た。

 本個体もその1人であるが、今回レイブラッド星人の手によりレイオニクスとなり、レイオニクスバトルに参加している。ちなみにそれ以前から新たな職として悪党狩りの賞金稼ぎを営んでおり、今もレイオニクスと二足の草鞋を履いている。

 

「ふふふふ、やっぱりそうでしたか。職業柄仕方ないとはいえ、私は恨みを買いまくっておりまして。レイオニクスバトル以外でも命が狙われることもまた日常茶飯事です」

 

 自分の命を狙う賞金稼ぎを前にしておきながら、女エージェントは臆せずクスリと笑う。

 “怪獣超無法惑星”である本星で平然とバカンスを楽しむようなイカれた女である。今更自分の命を狙う殺し屋がやって来たことぐらいで動じないし、任務とはいえ悪事をしてきた自覚もあるため、別に相手を責めようとも思わない。

 

「だからか。あっちの方から妙に殺気を感じるんだ」

 

 ミステラー星人はちらりと海の方を見る。彼は会話の際、ずっと強烈な殺気と鋭い視線を感じていた。

 

「さすがに()()抜きでバカンスを楽しめるほど自信家でも無謀でもありませんので」

 

 こんな危険な星で身一つで遊ぶほど、ファムは馬鹿でも無謀でもない。()に身辺警護を任せているからこそ、こんな無防備に遊んでいられるのだ。

 ミステラー星人が今無事でいられるのも、ファムにいきなり襲いかからず、まず会話を行なったからだ。最初から武器を出していた、あるいは途中で武器を出した瞬間、彼に殺されていただろう。

 

「出番ですよ」

 

 ファムも後ろの海を見やり、パチンと指を鳴らす。すると海面が盛り上がり、周囲を警戒していた彼女のボディガードが姿を現す。

 

「ガァァァァ!!」

 

 怪魚超獣 ガラン

 

 かつてウルトラマンエースと戦った超獣の別個体。古生代デボン紀に生きていた古代魚と宇宙怪獣をヤプールが合成して作り出した、水陸両用の超獣である。

 全身が緑色の鱗に包まれており、尖った太く長い鼻先、団扇状になった巨大な手、全身の所々から生えた鰭、尾鰭の付いた長い尻尾が特徴。口から吐くガランガスは接触した物体を分解して吸収する性質があり、また吸引することで相手を吸い寄せる。テレパシー能力もあり、これで様々な物体を操ることも出来る。

 本個体はファムが海でのバカンスを過ごす際、その身辺警護を任されている。

 

「ふーむ。本気で殺すなら遠方から狙撃すべきだったか」

「それも無理です」

 

 にっこり笑ったファムが、パラソルの柄に付いたスイッチを押す。すると、その周囲を覆う電磁バリアが可視化する。

 

「以前、他のレイオニクスを襲った時に反撃を受けて怪我しそうになったことがありまして。以後その教訓を活かし、私の周りは常に攻撃を防ぐバリアを張るようにしてあります」

「呆れた女だな…」

 

 異様な用心深さと周到さを見せた女に、ミステラー星人は呆れるしかなかった。

 

「やはり怪獣の持つ圧倒的な力で強行突破するしかないようだな」

「今までそれが出来た方はおりませんよ?」

「まぁ、やるだけやるさ」

 

 ここまで来た以上、あとはレイオニクスバトルを行うのみ。己の知恵と怪獣の強さをもって、戦いを勝利に導き、女エージェントを仕留めるのみだ。

 

『警告! 怪獣反応!』

「! 貴方の方こそ油断も隙もない人ですね。既に怪獣を出していらっしゃる」

「お互い様だろう」

 

 ファムのバトルナイザーが再び警告を発する。それを聞いたファムに指摘され、ミステラー星人は目を細める。

 こちらのバトルナイザーは警告を発しなかった。いや、正確には、既に発していて久しい。

 ガランだと特定は出来ていなかったが、何かしらの怪獣が存在し付近を警戒していることには来訪前に気づいていた。そのため、こちらも戦力を最初から海に放っていたのである。

 咆哮を上げながら、深海からあっという間にこちらへと泳ぎ着いたのはミステラー星人の使役する海蛇のような怪獣だった。

 

「キシィィィィィィ」

 

 深海竜 ディプラス

 

 かつてウルトラマンダイナと戦った怪獣の別個体。深海に生息する凶暴な水生怪獣であり、四肢のない体躯はまさにウミヘビそのもので、他に頭部に生えるチョウチンアンコウのような触角が特徴。

 触角からは電撃や赤色破壊光線を放ち、特に後者は敵の光線や光弾を浴びた際にその威力を上乗せして撃ち返すことが出来る。また、体躯自体も6000m以上の深海の水圧をものともせず高速で泳ぎ回るほど頑強で、巻き付かれた際はダイナのストロングタイプのパワーでも振りほどくことが出来なかった。

 

「ガァァァァ!!」

 

 水面から突如飛び出し襲いかかった深海竜を迎え撃つガラン。しかし、ディプラスはガランの口からのガスを吐かれる前に全身に巻き付き、さらには喉元と口を自身の長大な体で拘束することで封じてしまう。

 そのままディプラスはガランごと再び水中に潜り、深海へと引きずり込んでいく。

 

「まずは1匹…」

 

 無論、水陸両用の超獣であるガランが深海に引きずり込まれたぐらいでは死なないのは、ミステラー星人とて理解している。とはいえ、ディプラスは水中特化な分、水中戦においてはガランを上回ると見ていた。瞬殺は出来ずとも、それなりの時間は足止めぐらい出来るだろう。

 何より、ガランの最大の武器であるガランガスは水中では使えない。ましてや、喉と口を封じられている今は、吐くことも出来ないだろう。得意のテレパシーも、ああいう能力はそれなりの精神集中が必要なため、絞め殺されかけている今、使うことは出来ないはずだ。

 

「……ガランの特性をよくご存知のようで」

 

 怪獣を上回るはずの超獣がこの始末。今まで崩さなかった笑顔から一転、ファムは珍しく無表情でミステラー星人を睨んだ。

 

「ヤプールの手先どもを今まで相手してきたんだ。当然、超獣との交戦経験は幾度もある」

 

 一方、ミステラー星人に感情の揺らぎは窺えず、態度も淡々としたものである。

 事実、彼にはこれ以前にもガランとの交戦経験があり、苦戦はしたが倒している。もっとも、その時はレイオニクスではないので、自分が戦ったのであるが。

 彼がヤプール一味のブラックリストに載っていたのはレイオニクスとしてではなく、『超獣を複数倒したほどの戦闘能力を持った宇宙戦士』としてである。

 

「さて……」

『ギシィィィィ』

『ガァァァァ!!』

 

 鋭い視線にも怯まず、ミステラー星人は自分のバトルナイザーにディプラスの視覚情報を映す。深海竜は主人の期待通り、深海にガランを引きずり込んでその長大な肉体で絞め上げ続け、苛んでいた。ガランも時折両手を振って抵抗しようとするも、海蛇同様四肢こそないが全身が筋肉の塊であるディプラスの膂力には、同じく怪力を誇る超獣でありながら大した抵抗が出来ないでいた。

 さらにディプラスは触角から電撃を浴びせてダメージを与えていく。さしもの超獣もこれには耐えかね、悲鳴を上げていた。

 

「ここまで離れていれば回収も出来まい」

「ハァ……ガラン(あの子)にはガッカリですね」

 

 敵の有利なフィールドに引き込まれたとはいえ、超獣が何も出来ずにここまでいいようにやられるとは。目尻を抑え、ファムが珍しく失望した顔で呟いた。

 

「それでどうする? バリアのみで私の怪獣の攻撃を凌げるか?」

「私もこう見えてサードステージ進出者。当然他に戦力を持っておりますよ」

 

 ファムが他に超獣を使役しているのを知ってか知らずか、ミステラー星人は煽り立てる。さすがのファムもその態度は内心癪に障ったが、口には出さなかった。

 

「ならば、さっさと出すがいい」

 

 賞金稼ぎではあるが、同時にレイオニクスとしてのプロ意識の方も強いのか。ミステラー星人はあえて追撃せず、ファムに次の超獣を出すよう勧めた。

 

「ふふふふ、余裕ですね。ですが、後悔しても知りませんよ?」

「後悔か。ヤプールのペット風情には、そもそもそういう感情はないのだろうな。実に哀れなことだ」

「…その言い方は正直気に入りませんね。絶対に後悔させてあげます」

 

 ミステラー星人は余裕ぶるどころか、ファムへの哀れみすら見せた。平静を装っていたがこう侮辱されたことで、女エージェントはついに怒りを露わにする。

 

『バトルナイザー、モンスロード!』

 

 赤と黒のツートンカラーのバトルナイザーより、2体目の超獣が召喚される。

 

「プォオオオオ」

 

 変身超獣 ブロッケン

 

 かつてウルトラマンエースと戦った超獣の別個体。ヤプールが超獣製造機でワニと宇宙怪獣を合成させて生み出した。

 二手四足の独特なケンタウロス体型の超獣。合体前同様のワニ顔、真横を向いた1対の角、後部から伸びた1対の鞭のような尻尾、1つ目と口の付いた手が特徴。超獣の中でも特に巨体ながらエースのメタリウム光線を走って躱すほどの身軽さがあり、鼻からの火炎、爪の先からの破壊光線、尻尾からの光線を武器とする。また憑依能力があり、これで人間に取り憑いて操るが、対象者は掌に1つ目と口が出現してしまう。

 

「ブロッケンか……懐かしいな」

 

 ガランだけでなくブロッケンとも交戦経験があったらしく、その出現という危機にもかかわらず、ミステラー星人は懐かしさを覚えた。

 

『バトルナイザー、モンスロード!』

 

 しかし、これはレイオニクスバトル。懐かしさに浸ってばかりもいられない。

 我に返ったミステラー星人もまた次なる戦力を召喚する。

 

「ヒュアアアアアア」

 

 虹超獣 カイテイガガン

 

 かつてウルトラマンエースと戦った超獣の別個体。エースの巨大ヤプール撃破後に現れた超獣のため、正確な素性は不明であるが、ヤプールの怨念から生まれた、あるいはリザーブしていたものと見られる。普段は5000mの深さの深海で暮らしている、ガランと同じく水陸両用の超獣だが、人間の海洋汚染に怒ってタンカーを次々と襲撃した。

 体色はピンクがかった茶色で、フジツボやタコの吸盤のような突起が付いたコウイカのような胴体に、鋭い爪の生えた手足が生えている。首がなく、胴体にそのまま頭部が載っており、そこには牙の生えた楕円形の口と大きな目がある。口からは白いガス、連射ロケット弾、光線を吐くなど、武器も豊富である。

 本個体はミステラー星人(RB)のヤプール支配下の惑星の解放時に交戦したものを捕らえ、戦力としたもの。

 

「超獣…!?」

「プオ!?」

 

 まさか自分と同じ超獣が敵として現れたことに、さすがのファムとブロッケンも驚きを隠せなかった。しかし、カイテイガガンの方は躊躇なくブロッケンに飛びかかる。

 一方でこちらには躊躇いがあり、その分反応が遅れた。その隙を突いて素早く振り下ろされた虹超獣の鋭い爪の付いた右手で頭部をはたかれ怯んだところで、今度は左前蹴りをくらい、ブロッケンは砂浜側へと後退る。

 

「何をボサッとしているのです! あれは敵ですよ!」

「プ…プォオオ!!」

 

 そこでファムに叱咤されたところで、ようやく気持ちの整理が付いた。すぐさま鞭状の双尾を振り回して反撃し、カイテイガガンに絡み付ける。

 

「ヒュアア!」

 

 もがき苦しむカイテイガガンに爪の先からの光線を浴びせ、追い打ちする。光線が被弾したカイテイガガンは前面の所々に火が点き、苦しんでいた。

 

「それでいいんです」

 

 始めは調子を崩されたが、今はこちらが主導権を握った。それに満足し、ファムはまた笑みを浮かべた。

 

「プォオオオオ」

 

 動けないカイテイガガンに、今度は口の付いた両手での噛みつきをくらわせようとブロッケンはゆっくりと近づく。

 

「やれっ!」

 

 しかし、敵が油断する瞬間をミステラー星人は狙っていたのか。手での噛みつきをくらわせようとブロッケンが両手を振り上げた瞬間、無防備になった隙を敵主従は見逃さなかった。

 

「ガァッ!?」

 

 カイテイガガンの口から破壊光線が発射され、ブロッケンの顔に直撃する。顔への大ダメージで両手で顔を押さえながら悶絶したところで、双尾での拘束がやや緩んだ。

 虹超獣は逆に尻尾を持って引っ張ると、なんとそのままブロッケンの巨体を振り回した。

 

「くっ!」

 

 いくらバリアを張っているとはいえ、ブロッケンの巨体は8万3000t。そんなものをこちらに投げられでもしたら、さすがにバリアでも防ぎきれず圧死する。しかし下手にここから離れればミステラー星人から直接攻撃される危険があり、事故死の危険がありながらもファムは下手に避難出来なかった。

 

「ヒュアア!」

 

 カイテイガガンは思う存分ブロッケンを振り回した後、そのまま森の方に投げ飛ばす。あまりに振り回されていたので三半規管が麻痺したのか、それとも異形の体型が災いしたのか。ブロッケンは受け身も取れず叩きつけられてしまった。

 

「プ…プォオオ」

 

 ブロッケンはよろよろと起き上がる。しかしここで余裕をこいたのか、カイテイガガンは追撃をかけてこなかった。

 

「プォオオオオ!!!!」

 

 いいようにやられ、ブロッケンはここで猛烈に激怒した。巨体の割には素早いスピードで走り、浜にいるカイテイガガンに今度はこちらから襲いかかる。

 

「………」

「…?」

 

 しかし、カイテイガガンは動こうとしない。その様子をファムは不審に感じるも、敵主従の意図が分からなかった。

 

「やれっ!」

 

 そのワニの口と両手の口を目一杯開き、3つの噛みつきが虹怪獣に当たる寸前。カイテイガガンもずんぐりした見た目の割には非常に素早い動きで左に倒れながら躱し、そのまま右足で足払いを行う。

 ブロッケンはそのまま右前足と右後足を払われすっ転んだところで、カイテイガガンが後ろへ回り込み、そのまま海の中へと蹴り飛ばした。

 

「!?」

 

 狙いはこれだったのか――とファムが驚くも、もう遅い。ワニの超獣でありながら体型のせいで泳ぎは不得手のブロッケン。そこへ遅れてカイテイガガンが飛び込んで抱きつき、さらなる深みへと引きずり込まれる。

 

「ガボガボガボボ!!!!」

 

 さらに悪いことに、深海5000mが元の住処であるカイテイガガンと違い、元のワニも肺呼吸。そこまで長い時間息が続くわけでもないし、ましてや極端に深い水圧にはさしもの超獣も耐え切れない。溺れて薄れゆく意識の中抵抗も出来ず、超獣2体は深海へと消えていった。

 

「これで2体目…」

「…!」

 

 神妙な顔で呟くミステラー星人に対し、ファムは驚愕の表情であった。ガランに続き、ブロッケンまで敗れた故、無理もない話であるが。

 

「ふふふふ……どうやら本気を出した方が良さそうですね……」

 

 さすがにまずいと思ったのか。ついに自身の最高戦力の投入を決意したファムの目つきは鋭くなった。

 いつもの笑みは何処へやら。むしろこれこそが彼女の本当の顔なのだろうか。

 

「そりゃそうだ。戦力の逐次投入というのも愚策だからな。

 こちらももう小手調べは十分だ。次で最後にしようか」

 

 ミステラー星人の方もまだ戦力に余裕はあるらしく、敵の本気を察しながらも動揺してはいない。ここら辺はさすがにサードステージ進出者であろう。

 

『『警告! スフィア反応!』』

「「!!」」

 

 しかし、最後の戦いの火蓋が切って落とされようという時、突如空が虹色に輝き、緑色の光を纏った球体の群れが空に現れる。

 

「まことに残念ながら、どうやら楽しいレイオニクスバトルもここまでのようだな。この勝負、預けないか?」

 

 ミステラー星人は戦力的にはまだ余裕はあったが、ファムの切り札だけならともかく、スフィアを同時に相手取りながら戦うのは不利だと考えたらしい。

 その出現を見て即座に撤退を決断し、勝負は預けることにした。

 

「勝ち逃げするつもりですか? そんなのありえません。

 そのつもりならば、せめて貴方の命で贖っていただきましょう」

 

 しかし、2敗したファムにそれは到底受け入れ難いことであった。

 彼女は地面に挿していたパラソルを右手で引っこ抜くと、その先端をミステラー星人に向ける。

 

「ッ!」

 

 パラソルの先端部は銃口となっており、そこから強力なレーザーが発射された。慌ててミステラー星人は避けるも、ファムは銀河星人を殺そうと連射する。

 

「心配するな! 私もまだ君の賞金を諦めてはいない! この決着は後日つけよう!」

 

 どうにか全弾躱し、隙を見てミステラー星人は海に飛び込み、そのまま超獣達の後を追うように潜っていった。

 

「逃げられましたか…」

 

 悔しげに海面を見やるファム。彼女にしては珍しく、今回は敵の殺害に失敗してしまった。

 

「貴方達のせいです」

 

 恨めしげに呟いたファムは、襲い来るスフィアソルジャーにパラソルのレーザーを連射、順次撃墜していった。

 

「全てを、一つに……」

 

 多くを撃墜したところで、やがてキングスフィアが頭上に現れ、緑色の光を真下に照射する。そしてそこよりこの熱帯の砂浜には似つかわしくない、コートを纏ったロシア帽の女がその中を通って降りてくる。

 

「私は今機嫌が悪いんです。貴方の戯言なんて聞く気は起きません」

 

 蒼髪の厚着の女とは対照的な赤髪の水着の女はそう吐き捨て、赤と黒のツートンカラーのバトルナイザーを見せつける。

 

「ウフフ……」

 

 猛る女スパイに、ペルフェクト星人ナドキエは禍々しくも妖艶に微笑んだ。

 そのまま、2人のバトルナイザーが同時に光ったのだった。

 

 

 

 

 

「………………」

 

 深海へと逃げたミステラー星人は、バトルナイザーの反応を頼りにブロッケンと共に沈んだカイテイガガンの元へと向かう。

 

「ヒュアア」

 

 やがて泳ぎ着いた深海1000m地点において、溺れ死んだブロッケンの亡骸にしがみつくカイテイガガンを発見した。

 

「行こう」

 

 カイテイガガンは主人が迎えに来たのを見て、ブロッケンを放り出す。さらに沈んでいく変身超獣の溺死体に目もくれず、虹超獣の背中に捕まりながら、主従はさらなる深みへと向かう。

 

「キシィィィィィィ」

「ガァァァァ」

 

 結論から言うと、ガランの方は死んでいなかった。むしろディプラスの拘束から脱出し、激しい戦いを未だ続けていたのだ。未だ健気に戦う配下にすぐ失望したあの女には、はっきり言って見る目がないとミステラー星人は思った。

 

「迎えに来たぞ」

「!」

 

 ディプラスはカイテイガガンに捕まってやって来た主の姿を見るなり、一旦戦いを中断してそちらへと泳いでいった。

 

「ガァァ!!」

 

 ガランも敵の姿を見るなり、こちらへと猛スピードで泳いできた。

 

「その意気や良し」

 

 そう敵を称え、ミステラー星人はその場で巨大化する。

 

「!」

 

 配下でなく、主人の方が自分の相手をするのか。そう思ったガランはむしろ敵レイオニクスをすぐ仕留める好機とばかりに、まっすぐこちらに向かってきた。

 

「フン!」

「ガァァァァァァァァ!!??」

 

 しかし、これこそがミステラー星人の思惑通りであり、ガランは見事に引っかかってしまった。まっすぐ突っ込んできたガランにミステラー星人は口吻から『MKファイヤー Ver.Ⅵ』を発射。超威力の魚雷が直撃したガランは大爆発し、一撃で粉々になってしまった。

 

「引き上げるぞ!!」

「ヒュアアアアアア」

「キシィィィィィィ」

 

 大爆発の衝撃波を利用し、3体はそのまま深海から海上まで一気に押し上げられたのだった。




用語解説

 銀河星人 ミステラー星人(RB)

 二つ名は“超獣狩人”。宇宙で最も好戦的と恐れられる宇宙人。数々の宇宙戦争を起こしたが、特にアテリア星との戦争は数十年もの長きに渡り続けていた。しかしさすがのミステラー星人も、一向に終わる気配のないアテリア星との戦争には嫌気が差して他の星に逃亡する者が続出し、軍上層部は対応に苦慮することになる。そしてウルトラマンジャックの地球防衛時代において、戦闘隊のエースまでもが娘と共に地球に逃亡してしまい、隊長が連れ戻しにやって来る羽目になる。また、アテリア星との戦争はメビウスの地球防衛時代にも続いていた模様。
 その過程で隊長は戦闘能力に優れたMATの隊員達も戦争のための新たな戦力として連れて行こうと目論むも、人質に取っていたはずの娘が現れたため、部下とウルトラマンジャックが和解。隊長と部下は戦闘になるもジャックが加勢。しかし洗脳したMAT隊員達を盾にすることで隊長側が優位に立つが、油断したところで光線をくらい逃げようとしたところをMATの追撃を受けて隊長は倒された。その後戦闘隊エースは娘と地球で暮らしている。
 オレンジがかった赤色の、二足歩行のタツノオトシゴのような顔をした種族だが、胸殻や顔の鰭の位置などは個体差が大きい。本個体は頭頂部の鰭がモヒカンのように長く伸びているのが特徴。他の星との戦争を長く続けられるほどに科学技術が発達しており、彼等自身も変身能力やテレパシーなどの多彩な超能力を備えている。好戦的な種族だけあって戦闘能力も高いようで、戦闘隊エースの射撃の実力は宇宙一と謳われていたほど。
 本個体はその戦闘隊エースの薫陶を受けた部下の1人であり、彼に遅れてアテリア星との戦争が嫌になり逃亡した。しかし、平穏な暮らしを選んだ上司と違い、彼は他の星で悪党を狩る賞金稼ぎとなった。ただし非力な一般人や善人には手を出さないなど良識は弁えており、殺しこそ好むが粗暴な人柄ではない。それはレイブラッド星人によってレイオニクスとなった後も変わることはなかった。
 同じく惑星アシヨシで戦う賞金稼ぎ・L85星人サングレとは友人関係であり、共に悪党狩りの悪党という共通点がある。出会った当初こそ獲物の奪い合いで殺し合いになりお互い重傷を負ったが、これ以後兄弟と呼び合うほどの仲となる。兄弟と違い、彼は金にはシビアだが、その分受けた契約は最後まで実行するという律儀さを持ち合わせている。
 兄弟がグア軍団と因縁があるのに対し、彼はヤプールの手先と戦うことが多かった。ヤプールに支配された星の政府に大金と引き換えに依頼され、その解放のために戦っている。その過程で幾多の超獣を倒しており、使役するカイテイガガンもその成果の1つ。また、他にも超獣は所有しているらしい。
 おかげでヤプールからは恨みを買っており、そのブラックリストに入れられており、ファムもその存在を知っていた。一方で彼はサイモン星が懸けていたファムの懸賞金を知っており、前から狙っていた模様。レイオニクスとしての実力ではファムを上回っており、レイオニクスバトルでは終始圧倒していた。彼曰く、スフィアの横槍がなければ倒しきれていたらしい。
 兄弟と同じくレイブラッド星人の後継者の座には興味がなく、この星に来たのも単に賞金のかかった悪党が多いからである。とはいえ、レイオニクスとしてのプロ意識自体は強く、ファムもあくまでレイオニクスとして倒そうとしていた。しかし見えていないところでは反則をするタイプであり、ガランも自力で倒している。
 余談だが、彼はサングレの目的を知っており、彼が優勝した際にはそれを叶えるために協力する気でいる。ちなみにファムの水着についてはツッコまなかったが、その痴女じみた格好には内心呆れていた模様である。

 怪魚超獣 ガラン

 かつてウルトラマンエースと戦った超獣の別個体。TACが輸送していた、石灰岩から発見された古生代デボン紀の古代魚を異次元人ヤプールが強奪し、宇宙怪獣と合成して作った水陸両用の超獣である。また、その見た目はかつて劇画作家の久里虫太郎が少年時代に描いた絵と酷似しており、そのイメージをヤプールが参考に作ったとも考えられる。
 ヤプールに魂を売った久里虫太郎の書く漫画の原稿をなぞって暴れ、TACの戦闘機の攻撃も意に介さなかった。エースと戦闘になった際は一進一退の攻防を繰り広げられるも、ガランは久里の体とリンクしていた、そのせいでタイマーショットで右腕を千切り飛ばされてからは久里の右腕が使えなくなり、漫画が止まり、ガランの動きも止まる。その隙を突きエースに叩きのめされ、久里と同時に体に火が点き、そのままパンチレーザーで炎上。メタリウム光線でとどめを刺され、久里も屋敷が爆発し死亡した。
 見た目は合成前の古代魚に準じるが、二足歩行の怪獣体型へと変わっている。暗い緑色の体色で全身が鱗に覆われ、馬上槍のような鼻先、牙の生えた口、全身の所々に生えた鰭、団扇のような巨大な手、尾鰭の付いた長い尻尾が特徴。古代魚が元となっただけあり水陸両用の超獣であるが、陸でしか戦わなかった。口から吐くガランガスは物体を分解し吸収する他、吸い込むことでエースを抵抗させずにこちらへ引き寄せる応用法を見せた。他にテレパシー光波によって戦闘機や銃器を操ることが出来、無力化させてしまう。
 本個体はファムが海でのバカンスをする際、警護を任されている。しかし現れた敵のディプラスに巻き付かれ、ガランガスを封じられた挙げ句抵抗も出来ぬまま深海に引きずり込まれてしまう。あまりに早い退場には主のファムも呆れ、失望を露わにしていた。
 しかしながら主人の失望とは裏腹に途中で脱出に成功するも、深海というディプラスに有利なフィールドでは敵を仕留めるに至らず一進一退の攻防を続けていた。そこに合流してきたミステラー星人(RB)に襲いかかるも、新型のMTファイヤーを叩き込まれ爆死し、挙げ句その勢いで脱出されてしまった。
 尚、実際にはブロッケンよりは遥かに粘っていたため、ファムの評価は正直的外れであったと言わざるを得ない。

 深海竜 ディプラス

 かつてウルトラマンダイナと戦った怪獣の別個体。水生生活に特化した、珍しい蛇型の怪獣で四肢がなく、頭にはチョウチンアンコウにも似た触角がある。体躯自体は155mと並の怪獣の倍以上の長さがあり、巻き付かれた際はダイナのストロングタイプのパワーでも振り解けないほどの力を持つ。
 触角からは電撃や赤色破壊光線を放つ。特に後者は敵から受けた光弾や光線のエネルギーを上乗せして撃ち返すことも出来る。ちなみに海蛇と違い、体を縦にくねらせて泳ぐ。
 深海6200m地点を住処としており、そこに建造されたTPC海底研究基地トライトンJ2の耐圧シールドに反応して襲いかかり、施設の人々を閉じ込める事態となった。救出に来たスーパーGUTSのガッツマリンにも反応して襲いかかったが、魚雷によって起こされた落盤に巻き込まれる。しかしのちに復活するもダイナと戦闘になり、水中戦に不慣れなダイナを圧倒するも触角を破壊され弱体化。最期はガッツマリンに襲いかかろうとしたところ、ソルジェント光線を受けて粉砕された。
 本個体はミステラー星人(RB)に使役されている。超獣ガランに臆することなく挑み、長大な体躯で喉と口ごと締め付けることでガランガスを封じ、そのまま深海に引きずり込んだ。ブロッケンとカイテイガガンの戦いの最中もガランの動きを封じ続けるも脱出されたようで、その後は一進一退の戦いを繰り広げていた模様。その後、合流した主にバトンタッチし、ガランは倒される。その時の衝撃波を利用し、海面へと帰還した。

 変身超獣 ブロッケン

 かつてウルトラマンエースと戦った超獣の別個体。ヤプールにより、ワニ(見た目からして恐らくメガネカイマン)と宇宙怪獣を合成して作られた。超獣で珍しいケンタウロス体型の巨体であり、バラバに次ぐ重量を誇る。
 憑依能力があり、人間に憑依することが出来る。ただし、掌に1つ目と口が出現してしまうが、ここは常に手袋をはめる・握手を避けるなどして上手く誤魔化している。ただし迂闊な面もあり、ヤプールの指令を受けている際もそのまま寝ていたなどの失態も見せた。
 TACの隊員に乗り移り、TAC基地壊滅や新型ミサイル破壊を目論むも、上記の迂闊さで彼の息子やTACに正体がバレてしまう。その後元の姿に戻りエースと戦うが、エース出現時に右腕を失ったせいもあってか格闘戦でこそ劣勢であったが、逆に武器の方では圧倒しており、メタリウム光線を避けてこちらの光線を当ててダウンさせるなどの奮戦する。しかし最後はウルトラ兄弟からのウルトラサインを見て奮起したエースのウルトラギロチンで頭と手と尻尾を切断されて死亡した。
 ワニの超獣であるが、上記のように二手四足のケンタウロス体型であり、面影は顔ぐらいしかない。頭部には真横に向いた双角、牙の生えた口と1本爪が付いた両手、臀部から伸びる鞭状の双尾が特徴。鼻からは火炎、両手の爪及び双尾からは光線を発射する。
 本個体はファムに仕えており第2戦目で喚び出されるも、敵が同じ超獣のカイテイガガンであることに動揺し隙をさらすなど、以前の個体同様あまり知性は高くない。またエースを圧倒した以前の個体より強さは劣るのか、カイテイガガンに押されっぱなしであり、挙げ句敵の誘導に引っかかり足払いをくらって海に落とされて引きずり込まれてしまう。そのまま絞め上げられて共に深海に沈むも、カイテイガガンと違い水中適性がなかったせいでそのまま溺死してしまった。
 同じ超獣相手かつ地の利を利用されたとはいえすぐに倒されてしまったため、ファムを大いに失望させている。それと余談だが、ミステラー星人(RB)はかつてブロッケンとの交戦経験があるらしいが、だからこそ手の内を知っており、そこを突かれてしまったとは言える。

 虹超獣 カイテイガガン

 かつてウルトラマンエースと戦った超獣の別個体。しかしヤプール消滅後に発見された超獣のため、ヤプールとの関係も含めた詳しい素性は不明。ちなみに別名は出現の際に海面が虹色に輝くことによるものである。
 普段は太平洋の深海5000m付近を住処としているが、人類による海洋汚染に激怒し、次々とタンカーを襲った。その被害を受けてTACが仕掛けた偽タンカー作戦に引っかかり上陸し暴れ、その後エースと戦闘になる。しかし格闘戦では終始劣勢で、数ある能力も通用せず、最期はメタリウム光線をくらって大爆発した。
 首がなく、胴体に同じ太さの頭が直接くっついたずんぐりした体型で、四肢には鋭く長い爪が生えている。全身はタコの吸盤のような突起で覆われており、他に大きな目と楕円形の大きな口が特徴。この口からは水流・ロケット弾・光線などの様々な武器を吐き出す。深海に暮らす水陸両用の超獣であるため、遊泳速度も速い。
 本個体はヤプールの支配するある惑星で暴れていたものをミステラー星人(RB)が自力で捕獲したもの。所有権が彼に移ったとはいえ、以後忠実に仕えており、同じ超獣のブロッケン相手でも躊躇せずに襲いかかり、エースの個体とは逆に格闘戦では終始優勢であった。また主人の性格から隙を突く・地の利を利用する戦い方が目立ち、海辺での戦いという点を活かしブロッケンを溺死に追い込んでいる。その後主人と合流してディプラスを迎えに行き、ガラン撃破を見届けた。
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